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五大組織同盟の結成

 渚の一撃で沈んだ張も、今は何事も無く着席している。


「それで、どうなのかえ? 主の答えを聞いていないが」


 静まり返る会議室に、これ以上はもう待てないと口を開く。全員の視線が、腕組みをしてだらしなく椅子に腰かける張へと向いた。


 風になびく布のようにヒョロヒョロとした張は、特徴的な糸目を愉快気に伸ばして、クスクスと不気味に笑いだした。また先程のように狂気じみた演説が垂れ流されるのかと思うと、沙羅は内心でゲンナリとする。


「安心しなヨ、沙羅チャン。さっきのは、悪乗りサ。可愛い催し物サ! でも、この同盟には悪乗りできないネ」

「どうしてよ」

「僕等がこの国に滞在するのはネ、この国を根幹から潰したいからサ」

「戦わないと、日本人以外も全員喰われるのよ?」

「喰われないよ。僕等は強いからネ。SFがファンタジーに負けるはずがないヨ」


 自分の技量に一切の疑いを持たない彼の姿勢。沙羅は流石だと褒めざるを得なかった。自分だけで完結する奴ほど生き残る――守るべき相手がいなければ、その力を自分だけの為に使えるからだ。


 そして、張の技量は沙羅自身がその身をもって体験した。あれで本気だなんて思ってはいない。『紅龍七』首領――張・紅露は、個で最強なのだ。


 そして彼が飼いならす『鋼鉄の殺戮師団』は群で最強の兵士。


 『紅龍七』は群と個の二面性の強さを持ち合わせている。


「本当かしらぁ? 私が最近入手した情報だと、ご自慢の兵士は整備不良らしいじゃない? そもそも、この国では鉄や油が入手できない。そうよねぇ、だって、日本の輸出入はルーガンが一任されているものね?」

「その通りだよ。密輸には厳しく監視しているし。仮に視線を潜り抜けてもそれは微々たる量だからね」

「たまげたネ。いったい誰だイ? そんな重要な機密を漏らした奴ハ」

「守秘義務ですので、教えられないわ」


 情報を統べる女王は、子猫というより肉食獣のように獰猛な迫力を纏っていた。


 貿易ルートの全てを抑えているルーガンも、『紅龍七』の現状を知って、企業戦士として彼を商売の舞台に上がらせてやろうという気概を感じた。


「張殿、ご自慢の兵士が使えなくちゃ、僕等に軍配が上がりそうだね。一般兵士だって、僕の『大日本武装警邏隊』に比べれば数は劣る。僕達からしたら残る障害は張、キミだけのようだね」

「ここで僕を殺ス?」

「商談を終わらせるつもりはないよ。互いに嬉しい商談成立の案を提示してもいいかな?」

「聞いてみようかナ」

「僕は張殿に、多量の油と鉄、その他の機材を提供しよう。その代わり、張殿には有事の際にだけ、僕等と肩を並べ共に戦うっていうのは」

「――ちょっと待ちなさいよ! それって、張にだけ得があるじゃない。部品を渡すだけ渡して、コイツが裏切ったらどうするのよ!」


 沙羅の抗議はもっともだ。渚とマグダレーナも良い顔をしてはいない。だが、ルーガンはそっと手をかざして沙羅を止める。


「もちろん、与えるのは普通の機材じゃない。『繁栄には美酒と口付けを』が独自に開発した油を注がせてもらう。これは、ある材質と触れ合うことで、鉄を溶かす事が出来る代物でね。その、ある材質というのが、油と共に提供する鉄なんだけど。どうかな?」

「断ル!」

「じゃあ、しょうがないかな。沙羅殿、渚殿、マグダレーナ殿。今すぐに私兵を『紅龍七』に向かわせてくれるかな。なぁに、ご自慢の『鋼鉄の殺戮師団』は整備不良らしいじゃないか。まともに稼働する奴なんて微々たるものだろう? そうだ、ファンタジーがSFに勝てないか試してみようか。ウチからも、第三次世界大戦に使用された化学兵器を武装させた警邏隊数千人を向かわせるよ。きっと、嬉々として戦ってくれるだろうね」


 一方的な商談――どこが互いに嬉しい案なのか、疑問に思う。


「なるほド。ああ、面白くテ、互いに嬉しい商談ダ。成立したとしても、僕はその油だけ抜くヨ。僕なら出来るからネ。残念でしタ」

「では、こうしよう。緊急時は手助けしてあげてもいいヨ。貿易に僕も噛ませてくれたらね」

「そうしたら、張殿が裏切るだろう?」

「分からないヨ」

「貿易に一枚噛めればいいんだね?」

「もちろんダ。僕は働きたいネ」


 ルーガンは近くのノートパソコンを手早く打ち込み、一枚の紙を印刷した。


「わかった。じゃあここにある書類にサインを書いてもらえるかな?」

「だから、待ってって! そんなことしたら」

「勇ある獅子ハ、もっと静かにしていた方がいイ」


 張は嬉々として契約書にサインをした。


「サインしたよ。これで僕等はお友達ダ」

「サイン、したね?」


 沙羅はルーガンの悪い顔に薄ら寒さを感じた――企業戦士を名乗る彼がしていい顔じゃない。張も不穏な空気を悟ってか、張り付かせた笑顔に困惑を交えた。


「張殿は細かい事は気にしないみたいだね。よぉく、契約書類を読んでみなよ」


 全員が張の脇に立って、一緒に契約書類に書かれている内容を眼で追って行く。そこに書かれた悪魔のような内容に一同の表情が引きつった。張に至っては顔面蒼白にしている。


「だ、騙しタ! これは詐欺ネ。悪質な商売してて恥ずかしくなイ!?」

「悪質? 僕は書類を渡してサインしてくれって言っただけだよ。間違いなくサインは張殿の意志だよね?」

「あんたの人を見抜く目って、こういう時に使うものだっけ?」

「あはは、これで僕の大事な社員に少し楽をさせてあげられるよ」


 そこ書かれた内容――『お菓子』の輸出入を張・紅露は、一任されることを誓う。『繁栄には美酒と口付けを』を含む関係組織への抗議暴力の一切を禁じ、貿易を邪魔する魔を排除するべく努める。報酬は必要最低限の機材と油。


「ちなみに、必要最低限というのは兵士一体分だから。頑張ってね。一年働けば十二体ものメンテナンスが出来るんだ。嬉しいよね? ボクも嬉しいよ、従業員が増えるのはね。一度、交わした約束をまさか、保護にはしないよね」

「やるヨ! 分かったから、今日はもう帰ル! 明日からだからネ!」

「よろしく頼むね。仕事の場所とかは、こちらから連絡するから」


 不貞腐れた子供のように会議室を出て行った張と、その後姿を満面の笑みで見送るルーガン。


「まぁ、これで問題は解決?」

こんばんは、上月です(*'▽')



次回の投稿は12日の0時を予定しております!

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