ギリギリの戦い
OFUSE始めました。
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さらについでにTwitterも始めました。変なこともつぶやく可能性があります。関係ないことも沢山つぶやきます。
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「大挑発! ここで食い止める! マリアナは雑魚の処理を! 俺は死ぬ気でゴブリンを集める!」
「ソーンバインド! ソーンバインド! こっちに来る敵は何とかするよ!」
「助かる! メリアはヒールをこっちに! 余裕がなくなった!」
「解りました!」
Dランク冒険者が壊走してしまい、それにつられてFランク冒険者も逃げてしまった。最悪の状態だ。もしもう1組のDランク冒険者が崩れたら、死地になる。ある程度のゴブリンは引き付けるが、出来ない事は出来ないからな。死んでなんかやるものか。まだまだ先があるのに、死んでなんかやるものか。
「パリイ! っく、完全に互角だな。こっちから攻撃できる隙は無い。しかも、他のゴブリンの攻撃を捌いている余裕もない!」
「ヒール! 持ちこたえてください!」
「簡単に死んでなんかやるものか! やれるところまでやってやる! 大挑発!」
「無茶ですよ!? 引き付け過ぎです!」
「無茶でもやるしかない! 死ぬわけにはいかないが、今の状況で、壊走した冒険者たちを追わせるわけにはいかない! パリイ!」
Fランク冒険者でなければ、もう少し手段があったんだがな。今の俺ではこれが精いっぱいだ。食い止めるだけ食い止める。……賭けに出るしかない。もう1組のDランク冒険者が、ゴブリンリーダーを倒して援軍に来てくれることを願うしかないんだ。
「死ぬまで遊んでやるよ! かかって来いゴブリンども! 大挑発! ヒールは出来るだけ温存! 俺のHPが半分以下になったらでいい!」
「ですが、それでは……」
「出来るだけ戦闘を長引かせるぞ! 勝機はそこにしかない!」
他人に自分の命を賭けるなんて、馬鹿のすることだ。しかし、馬鹿でいい。俺はこんな所で死んでやるわけにはいかないんだ。とっととEランクに上がって、夢幻の世界に入って、経験値を荒稼ぎするんだよ。それまでは死ねない。こんな所で死んでたまるか。危険なのは承知だ。だけど、こんな所で終わる様じゃあ、最強には成れない。
マリアナが何とか1体ずつゴブリンを処理していく。その分、俺が死ぬ時間が遠くなる。どっちが先か、勝負するしかない。俺が先に死ぬか、ゴブリンどもが居なくなるのが先か。耐えてやる。耐えきってやる。出来ないとは言わせない。無理だなんて言わせない。俺はやる。先を読め。未来を見ろ。ゲームの経験で、何処に攻撃が来るかなんて、大体わかっているだろう? ならば出来るはずだ。限界の限界まで、自分のポジションに誇りを持てよ。俺はタンク。皆の盾だ。限界まで耐えきってやる。タンクが崩れたら、皆の命が無いんだ。歯を食いしばれ。スタンなんかしている余裕はない。ダウンなんて以ての外だ。両足を地面に縫い付けろ。不退転の覚悟をきめろ。
「ソーンバインド!」
「はぁああ! ダイス! せいやー!」
「大挑発! まだだ! まだ倒れんぞ! 死地に活路を見いだせこの野郎!」
心臓の音が聞こえてくるようだ。酸素をどんどんと脳へと送ってくれ。限界の限界までやってやる。耐えるだけなら出来るだろう? やってやれない事は無い。踏みとどまれ。
「こっちは覚悟決まってんだこらぁ! こっちに来やがれ! 大挑発!」
これでこの辺一帯のゴブリンは全部こっちに来たんじゃないか? 向こうでDランク冒険者が戦っているゴブリンリーダー以外は引き付けてやっただろうとは思う。ガシガシと攻撃が当たる。盾だけでは防ぎぎれない攻撃が当たる。幾らバフをかけてもらっているからと言っても、これだけ攻撃されたらHPがガンガンと減っていく。だが、ゴブリンリーダーの攻撃は当たってやれない。致命傷になるかもしれないからな。それだけは死守する。
