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滴る

作者: さやか

ぽた……ぽた……ぽた。


水滴が落ちるよう音がする。

自室のベッドの上、夜の微睡から目が覚める。


雨なんか降っていたか?


目を閉じて窓の外に意識を向けるが、何の音も聞こえてこない。

田畑がまだ残っていた昔、夜は窓を開けると夏の虫の音がひっきりなしに聞こえていたのに、数年前に地主の代替わりで土地が売られ、建売住宅が立ち並んでから夏の夜はしんと静まり返っている。


ぽた……ぽた……ぽた。


その間にも一定のリズムで雫が落ちる音は止まない。

雨漏りか、それとも洗面所の古い蛇口からか。

いや、音は部屋の中から聞こえる。それも割とすぐ近くに。


ぽた……ぽた……ぽた。


明かりを点けてすぐに音の正体を確かめようか、それとも明日の朝になってから確認しようか逡巡する。

眠気はまだ残っている。目を閉じればすぐにでも眠れそうだ。

音は一定のリズムで落ちている。

その音が眠気を誘うようで、つい目を閉じた。


ぽた……ぽた…ばた…ばた…ばたばたばたばたばたっ。


突然、雫が滴りに変わり、かなりの量の水、いや、なんらかの液体がすぐそばのフローリングの床にぼたぼた落ちるような音がして、一気に眠気が飛んだ。

すぐにベッドから起き上がり明かりのスイッチを探り当てて電気をつける。


音はすでにしない。

部屋中を探し回ったがどこにも水が滴り落ちた後はなかった。

どこも濡れていないし、天井や壁にも濡れたようなシミもない。

洗面所や風呂場、台所も探したが、どこの蛇口もしっかりとしまっていた。

窓の外は雲ひとつなく雨が降った様子もなかった。

街灯の明かり以外明かりもなく、ひっそりと寝静まった住宅街がひろがっているだけだった。


夢ではない。

あの音は確かにした。それもすぐ近くで。

しかし、どこにもその証拠はなく、やれることは何もない。

後は眠るしかなかった。


釈然としないもやもやした気持ちでベッドに横になる。

その夜はそれ以上変な音は聞こえてこなかったが、あまりよく眠れなかった。


読んでくださりありがとうございました。

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