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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

おっぱいハンター こころ

作者: ピッチョン


 私の名前は笹宮(ささみや)こころ。どこにでもいる普通の女子高生! しかしてその実態は、クラスメイトのおっぱいの感触を確かめるべく日夜奔走する『おっぱいハンター』なのだ!

 ゆけ! 『おっぱいハンターこころ』!!

 ぱらっぱっぱぱぱらぱらぱ~。テーマ曲が私の頭の中に響く。

 ……自分で言うのもなんだが、『おっぱいハンター』という呼称はひどくないだろうか。『間接キスハンター』はまだこうクールでシャープな印象がある気がするが、『おっぱいハンター』に至っては両手をにぎにぎしながら笑みを浮かべる変態さが感じられる。

 断っておくが私は断じて変態ではない。変態かどうかの基準は人によるだろうが私は違う。私はただ、『おっぱい』という素晴らしき母性の象徴に惹かれた哀れな羽虫にすぎない。

 おっぱいに魅了されるのは人間として当然のことだ。人間がこの世に生まれ出て初めて飲むものは何か? 母乳だ。乳房の柔らかさを感じながら乳首より母乳を吸う行為は遺伝子に刻みこまれた本能が命令する最初の仕事。私達が人である以上おっぱいを求めることは運命づけられているといっても過言ではない。あ、別に母乳至上主義というわけではないし液体ミルク販売によってお母さん方の負担が減るのは喜ばしいと思うし子供が元気に育てばなんでもいいと思っているのでとにかく子育て頑張ってくださいと言いますか――。

 閑話休題。

 三つ子の魂百までならぬ、幼児の魂一生まで。人がおっぱいに惹かれていることは芸術品を見れば分かってもらえるだろう。

 絵画や石像など題材は様々あれど裸婦を扱ったものがいかに多いことか。ヴィーナスの誕生、ミロのヴィーナスなどの有名なものは元より、ゴヤやピカソやマネなど著名な画家たちもこぞって裸婦を描いている。またヌードに関する西洋美術史をとりあつかった書籍もたくさん出ていることから、昔から人々の関心が高かったことが窺えるだろう。それは何故か。

 人は女性の裸の曲線や肌のなめらかさに美を感じているのだ。そしてその裸身の象徴とも言えるものが胸に二つそびえ立つおっぱいなのである。

 これで私がおっぱいに惹かれるのは全然おかしなことではないというのがわかっていただけただろう。

 さて、私にとって幸運だったことが二つある。

 ひとつは私が女であること。これは同性であればおっぱいを触る難易度が極端に下がるからだ。昨今の創作物においてもおっぱい好きな女性キャラというのは増えてきていると思う。それはひとえに男性が女性に対してセクハラじみたことをするのが目の敵にされることが多くなった情勢によるものかもしれない。でもデップリと太ったメガネの男性がはぁはぁ言いながら女性の胸を揉むのと、可愛らしい女子高生がはぁはぁ言いながら女性の胸を揉むのを比べると後者の方が絵になるのは自明の理ではないだろうか。

 そしてもうひとつは今の季節が初夏に入ったということ。私の学校では六月の上旬にプール開きが行われる。以降は夏休みまでの間、体育の授業が定期的に水泳になるのだが、それがどういう意味を持つかは言わなくてもわかるだろう。水着の着替えというのは通常の体操服の着替えと違い、生まれたままの姿になる瞬間がかならずある。そのときを狙えばクラスメイトのおっぱいに触れることも簡単だ。

『○○ちゃんってスタイルいいね~。うらやまし~』

 よくあるじゃれ合いを装い相手の胸を揉む。このときあくまでも相手の体つきを褒めるのが肝要だ。幸いなことに私の胸はあまり大きくない。なので『私全然だからうらやましい』と添えることで相手は私を気遣い、触ることを許してくれる確率が上がる。

 また相手を選ぶのも重要だ。タオルで全身を隠しながら着替えをする女子には近づかない。そういう子たちはボディタッチにも良い顔をしないからだ。まぁ水泳とはいえ着替えで思いっきり全裸になる女子もそうそういないが、下を隠していても上をオープンにしている女子は狙う価値がある。そういう子たちはおっぱいを見られても気にしないか、気にすることの方が恥ずかしいと考えているので多少のいじりは問題なかったりする。

