18-side-
ちょっと落ち着いたので予約更新再開します。
「では、こちらの方向で上と話してみましょう。」
目の前にある書類をまとめ言った。
「よろしくお願いいたします。」
俺は、席を立ち一礼をし、部屋の外へ相手を促した。
「ところで、たしか、織田課長の前任は、斉藤 和樹さんでしたよね?彼は、今どの部署に?」
エレベーターに乗ると、相手が言ってきた。
「移動ではなく、最近退職されました。お知り合いでしたか?」
この仕事は元は、 斉藤さんの仕事だ。
知り合いじゃなくても顔合わせくらいはしていたのかもしれない。
「えーぇ、彼とは大学の同期なんですよ。実は、この仕事の担当と聞いていて楽しみしていたんです。そう、退職されたのですか・・・」
大学の同期か・・・
たしかに、斉藤さんと同じくらいの年だ。
俺のほうが、はるかに若い。
「織田ぁ~」
ロビーにやってくると、前方から陽気な声がした。
「斉藤さん。」
ちょうど 話題になっていた彼だった。
「久しぶりだな。悪かったな、いろいろと・・・・」
近づきながら、勝手に話を進める斉藤さん
・・・今、接客中なのにな
そう思っていたら、やっと気が付いたのか固まった。
「政木なのか?」
一瞬固まったが、すぐに覚醒し、口を開いた。
「久しぶりだな。」
政木と呼ばれた、取引先の人も斉藤さんを懐かしむように言う。
この時、斉藤さんがなぜあまり嬉しそうにしていないのかがわからなかった。
どちらかというと、とても苦しそうな表情だった。
「久しぶりだな、仕事か?」
斉藤さんは感情を込めずそれしか言わなかった。
「そうだよ。俺、サトが担当って聞いてて楽しみしていたのに、辞めたんだってな。」
しかし、それに気が付かず、嬉しそうな彼
でも俺は、なにげない 政木さんの言葉が引っかかっていた。いま、斉藤さんのことなんて呼んだ??サトって呼んだのか?俺の知る限り、斉藤さんのことを呼ぶ人物は一人しかいない。急に不安が襲ってきた。
俺たちは、アレから約束もしていないが、毎日のように会ったり、食事をしたりと恋人らしいことをしていた。お互いに、確かな言葉はいっていないが・・・この幸せがこのまま 続けばいいそう思っていた。なのに、なんなんだろうか。この胸騒ぎは・・・
「サト、昼行かないか?と、失礼織田さんと行くのか?」
政木さんは、俺のことを忘れていたようだ・・・
「気になさらないでください。」
そう言い、俺はその場から立ち去ろうとした。
「5年振りか?沙耶は元気か?」
沙耶?やっぱり彼とも知り合い・・・斉藤さんのことをサトと呼ぶさぁや・・・さぁやのことを名前で呼んでいる政木さん・・・・不安で胸が締め付けられそうだ。
「あーぁ、元気だ。政木外へ行かないか?」
俺のことを機にしてくれているのだろう。
明らかに斉藤さんはあせっている。
「待った、どうせなら沙耶も呼ばないか?昔みたいに。」
俺は、なんとなくわかってしまった。
この人は、さぁやと付き合っていたことがある人だと。そして、さぁやが名前で呼ばせない原因かもしれないことを・・・
「お前、今頃コバに会ってどうするつもりだ?お前には2度と会わせない。2度も裏切られて、あいつがどれだけ傷つき苦しみお前の前から姿を消したと思っているんだ。」
斉藤さんの怒鳴るような声に俺は 振り向いて2人を見ていた。
「やっぱり、あの時、サトも絡んでいたのか。お前もおれから俺との連絡を切ったもんな。」
苦笑いをしている政木さん。
「織田、いいか。黙ってろ!!」
なにが、なんて聞くつもりはなかった。そんなことわかりきっている。さぁやに政木さんのことを話すなということだろう。
でも、なんで最悪なタイミングはこんなに続くのだろうか・・・
「見つけた。早くしないと時間なくなるわよ。」
俺は、声をしたほうを見た。俺を見つけて、小走りに近づいてくるさぁや。
「今日、なにたべよ・・・・高志?」
さぁやは、俺の後ろにいる人物を見つけ呼んだ。
「そーいえば、あなたもこの業界だったわね。サトどうしたの?仕事?」
政木さんを見て呟き、隣にいる斉藤さんに問いかけた。
「あーぁ、仕事のついでに寄ったんだ。さっさと、2人で昼に行って来い。」
必要以上に2人に近づかないさぁや。
俺は、見ていることしか出来なかった。
「沙耶、少しでいい。話をしたいんだ。」
しばらくの沈黙の後 先に口を開いたのは政木さんだった。
「政木っ!!」
いまにも殴りかかりそうな斉藤さん。
「サト落ち着いて。仕事終わりでいい?19時にここの前の喫茶店は?」
政木さんは、安心したかのように頷く。
そして、さぁやは、俺に腕を絡ませ歩いた。
いや、正式には俺を引張った。
「さぁや?」
こっちを振り向こうともしないさぁやに声をかけた。
「さっきの人、5年前まで付き合っていた人。元々は、あの2人が仲良かったのよ。大学の頃、あの人を通してサトと仲良くなったの。」
俺は、黙って聞いていた。
「他に聞きたいことある?」
会社の外に出たらやっとさぁやは俺を見た。
「ない。しばらく、さぁやの口から他の男のこと聞きたくない。」
いままでの、3人の出来事だけでもいっぱいいっぱいの俺。
これ以上、話を聞いてしまうと嫉妬で狂いそうになるのが目に見えていた。
「クスクス」
笑い声がし、顔をあげた。
「何、笑ってんだよ。」
なんだか、俺はガキみたいな感じがして顔を真っ赤にしていた。
「なんでもないわ。なに食べに行こうか?」
さぁやはなんだか嬉しそうに微笑んだ。