13-side-
他の話に比べて長めです。
そして急展開
「何を考えているんだ?」
タクシーが目的地についた。
お金を払いタクシーを降りるとレストランの前で ぼーっとしている彼女に声をかけた。
「ううん。なんでもない。ここ?」
彼女の問いに
「そうだよ。」
と答えた。
「高そうね、もちろん御曹司のおごりよね。何食べようかな。」
立て続けにしゃべりながらご機嫌に店に入っていく。
でもそれは、空元気だ。
俺にもそれくらいわかっている。一体何を考えていたのだろうか・・・俺は聞いてもいいのだろうか?
「ちょっと、早く来なさいよ。」
入り口の所でさぁやは叫んでいた。
俺は気を取り直しさぁやのところへ行った。
「このコースでいいか?」
結局彼女は何でもいいといいメニューをウエイターに渡し、俺がメニューを決めることになった。
「うん。」
あまり、このようなレストランに来たことがないといっていたが、なかなかこの店の雰囲気にぴったりの彼女
俺たちはとりあえずワインを飲んだ。
「ね、聞いてもいい?」
話している途中 彼女がいきなり言ってきた。
わざわざ 聞かなくても答えるのだが、一体どうしたのだろう。
と構えていると・・・
「ノブマサってどんな漢字なの?」
彼女の問いに拍子抜けの俺
「信じるに雅だよ。」
微笑みながら答える俺
「信雅ね。かっこいい名前よね。ずっと、気になっていたのどんな字をかくんだろうって。社長がつけたの?」
いつの間にか、彼女からさっきまでのから元気はなくなっていたことに気が付いた。
今の彼女は心から楽しんでいる様子だ。
俺はとても嬉しくなった。
もしかしたらいまならさっきのことが聞けるかもしれない。
「父親だよ。なぁ、さあや・・・」
でてきた料理を口に運んでいる彼女を呼んだ。
「んっ?」
口に物が入っているためしゃべれない彼女は、首を傾げる。
そんな仕草の彼女もとてもかわいい
と彼女に見惚れていた。
「信雅?」
そんな俺に彼女が声をかけようと口を開いたとき 後ろから声がした。
後ろを振り返ると
「親父・・・」
ここにいるはずのない父親が立っていた。
「さっきまで、ジジイとメシ食ってた。」
あからさまにブスッとした親父に俺は何も言わなかった。
「お嬢さんもし、お邪魔じゃなければ、ここで口直しをしてもいいでようか?」
そういい、さぁやの手をとりキスをしようとした。
俺は、そのことがすぐに予想が付いたが、間に合わなかった。
しかし、彼女は俺のときと違って反応しなかった。
「てめぇー帰れっ!!」
俺はそんな彼女に軽くショックを受け 親父に八つ当たりをした。
「社長がいらっしゃるんですか?」
いままで黙っていた彼女が口を開いた。
「おや、君は社員なのかね?」
彼女の言葉にびっくりする親父
「大丈夫だよ。もう帰ったよ。ご立腹だったがね。」
ニッコリと微笑む親父
「どうでもいいが、邪魔だから帰れ。それから、彼女から手を離せ。」
いまだに、手を握っているのを見つけ叫んだ。
「こらこら、こんなところで叫ぶなよ。
心の狭い奴だな。おっと、紹介が遅れましたな。信雅の父です。」
彼女から手を離し、再度握手を求めて 手を差し出す。
「はじめまして。小林 沙耶といいます。」
彼女は、親父の手をとり握手した。
親父になにいっても無駄だと知っていたので、彼女にはあとで謝るとして、
椅子に座ってもらった。
「じー様 なんて?」
俺は、ワインを飲みながら言った。
「なんだ、会社のこと知っているのか?」
俺が聞きたいことを悟った親父はびっくりしていた。
「じー様が勝手にしゃべってた。」
相変わらずだな。といったふうにため息をつく親父
「今のやり方でしか社員が路頭に迷うことになる。
それに、今の社員とそのまま やっていく予定だよ。
そのために根回しはほとんどしてある。
織田の傘下からは離れるけど、相手先もそのことをわかってくれているところばかりだ。」
彼女はきっと俺たちの話をほとんど理解していないだろう。
しかし、彼女は 俺たちの話を邪魔せずおとなしくしていた。
その時、俺の携帯がなった。
どうやら会社からのようだ。
「親父ゴメン。」
そういい電話を取った。
「お嬢さん、仕事の話をしてしまって悪いね。つまらないだろう?」
