表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

第一部:不完全たるジャンプ

夏。


俺にとってかけがえのない夏。


午前部活を終え、自宅に向かう高校2年の高橋翔は、ギラギラと照りつける太陽のしたで汗を垂らしながら歩いている。

この暑さ尋常じゃない。


ただでさえ部活のバスケでバカ暑いのになんだこれは。


そして同じく隣にいる高校2年の木原純も翔並に汗を垂らしている。

同じバスケ部で同じクラス。

喧嘩たまにするが、俺の中で1番仲の良いやつだ。


「おい高橋ーなんでこの辺にコンビニがねぇんだよー」


木原がだらしなく言うが、そんな事を言われても仕方がない。


「知るかよ。でもたしかにコンビニの1つ欲しいよなー。あちぃー」


ポタポタとアスファルトに汗を垂らしつつも懸命に涼しいであろう自宅へ足を進めている。


大通りを抜け、住宅街に入ると、そこで道が違うので木原と別れた。

一刻も早く家に帰りたいため、歩調を少し早めた。


そして入り組んだ住宅街をしばらく歩き、自宅前の角を曲がった。

まさにその時だった。


「っつ!!」


一瞬閃光が放たれ、あまりの眩しさに目を片腕で覆い隠した。

太陽の光にしちゃありえないほどの眩しさだ。目が痛い。


ゆっくりと目を開けると、まるで何事もなかったかのようにその場に翔は立っていた。

いや・・・まて。明らかにいまの閃光の瞬間に変わった事がある。

太陽が出ていない・・・。

天気は曇りの状態だった。


「な・・・・なぜだ・・・」


翔の全身からは汗がこれ以上にないほどに流れている。

しかしいまの気温ではここまで汗をかくのは異常に見える。

それは一瞬で気温がガクンと下がったかのように・・・。


道に汗だくで棒立ちしているのも怪しまれるから一旦家に戻ることにした。


―なんだったんだ・・・?


