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An opening

An opening.





ぼんやりと空を見上げた。


澄み渡る蒼に思わず飲み込まれそうになる、いやいっそ飲み込まれてしまえばいいのかもしれない。


そうすればきっと楽になれる。船に揺られながら、そんな風に思う。


けれど、そんなことは許されるはずもない。


本来なら、全てを投げ出して命を絶ってしまえばいいのかもしれない。


しかし彼女にはそんなことは出来ないのだ。それだけはしてはいけないことなのだから。



(私、馬鹿みたい……)



この命は絶ってはいけない、これは自分自身のためにあるものではない。


あの日に全て変わってしまった、彼女の生きる道も、世界も――


戻れるものならば戻りたい、なにもなかった日常に。愛おしいと思う、優しかった日々に。


振り返っても何も出てこない、地獄だと分っている未来をただ進んでいくしかないことも受け入れた。


それだけの事を彼女は引き起こしてしまった。彼女のせいではない、けれど彼女のせいだ。 



(どれだけ後ろ向きになってるんだか)



小さく溜息をついた。あの日の事を思い出すたびに、左肩が疼く。


忘れるな、と咎められている様だ。


そんなことなくたって、自分がすべき事を知っているのだとその肩を擦る。


「風が、冷たくなってきた」


彼女、エレンが目的とする雪の降る国まで、あと少し。


小さく震えると、踵を返して船室に足を進めた。





船室に入ると、船員や、乗り込んだ客達が笑談で盛り上がっていた。


つかず離れずの場所で、そっと腰を下ろすと話の内容があまり良いものではないことが分る。


小さく息を吐く。耳を塞いでもその現実が変わる訳ではない。


彼らは容赦なく話続けていた。エレンはそれを遮断するように瞳を伏せた。




「あの魔法大国が一夜で消えて無くなったんだと」


「なんでも魔物が攻めて来たって話じゃないか」


「だからって、跡形もなく一瞬で消炭とは理解できねぇ」


「魔法であるんじゃいのかい?そういうの」


好奇心で一杯なのだろう、一人の男が魔法を放つ振りをする。


この世界では魔法は当たり前のものだ。


生活に必要なもの、生きていくには欠かせない。妖や、魔を司る者達から身を守るのに大切なものだ。


けれどいつしかそれは罪のないものや、力の弱いものを虐げる事にも使われてしまう事になっていた。


最初に、どういう理由で生み出されたものだったのか、人々は遠い過去に忘れてしまっていた。


だからその国が滅びたのは、その理を忘れてしまった愚かな人間への断罪だったのかもしれない。




(だからって、あんな――――)




普段平気であんなものを使っていたのか。目の当たりにした時、恐ろしい、と思った。


一瞬にしてなにもない荒野に変えてしまった『魔法』の力が。


でも、それがないと生きていけない。人を傷つけるこの力が。




「そういえば、あの国で生き残った人間はいるのかな」


「いや、壊滅したって聞いてるけど」


「世も末だね、こんな恐ろしいことが起こるなんてな」


まるで人事だ、まぁ仕方ないのかもしれない。


結局と遠目から話を聞くだけの人間なんて自分には関係のない、関わりたくない話なのだろうから。


だからと言って、関わったものが生きていたとしても名乗り出ることもないだろう。


あの地獄を誰が好き好んで話したがるだろうか。


きっと、生きているものは居る、けれど名乗らないだけだろう。






「ねえちゃん」


声をかけられた、若い女性は自分以外には居ない。


あぁ、自分が声をかけられたのだと理解するまで少し時間がかかった。


「……私、ですか」


「ねえちゃんは何処から来たんだい?」


酔った一人の男が声をかけてきた。


ずっと気になっていたのかもしれない、男ならつゆ知らず、二十歳前の娘が一人で旅をしているのだから。


仲間が居れば、確かにこの旅は楽になるだろう。けれど、エレンはそれをしない。人と関わることが苦手なのだ。


この旅人と関わるのも正直なところ、面倒くさい、と思う。


けれど、適当にあしらったところでこの手の人間は質が悪い事もわかっている。当たり障りない答えを返す。


「東の方です」


「東、サンジュールの国辺りかい?あの滅んだっていう」


「いえ、その手前です。手前の田舎町なので、あまりその話分らないんです」


ニコリと笑って、これ以上聞いてくれるなとそう取れる返事をした。


そうかい、と酔っ払いの一人が答えて、その後話題を変えたようだ。エレンはほっと息をついた。


流石に寒くなってきたので、側にあった毛布を引き寄せ肩にかけた。


ぼんやりと掌を見つめた。自分はこうやって平気で嘘をつく。そんな人間になってしまった。



(あぁ、どんどんと変わっていくんだ――――)





サンジュールの国はエレンが生まれ育った国だ。


稀な技術を有する、魔法の国。エレンはそこで何不自由なく、学び成長した。


そして、国を滅ぼす、引き金となったのは彼女だ。


一瞬にして、あの国を消すきっかけになったのは、たった一人の少女だった。



(ぜんぶ、わたしの、せい)



毛布の温もりが心地よくて、睡魔が彼女を飲み込む。


雪の国まであと少し、それまで、ほんの少しだけ。


そっと目を閉じた。




はじめまして、佐 倉 (サ クラ)といいます

勢いで書いているのでちょっと分り辛いし、読み辛いと思います

普段読み専であったんですが、少し書いてみようと妙な好奇心ではじめました

結構無謀ですが、時間を見つけては書き進めていきたいと思います

更新はめっちゃ遅いと思います…… 


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