俺の嫁、じゃなくて妹、そして彼女
清流の如くサラサラと流れる黒髪、美しく整った鼻はもう少したかければ歴史が変わってしまう程だ。
下唇がやや厚い愛らしい唇は、時折見え隠れするピンク色の舌を門番の如く守っている様だった。
少し控え目な胸はいまだ成長期の途中だが、両手にすっぽりと収まりそうなそれは俺好みの大きさと言える。
しなやかに伸びる長く細い腕、ピアニストの様に長く美しい指。
両手で掴めそうなくらいに括れたウエスト、体育会系の様に引き締まったヒップ、そこから伸びる足はカモシカの様に細く長い。
最近では座高は測らないが、確実に身長の半分以上を占める程長いと思われる。
身長はそれ程高く無いが、頭が小さく手足が長い。
全体を俯瞰で見れば間違いなくトップモデルの様な体型に体格であろう。
そして更には性格が完璧で、優しく頼りがいがあり、誰に対しても笑顔で接し、決して悪口陰口を叩く事は無い。
更には運動神経が良く、時々運動部の助っ人として試合に呼ばれる事もあり、そして勉強は全国トップクラスに成績を保っている。
友達は常に1000人を越え、誰からもどこからも悪い噂を聞いた事が無い。
完璧超人、そしてなんとそんな完璧超人が俺の彼女になった。なってしまったのだ。
そんな完璧超人な子に、ずっと彼氏がいなかった。俺はそれを完璧過ぎるからって、そう思っていた。
そして、そんな女の子が俺に好きだと言った。
涙を流し付き合ってくれと懇願された。
俺は考えに考えて……悩みに悩みに抜いて、そして付き合う事に決めた。
なぜそんなにいい子なのに、悩んだのか……そりゃそうだ。
俺の彼女になった女の子は……俺の実の妹なのだから。
自慢の妹、兄から見ても妹は可愛いし、綺麗だし、美しい。
清楚で可憐で愛らしい。
そう思ってしまう程なのだ。
そう……長々と前置きをしたが、俺はそんな妹と付き合う事になった。なってしまったのだった。
「あうううううう」
ベッドに倒れこみ、俺は枕に顔を埋めそう声を出した。
後悔では無い、後悔なんてしていない。する筈がない。
あんな超絶美少女が、あんなに性格のいい娘が彼女になったのだから。
妹だけど……ね。
「ああああああああああああ」
嬉しさ半分戸惑い半分、だけど後悔じゃないんだ。公開出来ないけど。
「妹と付き合って……どうするんだ?」
そもそも俺……女子と付き合った事ないのに、最初が妹なんてハードル高すぎね?
手は当然出せない。出せるわけない。プラトニックに徹する。
いや、そんな事考える迄もない。
好きという気持ちはある。もちろん家族として……だろう。
だろうと言うのは比べようがないからだ。俺は人を本気で好きになった事がないから。
いや、あるか……過去に一度ラブレターを出した。
年上のお姉さんだった、でもあれは恋ではなく憧れだった。
とにかく俺には恋という物がよくわかっていない。いや、少しはあるかも、でもそれは性欲じゃないのか?
勿論どんなに可愛くとも、どんなに愛らしくとも、どんなに美しくとも……俺が妹に、栞に対して性欲を抱く事はない……ある筈がない。
それでも付き合うといった以上俺は責任を取らなければいけないんだ。
妹の望む事は出来るだけ叶えてあげたいんだ。
俺を好きと言ってくれた妹の為に。