新たなフィールド。別名、『ビギナー試練の森』。
遅れてごめんなさい。
「終わったぁ!」
「ワフゥゥ!」(疲れたー!)
―ゴブリン地獄再開から、一時間。
何とかLv制限を超える前に素材を出し、納品を完了した。
これで、もうゴブリンを狩り続けなくて良い……。
「しばらくはゴブリンって言葉も聞きたくない……」
現在は納品場近くの広場のベンチで休憩を取っている。
しかし、本当に疲れた。
まさか一クエストでこんなに手間取るとは思っていなかった。
しかもゴブリンどもは何故か途中から残党を組んで数の有利を取って襲ってきたし。……まぁ大剣でまとめて一発だったが。
その辺の学習AIもこのゲームの売りなのだろう。
ファングやこの都市で話したNPCたちも殆ど現実の人と同じだ。
こちらの話し方と態度で、現実と同じ様に態様の仕方が変わっていた。
しかもこのゲームを語る掲示板で書かれていたが、従魔など以外にも人のNPCを連れて行くことも出来るそうだ。……確かに、ハマると断言されるわけだ。
この都市だけでもかなりのクエスト量がある。
圧倒的自由度と内容量……正しく神ゲーだな。
「さてと……とりあえずステータス確認だな。」
―――――――――――――
ネーム「ルナライト」Lv5
職業:[従魔使い]Lv3
ステータス
[HP]:20
[MP]:20
[SH]:40
[STR]:10
[VIT]:1
[INT]:10
[DEX]:10
[AGI]:10
[LUK]:30
スキル
≪心魔陣≫≪従魔術≫≪棒術≫≪大剣術≫
装備
武具:[弱小の復讐大剣][心魔陣:レザーガントレット]
頭;なし
胴:[初心者用のローブ]
腰:[初心者用のズボン]
腕:[心魔陣:登録陣]
足:[初心者用のブーツ]
アクセサリー:なし
―――――――――――――
―――――――――――――
ネーム「ファング」
種類:[ウルフ]Lv5
ステータス
[HP]:28
[MP]:10
[STR]:21
[VIT]:8
[INT]:24
[DEX]:8
[AGI]:30
[LUK]:5
スキル
≪爪術≫≪牙術≫≪嗅覚・狼≫
―――――――――――――
最初はドロップ率を上げる為だったがどうせなら幸運心魔の儘で行くかっと、ステータスはLUKとSHに殆ど振った。
従魔がどの様に振られているかは分からないが、主にAGIとINTが上がっていた。
多分だが、従魔の種族である程度は上がる項目が決まってると思う。
ウルフは速くて賢いモノってイメージがあるしな。そう考えると上がっている項目的にもイメージと合致する。
「しかし、≪棒術≫と≪大剣術≫か……棒術は分かるが、大剣てそんなに使ったっけ?」
ゴブリン狩りの終盤に、長杖と大剣を使う時だけ他とは違う違和感を感じ、ステータスを確認してみるとこの二つのスキルを新しく自動習得していた。
≪棒術≫は、長杖で攻撃を繰り出すときに攻撃力の+。そして、ポールラッシュと言う技を覚えていた。
≪ポールラッシュ≫は、長杖で五連撃を繰り出す技。
決まった動きは無く、合間に他の行動を挿むとそこで終わるが挿まないで五連撃を繰り出す事で威力が上がる。
≪大剣術≫は、大剣での攻撃に+補正と、大剣技の威力アップ。
覚えた技は、≪スラッシュ≫と≪ストライク≫。
≪スラッシュ≫は、使用時に斬撃に補正が入る。
≪ストライク≫は力を込めた一撃を放つ技。
力を込めれば込めるだけ、威力が上がる。
新しく加わった要素としてはこれぐらいだろう。
この調子で武器スキルを習得していきたいものだ。
「とりあえず、できていなかった遠距離武器の登録もしておくか」
クエストで割と稼げたので、その稼ぎで必要な武具を店に行き購入していく。
▼ ▼
「こんなもんか……おっと、もうこんな時間か」
登録しておきたかった武具はあらかた登録でき、時間を確認すると良い時間だったので今日はログアウトすることにした。
「確か、宿でログアウトした方が良いんだっけか」
このゲームではどこでもログアウト可能だが、場所によってはバフが付いたらデバフが付いたりするそうだ。
宿屋でログアウトすると、HPの回復と一般的なデバフの解除。次回ログイン時に、少しだけ経験値に補正が入る。
逆にフィールドでログアウトすると、低確率で所持アイテムが消失したり、経験値がマイナスされたり、ランダムで地味に嫌な効果が発揮されるそうだ。
「……よし、宿屋に着いたし落ちるか」
「ワフ!」(おやすみ!)