 基本的には陰キャよりも陽キャの方が体を触りやすいのはイメージからも分かるだろう。だからこそ私は間接キスハンターだったころから明るく元気なキャラクターを徹底し続けクラスの女子全員と仲良くなり、多少の軽口は許される下地を作ってきた。

 その成果を、今ここで発揮せずにいつ発揮するというのか。

 水泳の授業が終わった女子更衣室。女子たちが騒がしく着替える中、私はタオルで体を拭きながら高速で周囲に目を配る。獲物はどこだ。私の目は赤く光ってはいないが、まさしくその姿はハンターそのものだっただろう。

 斜め後ろに絶好のターゲットを見つけた。私はさも今気付いた風に話しかける。

「高梨さんの胸、大きくて形いいね~。うらやましいな~」

 クラスメイトの高梨さんは髪を拭く手を止め、タオルを首から掛けて自身の胸を見下ろした。

「そう? そんなにだと思うけど」

「いやいや、私のと比べてよ。全然違うから」

 私は自分の胸を張って高梨さんに見せつけた。ここが私なりのポイントだ。自分からバストを見せることでそういうノリなのだと相手に認識をさせ、その後の行動に恥辱を感じさせないようにする高等テクニック。私はさらに自分の両胸を外側から挟んで押して小ささをアピールする。

「私Aなんだけど高梨さんいくつ?」

「えーと、C、だったはず」

「ホント? もっとあるかと思った~」

 某恋愛シミュレーションゲームの親友のように、見ただけでスリーサイズが分かるわけではない。ただこうやって言っておけば相手も悪い気はしないだろう。

 高梨さんが苦笑しながら「ないない」と否定したのを確認してから、私はいよいよ例の言葉を口にする。

「ねぇ、ちょっとだけ触ってもいい?」

「えっ? なにを?」

「胸」

「あたしの?」

「うん」

 ここで相手の表情をよく見ることが大切だ。少しでも嫌がる素振りを見せたら撤退しなければいけない。あくまで双方の合意に基づいておっぱいを触らなければおっぱいハンターとして三流だ。

 高梨さんはわずかに怪訝そうな顔をしてから、「まぁ、いいけど」と了承してくれた。

 いぃぃやっほぉぉぉい!!

 胸中で快哉を叫びながら私は努めて平静を装いつつ高梨さんのおっぱいに手をのばした。

 ふに、と指先が柔らかな山に沈む。その弾力を確かめるように何度も指で押しては引っ込める。

「おぉ~」

「く、くすぐったいんだけど」

 高梨さんの言葉を無視して、今度は手をお椀型に丸めてその山を頂上から覆い、五本の指すべてを動かしむにむにと感触を楽しむ。

「すご、柔らか……」

 その心地たるや名状しがたいものがある。よく耳たぶや走る車から手を出したときの感触をおっぱいの感触になぞらえたりするが、実物は全然違う。手のひらが、指の一本一本が肌に張り付き、沈み込んでは弾力に戻される。また水泳後なので肌が湿っており、それが更に官能的な感触を生み出している。何回揉んでも揉みあきることのない極楽がそこにはあった。

