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カモメが飛ぶ日  作者: Tohna
役員会
14/46

14. 役員会(6)

山際を追い詰めるはずの役員たちは、次第に逆に追い詰められてゆきます。

「よい質問です。専務。2億円ですよ。エウリントンは既に37歳。ブラジルでお払い箱だった選手にウチは移籍金1億、年俸1億払って獲得したんです」

 山際は鎌田を睨んだ。


「今年の活躍はまあまあでした。しかしコストパフォーマンスは悪い方です。私はあの時反対すべきでした。鎌田専務のゴリ押しだった訳ですし」

 面と向かって非難されることにすっかりご無沙汰であった専務の鎌田は狼狽しながら本質とは何ら関係のない事を言い始めた。


「エウリントンは人格者だ。若手にとってもコーチングできる。次世代の育成にも役に立つだろう」

 鎌田専務は気色ばんで無理筋を通そうとした。


「ええ、エウリントンみたいな人間は若手の手本になるでしょうなあ。ただ、エウリントンに使った金で潜在能力のある、その若手を獲得できないんですよ」

 山際はたっぷりと皮肉を付け加えた。


「エウリントン売却で浮いた金の一部は、関口の引き留めに使いますよ。引き止めにうまくいけば『最大の補強』になる」

 

「それを言うならゆんはどうなんだ! アイツにもかなり払っているぞ!」

 恥をかかされた鎌田専務は、敵意丸出しで山際に迫った。


「彼のパフォーマンスは良かった。ですがゆんにも痛みを与えます。年俸は半分にします」

 

「そんな事してゆんは納得するのか? 調停とかになると厄介だぞ」

 川口も追及の手を休めるつもりは毛頭ない。


「ええ、ゆんとは実はもう話をつけてあります」

 驚いたのは鎌田だった。


「アイツは『韓国の虎』とかなんとかチヤホヤされて鼻持ちならないヤツだ! そんな事を受け入れるわけがないだろう?」


 呆れた、という顔をして山際は続ける。


「現場に来ない鎌田専務には分からんことですよ。私とゆんには信頼関係があります」

 

 コケにされた鎌田は唇をかんで震えている。

 

 そろそろこの場を納めないと、とばかりに敦賀が割って入る。


「山際、お前の言いたいことは、『信頼は金になる』って事か?」

 敦賀は厳しい視線でそう問いただした。


「社長、僭越ながらそれは当たり前です。私も経営を任されている立場です。金になるためならどんなことでもしますよ。しかし、サッカーはビジネスであってビジネスではない。弱いチームを応援しなければならないサポーターの立場にもなってみてください」


「お前の言うサポーターとやらがなにを今までしてきたか知らないわけでもないだろう。アイツらは単なる愚連隊だ」

 川口は机を叩かんばかりの勢いで山際に迫った。


 山際は川口を睨みつけて言った。



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