12
「いつ気が付いた?」
彼につれられて私はタクシーに乗り食事に出かけた。
「何が?」
タクシーに乗るなり 彼にそう 言われた。
「俺の正体。」
きっぱりという。
「今日だけど、なんで?」
私は何も考えずいった。
そんな私に彼は吹き出した。
「プッ、さぁやらしいし・・・・」
隣で笑いが止まらない彼。
その態度は面白くなっかたが、今回ばかりは私が悪い。
いくら経理で社長と面識がないといっても社長の孫の名前ぐらい知っておくべきだった。
5年も勤めておきながら、織田という苗字だけでも反応しなければいけなかったのに・・・
よくある苗字っぽいけど、そうそうない苗字・・・
しかし何年ぶりだろうか・・・
家族以外で名前を呼ばれるなんて。
いや・・・こいつの場合は名前といっていいのか?
少なくても5年ぶりかな。
苗字以外で呼ばれるのは・・・
学生時代私の名前を呼ぶのはただ一人だった。
「さーや今日俺授業終わりだから放課後遊びに行こうぜ!!」
昼休み友達とお昼ご飯を食べていると電話がなった。
内容はデートのお誘い。
「いいよ。でも私金欠なんだけど・・・」
私はそういうと
「んじゃ、沙耶のうちにしよう。」
少し考えたのか しばらくして 浮かれた声が聞こえてきた。
「コバ、今日カラオケに行こぉ」
放課後友達が誘ってきた。
「ごめん。今日彼がバイト休みなんだ。だからまた今度でいい?」
そういいながら私は昇降口に急いだ。
「あいかわらずラブラブね。もう何年だっけ?」
友達はあきれながら聞いてきた。
「3年だよ。私達はいつまでもラブラブなの!」
そう友達に言い切った。
そのときは本気でそう思っていた。
彼とは私が高校2年の時から付き合っていた。
2つ上の彼・・・
彼は大学を私は短大を・・・
それぞれ卒業したら私たちは結婚する予定だった。
でも一体どこで歯車は狂ってしまったのだろうか。
ただ私だけが最初から狂っていたことに気付かず、一人ピエロだったのだろうか。
彼は4年生、私は2年生になった頃、お互いに就活が忙しく会えない日が続いていた。
でもそれは口実に過ぎなかった。
私は夏には織田コーポレーションに内定が決まった。
しかし、彼はなかなか内定が取れなかった。
私はそんな彼になんと声をかければいいかわからず、避けていた。
少し頭を冷やし彼と向き合おう。
そう思い彼の部屋をいきなり訪れた。
大学から一人暮らしをしていた彼の部屋の合鍵を使って 私は部屋の中に入った。
そこにはとんでもない光景が 目に入るとも知らずに浮かれて。
私たちをいつもバカップルとからかっていた友達は彼と同じ大学に行っていた。
私は親友だと思っていた。
彼の部屋のベッドで彼と友達が裸で抱き合っているのを見るまでは・・・
私は知らなかった。
彼女と彼だけが知っていた真実・・・
彼らが元カレ・カノだったということ。
周りに気付かれないうちの上で二人の関係が終わっていたことを・・・
終わっていなかったのだ、彼女にとっては・・・
私がそばにいない寂しさを彼女で紛らわした。
そう彼はいった。
私はもう一度 彼を信じることにした。
彼女のことは忘れて・・・・
夏が過ぎ、卒業間近になった頃
彼女から呼び出された。
わざとなのかきっとそうだろう。
私の誕生日に・・・。
2年ぶりにまともに会った彼女はとても綺麗だった。
きっと彼でなくともすぐにいい人が見つかるだろう。
そう思えるくらいだった。
それが、単なる私のエゴだったと今ならわかる。
「私妊娠したの。彼の子よ。今、3ヶ月なの。意味わかる??私たちまだ続いているの。コバには悪いけど、そういうことだからそろそろ彼を返してくれない?」
目の前が一瞬にして真っ暗になった。
私がなにも言わないことをいいことに彼女はまだしゃべり続けた。
「彼、言ってたわよ。あれから半年も経ったのにあなたは抱かせてくれない。やっぱりお前が一番だって・・・彼が別れない理由はわかるわよね?ただ内定を貰うためにコネがほしいの。だからあなたとはまだ別れられないって。」
何も言えなかった。言いたくもなかった。
ただ自分に腹が立ち、悔しかった。
一度、裏切った人をなぜ信じたのだろうか・・・
私と会った後に彼は彼女とも会っていた。
もしくはその逆・・・
彼は、私を裏切っていた。
どうやって家に帰ったかはよく覚えていない。
気がついたら自分の部屋にいた。
そこには、彼からの誕生日プレゼントが届いていた。
赤やしろや紫と綺麗に彩られている「アネモネ」の花束・・・
花言葉は、「儚い恋・薄れいく恋」
今の私にぴったりだ。
ずっと彼から電話やメールが来ていた。
しかし私は電源を切った、そして・・・
すぐに携帯を解約し、実家を出た。
両親には、絶対に誰にも居場所を教えないでほしいと念を押して。
単位はとっていたし内定ももらっていた。
あとは卒業を待つだけの私は学校にも行かなかった。
そうやって私は彼から逃げたのだ。
それから5年
どんなにだけ避けたくとも 男は寄ってくる。
それを利用し男を寄せ付けないように合コン女王になった。
そして出合ったオダ ノブマサに・・・