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クエストを受ける時は慎重に!



「だぁ~ッ!確かに敵と出会いたいとは言ったが強敵と出会いたいとは言ってなぁぁいッ!」


「ワフゥゥ~ッ!」(ヒィィッ!まだ来てるッ!)



「――グララァァァァッッッ!!」


ファングを先頭に木々を上手く避けながら、後ろから障害物をその巨体で吹き飛ばしながら迫る威圧感満載な脅威から逃げ続ける。



ダーチョーを倒した後、俺達は森を進みながら順調に敵を倒していった。

ダーチョーみたく麻痺をまき散らす麻痺泣リス。扇風機の弱くらいの風を放つカマイタチモドキ。毒と麻痺両方の性質を持つ唾液を吹くダブルコブラ。チクチクと木の上から削っては逃げるを繰り返して、インパクトのあるモブたちを押さえて一番ウザかった只のスネーク。


これらのモンスターを倒していき、二時間程進んだところである大きな樹に出会った。

何かを感じさせる大樹に、「まさかレアイベント、またはフラグか?!」とスクショした後にテンションを上げながら触れた。


すると大樹に触れた瞬間、目の前にウインドが現れた。



<クエスト・『大樹の実り』>推定平均レベル:26

・毒や麻痺持ちのモンスターが跋扈する森にある、ただ一つの絶対領域。

ここではモンスターもプレイヤーも¨害¨を与える事叶わず。唯一の安らぎを与える場所。

しかしそれを良く思わぬモノが、領域の要である¨大樹¨を狙ってモンスターを嗾けた。

大樹が倒されると、安らぎは失い、実りの循環が終わり、毒と麻痺に森は穢れ侵される。

大樹に辿り着いきし者よ、如何か安らぎを守って欲しい。

・内容

クリア条件:時間内までに指定モンスターの討伐。

失敗条件;時間後の指定モンスターの生存。HP0に因る大樹の消滅。

指定時間:五日。



まぁ今に思えば初心者が受けるクエストでは無いな。レベル何てまだ一桁なのに。

しかし、レアそうなクエストを前に俺は「まあいける逝ける!」と調子に乗りブレーキの無いアゲアゲテンションのままにクエストを受けてしまった。


―するとあら不思議。いきなり大きな土竜みたいなモンスターに襲われるではありませんか!


四足歩行の大きな蜥蜴。固い鱗と毛に覆われた太い体格に三本の長く鋭利な鉤爪。

赤く光る眼光にイノシシの様な突き出た二本の牙。強いて弱点を上げるならその柔らかそうな鼻先だろう。



――<『土明け』ガイアスモォールLv30>



とてもお高いレベルをお持ちですねくそったれ!

何だ『土明け』って。二つ名持ちとか現れるとは思わなかったよ!そりゃあレベルが高くないとクリアできないだろうな!何で俺は受けたんだよ!


「グララァァァァァァッッッ!!!」


「畜生ッ!マジで何で受けたんだ俺ぇぇぇッ!」


圧倒的なレベル差に、五日と言う制限時間。それに加えて大樹のHP制限。……未だレベル一桁な俺がクリアできる内容では無い。


かれこれ一時間は森の木々を薙ぎ倒しながら逃げ続けている。

……えぇいっ!逃げ続けてもらちが明かない。失敗条件にプレイヤーの死亡は含まれていない。


―なら、少しでも勝機を掴むためにこいつに挑む!


ファングも同じ考えなのだろう。互いに頷き合い、体を反転させて武器を構える。


「せめて一割は削ってやらぁっ!」


「アウゥッ!」(削る!噛み切る!)


反転後、狙わず直ぐに矢を放って相手を見ずに武器を弓から槍に、短剣から投げナイフに切り替える。

放たれた矢は狙わずともその巨体故に命中する。しかし、分かっていた事だが一ドットも削れていない。


「とりあえず止まれ!」


速度を落とさず突進してくるヤツの足を止め指す意味も込めて投げナイフを柔らかそうな関節部分と鼻先に投擲する。

わんちゃん弱点クリティカルが入らないかなぁ……と願いつつ、投擲したナイフは顔を逸らす事で足関節を狙った方もまとめて鱗に弾かれる。


「わぁお、何て固さ!まるで凍らされた冷凍マグロみたいだね!知らんけど」


しかし、目的通り速度は落ちたのでナイフを投擲しながら槍の間合いまで近づく。

このぐらいの速度ならば、ギリギリ多分何とか避ける事ができる。……と思う。


「狙いは一点、そのブヨ鼻だ!」


「グララァァッッ!!」


「まぁそんな簡単に行かないよなあぶねぇ!」


槍を突き出し、鼻先に刺突を放つが先程と同じ様に首を逸らされて鱗で防がれる。

鉄同士で打ち合ったような金属音を響かせながら、突き出した槍を大きく弾かれる。


土竜は弾いた勢いそのままに右前脚に因る切り裂きを繰り出してくる。

パリィされた様に態勢を崩されたところへの攻撃。しかし、バックステップする事で僅かに掠りながらもなんとか回避する。


何とか攻撃は避けれてたもののこちらの攻撃は固い鱗に阻まれて通らず、一ドットは削れたかどうかと言う所。

だが、狙い通りに足は止める事に成功している。

このまま回避優先のヒットアンドアウェイを繰り返して行動パターンを確認。ある程度確認できたら、自滅覚悟でダメージを与える。……格上相手にこれが出来たら最上の結果だな。


