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無薬  作者: あ行
11/14

11喧嘩

「偽善……!あぁ、あなたはいつもそうです。」

「はぁ?いいんですよ。てか、いちいち付いてこないでください!」

 偽善を追っていた足が止まる。

「ふぅん、いいんですね。」

 偽善と違う方向へ向かった。

「……おい、そこの接客。そのみょんみょんしてる頭の……、」

 みょんみょん?

 振り返った。

「あぁ、そう、そこの貴方。」

 まさか私だなんて。長が、私にご用を?

「接客や、無薬と仲がいいらしいじゃないか。ほれこれを無薬に渡せ。また切らしたと言うのでな。」

 蜂蜜だった。雑用のやることでは。

「盗まれんようにな……。」

 耳打ちされる。身震いした。

 しかたがないです。行きましょう。

――――――――――――

「無薬様、これを。」

 蜂蜜を机の上に置く。置いた音が木の机を通る。

「……。」

 この方はほんとに無口でらっしゃる。

「では。」

 お辞儀して退出しようとする。

「……あの偽善という奴はいないのか。」

 口を開けばと思ったら、偽善のことですか。

「今、偽善様はいません。あのお方など知りません。」

 つい怒って要らないことも言ってしまう。

「……そうか。」

 出口の方へ向かう。偽善がいる。

「……偽善、さま?」

 阿保面でこちらを見ている。無視しましょう。偽善の横を通り過ぎる時、肩が少し擦れた。

「……。」

――――――――――――

 お風呂上がり。夜風に吹かれて髪を乾かしていた。暑い。

「……。なんですか。」

「え……っと、謝りにきました。ごめんなさい。」

 すんなり謝ってきた。けど許しません。何回あったことか。

 水なのか汗なのか、分からない液体が首を伝う。

「今日と言う今日は、許しませんよ。」

 偽善を見下す。風になびいて髪が躍る。

「なっ……!私が謝ったのに。謝ったら謝るのが常識ですよ。」

「ほら、また。偽善様の悪い癖、私は直せと言ってるはずです。」

「んぅ……!もう、知りません。どっかで野垂れ死ねばいいんです!」

 どんどんと床を鳴らしながら、どっか行ってしまった。木の床が鳴る。

「偽善、ごめんなさい。いつかはどちらかが一人になる……。貴方の為なんです。」


「ごめんな、」

――――――――――

 部屋の中。偽善と接客の個室がある。

「なぁ、私の名前、言ってください。」

 敷布団の上で二人、寝転がっていた。

「偽善様。」

「うぅ。まだ怒ってますね。私もこの性格嫌いなんです。直そうと思っても、無理だった。ごめんなさい。」

「……。」

 接客は天井を見ている。

「もう一回、もう一回言ってください。」

「……。」

 今度は無視か。誰かに似てる。

「言って……よ!」

「あははっ、やめて、ふっ、やめてください。くすぐらないで。ははっ、」

 涙がでる。息ができない。

「もう、あなたは甘えたさんですね。」

 ようやくこっちに向いてくれた。笑顔だ。

「偽善。」

「ふふっ、ありがとうございます。」

 偽善の頬に触れる。

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