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カモメが飛ぶ日  作者: Tohna
役員会
17/46

17. チームワーク(2)

信頼し合う事がチームを強くする。山際家のチームワークはどうだ?

 穂奈美の心配はもっともだ。


「大丈夫、じゃないかもな。でも、役員たちにまた好き勝手にやられたら間違いなくお父さんは来年の今頃はお払い箱だった。喧嘩したからチャンスを貰ったんだよ」

 

「へー。そんなもんかね。まっ、頼むよ。おとーさん」

 少し安堵したのか大翔は軽口を叩いて二階に上がって行った。やがて、大翔が再開したフォートナイトのボイスチャットではしゃぐ声が聞こえてきた。


「ったく。大翔のヤツ、勉強はどうしたんだ(笑)。……アイツ結構ビビってただろ?」


「うん、結構虚勢張ってたわよ。『お父さん大丈夫かな、大丈夫かなって』さっきまでずっと言ってたもん」

 

「とにかくオレは来年やれる事を全部やるさ。すまない。立派な夫でなくて」

 山際は頭を下げてそう言った。


「なにを今更。私はね、お父さんについて行くって結婚した時から決めていたんだから。再来年どこかに行くことになっても、大翔とついて行くわよ」

 

「おい、さっきまであんなに心配していたじゃないか」

 山際は穂奈美の態度が変わったので不思議に思ったが、


「来年は大丈夫なんでしょう? 一年あれば心の準備が出来るから平気よ」

 と保奈美が言うので、


「再来年もきっとこの家にいられるよ。心配するな」

 と真剣な顔をして言った。


「信じてる」

 そう穂奈美が言ったのを聞いて、山際もホッとしたのか力が抜けた。


「あれ、胃痙攣止まったみたいだ」

 

 俺の家には、いいチームワークがあるな。


 そう山際は思った。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 翌朝、海浜幕張の駅に程近いガビアータ幕張の本部事務所に出社した山際は、早速人事に着手した。

 プロ契約しているGM、監督、選手だけでなく社員を巻き込んだ大改革をやろうとしているのだ。


 プロサッカーチームとはいえ、その台所は火の車だ。自前の人事部など存在しない。


 したがって人事は川島製鉄の人事部に委託費を払って兼任してもらっている。


「山際さん、これは反発が出ますよ。マズくないですかね」

 川島製鉄で人事一筋のキャリアマネージャーである中村は山際の示した人事案に難色を示した。


「中村さん、そんな事言ってられないんだよ。君も聞き及んでいると思うが、死に物狂いで来年黒字を出さないと、ココは売却される」

 山際には個室が与えられておりガラス張りではあるが中で機密性の高い話はする事ができる。


「売却っていっても……買手はいるんですか?」


「あるには、ある」

 山際は含み笑いをしながら言った。


「まあ、私はどこでもいいですけど。とにかくやれる事をやる、そんなとこですよね? 山際さん」

 中村は白旗を上げた。


「ああ。反発は覚悟してる。でもこうすればきっと上手く行く。チームは選手だけで作られている訳じゃない。我々バックオフィスもまた、チームの一員なんだ」

 中村は、山際は今までかつて見せたことがないような熱を帯びている事に少し驚いている。


「オレだって役員たちを虜にする。こんな難しいミッションに結構ビビってるけど、全員で勝ち取りたいんだよ。中村さん」

 中村は少し微笑んで応えた。


「良いでしょう。お付き合いしますよ。社長さん」


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