新しく持ってきてもらったワイングラスにワインを注ぎ足し言った。
「いえ、いくら仕事のお話でも、とても大切なお話ですわ。人一人のこれからがかかっているのですから。」
にっこり微笑んでいるさぁや。
「こいつと付き合ってどれくらいだい?」
電話の相手と話しながら親父たちの会話を聞きながらさぁやを見ていると、
親父はとんでもないことを言っていた。
付き合っていませんよ。」
ニッコリと微笑む彼女わかっていたけどさ・・・そんなに微笑まなくても・・・親父の奴あとで覚えておけよ。
彼女の電話がいきなり鳴り始めた。
これで親父もしばらくは変なこといえないな。
と、安心し電話に集中した。
「それで、用件は?」
なんか慌てている会社の奴ら・・
「はっ!?斉藤さんが!!」
俺がそう叫んだと同時に
「サトが!!」
彼女も電話口で叫んでいた。
俺たちは顔を見合わせる。
「詳しく教えてください。」
俺は会社の奴らにいった。
「川合ちゃんは今どこにいるの??」
どうやら彼女の電話相手は斉藤さんの彼女のようだ。
「サトがどうしたの?」
電話が終わるとさぁやがすごい勢いでいってきた。
「会社を今日付けで辞めたらしい。斉藤さんの父親が亡くなって、急遽実家に戻っていたんだ。
さっき本人から会社に電話があって、葬式は終わったけど、そのまま退職手続きをしたって。
今日は戻ってきているみたいだ。
たぶん荷物の整理をしているんだと思う。」
俺の言葉にさぁやははっとした。
「今夜、川合ちゃんと約束していたらしいけど、あわてて実家に戻ったのね。彼女知らなかったみたい。さっき電話が来て一歩的に別れたみたい。今、ここに向かってもらってる。サトのご両親、元々お母さんのほうが身体弱いのよ。ずっと入退院の繰り返しだったの。サトとは学生の頃から知っているから実家のことも少しは知っているわ。きっと、織田にいたままじゃ、お母さんの傍にいれないから退職って形にしたんだと思う。通うとなるとかなり時間がかかるから。それに川合ちゃんとのことは、織田を退職してもすぐに職が見つからないから気を使ったんだと思う。」
さぁやの言葉に黙り込んだ俺。
あんなにお世話になった斉藤さん。
しかし俺は、なにもしてあげることは 出来ない。
「なぁ、信雅」
いきなり口を開いた親父
「んだよ。」
さっさと帰れよ。
と思いながら返事をした。
「その人優秀な人?」
親父も意味不明な質問
「営業課長だよ。それがどうしたってんだよ。」
声を荒げる俺
「お嬢さん、その斉藤さんとやらの実家は?」
矛先がさぁやにいった。
「新幹線でひとつ先の市です。」
きっとさぁやも意味がわかっていない。
親父はさぁやの言葉に頷くと口を開いた。
「その人、私の所で働かないかな。うん、そうしよう。信雅今な、ちょうど人を探していたんだよ。お前から話してもらえないか?」
俺ははっと気が付いた、
斉藤さんの実家と親父の会社は同じ場所。
「小林さん・・・・」
後ろから弱っている女性が近づいてきた。
「川合ちゃん。サトね、今実家にいるの。お父さんが亡くなったそうよ。それと、織田を辞めたわ。それで、あなたを気遣ってそんな電話をしたんだと思うわ。」
さぁやが、彼女を座らせ一生懸命説明する。
「納得いきません。気遣うなら、私の気持ちを気遣ってほしかった。」
しっかりした女性だ。
見た目は、彼女には悪いがのほほんとした女性だ。
こんなに芯がしっかりした女性だったとは思わなかった。
さぁやがいなかったら惚れていたかもしれないな。
そう思いながら二人を見ていた。
「親父、ついでに事務でも何でもいいから女も一人雇ってもらえない?」
親父も彼女たちを見ていた。
きっと、同じようなことを考えていたのだろう。
「かまわないよ。彼女なら大歓迎だ。とにかく彼と連絡を取ろう。」
親父は快く承諾してくれた。
「わかった。斉藤さんと連絡をとろう。さぁや、川合さんを送ってもらえる?」
俺の言葉に頷いた。
「明日、会社休みだし、彼女は私の家に連れて行くわ。一人にしたくないから。」
彼女を優しく抱いたまま いうさぁや。
「わかった。」
『後で、連絡するよ。』と、さぁやと目で会話をし、親父と斉藤さんの元に向かった。