今の角を曲がってすぐのところに2階建ての翔の自宅がある。

玄関の扉を開け、靴を軽く脱ぎ捨てるようにして中に入った。

そして自分の部屋がある2階へ上がろうとした時だ。


「ちょっと!!あなた誰よ!」


見ると、廊下に50代ほどの全くしらない女性が立っていた。

出て行けと言わんばかりの目つきでこちらを睨んでいる。


「は・・・あんたこそ誰だよ・・・」


聞くと


「私はここの家の者です!それより早く出ていかないと警察呼びますよ!」


意味わからん。ここ俺んちだろ・・・。


すると奥から坊主頭で見るからに頑固な親父といった感じのやつが出てきた。

ものすごい迫力だ。殺気すら感じた。

そいつはただ一言


「出てけ」


と今にも殴りかかってきそうな顔で言った。

翔は一旦家の外に飛び出した。

そして家の表札を確認した。


「田中・・・だと・・・!?」


つまり全く知らない他人の家に俺は踏み込んでいたというわけか。

だが待て。

確実にここは俺んちだ。

今日の朝たしかにこの家から学校に向かっていった。

そして高校2年のいまのいままでずっとこの家に住んでいた。


―ここは・・・どこなんだ・・・。


顔を真っ青にして家を離れ、無意識にそのへんを歩いていると、突然横から大声がした。


「あなた危ない!!!!」


正面には大型トラック。

翔は道のど真ん中に立っていた。


声とトラックの存在しハッとなった翔は、慌てて横にスライディングした。

トラックも急ブレーキをかけたが、翔が立っていた場所を越えて停止した。

気づかなかったら確実に轢かれていた・・・。


「急に飛び出してんじゃねぇよ!!」


トラックの運転手から罵声を浴びせられ、去っていくトラックを息を荒らしながら見ていた。

それとあの大声・・・。


「あなた大丈夫!?なんで前見てなかったの」


見ると制服を着た女子高生が駆け寄っていた。

この子があの時大声を出してくれたのか。

体を軽く痛めたが、なんてことはない。

立ち上がって礼を言った。


「あの・・・ありがとうございます」


「無事でよかったー。あなたが道に飛び出してハラハラしたよ。今後気をつけるように!」


「はい。すみません」


その子が立ち去ろうとすると、無意識に声をかけていた。


「あの!・・・名前なんていうんですか?」


するとその子は振り向いて笑顔で言った。


「宮岡鈴音っていいます!あなたは・・・」


「ああ、俺は高橋翔で高2です・・・」


その子の印象といえばセミロングで方までの茶髪で、目がパッチリしていて小顔だ。

第一印象でいうなら気が強そうな感じ。


「へぇー。私は高3だよ。翔くんの一つ上だね」


「そう・・・なりますね」


「私からなんか図々しいかもしれないけどメアド交換しない?」


それは丁度翔が今口に出そうとしていた言葉だった。


「は、はい!喜んで」


そのあとメアドを交換して、一旦別れた。



再び1人になってしまった翔は意識を保ちながら木原の家を訪ねる事にした。

少しの間なら泊めてくれると思ったからだ。

しかしそんな考えは木原の家についた途端吹き飛んだ。


『桜井』


表札にはそう書かれていた。


「一体何が起こったっていうんだよ・・・・」


位置も昨日遊びに来たばっかりだから間違っているわけがない。

外観の作りも全く変化はない。

しかし木原の家ではなかった。


一応確認のため中にいる人に訪ねたが、全くの別人だった。

なにがなんだかもうさっぱりお手上げだ。



それからはというもの、行くところがなく、河川敷で一人寂しく座っていた。

夕日が沈みかけてまもなく本格的な夜になる。

ここまできたら野宿するしかない・・・。

金は部活帰りだから小銭しかなく、コンビニで一食できるくらいしかない。


すべてはあの閃光で変わったんだ。

それだけは確信していた。


そして寝っ転がった時、道から声がした。


「あ!!昼間の翔くん!!どうして一人でこんな時間にこんなところに?」


まさに希望の光。宮岡鈴音だった。

自転車に乗ってカゴに中にいっぱい品物が入った袋が入っている。

おそらくは夕飯の買い出しのおつかいだろう。


この時の自分はさぞ惨めであっただろう。


「あの!鈴音さん!無理を承知のお願いですが、今晩だけでも泊めてもらえませんか!!」


夕日に照らされながら少しだけ沈黙が流れると、鈴音は自転車を降りてから訪ねた。


「一体何があったの?」


翔は閃光の事から全てを話した。

信じてもらえるはずがないとわかっていたが、それでも真剣に話した。


「閃光・・・それでつまり全く世界が変わったかのようになったってわけね・・・だからあの時トラックに轢かれそうになったの・・・。わかった。とりあえず家に来ていいよ。翔くんを見捨てるわけにはいかないから」


その言葉を聞いた瞬間、翔の目から涙が流れた。

今の俺惨めすぎんだろ・・・。


「ほ、ほんとに・・・ああり、ありがとう」


鈴音は笑顔を見せてくれた。


「いいっていいって。それより早く家にかえろ?ついてきて」


翔は歩くスピードに合わせて自転車に乗る鈴音の後を追いかけた。




鈴音の家は意外と翔の家(元々の)から近く、歩いて10分くらいのところだった。

鈴音の両親には鈴音から話をしてくれたおかげで、宮岡家に泊まることができた。

そして鈴音自身が買ってきた食材で作った料理が食卓に並べられた。


鈴音の家族は両親と鈴音の3人家族だった。

鈴音の隣に座ってありがたく夕飯をいただいた。

その間にも両親から他愛もない話をし、すっかり馴染んでしまった。


そして夕飯を終えると鈴音の部屋に案内された。

寝る部屋は違うが、少し話がしたいという。

翔自信も礼を含めてしっかり話がしたかった。


「翔くんおいしかった?私の料理」


お世辞とかそういうのはなしで本気でうまかった。


「はい!すごくおいしかったです」


「あ、翔くんさ、敬語はいいよ。普通に話して」


「あ、わかりました。」


「分かってないじゃんー」


うっかり敬語を使ったことに翔自信笑ってしまった。


「ご、ごめん。分かった」


「よし。それで・・・翔くんこれからどうするつもりなの?」


唐突に聞かれてしまったが、どうしようか全く考えていなかった。

だれだって突然世界が変わったようになれば成す術がなくなる。


「まだ・・・考えてないんだ・・・世話になるかもしれないけどほんとごめん」


「謝らないでよ、翔くんいるとなんか家にいるのが楽しくなるからさ。あのね、私弟とか欲しかったんだー。家にいても私一人だから楽しくないんだよね。あ、翔くんが弟みたいってことじゃないよ?一緒に話したいなぁーって」


鈴音は今日初めてあった人にここまで優しく思ってくれていた。

改めて嬉しく思った。


「それは・・・ありがとう。正直に嬉しいよ」


「てへへ。何照れてんのよー」


「そういう鈴音さんも照れてるじゃないかー」


2人して笑った。その後は雰囲気が明るくなるような話題の話をし続けた。



夜11時、それぞれが寝ることにし、翔は案内された部屋の布団で横になった。


鈴音と話している間、嫌なことは忘れられたが、1人になると、とてつもなく不安になる。

明日から一体どうすればいいのだろうか・・・。



夏。


俺にとって記憶に焼き付く夏。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