五大組織の招集
久しぶりの招集を仕切るのはルーガンだった。
「此度の招集は前もって使いから聞いていると思うけど、改めて今回の会議の議題を確認しようか。まず一つ、僕がどうして『大日本武装警邏隊』を組織したか。一つ、今後の『紅龍七』との対応について」
ルーガンに向けられる疑念の眼差しを向ける『初夜に耽る子猫の吐息』『無明先見党』の姫と女王。沙羅は事情を知っているので、進行に口を挟む気はなかった。完全に疑念が晴れたわけではないが、今はルーガンの言葉を信じつつ、『探求者の家』では『魔法使い』の捜索に精を出してもらっている。
今頃は永理の指示で五十名近い魔術師が、躍起になって街を徘徊している。永理は人類延命の為に戦争を引き起こし、その災厄の根源である『歪み』を消失させたのだ。二度とそのような破滅的神秘を引き起こさせてはならないと、昼夜関係なく歩き回っている。
『魔法使い』『歪み』『第四次世界大戦』『人と魔』について、誰もが理解し意見できるようにゆっくりと話す――次第に顔色を蒼白に変えていく渚とマグダレーナ。ただ彼女達も事の重要性に打開策を即座に思考し始める。
「ここまでが、僕の知るファンタジーだよ。もし、その戦争が数十年数年後の話であるならば、矢面に立って指揮するのは、ファンタジーを専門にする『探求者の家』だろうね。僕等は出来る事を無駄なく動くだけだ。それでも、数は必要だと判断して僕は『大日本武装警邏隊』を組織した」
「ふむ、そうであるか。だが『紅龍七』の存在ある限り、大戦に重点を置くことは出来ぬな」
「そうよねぇ。ただの人の群れであれば容易に下せるのだけれど。問題は『鋼鉄の殺戮師団』と、その改良版」
「そう、『紅龍七』の脅威は、人ではなく、その技術によって生み出された殺戮兵士。魔と呼ばれる相手にも効果的な働きを見せてくれる」
「何を考えておるのかえ? まさか、『紅龍七』を引き込もうなどとは考えておらぬだろうな。止めておけ、と言っておく」
「『魔』と呼ばれる存在が、どのような相手なのかは分からないけど、『鋼鉄の殺戮師団』なら、大きな戦力として申し分ないと思うわねぇ」
「二点目はこの事でしょ、ルーガン?」
一同の視線を向けられてもニコやかな笑みを浮かべ続けている。
「僕は五大組織同盟を築くべきだと言っておこうかな。沙羅殿はどのように考える?」
沙羅殿――呼びなれない呼称に、背筋がむず痒くなる。
護衛を含めた全員の視線が今度は沙羅に向けられた。まるで自分の一言で事が運んでしまうかのような緊張感。
「私は、そうね。もし本当にそんな戦争が起きるのだとして、いくらファンタジーに生きてきた私達でも、数が足りなさすぎる。ファンタジーにとって対をなすのはSF。枠の外側の力というのは誰もが対処できないものだと思うわ」
「つまり?」
「私も組織加盟には賛成よ。ただ問題は張・紅露ね。アイツって本当に快楽主義で話が通じるか分からない」
渚もマグダレーナも良い顔はしなかった。
爆弾を抱えるような選択だからだ。最大の脅威は味方になれば心強いが、その反面に裏切りというデメリットが伴う。内部で爆ぜれば全てが粉微塵に吹き飛ぶ――修復できぬ大打撃を被るのだ。そうなってしまえば、一生『紅龍七』に対抗する戦力は築けないどころか、彼に『支配』の手綱を握らせることとなる。
「賛成しておこうかのう。このままでは両方を相手にせねばならぬ。だが、裏切り覚悟で迎え入れれば相手は『魔』のみになる」
「私的には、もう少し慎重に進めるべきだとは思うのだけれどねぇ。まぁ、悠長な事も言っていられないのでしょうから、私も賛成よ」
全員から承諾を得られた会議は第二ステップへと進む――ルーガンが携帯端末で何処かに通話を始めた。スピーカーモード――通話主が張・紅露だと分かった。
流石に行動が早いと賞賛すべきか、嗜めるべきか悩んでいる内に、通話は切れた。静寂に包まれる大企業の会議室。
「これから来るみたいだ」
「こんな場所を襲われたら、私達は助からないわねぇ。ふふ、ちゃんと逃げ道くらいは確保しておいた方がいいわね」
「逃げたところで、何処に逃げる? 私達がこの場にいることは奴に知れた。各組織の本部を強襲でもされては、終いであろうに」
「ルーガン、あんたって人は」
「ははは、思い立ったら即行動だよ。手を子招いていたら勝機を逃すよ。僕達は堂々と構えて入ればいいさ」
余計な緊張で喉が渇き、沙羅が室内脇に設置された給水機に向かおうと席を立った。
「はい、これ」
「あ、うん。ありがと――て、ちょっ!?」
「そんなに驚くことはないヨ。お呼ばれしたから来たんだしネ。中々に面白そうな集まりダ」
沙羅は張から手渡されたコップを床に落とした。
こんばんは、上月です(*'▽')
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