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簡単だと思ったクエストは、面倒くさいのと難しいのが偶に混ざってる。



進行は結構ゆっくりめです。


それではどうぞ。




「ファング、『噛みつき』!」


「グルルァ!」



「―グギャー!」



小さな子供の様な体格に緑の肌。

RPGでお馴染みのモンスター、ゴブリン。

とても素直な挙動でこちらに突撃してくるこのモブは、ただ額を突くだけで面白い程に後ろに転げる。

俺の突きで転げた所をファングの攻撃で止めを刺す。


……このサイクルを、かれこれ二時間程続けている。


「……[ゴブリンの薄皮]。外れだな」


「クゥン?」(大丈夫?休む?)


「そうだな……そろそろ休憩するか」



――現在、俺は最初の都市『ファースト』付近のフィールドでゴブリン狩りを何時間も繰り返していた。



何故ゴブリンを狩りをしているのか。

それは、気軽に受けたあるクエストが原因だった。


チュートリアルの後、この都市に降り立った俺は、最初に何をすればいいか等の基本的な情報を集め、心魔陣に多くの武具を登録する為に必須な≪鑑定≫スキルを手に入れ、装備を買いあさった。


このゲームのスキル習得方法は三つある。


一つは、自身の行動に置ける判定規定値の突破に因る自動習得。

これは、自分がしている行動が一定の規定値を越えると、その行動に合ったスキルを自動で習得するというもの。剣を振り続ければ剣術スキルが、石等の物を投げ続ければ投擲スキルが。

正し、判定される規定値は不明で、どのくらい行動し続ければ良いか等は個人差があるらしい。


二つ目は、『可能性の欠片:(スキル名)』と言うアイテムを使用する事。

町や都市で売っているこのアイテムを使用することで、必要なスキルを習得する事が出来る。

正し、売られているスキルは序盤で簡単に習得可能なモノが多く、極偶にランダムタイプで強いスキルが手に入るかもしれない……らいしい。


三つ目は、他者からによる継承。

互いの同意の元、他の者から内包している技事スキルを継承する事が出来る。

師匠が技を弟子に教え込むようなモノらしい。

主に歴史ある名家や王族が使用するシステム。

継承を繰り返すほど継承されたスキルは強力に、そしてユニークに成っていく。


今回、別に自動習得でもよかったんだが、どうせなら早い方が良いよねって事でアイテムを使用し≪鑑定≫スキルを習得した。


そして、スキルの熟練度上げも兼ねて少し心魔陣で色々検証してた。

そこで分かった事だが、どうやら都市エリアで販売してる物は一度買わないと登録できないみたいだ。試しに露店に並んでいる武器を登録しようとしたら、システム自体に弾かれた。

しかし反対に、フィールドではそこら辺に落ちている物を自由に登録出来た。

木の枝や少し尖った石など、使い方次第でダメージを与える…又は軽減できる物は登録できる様だ。


とりあえず手札を増やす為、片っ端から武具を買って登録を繰り返した。

しかし、始めたばっかの資金何てモノはしれた事。

当然そこまで登録することができず、所持金が無くなったのでギルを稼ぐ為にフィールドで狩りをする事にした。因みに、ギルってのはこのゲームのお金の名前だ。

その時、どうせなら狩りのついでにクエストを受けてみよう思い付き、クエストを螺旋してくれる「クエスト総合管理所」と言う所でクエストを受けた。……それが、このゴブリン地獄への入り口だった。


紹介されて受けたクエストが<ゴブリンの特殊素材納品>。

ゴブリンのレアドロップ素材[ゴブリンの小さき肝]の納品。

この特殊素材はでベル5以下のゴブリンをレベル5以下の人が倒した時に稀にドロップする。

それを一つでも納品すれば達成するクエストだった。


何方かと言うとステータスは運に振っていたし、楽勝だろうと高を括ってゴブリン狩りを始めた。

……が、全く手に入らない。

先ず、Lv5以下のゴブリンが少ない。そして倒したとしても、違うレアドロップが多いかった。

最初は、まぁ特殊素材だし……?と思っていたが、狩りを続けていると必然的に経験値が溜まりレベルが上がる。そして、Lv3に成った所で焦燥感が積もる。

早く手に入れなければ……っ!と、狩り効率を上げ、ゴブリンを狩り続ける。



―そして今に至る。



「[錆びた短剣]……これじゃない」


レベルが上がった事で貰ったポイントは全部LUKに振った。

今のステータスは、LUKとSHが高い幸運の心魔族。

しかし、如何に幸運が高くても物欲センサーと言う悪魔の概念には勝てないのだろうか。

望めば望むほど、遠ざかっている気がする。


「ほいっと。…後よろしく」


「ガウっ!」(任せて!)


「ギャアア!」


これで何体目だろうか?……戦闘自体、ほぼ一瞬で終わるので数えていないが。

フィールドを歩き回り、Lv5以下のゴブリンを片っ端から倒していく。


「……ん?」


「……グルルっ」


次のLv5ゴブリン……5ブリンを探していると、何処か他と違う雰囲気をしたゴブリンが現れた。

そいつを認識した瞬間、ファングが警戒するように唸りを上げる。


「グギャギャギャ~~~っ!」


「……見るからに上位種だな」


通常のゴブリンが小学生ぐらいの大きさならば、現れたこいつは中学後半ってところか。

緑色の肌は所々赤く、醜い顔の額に一本の小さな角が生えている。


「こんな初心者用フィールドには場違いなエネミーだな」


「ギャギャ?……グギャア!」


こちらに気が付き、ヒャッハー!と言うような表情を浮かべながら突撃してくる。


「はっ!上等。丁度ゴブリン狩りに飽きてたんだ。」


「ガル!」(倒す!強くなる!)


