第二話 旧校舎の幽霊
「旧校舎に幽霊が出たんだってよ」
僕は驚いて、それを告げた鈴木の顔を見た
「幽霊?嘘だろ?」
「本当らしいよ。みんな言ってる」
「みんなって?」
「三組の佐藤とか。四組の高橋とか」
「へー」
「何。その生返事」
「いや、自分の目で見てないから、どう反応していいか分からなくて」
「?」
「幽霊なんか本当にいるのかな?」
そう言うと、鈴木は憮然として去っていった。僕はポリポリと頭を掻いた。
次の授業は数学の小テストだった。その間、僕はずっと考えていた。
幽霊が出る可能性と、三組の佐藤や四組の高橋が嘘をついている可能性、どちらが高いのだろう?旧校舎は人っ子一人いないはずだ。何かを幽霊と見間違える要素も少なそうだが。
教室の窓からは旧校舎が見える。使われなくなってもう10年以上が経つ、いかにも幽霊がでそうな廃墟だ。
もし本当に幽霊がいるのなら、こうして頬杖をついている間にもその気配ぐらいは感じられるかもしれない。そう思ってずっと眺めているのだけど、一向にその兆候は見受けられない。
と、とつぜん視界の端を白い何かが横切った。僕はビクリとして頬杖をついた手から顔を浮かし、そちらを凝視した。しかし、それが誰かが投げた紙飛行機だった。風に乗りながら旧校舎の窓へと飛び込んでいく。
僕は浮かしかけた腰を再び椅子に落ち着ける。所詮、そんなもんだ。幽霊なんかいやしない。僕の心は納得と残念で半々に塗り分けられてしまった。一度、気分転換に小テストの見直しでもしよう。そう思い答案に視線を落とした、その瞬間のことだった。
バタン!!
旧校舎の方から大きな音がして、クラス中の皆が一斉に窓の外を見た。しかし、そこには何の変哲もないいつも通りの旧校舎しかない。誰もが首を捻りつつ席に戻った。
でも僕の背中には冷たい汗が流れ落ちていた。
なぜ紙飛行機が飛び込んだはずの窓が「閉まっている」んだ?




