兵士は何処だ?
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昼飯を食べ終わり、戦場へと突撃していった。……控えめに言って、そこはもう地獄の様相だった。既に魔物は門の前まで来ており、とてもじゃないが間引きが出来ているとも思えなかった。これまでに何人が死んだのかが解らない。それでもなお、魔物は押し寄せる。門を突き破ろうと攻撃してくる。この程度の魔物に後れを取るような冒険者しかいないという事になる訳で。
「これは酷いな……。まあ、こうなるだろう事は予想できたが」
「もうちょっと抵抗して欲しいかな。これじゃあ門の外にも行けないけど?」
「壁から飛び降りるしかないだろう。メリアは上から援護。ノーデンも上からだ。俺とマリアナである程度は間引かないと、その内、門が突破される」
「解りました。私も出来る事をしますので」
「頼んだ。ノーデン、バフをくれ」
「僕も上から攻撃するけど、無茶はしないでくれよ。HPが無くなることは無いだろうけど」
「こんな程度の魔物にやられるか。防御力だけでも受けきれる。……流石に鎧に当たったら厳しいが」
「そんな事よりも早く行かないと! のんびりは出来ないですよ!」
「そうだな。ノーデン、メリア。バフは切らさないでくれよ」
「解っているよ」
「了解しました」
「マリアナ、突貫するぞ。まずは周辺の掃除だ」
「解ってます!」
そんな訳で、外壁からダイブ。魔物を蹴散らさなければならない。まずは門の安全を確保しないとな。スキルも使わずに、通常攻撃で撃破する。この程度の魔物なら1撃で葬れる。次から次へと押し寄せる魔物を突破して、空き地を作っていく。
「……見てないで、手伝ってほしいんだがな」
「流石に無理じゃないですか? これじゃあDランク冒険者でも一瞬ですよ?」
「俺たちもDランク冒険者だがな」
「まあ、それはそうなんですけど……」
「それに、マリアナもダメージを受けていないだろう?」
「それなりに立ち回りは覚えましたし、アーデルムさんがヘイトを貰ってくれますからね」
「それに気がつけば、後はアタッカーの強みを出すだけでいいんだ。まともなタンクが居れば、攻撃は可能になる。それを見て学んでくれればいいんだがな」
「それと、ヒーラーも必要になりますよね? 回復は必須ですよ」
「そうだな。それが出来れば、Eランク冒険者でも十分に立ち回れる。知ってしまえば、後は簡単なんだがな」
「そう上手くはいかないんでしょうけどね。おかわりが来てますし」
「この程度の雑魚なら、どれくらい来てもらっても大丈夫だ。時間いっぱいまで、ある程度の間引きをしないといけないだろうな」
数十もいた魔物が瞬時に消えていく。……ドロップも沢山落ちているんだが、そんなのは後回しだ。まずはどんどんと処理をすることを心掛けないといけない。ヘイトを取り、殲滅する。その程度の事が出来なくて、なんだというんだ。ガンガンと魔物を削っていく。そして、直ぐに広場を取り戻した。
「まあ、こんなものだろう。マリアナは……ドロップアイテムの回収中か。また沢山落ちているからな」
「勿体ないですからね。誰かが拾う前に拾ってしまわないと」
「優先権がある内に拾っておかないといけないだろうな。1時間もすれば、誰のものでもなくなるし」
ドロップには優先権がある。ドロップをしたパーティーが、1時間以内であればの優先権を得られる。だから、第三者が盗むことは出来ないようになっているんだ。拾わなかったら、優先権は剥奪されるが、特に要らないものなら、剥奪されようがどうでも良い事ではあるんだが。
「でも、他の人は出て来ませんね?」
「本当にな。まあ、此処からは俺たち2人でも十分だとは思うが」
「ですねえ。そこまで強くもなんともないですし」
「というか、俺たちはドロップアイテムを拾うだけになるとは思うがな。上からノーデンが処理すれば終わりだ」
