第二章『皇製薬会社の闇』第二話
「親の都合で今日から、この高校にお世話になります。皆と一日でも早く仲良くなりたいです」
薄っぺらい笑顔を振りまき、彼は平然とそんな事を言ってのけた。
初めて会った時は騙されたが、今回は二度目だ。彼の本性を知っている結維は騙されたりしなかった。
(何が起こってるの……? そして、何を企んでるの……?)
クラスの皆は、彼を初めて会った人のように歓迎している。
詩音は不思議そうな表情を浮かべて、結維を見ていた。
紹介が終わり、拍手喝采が起きる。
裁也は結維がジッと睨んでいるのに気付いたようで、笑顔を振りまく中、一瞬だけ物凄く不愉快そうな顔を結維に向けた。
まるで、俺も好きでこんな事をやってるわけじゃい、といったように。
自己紹介が終わり、ホームルームが始まる。
一限目の授業が終わり、クラスメイト達は転校生である石杖裁也に群がっていた。
結維にとってその光景は二度目で、同じ映画を二度繰り返して観ている気分にさせられる。。
全くの同風景。
同じ一日を再現しているようだった。
結維はクラスメイトに質問攻めにされている裁也を、面白くなさそうに見つめていた。
(何よ……! あんな嘘くさい笑みを浮かべちゃってさ! あっ! デレデレしてる!)
クラスのかわいい女の子が一人、裁也の体に触れているのを見て、結維は苛立ちを倍増させた。
「どしたの、結維? 怖い顔してさ」
「……うん。ちょっと……」
詩音は結維が向けている視線に、自分も向け、得心がいったようだ。
「そりゃ、アンタ。夢の中の王子さまが他の女にデレデレしてたら、面白くないわよね~」
「え、ちがっ――! 私は、別に、そんなつもりじゃ……!」
顔を真っ赤にして結維はうろたえる。
詩音はそんな結維が面白くて、からかった。
「でも良かったよ。妄想で彼氏を作り出したのかって心配した。まさか現実に存在してるとは、私も驚きましたっ」
「もうっ! しぃちゃんの意地悪っ!」
「アハハ! ゴメンゴメン! 結維があまりにも可愛かったからさ~、ついねー――って、あや?」
詩音が動きを止め、一点を凝視する。
釣られるように結維も見ると、石杖裁也が先ほどの女子と急接近していた。
カァーッ、と居ても立ってもいられず、結維は自分のこの感情が何なのかも解らず、席を立った。
「よぉし、行け結維! 肉食男子の時代は終わった! これからは草食男子を、肉食女子が食べる時代だ!」
結維の背後で詩音は囃し立てる。
何を馬鹿なことを言っているのだろう。
彼は草食男子ではなく、獲物を食い千切る猛獣なようなものなのに――
そんな事を考えながら、結維はクラスメイトに囲まれている裁也の前に立つ。
皆、何が始まるのだろうと好奇心一杯の目で結維を注視した。
今更ながら後悔したが、もう後には引けない。
「――石杖君。話、あるから付き合って」
そう言って、驚く彼の手を取り引っ張っていく。
クラスを出ていった瞬間、ワァーと歓声が鳴り響いたのは言うまでもなかった。




