表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ペルソナ  作者: ウミネコ
19/77

幕間

 そこはうす暗い室内だった。

 部屋は広く、たくさんの寝台が所狭しと並んでいる。

 寝台の上には人のようなモノ――否、植物状態の人間が眠っていた。

「ハッピバースデートゥーユー♪ ハッピバースデートゥーユー♪ ハッピバースデーディア、ローゼー♪ ハッピバースデートゥーユー♪」

 くるりくるり、とダンスを踊るように一人の少女が舞っている。

 両手には純白のドレス。

 顔の半分を被う白い仮面。

 陽気に笑う少女は、寝台に寝ているロゼにドレスを着せる。

「今日が、貴女の新しい誕生日。生まれ変わった新しい貴女を私に見せて」

 微睡みの意識の中、ロゼは少女の言葉を聞いている。

 ゆりかごで眠るひな鳥のように、少女の託宣を脳裏に刻んでいる。

「貴女を回収するの、大変だったんだからね。骨はボッキボキで、手足はひん曲がってて、血は溜池のようになってるし、もうこれ以上にないってくらい悲惨な状態だったのよ」

 ロゼにその記憶はない。

 在るのは、一人の少年への憎悪。

「でもぉ、もう大丈夫ッ! この天才美少女である私が、貴女を直してあげたんだから!」

「……あ……う……?」

 キャア、と少女は悲鳴をあげた。

「え? ええっ? なになに、ロゼ、もう喋れるの? ええ? わ、私って、本ッッ当に超天才なんだからぁ!!」

 自画自賛し、少女は自分で自分で褒め称える。

「う~ん、脳が新鮮だったからかしら? 他の人間達にはない兆候よね、この回復速度は」

 少女はチラッと、カプセルに入った人間を一瞥した。

 そしてそれっきり、興味を失ったように顔をそらし、たった今偉大なる復活を遂げたロゼに、好奇心全開の眼差しを向ける。

「クヒヒッ……! これでまた私の研究は一歩進んだ! ノーベル賞も夢じゃないわ! いやむしろ、自分の名前をつけた賞を設立しちゃおうかしら!」

 妄想に浸る少女は端正な顔を歪めて笑う。

 ロゼは彼女に無意識の内に手を伸ばした。

「いし……づ、え……」

「? え? 何々? どうしたの?」

「いし……づえ……たつ、や……」

「いし……? ――あっ! 石杖裁也って言いたいのね、貴女!」

 その単語を聞いた瞬間、ロゼの意志に火がついた。

 ロゼは少女の肩を強く掴み、グッと起き上がる。

「ッ! 痛ったいわねー! アザになったら、貴女、切り刻んでやるわよ!」

 少女が怒る。物騒な事を言ってるが、彼女なら本当にやるだろう。

「まあいいわ。……にしても、石杖裁也かぁ~。私、前から彼の事気になってたのよねぇ」

 少女は、う~んと唸った後、何か閃いたように明るい笑みを浮かべる。

「――ロゼ。私がまた貴女を全面的に支援してあげる」

 それはどういう意味なのだろう。

「あの子、最近ちょっと目ざといからね。ここらで一回、痛い目に合わせとかないとね! だから、この天才美少女である私が、貴女の復讐をプロデュースしてあげます!」

 少女はロゼを立ち上がらせ、踊り始める。

「っああ! 楽しみだわぁ! 彼がどんな表情を浮かべるのか! どんな風に顔を歪めるのか! どんな絶望の色を味わせてくれるのか! 想像するだけで濡れてくるわぁ!! そう、愛ッ! これが愛って事なのね!! たッッッぷりと、愛してあげるわッ!! アーハッハッハッ――!!」

 興奮冷め切らぬ状態で少女はくるくるとロゼと共に回転する。

 クルクル、クルクル。

 狂る狂る、狂る狂る。

 暗闇の世界の中、壊れた嗤い声がいつまでも残響した…………

これから第二章、幕開けします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