1.202x年シーズン最終節(1)
フロント目線でのサッカー小説を書いてみたくなり、現在連載中の拙書「シンジケート」とチーム名や登場人物リンクさせたサイドストーリー的連載をカクヨムに行っています。
それを小説家になろうへ移設するにあたり、加筆・修正などを適宜行っています。
サッカーのシーンも盛りだくさんにチームの経営とチームの強化をテーマに描いてゆきたいです。
「さあ、泣いても笑ってもこれが最終節だ。もちろんオレはみんなで笑って終ろう! マークの確認はすんだな?」
ガビアータ幕張の監督代行、高橋実は試合前のブリーフィングで試合前最後の戟を飛ばしていた。
サッカーのプロリーグ1部であるJSL-Aの第34節。すでに昨日6試合が終了していて、日曜日にはJSL-Aの試合は3試合が組まれていた。
「今日は札幌の事は考えず、勝つことだけを考えろ! いいな⁉︎ さあ行こう!」
手を叩いて選手たちを送り出す高橋。
千葉県千葉市をフランチャイズとするガビアータ幕張は、昨節までなんとか勝数8、引分数7、負数18の勝ち点合計31、得失点差が-23の15位で当節を勝利を飾ることで来期の1部残留を決めることができる大一番を迎えていた。
勝ち点差2でガビアータを追う16位のオッソ札幌が3点差以上で勝ち、負ければ当然ながら、ガビアータが引き分けると勝ち点は32で並ぶ。
そして得失点差では-23となり、オッソが1点上回るためにガビアータは2部の3位チームとの入れ替え戦に回る可能性がある。
現実的には、オッソが3点差で勝つことは難しいように思えた。
なにしろ、オッソの今日の対戦相手は今季の優勝を当節に掛けているアンギーラ浜松だったからだ。
アンギーラ浜松は爆発的な得点力を持っている攻撃陣が今季の成績を支えていて、中でもベンハミン・ヘススは今季22得点を挙げていて、現在得点王に一番近い。
今季からスペイン二部リーグの離島のチーム、レアル・カナリエンから来た、「Jesus」の名を持つこのストライカーは身長は174㎝ながら「ゴムまりのような」身体能力を持つゴールハンターだ。
また、3人の日本代表選手を擁しており、戦力は明らかにアンギーラに分がありそうだった。
もちろん、サッカーは戦力の優劣だけで勝敗が決するようなそんな簡単なスポーツではないが、オッソがアンギーラを倒すイメージを持つ事は困難だった。
一方、ホームのガビアータはリーグ最下位の群馬カルバロスが相手だ。
カルバロスとの今季の対戦では、3対0で完勝している。
―― 少なくともガビアータは引き分けるだろうし、オッソはきっとアンギーラには勝てない――
戦前の評価はそのように固まっていたが事情は簡単ではない。
監督代行の高橋が檄を入れたが、選手たちの反応はいまいちで、表情も冴えない。
なぜなら、今年度の降格争いは熾烈を極めており、16位のオッソ札幌と18位のカルバロスとの勝ち点の差はなんと1点という異常事態だったからだ。
もっとも17位のセカラシア福岡は昨日土曜日の試合で負け、降格が決まっていた。
もし、この試合にカルバロスが勝てば、カルバロスは自動降格を免れ、JSL-Bの3位チームとのプレーオフに進める可能性がまだあった。
得失点差ではカルバロスの方が上だから、下手をすると当節でガビアータの今季は終了という事だ。
そしてガビアータのサポーターたちは、戦前の評価を全く信用していなかった。
なぜならば過去に受けた仕打ち、つまり大切なゲームで勝てそうな試合を簡単に落とす黒歴史を繰り返してきた事を忘れることはなかったからだ。
暫くハイペースで短い分量を更新していきます。
楽しんでいただければ幸いです。