「おう、お疲れファング。また明日な」
「ワオン」(バイバイ)
ファングを一撫でして、ゲームからログアウトする。
▼▼▼▼
――ファスクロ生活、二日目。
「おはよう、ファング」
「ワフゥ!」(おはようご主人!)
「今日も張り切って経験値稼ぎだ」
「ワォン」(頑張る)
ログインと同時に現れたファングを撫でて宿を出る。
さて、今日はどうしようか。
都市を適当にぶらつきながら今日の予定を考える。
昨日はクエストを甘く見たせいでゴブリン地獄だった。
本当なら、今の俺でもイケるフィールドを全部回って出現するモンスターを確認する予定だったが、選んだ種族とスキルの運用を考えて装備の登録に変更した。
しかし、装備も昨日で粗方登録は出来たので、今日はフィールド巡りをする事にしよう。
「よし、行くか!」
「ワオン!」(行こう!)
ファングと共に、昨日とは別のフィールドを目指して街を進む。
さて、最初はどのフィールドを行くべきか。
昨日行ったフィールドはゴブリンしか出ず、経験値もあまりうまくないそうだ。
まぁ最初の都市周辺だし、奥に進まなければ強い敵も出てはこない。
そう考えるならば、何処から出も良さそうだ。
マップを見ながら、この通りから一番近いフィールドに向かう。
▼ ▼
「ありゃ、ここは多いな」
「ワフぅ……」(狩場、少ない)
割と早い時間にも関わらず、目的のフィールドには俺と同じ初心者プレイヤーが沢山居た。
所狭しと存在し、モブが湧いた途端に倒される。
これではレベル上げは困難だろう。
「しゃーない。ちょいと奥まで行きますかね」
出来れば初心者用のフィールドで昨日使えなかった分の武器を試したかったが、まあ少し進んだところのフィールドでも負ける事は無いだろう。
ファングと戯れながら、第二の都市がある北の方へと進む。
始まりの都市『ファースト』があるのは、常に春の様な温かい気候が続く草原と山岳の豊穣国家『デメルテル』。
このゲームに置ける豊穣の神の名を冠するこの国は大陸の南端に位置しており、プレイヤーは北に向かって冒険をしていく。
現在の最前線であるデメルテルの王都は、今進んでいる『ハジメ平原』を越えていくつかのフィールドと都市を跨いだ先に在る。
「だから、奥の方にはプレイヤーは少ない」
ハジメ草原を抜け、森へとフィールドが変わる。
予想通り、昨日の今日でここまで来るプレイヤーは居ない様だ。
まあ森だから単純に見えないだけかもしれないが。
「少し視界が悪い森ではその鼻が頼りだ。頼むぞ、ファング。」
「ワオン!」(任せて!)
警戒してしきりに鼻を鳴らし耳を動かすファングを先頭に、森を進んで行く。
その間、心魔陣をガントレットから弓と短剣に変えておく。
念の為大剣は装備したまま、基本は弓を使用していく。
「しかし、何も出ないな。色々森から厳しくなるって聞いたんだけど……」
聞いた情報によると、森から一気に攻略が難しくなるそうだ。
敵は最低でも10レベル。毒や麻痺持ちが多く、出現する種類は数多い。
草原と違い視界が悪く、頻繁に奇襲に合う。
害役モブが多く、大抵の初心者は此処で躓く。
その為、付いた別名は『ビギナー試験の森』。
この森を抜けれたのならば、初心者は卒業。胸を張って中級者と名乗ることが出来る。
俺は確かにそう聞いたんだが……。
森を進む事三十分、一度たりとも敵と出くわしていない。
今回は第二の都市を目指している訳では無いし、しばらくして一体とも出くわさない様なら出直そう。
「?……ワオン!」(変な匂い、来る!)
