第二章『皇製薬会社の闇』第十ハ話
キラリーン、と効果音が聞こえてきそうな、アイドル顔負けのポーズを決め、月夜は裁也の冷たい視線の攻撃を受けていた。
「フン。余りの私の可憐さに、言葉も出ないようね」
裁也は、『バカか、こいつは』といった目で月夜を見据える。
月夜は彼の心情を慮る事無く、フッフフーン、と鼻唄を歌いながらダンスを踊る。
情熱的に舞い、軽やかにステップした。
華やかに廻りながら、挑戦的な笑みを裁也に向ける。
音楽は明るい曲調から、静かな旋律へ。
クライマックスを盛り上げる壮大な調べへと移行し、曲と月夜のダンスは同調していた。
裁也は終始、白けた表情で月夜を見つめていたが、彼女はお構いなしに観客である裁也に優雅に一礼した。
「お初、お目にかかります。改めまして、皇月夜よ! 以後、ヨロシク!」
「………………」
「あらぁ? 無反応? つれないわねぇ」
月夜はトテトテトテと、裁也に近寄る。
裁也は一歩引き、彼女に対して身構えた。
「それ以上、近寄るな」
「何よ? 私が怖いの? 普通にお話したいだけなのに」
「それ以上、近寄るな……ッ!!」
裁也は月夜から最大限距離をとって、柄を構えた。
野生の動物が、天敵と出くわした時の様に、焦燥と恐怖が裁也の顔に滲み出る。
月夜は裁也のその様に、ニタアッ、と顔を歪めた。
「あらぁ……、天下のフィクサーである貴方が、ただの女子高生に怯えてるの? おっかし~」
クスクスと月夜は笑うが、裁也は警戒を解こうとしない。
「お前……何者だ……?」
「私? だからただの天才美少女――」
「――何者だと訊いているッ!!」
間髪入れず叫ぶ裁也。
その姿からは普段の余裕が一切感じられない。
月夜はニタニタと笑う事を止めず、裁也の必死の形相を楽しんでいた。
「本当にからかいがいのある男ね、貴方。その〝金の眼〟で、私を視ているんでしょう? なら、私が何者かなんて、あっという間に解るんじゃない」
そう。
裁也は〝金の眼〟を発動させている。
余りにもウザい皇月夜を黙らせるために〝霊子刀〟で精神と肉体を繋ぐリンクを断とうとした。
〝金の眼〟の力。
それは視えないモノを絶つ刀。
〝銀の眼〟の力である、物を切る力とは反対に、〝金の眼〟の能力は精神や魂、この世に在らざるモノを隔絶する力である。
そしてその眼から通して見る世界は、正直地獄だ。
人の本性や精神性、人間に取り憑く怨念や邪気を視る。
誰も好き好んで、こんな世界を覗きたいわけじゃない。一のような悪魔や、死にたがりの道化が視るべき世界だ。
魂をガリガリ削りとられる思いで、裁也は〝金の眼〟を使う。
その対象の危険性を如実に把握する為にも必要な行為だ。
なのに眼前にいるソイツは――
「視えない……」
自分に言い聞かせる様に小さく囁いた。
皇月夜の魂や肉体と精神を繋ぐ糸は、黒くモヤがかかったように、視えなかった。
初めて目の当たりにする現象に、裁也はジットリと嫌な汗をかいた。
脳ではレッドシグナルが鳴り続け、未知の脅威である少女に注意を促している。
触れれば折れそうな少女なのに、
触れれば燃やし尽くされそうだった。
そんな裁也の思いを知ってか知らずか、月夜は裁也との距離を一歩詰める。
裁也はビクッと総身を震わせ、相手からの距離を更に取る。
警戒心剥き出しの獣に、可憐な少女はクスクスと笑うのみだった。
「貴方、本当に一との契約者? よくそんなので、『ロスト・クリスマス事件』を解決出来たわね」
「……お前、一体――――ッ!?」
言い、驚愕する。
皇月夜の双眸が、裁也と同様に金色に爛々と輝いている。
それは、紛れも無く一に授けられる能力の一部。
「貴方と同類よ。初めまして〝先輩〟」
近いうちに、黒歴史的作品を投稿するような気がします。
一番最初に、このサイトに上げさせてもらった『魔法使いの子供たち』より前の作品で、正直Σ(゜Д゜)って感じの作品です。
……需要、あるのかなぁ……?