「そういえばそうですね。MPも心配いりませんし」
乱戦が終われば、後はノーデンが処理してくれる。ヘイトだけこちらで確保しておけば、後は勝手にやってくれればいい訳で。こっちの攻撃でも1撃ではあるんだけどな。装備がよ過ぎるんだ。こんな装備を使っているのは珍しいだろうし、楽勝である。
「なんかあたし、ドロップアイテムを拾っているだけな気がするんですけど……」
「気にするな。俺もヘイトを取っているだけだ。攻撃なんて殆ど何もしていないぞ」
「皆出て来ないですし、なんか、スタンピードってもっと大変な事になるんだと思っていました」
「何を言っているんだ? スタンピードはこれからだぞ?」
「え? そうなんですか?」
「まだボスが出てきただけだからな。これからが本番だ。……だから、この雑魚が多い期間に慣れておいてもらう方が良いんだがな」
「これからどうなっていくんですか?」
「1日目は、外に出ている魔物たちだけがこっちに来るんだ。ボスが出てきて、周辺の確認をしている所だろう。そこから2日目、3日目とどんどんと魔物の量が多くなってくる。そして、5日目から7日目には、ボスが直々にやってくる。その時が本番だからな。今のうちに慣れておいてもらわないと困るんだがな」
「でも、楽勝ですしねえ」
「そうだな。もっと苦戦すればいいんだろうが、苦戦するには、既にスキルブックを集め過ぎた。それに、格下なんだ。そもそも苦戦する方がおかしい」
結局は格下なんだよな。だから苦戦も何もしないし、ノーデンはともかく、俺とマリアナ、メリアについては、スキルブックもちゃんと手に入れている。苦戦しろという方が難しいんだ。余裕で戦えるだけのスキルを得てしまっている。
これで苦戦しろという方が難しい。楽勝過ぎるから、他の冒険者がやってくれとは思うんだけどな。他の冒険者は、……やっと出て来たか。遅すぎるんだよ。殆ど終わった後だからな。
「マリアナ、俺たちは戻るぞ」
「え? 良いんですか?」
「苦戦するまで戦って貰おう。そうじゃないと、向こうもレベルが上がらないだろう?」
「まあ、それはそうなんですけど……」
「それに、何もしない訳じゃない。見ていることはするさ。まあ、学習してくれているのかは不明だが」
「タンクの重要性ですよね。それくらいは解ってもらわないと困るとは思いますけど」
「アタッカーだけを育ててしまっては、こういった時に困るんだよ。多数の相手をするなら、タンクが引き付ける事は必須だ。アタッカーも攻撃に専念したいだろうしな」
アタッカーに回避盾をさせるのは厳しい所がある。出来れば、しっかりとしたタンクが必要だ。それに、タンクを支えるヒーラーもな。バッファーやデバッファーは、こういう時には、どちらでも構わないとは思う。ただ、デバッファーの方が、こういう時には活きたりするんだよな。デバフは強力なんだが、ボスには向かない。だが、雑魚にはかなり強いんだ。生粋のデバッファーも探せば居るとは思うんだがな。外壁の上にも、探せば居ると思うんだ。そういう奴らと、どれだけ連携できるのか。それが鍵になるとは思う。
「しかし、領主の兵士が見えないな。どうしたんだろうか?」
「さあ? もしかして、全員やられてしまったんでしょうか……」
「いや、それならその辺に武器が散乱してても良いと思うんだがな。俺たちが来た時には何もなかったからな」
「そういえばそうですね。……もしかして、まだ機会を窺っていたりとか?」
「その可能性はあり得るな。手出しできない状況になったからと言って、逃げてもいい訳では無いんだが……」
兵士の影が見えない。何かあるんだろうとは思うんだが、何があるんだろうか。とにかく数が必要になるんだから、出てきてくれればいいのにな。
そんな感じで、時間まで居たんだが、結局、兵士は出て来なかった。なんでなんだろうか?




