歩く人
歩く人
奥宮 奏
晴れている空が青いのはあたりまえで、それを不思議に思ってしまう私はどこか欠けていて、今まで空とゆうものをちゃんと見たことがないのだとふと考えにふける。
いつもの公園だ。私はよくここに飼い犬を連れてくる。犬はこの公園が大好きのようでとても喜ぶ。
しかし私がここに一人できたところでなにか、なごやかになるとか、そんな心の変化はない。淡々と思い出してそれにつかの間浸って、さよならと同時に公園をでるだけだ。
飼い犬の名前は五郎だった。
この坂はよく悩まされたものだ。私はそんな若くないから、この長い急な坂を楽しそうにかけてく五郎に、私は着いてくのが必死だった。
平たんな道でも大変なのに、うちの五郎ときたら、とふと笑っている自分がなんだか、なんだかみじめだった。
坂を降りたら海だ。潮のにおいがする。
お前を飼ったときのことを今でも覚えているよ。
私が一人、このなんの変哲もないこの場所たちを歩いていて、お前はこの海で捨てられていて、今より少し小さくて、一人で鳴いていた。
私は、お前を拾った。
名前はなにしようか、とさてさて、考えていたが、私の甥が遊びにきて
「五郎がいい、そんな顔してる」なんてゆうものだから私も、
「今日から五郎だね」
そんな風に決まった。
私がいつもなんの変哲もないこの道を、変哲あるものにしてくれたのは、お前だよ、五郎。
私はいつも楽しくて、その楽しさが思いでが、今、お前がここにいなくて、もう戻ってこないなんてそんな嘘だって思いたい現実が、生きているよりもつらい。
なんで先にいくんだ。馬鹿な子だよ、本当に。
今までお前を気にかけて下ばかり見ていた。いなくなってからしばらくも、つらくて、まだ下を向いたら五郎が、お前がいるんじゃないかってずっと泣いた。一人で泣いた。
涙が枯れた頃空を見た。綺麗だった。
誰が天国は空のむこうだと、ゆったのだろうか。気づいたら五郎といた時は気にならなかったこの空に夢中だった。
今度は上を向いて歩くよ、
お前と一緒に歩いたこの道を。