16
「昼休みが終わるので、手短にお願いします。」
俺はイライラしながらいった。
「わかっておる。ったく、あいかわらずお前がキレると後が大変だ。いま、前任から引き継いでいる仕事の中に橘の傘下になっている会社があるそうだな。」
仕事の話か・・・
聞くしかないな。
「はい。結構大きな仕事ですね。不思議だったんですよ、小さな会社がこんな大きな仕事に取り掛かろうとしているなんて。」
俺は、斉藤さんが残した資料を思い出しながら言った。
橘財閥・・・
織田コーポレーションも中々でかい会社なのだが、日本で一番ではない。
その橘財閥が 現在トップなのだ。
ちなみに織田コーポレーションは2位だが、まだまだ
橘には追いつけない。
「気をつけてくれ。それから、絶対にそこの仕事は勝ちに行け。」
うーん、金しか頭にしかない人のいうことだな。
「わかりました。では、失礼します。」
ペコリと一礼をし、じー様に背を向けた。
「さっきいっていた女と一緒になるつもりか?」
やっぱり、そううまくはいかないな。
「残念ながらまだ、俺の片思いですよ。相手の返事次第では、一緒になりたいと思っています。」
さぁやのことを思いながら言う。
「お前の親父は織田の相続を放棄した。その女と一緒になるなら、お前にもこの会社はやらん。」
でたよ。
俺が、そんな言葉につれると思ってんのかね・・・
「いりませんよ。彼女と織田を天秤にかけてもかけなくても、俺には 彼女しかいませんから。社長の座をちらつかされてもまったく意味がありません。親父も同じなんでしょう?いいかげん学習したらどうですか?」
そういい俺は社長室を後にした。
ちくしょう、じー様としゃべっている間に昼終わってしまった。
仕方ない帰りにさぁやをつかまえるか・・・
そう思い仕事に戻った。
「あら、婚約者様とのご夕食はよろしいの?」
定時に仕事を終わらせ、さぁやをロビーで待ち伏せをした。
彼女の第一声がそれだった。
「・・・それ、わざと言ってる??やきもちはかわいくて嬉しいけど、機嫌直して。」
俺は、彼女に抱きついた。
「うっさい。離れなさい。」
「小林さんお待たせし・・・」
仕方なくさぁやから離れた俺
そこに男の団体が・・・
まさか・・・
忘れていた、彼女の会社でのもう一つの呼び名を・・・・
『合コン女王』
「さぁや、もしかしなくても、今から合コン?」
さぁやは、ニッコリと微笑んだ。
「そうよ、だから私のことは気にしなくていいわよ。」
俺は固まった。
「いや、気にするし・・・」
俺は慌てて突っ込んだ。
「あら、そう・・・」
それだけをいい彼女は男たちといってしまった。
少しは、俺にも希望があると思っていた。
俺からだけど、キスもしたし・・・
斉藤さんが言うには、絶対に男とふたりで食事はしないっていっていたし・・・
名前だって、最初は 嫌がっていたが今ではなにも言わなくなった。
「いつまでそこにいるつもり?」
しばらく、会社の前の公園でぼーとしていた。
もちろんさぁやのことを考えて・・・
顔をあげると、さぁやが立っていた。
「なんて、情けない顔しているのよ。」
はぁーとため息をつく彼女
「だって、さぁやが・・・」
彼女は俺の隣に座った。
「ったく、少しぐらい意地悪させてよ。あなたが自分のものって宣言したあの人はどうしたのよ。」
さぁやがいっているあの人はあの無礼な彼女だ。ってか、気にするところはそこなのか?俺は自然と顔がほころんだ。
「最初から婚約者じゃないよ。じー様にもきちんと断ってる。」
彼女は何も言わず、ふたたび俺の前に立った。
「そんな顔じゃ、お店に入れないじゃない。仕方ないわね。ご飯作ってあげるから、家においで。」
手を差し伸べてくれる彼女
やっぱり少しぐらい期待してもいいのかな・・・
「ところで、合コンは?」
思い出したかのように言う。
「あーぁ、ご希望が女医さんだったから彼女たちを紹介してでてきたわよ。私は、女医さんじゃないから参加なんてしないわよ。それに会社の女性人と一緒でももう参加はしないわ。斡旋はするかもしれないけど・・」
俺は、意味がわからず首を傾げる。
「あなたが、さっきみたいに情けない顔するのがいやなの。」
前を歩いている彼女の顔は見えないが、耳が赤くなっているのが見えてやっぱり俺は嬉しくなった。
「あれ、マサ?こんなとこで奇遇」
通りでタクシーを拾おうと向かっていると懐かしい声がした。
「俊也」
大学時代の友人だ。
「「あっ」」
声がかぶっていた。俊也とさぁやだ。
「こんにちは。」
さぁやは、挨拶をした。
「俊也と知り合い?」
俺は聞かずにはいられなかった。
「えーぇ、合コンで。ねっっ、相川さん!!」
気のせいか強い口調で言ったさぁや
「あっ、はい。そうなんですよ、奇遇ですね。マサとは、大学時代の親友なんですよ。」
なんか合コンでもムカつく・・・
「だれが、親友だ。俊也、何の用だ。お前に限って奇遇はねーだろ。」
俺は、こいつがなんいで来たかなんとなくわかった。
だって、こいつの勤務先は・・・
「冷たいな。」
俊也はチラッとさぁあやを見た。そのことに気が付いたさぁやは
「お仕事の話でしょ?私は先に失礼するわ。」
さすが、というしかなかった。親父のときといい彼女は自分の立場を把握している。
「気にしなくてもいい。話してくれ俊也。」
俺の言葉に立ち止まったさぁや。
「わかった。お前が今抱えている一つに橘のものがはいっている。」
やっぱり・・・
こいつは、大学卒業後
橘の本社勤務をしている。
「わざわざ、報告ありがとう。でもお前いいのか?知らせて。」
俺は不思議に思い言った。
「契約は傘下の会社だが、実際に動くのは 俺だ。お前と仕事がしたいと思ったんだよ。」
なるほどね・・・
「でも、俺は内容の変更はしないよ。いまのままで話を通す。」
だろうな。俊也はそう言った。
「じゃあな。」
俺はさぁやの手をとりタクシーを捕まえに行こうとした。
しかし、さぁやは俺から手を離した。
「先にタクシーを止めててちょっと、相川さんに話があるの。」
俺は「わかった」と言って、先に通りに向かった。
本当は、すごく気になるのを押さえて