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カモメが飛ぶ日  作者: Tohna
序章 最終節
4/46

4. 202x年シーズン最終節(4)

ゴールキーパーの重圧は凄いものがあると聞きます。

 暫く両チームともに膠着状態が続いたが、前半26分、カルバロスが思わぬラッキーで先制する。


 ペナルティエリア外から甘粕が撃った相手のミドルシュートが、CBのウエリントンの脇腹辺りに当たって軌道が変わった。


 粟尾は逆を突かれた形になり、そのまま得点を許してしまった。


 天を仰ぐ粟尾。

 次いで地面の芝生を悔しそうな表情で蹴った。


 粟尾には十分キャッチングできる自信があったのだ。ちょっとした不運だが、失点したことには変わりない。


 ゲームキャプテンの鈴木は、


「No problem! エウリントン!」

 とエウリントンに声を掛けた。


 そして、


「粟尾! いい反応だったぞ! 次は頼む!」

 粟尾への配慮も欠かさない。


 鈴木はチームメイトから愛されるキャプテンだ。


 前監督が第20節で成績不振の責任を取らされて辞任した後を継いだのはサテライトチームのヘッドコーチだった高橋だった。


 いわば繋ぎの監督だ。本人からすればこれで降格させれば一部リーグでの監督の目は無くなるかもしれない正念場がいきなりやって来たわけだが。


 高橋もベンチ前から大声で失点で気落ちしないようにガビアータイレブンを鼓舞する。


「まだ前半も十分時間はあるぞ! 慌てるな!」

 高橋は給水にタッチラインまでやって来たボランチの坂上に、ポジションを上げるよう指示をした。


 指令は「得点を取れ」だ。


 果たして狙いはすぐ結果となって表れた。


 前半のアディショナル・タイム、関口が突破してポスト役になっていた(ゆん)にグラウンダーのパスを出した。


 (ゆん)はしっかり足元にボールを収め、すかさずファー方向にボディターンを試みた。


 しかし、ディフェンスに動きを読まれてしっかりと対応されたので、仕方なしにそのまま上がってきていた坂上にパス。


 坂上は寄せてきたセンターバックに一旦シュートのフェイクを入れてスライディングさせ、簡単にかわしてからインステップで強烈な左脚のシュートを放った。


 糸を引くように、シュートは右側のゴールのサイドネットに突き刺さった。

 目の覚めるような素晴らしいゴールだ。


 そしていゴールが決まった刹那、前半終了の笛が鳴った。


 これでともかく試合は振り出しになった。


「よく振り出しに戻してくれた! 早くベンチコートを着て身体を冷やすんじゃないぞ!」

 高橋は選手にそう声を掛けて、ロッカールームへ来るように促した。

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