「……おいおいマジか。」


現状できる最大の結果を引き出すための行動を考えながら、チラリと自身のHP確認するとあら不思議!某三分巨人の様にHPバーがピコンピコンと赤く点滅しているではありませんか!

現実で言うなら、こけて少し皮がむけたなかな?位の小さなかすり傷でHPの八割が吹き飛んだ。


……正直、VITと言うステータスを舐めていた。

まぁ避ければいいでしょと、軽装防具に一ポイントも振っていないVIT。……逆に八割で済んだのが奇跡か。

紙装甲も紙装甲。恐らく、もう一cmでも深く当たっていたらHPは吹き飛び死んでいただろう。

回復してHPを全快にしたとしても一度たりとも攻撃を喰らう訳にはいかなくなった。


ナイフを投げて弾かれては消してもう一度手元に実体化させてを繰り返し、相手の間合いに入らない様に気を付けながら時間を稼ぐ。


「やっぱ、そのブヨ鼻が弱点だな?さっきから鼻先に投げているナイフだけ弾く動きをしている。」


となるとやはり、一矢報いるには鼻先に攻撃を当てるのが一番か。

繰り返す投げナイフの牽制で時間を稼ぎながら隙を伺う。


「……グルルァッ!!」


「はッ!いい加減鬱陶しくなってきたかぁ?だけど残念!これ以上近づけさせはしないぞ。」


「グララァァ!!!!」


鬱陶しさとめんどくささから顔を顰め、土竜は一気に終わらせようと突撃してくる。

バックとサイドのステップで突撃を交わし、相手の手が届かない槍より少し離れた間合いを保つ。


何度も突撃してきたが、イラついているのか突撃の軌道が真っ直ぐで分かりやすく余裕を以って回避可能。

突撃を避けては投げナイフでチクリ。このパターンを何度か行い、もう少し行動が分かりやすくなるまで粘る。


「―ここだ!」


何度目かの突撃の後、土竜は足をもつれさせた様によろける。

ステップ回避をしては投げてを繰り返す事一時間弱。


「シャッハァァー!」


溜まった鬱憤を晴らすが如く、思いっきり踏み込み槍を突き出す。


土竜はナイフでは無く、槍での攻撃に驚いた様に目を見開き慌てて顔を逸らす。

突き出された槍は鼻先では無く、頬を撫でる。

渾身の一撃を逸らし、逆に近づいた事で攻撃が届きやすくなった事に土竜は顔をいやらしく歪ませる。

……が、槍を逸らした事で攻撃は終わりだと思うならそれは大間違いだ。


「――ガルァァッ!」(≪ストライクファング≫)


「グラァァァッ!?」


レベルが上がった事で新しく覚えたファングのスキル技、≪ストライクファング≫が逸らした鼻先に命中する。

≪スラッシュファング≫が噛み切る事に特化しているのなら、この≪ストライクファング≫は咬合力と命中する事に特化していると言っていいだろう。

口の周りを鋭い歯の形をした魔力で覆い、範囲を広げて当たる確率を上げて思いっきり対象に噛みつく。

鋭い歯型の魔力には、微弱ではあるが裂傷を与える効果があり、低確率で相手に継続ダメージを与える事が出来る。


「グララァァ!グラァッ!」


柔らかそうなその鼻先をズタズタにされ、土竜は痛みに悶えながら暴れ出す。

ダメージエフェクトを鼻先から鼻水みたいにまき散らしながら矢鱈滅多に暴れるその姿は、正しく暴竜と呼ぶにふさわしい。


激しく動きまわり過ぎて逆に動きが読めず、当たったら終わりの俺達は手を出す事が出来ない。

……できれば、この間に少しでも多く追撃を与えたかったがこの感じでは難しいだろう。

やはり弱点だったのだろう。それか柔らかい部位にクリティカルヒットでもしたのだろう。

満タンだった相手のHPバーは一割程削れていた。


全く行動パターンを見る事も引き出す事も出来ていないが、とりあえず宣言通り一割は削る事が出来たか。……よし!


「撤収!さいなら~!!」


「ワフゥゥ!」(バイバーイ!)



「グラァァァァッッッ!!!!」



怒りの怒号が響く中、俺達は一直線に都市へと逃げた。

まあ絶対に勝てないし敵前逃亡も仕方ないよネ!




誤字があったらごめんなさい。



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