「グギャォ~~っ!」


溜まった鬱憤を晴らすのと久々にちゃんとした戦いになりそうだと、歓喜による笑顔を浮かべて戦闘準備をする。

武器屋で買った長杖を左に装備して、右腕に心魔陣に登録した武器の一つ「レザー・ガントレット」を実体化させる。

腰を落とし、右腕を後ろに長杖を少し前に構える。


「グギャっ!」


「とろいなぁ!……お返しだっ」


「ギャギャ?!」


至近距離になると、手に持った少し錆びてそうな大剣を振り下ろしてくる。

それを右斜め前に踏み込み回避、そのままボディブローを叩き込む。


「こいつも喰らいな!」


「ぎゃぺっ」


「ファング!」


「グルㇽァ!!」(『スラッシュファング』!)


諸に喰らって、少しよろけたところに打ち上げる様に下から長杖でアゴを突き上げる。

強制的に顔を上げた状態になり、がら空きに成った首にファングが、噛み切る事に特化した≪牙術≫の技、『スラッシュファング』を繰り出し、喉を噛み切る。


「~~っ!」



「…ぺっ!」(まずい)


「おいおい、食べ物を粗末にしたらいけないぞ?」


「クゥン……」(無理、食べれない。まず過ぎる)


声なき叫びを上げるゴブリン上位種……適当に上ゴブでいいか。

ダメージエフェクトをまき散らす喉を片手で押さえ、声なき叫びを上げる上ゴブを尻目に少し距離をとる。

ファングは噛み切った喉を数回咀嚼した後、まずいと言う言葉と共に勢いよく吐き出す。


「~っ、グギャアァっ!!」


「うおっ!」


ファングに冗談を言っていると、しっかりとした雄叫びを上げながら上ゴブは大剣を横薙ぎに振るう。

それを後ろに飛ぶ事で避けるが、飛びが甘かったのか小さい切り傷のダメージエフェクトが胸元に入る。


「……うゎお、今ので13ダメージ」


自身の残りHPは7。

多分自分より強いであろう、上ゴブからの攻撃で……それも、かすり傷程度で瀕死と成った。

VITに一つも振ってないのもあるが、この種族のデメリットである撃たれ弱さを改めて実感する。


「フーっ、フーッ……!」


「しかし、自己再生か……?えらい速く喉が治ってるな」


息荒く血走った目でこちらを睨む上ゴブの喉は、ファングが噛み切った痕も無く元に戻っている。

相手のHPが分からない以上、回復されたHPより与えたダメージ量が多いのか分からない。

回復条件は?使用頻度はどれくらいだ?制限はあるのか?

先程よりがむしゃらに振られる大剣を回避、時々攻撃する。

それを繰り返しながら思考を巡らせる。


「……序盤に出て来る敵モブと考えるならば、そこまで強力なモノでは無い可能性が高い」


「グギャギャッ!!」


そう、序盤なのだ。

このフィールドは初心者用で、高くてもLv8までしか出てこない。

何かしらのフラグを踏んで強力なモブが出てきているとしても、Lvが低くても勝てる相手なのでは?


……とりあえず攻撃し続ければ倒せるだろ。

自身の脳は、その様な脳筋の答えを出した。


「せいっ…てりゃ!……どうりゃあっ!」


「―ギャギャぁッッ?!」


熟練度上げも兼ねて、装備を登録出来た武器に次々と切り替えながら攻撃を繰り返す。

剣や短剣で斬りつけ、槍で突き、長杖やハンマーで叩き、ガントレットで殴り、鎌や斧槍で薙ぎ、投げナイフを投擲する。残念ながら弓や魔法等の遠距離武器は資金不足で登録出来なかった。


「ぎ、ぎゅやぁ……」


「お、再生限界か」


そして、四十分位だろうか?

色々な方法で攻撃を切り返していたら、どうやら限界がきた様だ。傷が再生されることも無く、膝を付き瀕死な様子。


「楽しかったよ。……それじゃあ、死ね」


「ぎ、ギャアァァ!」


ゴブリン狩りで溜まっていた鬱憤を晴らさせてくれた上ゴブに感謝しながら、その首を刎ねる。

倒した後、通常種とは違うゴブリンと言う事で少しだけ期待しながらドロップアイテムを確認する。


「……何々、[弱小の復讐大剣]?」



「弱小の復讐大剣」

:[攻撃力+10]

ゴブリンウィークアベンジャーのレアドロップ装備。

何百の同胞を屠った敵を討つ為、自身より弱い者を殺し続けたゴブリンが使用していた大剣。

『弱者への優越』

:自身より弱いモノに対し、攻撃力強化。

『最も弱気復讐者』

自身と同じ種族を倒した相手と対峙した時、全ステータス強化。

自身より強い相手には無効。自身と同等の時は小強化。



「……まぁ、所詮ゴブリンが持ってたものだし。微妙」


効果を見ても、微妙さを感じる。

『弱者への優越』は強いと思う。レベルを上げれば、雑魚狩り時に便利だろう。

しかし、『最も弱気復讐者』はどうにも微妙。

これが自身より強い相手にも発揮するならかなり強かったんだがな。


「ゴブリン狩りには使えそうだし、装備しとくか」


「グル?」(やる?また雑魚狩る?)


「ああ。またゴブリン狩りの時間だ。……そろそろ出てもいいころじゃないか?」


とりあえず今は使えそうなので、装備する。

そして、またゴブリン狩りが……いや、



「……まったくでなねぇーーっ!」



ゴブリン地獄が、始まった。


因みに、ゴブリンフィールドは不人気で殆ど人がいない。

その為、主人公は割とサクサクと経験値を稼げてる。……まぁゴブリンの経験値自体少ないけど。


誤字あったらごめんなさい。

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