「んっ――笹宮さん、そろそろもう……」

 さすがに楽しみすぎたか。私が手を離そうとしたとき、横からにやにや声が聞こえてきた。

「お二人ともなーにやってんのかな~?」

「更衣室でどーどーと淫行なんて感心しませんなー」

「こころんってそんな趣味があったんだぁ」

 現れた三人はクラスの中でもかなりノリのいい子たちだった。三人ともすでに水着は脱いで下着姿になっている。

 私は心の中で『しめた』と思った。三人に向かって笑いかける。

「いやぁ、高梨さんの胸が大きかったから御利益にあやかろうと思って」

「あぁー確かに」

 三人が私の胸を見て納得した。すかさず私は付け加える。

「高梨さんのすっごい柔らかいんだよ」

 すると私の狙いどおり三人がノってきた。

「え、マジ? 私にも触らせて」

「私も私も~」

「どれどれ、私も見てあげよう」

 私が離れると三人は高梨さんの両胸に各々手を伸ばし、揉みしだき始めた。

「ちょ、待って――」

「ほうほうなるほど」

「あー確かに」

「揉み心地いいかも」

 三人の猛攻にそれまで我慢していた高梨さんが吠えた。

「あたしの胸で遊ぶな!」

 顔を赤くして自らの胸を腕で隠す。さて、ここからがおっぱいハンターの腕の見せ所。

 まず私は両手を合わせて高梨さんに謝った。

「ごめん、ちょっと調子に乗り過ぎたよね。本当にごめんなさい」

 そう言いながら私は自分の胸を突き出し、顔を少し逸らして恥ずかしそうに呟く。

「おわび、になるか分からないけど私ので良かったらいくらでも揉んでいいから……。でも――」

 ちらと三人のうちの一人の胸に視線を向ける。ブラに包まれたその二つの山は、高梨さんと同じくらいの大きさがある。

「私なんかじゃ高梨さんの胸の代わりにはならないだろうけど」

 視線を感じ取った女子は私の意図に気が付いたようで半眼を向けてきた。

「それは私が代わりに胸を差し出せってことかい?」

「私は一言もそんなこと言ってないけどこの四人の中で一番胸が大きくて高梨さんと近いのは一人しかいないね」

「めちゃめちゃ言ってんじゃん! あぁ分かりましたよ! 私の胸を好きなだけ揉みゃいいじゃんよ!」

 ブラを脱ぎ捨て胸をあらわにする。私と他の二人はやんやと拍手で歓迎したが、高梨さんは『え、あたしが触る流れ?』みたいな顔をしている。

 さぁ、今が好機。

「高梨さんは触りたがってないみたいだから私が代わりに触っておいてあげるね」

 言うが早いか私は後ろから抱き着くようにその胸を揉んだ。

「ひぁっ! 笹宮! あんたが触ったら意味ないでしょうが!」

「いやぁ、せっかくの綺麗な胸だから触っとかないと損かなって」

 形は似ていても弾力は高梨さんと少し違う。けれどその揉み心地の素晴らしさは変わらない。私は感触の違いを確かめるように指を動かした。それを見て一人が笑った。

「こころん揉み方エロすぎ~」

「違う違う。勝手に指が動くんだよ。ほら、触ってみてよ」

「ほんと~?」

 横で見ていた二人に話を振ると私と同じように胸に触り始め、うんうんと頷いた。

「あーこれは揉みたくなるのも分かるやつ」

「たまりませんなぁ」

 三人がじゃれ合う姿を見て私は内心でガッツポーズをした。

 これこそ私が望んでいた、『みんなでじゃれ合えば誰のおっぱいを触ろうが合法』状態である。

 あとはじゃれ合いのどさくさに紛れて他の女子のおっぱいも揉むだけ。もちろん私自身が揉まれるリスクもあるが、慎ましやかな私の胸なんて揉んでもたいして楽しくないし優先的に狙われることもない。安全な位置に立ったまま様々な女子のおっぱいを堪能できる。最高じゃないか。

 さっそく次の獲物に狙いを定め、私はこっそりと手を伸ばした。



 夏はいい。暑くなることで肌の露出が増えスキンシップがしやすくなる。私のようなおっぱいハンターにとって最高の季節だ。夏休みに入るまでに可能な限りクラスの女子のおっぱいをハントしてやる。

 水泳の授業の後そんな決意を抱いた私だったが、学校を終えた今現在クラスメイトの織川(おりかわ)天音(あまね)の部屋で正座させられていた。

「あの……織川さん」

 話しかけると長い前髪の奥からキッと睨まれた。話しかけることも許されないらしい。

 私が織川さんの部屋に来るのは初めてではない。以前私が間接キスハンターとしてクラスの女子全員との間接キスを目論んでいたときに織川さんにバレ、本当のキスの素晴らしさを教えてもらったときから何度もここに来てはキスをしてきた。

