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その時は楽しかったのでしょうか。自分を非難した「であろう」人々を切り裂いてまわるのは。ですが、誰も何も、ロボットが殺戮ショーを開演した理由など、誰も知るよしもありません。誰にも分かって貰えない。
ああ、なんと惨めなことでしょう。
嗚呼、なんと滑稽なことでしょう。
日が暮れる頃の街。ショーの終演は酷く閑散としていました。腐った肉と、どろどろに溢れ出した鮮血が混ざった臭いが街の惨劇を物語り、道を挟む建物などは赤黒く染まっていました。そこらにたちこめる赤い霧は、すべてなんだったのかなど考えない方が良いでしょう。誰もいないことが分かると、血だらけロボットは科学者のいた研究所へと向かいました。
研究所には無遠慮に投棄されたであろうごみが、そこらに点々と小さな山を作っていました。ロボットはがりがり体を引き摺り、研究所の門を潜りました。そしてごみの山を背に座り込みました。
ロボットはナイフを一本自分の前に突き出しました。そしてそのまま、ぐしゃり。
顔面を刺し貫きました。体中から火花がばちばちと散り、スピーカーからガーガー騒音が鳴り響き、ロボットは悶え苦しみました。身体中から油が血液の如く湧き、そこら中にぶちまけられました。そして彼のコンピュータが壊れると、ロボットは動かなくなりました。ごみの山に、ガラクタと成り果てた体が。
バタリ。
彼は、人の楽園であろうとしました。結局、それは何処にも存在しませんでしたとさ。
おしまい。