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私は、急いでいた。もうすぐ昼休みが終わる。そんなときに限って、会いたくない人に会ってしまう。
「あら、小林さん。どうしたんです?そんなに急いで?」
・・・さっそくかよ。
自分の不運に舌打ちを心出ながら、笑顔で声の主の微笑んだ。
「あら、秘書課の冷泉さん。なにか御用かしら?私もうすぐお昼が終わるので失礼したいんだけど」
さっさと、この人の前から逃げたい。理由はただ一つ。
「忙しい人がどうして、人のものをとったりするのかしら?」
誰が、人のものよ。マサは一度だってあんたのものになってないわよ。しかも物なんかじゃないし!!と叫びたいのを堪えた。ここは、会社。お客様もいらっしゃるロビー・・・頭の中で呪文のように何回も唱えた。一緒に、この人の言うことは嘘。マサは私にプロポーズしてくれた信用しなきゃっ!前の恋愛で学習した、相手の言うことを一方的に信用してはだめ。とも唱えていた。
「私には、何のことかさっぱりわかりません。失礼いたします。」
この人を相手にしたら気分が悪くなるだけ。
「ちょっと待ちなさいよ。いい、いい気にならないことね。」
う~ん、どう見てもいい気になっているのはあなたですよね?
「信雅さんは、ちょっと普通の女が珍しくて今は よそ見しているだけ。」
たとえよそ見でもあなたを見るようなことはないと思うけど。
「すぐに、あなたなんて捨てられるのだから覚悟しておくことね。」
・・・これにはノーコメントにしよう。
考えればヘコむから
「あの方に見合うのはこの私よ。」
一体、どこからの自信ですか?
「社長にも認めてもらっているわ。」
認めているのは、あなたが広告会社を設立したあなたのお父さまのコネ
「あなたは、きっと社長にとっては、眼中にもない女でしょうけど。」
そうでしょうね。社長が、ひとりひとりの履歴書なんて見ないでしょうから?
「どうせ、あなただってお金目当てなんでしょう?」
この人、バカ?今、明らかに私はお金目当てです。って言ったようなものじゃない?でも、ここで言い返しても何にもかわらない。
「お嬢さん、社長室へ案内してくれないか?」
ばっと、声がした方を見ると一人の老人と若い男が二人いた。若い内の一人は、マサの友人の相川さんもう一人は、政木さん。
「はい。どうぞこちらへ・・・」
すばやく秘書の仮面を被った冷泉・・・
しかし、
「君のことじゃない。こっちの女性だ。邪魔するな。」
老人は、冷泉を押しやり私のところへやってきた。
「・・・かしこまりました。」
そういい、私は三人を社長室へ連れて行った。
コンコン
「お客様をお連れいたしました。」
中に入るように進められ中に入ると、社長と一緒にマサがいた。
政木さんがいる時点で わかっていたことだ。
「お前は、誰だ?」
社長は、思いっきり私を睨む。
「私がつれてきた。」
が、老人がすぐに答えてくれた。
「私の秘書がロビーにいたはずだが?」
少し表情を動かしたが、すぐに戻した社長。
「この子が何も言わないのをいいことにロビーでわめき散らしていたこの子が秘書?ずいぶんな教育をされておるな。」
後ろから、入ってきていた冷泉を思いっきり睨む社長
「社長この人が例の人です。彼女は、絶対にお金目当てです。」
冷泉は、めげずにそういった。だから、今はお客様がいらっしゃるんだから。この人本当に馬鹿なの?周りが見えない人かしら?
「ほほぅ、お金目当てで孫に近づいとるのか?」
私は思いっきり老人を睨む
「黙りなさい。」
ビシッっといった。
「貴様なんて口を・・・この方を誰だと・・・」
社長の顔が青ざめていくのがわかったが、そんなこと知ったことじゃない。
こっちは、冷泉に勝手に言いたい放題いわれイライラしているのだ。
「社長、話がずれてます。」
今まで、黙っていたマサが、私を庇うように、仕事の話に持っていこうとした。
「こいつが担当か政木」
マサの言葉に、老人も仕事の話をしようと政木さんに声をかけた。
「はい。」
社長と相川さんの後ろに立っていた彼は、やっと仕事の話が出来ると安心したようだった。
「いい目付きをしておる。相川に聞いたが、こいつの会社が ウチの傘下と知っての条件提示と思ってよいのだな?」
老人は、マサに向かっていった。
マサは『もちろんです。』と答えるだけ・・・
「橘さん、なにかご不満でも?」
二人の会話についていけず焦っている社長
「こやつは、ウチと他の会社と差別化をしないようだな。」
マサから社長に視線を変えいった老人もとい、橘総帥。
「どういうことだ?」
社長は、マサに向かい怒鳴った。
「ココで怒鳴らないでください。私はただ、どこの会社であろうとも、平等に取引はさせていただきたいと思っています。そちらで納得がいかないようでしたら、納得のいくところとどうぞ。私としましては、コミッション以外でも他社が勝っているとは思えませんが。」
自信満々に言うマサ
さすがだわ。と惚れ直していたりする私。
「気に入った話を進めろ」
マサの言葉にフッと笑い老人は言った。
それを合図に政木さんはそそくさと部屋から出て行った。