 学校ではおっぱいを楽しみ放課後はキスを楽しむ……なんて最高なんだろうとうきうきしながらやって来たというのに。私がひとりでがくりと項垂れていた。

「何で私が怒ってるか分かってます?」

「え……」

 心当たりはまったく無い。きょとんとする私に織川さんが怒りの地団駄を踏む。

「今日の! プール! 更衣室!」

「更衣室……? なにかあったっけ?」

「とぼける気ですか!? 高梨さんたちと楽しそうにしてましたよね!?」

「あぁあれか」

「あれかじゃないです! 間接キスの次は胸ですか!? 節操がないにもほどがあります!」

 織川さんには私の狙いが何かはバレていたらしい。まぁ間接キスのときもバレたので今更私の性格や嗜好がバレようが別に構わないのだが。

 ただ、私のやることに口を出されるのはおもしろくない。

「織川さんには迷惑かけてないんだからいいじゃん」

「――――」

 私の言葉に織川さんが絶句した。よろよろとよろめいて床にへたりこむ。そんなおかしなことを言っただろうか。

「えっと、織川さん?」

「……私達の関係ってなんですか」

「関係?」

「私と笹宮さんの関係です。ただの友達ですか?」

「ただの友達じゃないよ。キス友達じゃん」

「キ、ス、友達……?」

 そう。私と織川さんはキスをする友達――つまりキス友達だ。俗に言う口だけの関係というやつか。

 織川さんはふらふらと立ち上がるとベッドにどすんと倒れ込んだ。顔をうつ伏せにしたまま呟く。

「……もういいです。今日は帰ってください」

「えぇ!?」

 キスは? せっかく織川さんとキスが出来ると思って来たのに。

「結局キスさえしてくれるなら誰でもよかったんですよね」

「そ、そんなことないよ! 織川さんだから良いんだよ! 他の人だったら絶対にこんな関係にならなかったと思うよ、うん」

 私は必死にご機嫌をとろうと頑張った。そうじゃないとキスが出来ないからだ。

 織川さんがちらと顔を横に向けて隙間から見てくる。

「本当に?」

「ホントホント! 私がキスするのなんて織川さん以外考えられないから」

「……じゃあ何で他の女の子の胸を揉んでたんですか?」

「それはえーと……ほら、女の子の胸って触ると気持ち良くない……?」

「私のを揉めばいいじゃないですか」

「はい?」

 一瞬何を言われたのか分からず聞き返すと、織川さんは体を起こし自らの胸に手を当てた。

「だから、私のを、揉めばいいじゃないですか」

「……いいの?」

 織川さんはこくりと頷いたあと、「ただし」と付け加えた。

「ただし、私にも笹宮さんの胸を触らせてください」

「それはいいけど、私のなんか触っても楽しくないよ?」

「私だってそんなにあるわけじゃないですから。笹宮さん的にはもっとあった方がいいんでしょうけど」

「でも私より胸あるよね?」

「……なんで分かるんですか?」

「キスしてるときに結構胸が当たること多いから。それで直接触ったらどうなんだろうって思って、だったら実際にやってみようと決行するに至ったんだよね」

「そこでどうしたらクラスメイトの胸を触りに行くって発想になるんです……。私に頼めばいいじゃないですか」

「だってキスさせてくれるのに胸まで揉ませてくれなんて言ったら図々しすぎない?」

「キスしてるのに何を今更……はぁ。ほら、じゃあ上脱いでください。私も脱ぎますから」

「え、うん」

 …………。

 部屋に上半身が裸になった女子高生が二人。更衣室なら全然平気だがこうやって二人きりのときに服を脱ぐのはなかなかに恥ずかしい。ベッドの上で顔を見合わせ、私は苦笑する。

