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次の村に着くなり、ロボットはみんなを呼び集めました。「これからみんなと一緒に遊んであげるよ。」
ロボットはおにごっこが得意でした。ロボットは体が小さくても足はとても速いです。君にはかなわないなぁと半数の人はロボットを褒めました。しかしもう半分の人は「お前は足が速すぎて勝負にならない。お前とのおにごっこはつまらない。」と言います。ロボットは悲しくなりました。
悲しくなったロボットは科学者のもとへ戻ってきました。科学者は「いいんだよ。おまえは半分の人も楽しませたじゃないか。気にしなくていいんだよ。」と言いました。再び自信を取り戻したロボットは、また別の村へ出かけました。
三つ目の村に着くなり、ロボットはみんなを呼び集めました。「これからみんなと一緒に遊んであげるよ。」
ロボットはかくれんぼだけは苦手でした。体がきらきらして目立つのですぐに見つかってしまいます。ある程度の人はなにやってるんだよと笑いとばしてくれました。しかしほとんどの人は「お前はすぐに見つかってしまうじゃないか。お前とのかくれんぼはつまらない。」と言いました。彼らの「つまらない」も、これで三度目。ロボットはしゅんと落ち込んでしまいました。
悲しくなったロボットは科学者のもとへ戻ってきました。するとゴホン、ゴホンと、科学者はひどく咳き込んで、顔も蒼白としているではありませんか。心配したロボットは科学者に駆け寄りました。すると科学者は言いました。「いいんだよ。私の事よりおまえのことだ。」
すると科学者はロボットをぎゅっと抱き寄せて言いました。
「おまえはいつだって人々を楽しませようと努力しなさい。おまえは私にとって息子のようなものなのだから、おまえが楽しいと私も救われるのだ。お前が人のための楽園でいてくれれば。」その言葉で自信を取り戻したロボットは街に出かけようとしました。ロボットが出て行こうとすると、科学者は引き止めて、一言
「いつだっておまえを愛しているよ。」と言いました。
その言葉を胸にしまって、ロボットは街へとびだしてゆきました。
街に着くなり、ロボットはみんなを呼び集めました。「これからみんなと一緒に遊んであげるよ。」
ロボットは劇が得意でした。人を集めて脚本を作り、素晴らしい演技で人々を楽しませました。たくさんの人が拍手を送りました。ロボットはとてもいい気分でした。
しかし劇の後、ロボットは別の劇団の人に呼び出されました。劇団の人はなにやら怒っているようです。すると劇団の人はいきなりロボットに蹴りを浴びせました。「お前のせいでうちの売り上げがおじゃんだ。どう責任を取るつもりだ。」劇団の人はそう言って何度も何度もロボットを蹴り続けました。ロボットがベコベコになるまで蹴ると「あんな低俗な演技を二度と見せるな。」と言い去って行きました。ロボットの体は、鉄屑と見間違えるほどでした。蹴られた痕が黒ずんでいました。
悲しみに暮れロボットは科学者のもとへ戻ってきました。ところが、どうしたのでしょう。研究所には誰もいません。どこを探しても、優しく慰めてくれる彼はいません。もう、いいんだよ、と言葉をかける者はどこにもいません。優しい科学者の、あの柔らかな面影も。何処にもありません。
ですが、使命を忘れるわけにはいきません。うつむくロボットは、別の街に赴くことにしました。