「そう考えた瞬間出くわしたな。さぁて、お相手はどなたかな~」
ファングの嗅覚がこちらに向かって来る反応を捉えた。
変な匂い、つまりは一度も出くわしたことの無い新しい敵。
出来れば簡単に倒せそうなのが良いが……まあ高望みはしない。ゴブリン以外なら何でもウェルカムだ。
「―ギャルルルっ!」
毒々しい紫に近い緑の体に鳥類の顔。短い腕に図太い足。胴体はふさふさな毛に覆われている。
―ダチョウの様なモンスター、「ポイズンダーチョー」。
「分かりやすい程に「私、毒持ちです!」って体してんな。」
「ガウぅ……」(ちょっと臭い。)
「……なる。毒持ちは少し臭いのね。」
こちらを弱い餌とでも思っているのだろうか。接敵した時からその鋭い歯が並ぶ嘴から涎をダラダラと垂らしている。
「先手必勝ってね!」
距離で言うと二メートル位。自己鍛錬が趣味の俺は弓の鍛錬もしており、この距離なら狙わずとも当てる事が出来ると無造作に矢を放つ。
「ギャルッ!」
「おっと、そう簡単にはやられんよ。」
放たれた矢を避け、今度はこちらの番だ!とばかりに飛び掛かってくる。
飛び掛かりに対し、後ろに下がって矢を二本放つ。
「ガルァッ!(≪スラッシュファング≫)」
「ギャルぅぅ!」
二本の矢は的確に足を貫き、空中で態勢を崩される。
態勢を崩された事により着地に失敗。
地面に倒れ、隙を見せたところにファングのスキル攻撃が炸裂。
ファングは首を狙っていたが寸前にダーチョーが体を捻り右腕で防ぐ。しかしそのまま右腕を噛み切られ、たまらず苦痛の叫び声を上げる。
「ふッ!」
激しく動き、地面にダメージエフェクトをまき散らす敵に止めを刺そうと脳天を狙い矢を放つ。
しかし、暴れてたのが嘘の様に素早くダーチョーは立ち上がって回避する。
「ギャルェ!」
ダーチョーが叫び、まき散らされたエフェクトの色が変わる。
エフェクトがあった地面がダーチョーと同じ色に変わっていき、泡立ち始める。
―<ポイズンダーチョー>
紫に近い緑色の体が特徴的な害役モブ。
攻撃は単調なモノが多く、初心者でも回避可能。……しかし、初心者の勝率は二割弱。
その理由は――
「ギャルエッ!」
「――毒沼の槍!?」
HPの三割減少による確定行動。
自身のダメージエフェクトが掛かった地面を毒沼に変え、自在に操り攻撃を繰り出す。
掠れば毒。直撃したらダメージ+毒と言う害役な攻撃。
「うわっと!」
その害役攻撃を攻略できない様ならばこの先には進めない。
このフィールドに存在するモンスターの中ではマシな方なのだから。
毒沼鳥――別名、初心者試験……の筈だった。
「―ま、弓の俺には関係ないね。避けてチクチクと引き撃ちすれば良いだけだ。」
哀れななり、毒沼鳥。
渾身の必殺。ただ一つの個性とも言うべき攻撃はルナライトに通じない。
偶に打ち出される毒沼の槍を避け、チクチクチクチクと矢を放つ。
槍として打ち出し、徐々に毒沼は減っていく。
新たに作ろうとも、与えられるダメージは矢の刺突。しかも矢は付きさしっぱ。傷口が無いに等しく、エフェクトをまき散らす事が出来ない。
「はい、お終いっと」
「ギャル……――」
やがて毒沼は無くなり、攻撃手段が飛び掛かりしか無くなったダーチョーは動かなぬ的と成った。
「……お、レベルアップだ。」
途中、少し特殊な攻撃に戸惑ったが簡単に倒す事が出来た。
ポイズンダーチョーを倒した事により、レベルアップ。
ドロップを確認してみると、[毒沼鳥の羽毛]と[毒沼鳥の鋭嘴]と言う素材アイテムだった。
羽毛は防具、鋭嘴は矢などが主に使用されている様だ。戻ったら鋭嘴で矢を作ってもらおう。
「―よし、探索再開だ。索敵は頼むぞ、ファング」
「ワフぅ!」(任せて!)
ステータスをいつも通りSPとLUKに振り、俺達はフィールドを進んで行く。
……出来ればもう少し短い間隔で敵と出会いたいものだ。進み続けた三十分は只々暇だったからな。
▼▼←は時間経過。
▼▼▼▼←は日にち経過。
違和感があったら指摘のほど、よろしくお願いします。