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政木さんが出て行くのを見送り、じー様は さぁやの方を向いた。
君も下がれあとから追って連絡する」
そう言われ、さぁやはおとなしく下がろうとしていた。
俺は、何も出来ないことを悔やみながら・・・
「いや、待て。」
なぜか そう制したのは 橘さんだった。
そして、とんでもないことを言い出した。
「織田さんよければうちの孫娘にそのご子息をくれんかね?」
いきなり、そう言った橘さん
「はっ!?」
俺はつい声を出してしまった。
さぁやの方を見ると彼女もかなり驚いている様子・・・
あーぁ、まだ、あいつ怒るじゃないか・・・
と、思いっきり 橘さんの隣にいる俊也を睨んだ。
が、あいつは 目を逸らしやがった。
「どうやら孫娘はぞっこんらしくてな。」
ニコニコとご機嫌な様子の橘さん
あんたの孫娘が言うことなんて 俺の知ったことじゃない。
「この前、こやつと見合いをさせたら怒って口をきいてくれんかったが今回ばかりは大丈夫だろう。」
と、俊也を指差していった。
一人でウンウンと頷き納得している。
お前、どうせならちゃんと捕まえろ!!と俊也に食らいつきたいのをなんとか我慢した。
「本当ですか、橘さん。信雅、今度はYESしか答えはないからな。」
勘弁してくれよ じじい
頭が痛くなってくる・・・
「じー様、俺は言いなりにはなりません。この前はっきり申し上げました。社長の座なんかよりも俺には大事な人がいます。橘さんには悪いと思いますが、断らさせてください。」
そういい俺は橘さんに向かって頭を下げた。
「私の孫だと不満だというのか?やっぱり はい、そうですか。じゃ終わらないか・・・
大きなため息をしたいのを必死に飲み込んだ。
「いいえ。私が今の付き合っている彼女じゃないとダメなんです。それにもう本人からの結婚の承諾済なので」
ニッコリと微笑む
「おい、マサっ!!」
俊也が何かを言おうと口を挟んだ。
「相川さんは黙ってらして」
が、それを制したのは 今まで黙っていたさぁやだった。
「お嬢・・・」
なんだよ、お嬢って・・・
さぁやは、一度俺をチラッと見て、橘さんの方を向いた。ニッコリとしながら。
なんか嫌な予感がした。
「人がおとなしくしてたら、ずいぶん勝手なことをおっしゃりましたね。」
いきなりのさぁやの言葉、俺は驚きはしたもののなんとなく意味がわかってきた。
秘書は今だにわからないようでかなり驚いている。
じー様は、橘の総帥を怒れらせてしまうと怒りをあらわにしていた。
「きさま、いいかげんしないか!!でていけ。今すぐに、部屋からと言わずこの会社から!!」
じー様が、さぁやの前で啖呵をきった。
「部外者は、少し黙っていていただけるかしら?」
あいつ、本気でキレてるよ・・・
「なっ!!」
まさかさぁやが反抗するとは思っていなかったのか、じー様はなにも言えなかった。
「言っておきますけどね、こっちだって織田の御曹司と結婚するつもりはありませんからねっ!誰が、織田の御曹司にぞっこんですって?なにが、孫じゃ、不満かよ。えーぇ、不満だらけでしょうとも!お互い会社の駒にされて!!本人たちに気持ちなんて関係ないの??」
思いっきりさぁやから 目を逸らし俊也に助けを求める橘さん
その行動にさぁやは、橘さんに詰め寄った。
「聞いていますの?お爺さま!!」
やっぱり・・・・さてと、どうしたものかな。
じー様の方を見ると青くなっているのがわかった。
う~ん、なんかいい気味だ。秘書も同様真っ青になっている。
「マサ、行くわよ。このことちゃんと報告しますからね、お爺様!!」
言いたいことを言い終わったようで、さぁやが俺の方へやってきた。
「橘さん。俺は、橘財閥の孫娘と結婚するつもりはありませんよ。
この小林 沙耶となら喜んでお受けします。」
そういい、さぁやの後を追って部屋を出た。
「あっ、社長。いわれた通りでていきますね・・・この会社から」
後ろからついてきていたさあやがにっこりと爆弾を落としていったが知ったことではない。
じーさまの自業自得だ。実際にこのままさあやが退職となってしまうととても困るのだろうが・・・・すぐに取り消されるだろう。さあや本人もそこはわかっているだろう。
「黙っていて、ごめんなさい。」
エレベーターを待っているとさぁやが言ってきた。
「気にしてないよ?」
本当に気にしていない。
さぁやと同じように俺もさぁやがいてくれればいいから。
「そうじゃなくて、相川さんとのこと・・・」
俊也・・・?
「本当は、合コンじゃなくてお見合いで知り合いました。でもちゃんと断ってたし・・・」
微かに涙目の彼女
かわいすぎますから。
「気にしてないよ。むしろあいつがすぐに諦めてくれて助かるよ。それとも、なにかあった?」
あんまり煮えきれない様子のさぁや
「なんにもないけど・・・この前嘘ついちゃったから」
俺の腕に絡みつくように身体を寄せてくる。
今日のさぁやは、甘えん坊だ。
「俺に心配させないためだろ?今回は許す。」
このまま真っ直ぐに家につれて帰りたい・・・
「・・・だめよ。仕事中!!」
どうやら、俺の考えていることがわかったようで さぁやが先手を討ってきた。
「わかってる。で、誰に報告するわけ?」
最後のさぁやの捨て台詞が気になり聞いた。
「私のお母さんで、あの人の娘。」
さぁやのお母さんか・・・
「母に言ったらきっとお爺様しばらく娘にも孫娘にも口きいてもらえないわよ。」
隣でクスクス楽しそうに笑うさぁや。
ケンカしても、さぁやには逆らわないようにしよう・・・・