「せいやー! アーデルムさん、待っていてくださいね!」
「当たり前だ! 死ぬ気でやってやるよ!」
「ヒール! 残り4分の1です!」
「まだいける! マリアナは処理速度を上げてくれ!」
「今以上ですか!? やってやりますよ!?」
俺の周囲から、1体、また1体とゴブリンが減っていく。経験値は大量に入ってくるだろうな。ただ、戦闘が終わるまでは経験値は入らない。そういうシステムになっているからな。まあ、こんな状況でレベルアップしたって、意味は無いんだけどな。レベルが上がっても、攻撃力なんかは上がらない。それはスキルツリーでしか上げる事は出来ない。土壇場で強くなるなんて事は無いんだよ。
さあ、まだまだ耐えられる。ヒールもまだ残っている。まだまだいける。このペースなら、俺がギリギリ死ぬかどうかのラインだろう。まだだ、まだまだ遊べる。限界を超えろ。ステータス以上の動きを要求してきているぞ。まだ倒れる訳にはいかないんだ。ダウンなんてしてやるものか。
「ダイス! はぁああ!」
「マリアナ! 6を引いたらカスダメでいい! 絶対にクリティカルになるんだからな!」
「っは! なるほど! それならいけます!」
「ソーンバインド! バフをかけ直すよ!」
「ヒールを我慢するのは、精神的に厳しいです。耐えられるのは解っているんですが……」
「無駄な回復をしている余裕なんて無いからな! 助けが来るまでそのままだ!」
バフがかかる。これでまだ耐えられる。何とかしないといけない。ただ、手段が乏しい。出来る事が限られているからな。耐えるしかない。
「ヒール!」
また1回、ヒールが使われた。まだ戦える。まだ舞える。さあ、このHPを削り取って見せろよゴブリンども。簡単に削りきれると思うな。
耐えて耐えて、まだ耐える。外周では、さっきよりも早いペースでマリアナがゴブリンを処理してくれている。袋叩き状態はまだまだ解除されないけどな!
「大挑発! 絶対にヘイトだけは渡さないからな!」
「ダイス! せい! ダイス! てりゃあ!」
「ソーンバインド!」
「ヒール!」
「ノーデン! 今度からはゴブリンリーダーをターゲットに! こっちも攻撃に回る!」
「了解したけど! 防御は大丈夫なのかい!?」
「ゴブリンリーダーが止まれば何とかなる隙はある! これだけ減ってきたんだ! 勝機はあるぞ!」
マリアナの運は本当に凄い。ここぞという時に6が出る。さっきから豪運を発揮して、外周のゴブリンを蹴散らしていっている。それなら、ゴブリンリーダーの攻撃以外を止めるよりも、ゴブリンリーダーの動きを阻害してくれた方が、俺も処理に回れる。マリアナが活路を見出してくれた。それを綱渡りでも良いから渡るんだ。
「ダイス! せい! ダイス! やあ! ダイス! はぁああ!」
「バフをかけ直すよ!」
「ヒール! 8分の1です!」
「いける! 処理の順番を間違えるなよ!」
いける。これなら何とかギリギリ耐えられる。油断は出来ないが、活路はなんとか切り開いた。ただ、そうなってくると、ゴブリンリーダーが問題になってくる。倒し切るには、かなりの時間がかかる。何とかしないといけないし、出来ない事は無い。ただ、それで他にもゴブリンが残っていた場合は厳しくなってくる。
「うぉらあ! 耐えきれるぞ! マリアナ! 俺の後ろ側を優先!」
「ソーンバインド! リーダーは何とか止めてるけど、厳しいからね! 前は見ておいてよ!」
「せいやー! 蹴散らしますよ!」
「ヒール!」
ゴブリンの包囲網が崩れていく。ゴブリンリーダー以外の攻撃は甘んじて受ける。その隙に、俺も攻撃に回る。何とか処理しきれるだろう。そんな感じだ。この死線を潜る感覚。これが現実。ゲームでは味わえない苦戦。死闘。まだだ、まだ楽しめる。笑っていけ。恐怖に縛られるな。
「よく耐えた! 後は任せろ!」
「ハイスラッシュ!」
ったく。遅いぞ。援軍は有難いけどな。