「いやー、なんかいけないことしてるみたいに見えるね」

 織川さんはくすりともせずに答える。

「いけないことしてるんですよ」

 言い終わると同時に織川さんが私の胸に手を伸ばしてきた。そして控えめな私の胸を捕らえるとゆっくりと揉み始めた。

 私も負けじと織川さんの胸を揉み返す。高梨さんと比べると小さいが、弾力と張りで言えば織川さんの方が上だ。揉みごたえはこっちの方があるかもしれない。

「舌、出してください」

 命令されて私は舌を出した。私達がキスをする始まりはこうやって織川さんに命令されることが多い。

 織川さんが私の舌に自身の舌を絡ませる。蛇が絡み付くように激しく舌が絡み、互いの唾液を混ぜ合う。その間も胸を揉む手を止めることはしない。

 確かにキスをしながら胸を揉み合うなんていう行為はいけないことだろう。もしここを織川さんの親御さんに見られでもしたら何も言い訳できなくなる。

 と、織川さんが舌を離した。糸を引いた唾液が切れ、織川さんが吐息交じりに言った。

「……今後、他の女の子の胸を揉んだりキスしようとしたりするのをやめてください」

「え」

「もし守れないなら、私はもう笹宮さんとキスするのをやめます」

「えぇ!?」

「でももし約束してくれるなら、私が好きなだけキスしてあげますし、好きなだけ胸を揉ませてあげます」

「……そんなに身を削らなくていいんだよ?」

 心配すると何故か織川さんががくりと肩を落とした。申し出自体はすごく嬉しいのだが、これ以上織川さんの負担を増やしていいものかとは思う。

 すると織川さんが鬼気迫る表情で私に詰め寄ってきた。

「削ってない! 笹宮さんとキスするのも胸を触り合うのも私だけの特権なんです! 私以外の女の子とそういうことをして欲しくないんです!! 笹宮さんがそれでも他の女の子がいいって言うならもう二度と関わりあいにならないんですけどそれでいいですか!?」

 胸を揉むのも忘れて私は織川さんの言葉を胸中で繰り返した。するとある結論が出てくる。

「まるで告白してるみたいに聞こえるけど」

「告白してるんです」

「…………」

「…………」

「告白ぅ!?」

 織川さんの顔がかぁっと赤くなっていき、私を突き飛ばすとベッドに顔をうずめて枕を後頭部にかぶせた。

 いや、うん。冷静になって考えれば考えるほど織川さんのこれまでの行動が彼女っぽいなぁと思えてきた。私としてはたんにディープキスをしてくれる優しいクラスメイトだという認識だったのだが、織川さんとしては部屋に招き入れて何度もキスをしている時点で付き合っているようなものだったのだろう。

 では織川さんの告白を受けるかどうかだが――。

 私は頬を掻いてから織川さんに近づいた。その剥き出しの白い背中をそっと撫でる。

「キス、途中だったから最後までして欲しいな」

 織川さんが顔を上げて振り返った。嬉しいというよりも驚いている顔だ。

「……それって」

「うん。もうこれからは織川さん以外とはキスしないし、胸も触ったりしない」

 少し考えただけで答えは簡単に出た。ハンターとして生きていくのは容易いが、織川さんのような人と巡り会うのは簡単なことではない。現に今の私はもう織川さんとキスをする前の私に戻れない。それだけ織川さんという存在が私の中で大きくなっているのだ。

「これで私達、恋人同士だね」

 微笑んだ私に織川さんが飛びついてきた。上半身を密着させたまま織川さんが私にキスをする。勢いに押されてベッドから滑り落ちた。背中が床に当たって冷たい。それでも織川さんは私に覆いかぶさるようにしてキスを続けた。

 恋人になってからの初めてのキス。していることは同じはずなのに、いつもよりいとおしく感じる。これが恋人効果なのか。まだまだキスも未知の領域がたくさんありそうだ。

 では恋人になって初めてのおっぱいはどうだろうか。私は織川さんの胸を揉もうと密着した体の隙間に手を入れて――。

『天音ちゃーん? お友達来てるのー?』

 ドアの向こうから聞こえてきた声への反応は神速だった。寝坊したときに時計を見て覚醒して動き出す速さの数倍はあっただろうか。弾かれたように私達は体を起こすと脱ぎ散らかした下着と制服を身につける。

 ほぼ同時に着衣を終え、織川さんが返事をする。

「――うん、いつもの笹宮さんが来てるけどなに?」

『飲み物とかいる?』

「大丈夫。欲しいときはとりに行くから」

『そう。何かあったら言ってね』

「わかった」

 足音が遠ざかっていくのを聞いてから二人で安堵の息を吐く。ふと織川さんを見てぷっと吹き出した。

「ボタンかけ間違ってるよ」

「……笹宮さんもね」

 二人で笑いながら制服を整えた。

 今無理して焦る必要はない。まだまだこれから時間はたくさんあるのだから、ちょっとずつ恋人としての初めてを増やしていこう。

 それこそが今の私の新しい目標だ。

『おっぱいハンターこころ』は死んだ。いや生まれ変わった。

 もうハントなんてする必要はない。そんなことをしなくてもすぐ隣に私を満たしてくれる人がいる。

 さしあたってはキスと胸を揉む以外に恋人と何をするべきかを考える必要があるだろう。

 だが安心して欲しい。私にはこれまでハンターとして培ってきた技術と経験、思考力がある。必ずや織川さんとの日々を幸せに彩られたものへとしてみせよう。

 負けるなこころ! 頑張れこころ!

 愛を極めるその日まで、戦いは終わることはないのだから!



             終

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