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予言を残した魔法使い

 ルーガンが『魔法使い』というファンタジーに遭遇したのは、そう昔のことでもない。


「そうだね。沙羅殿が、『探求者の家』を設立したと同時くらいだったかな。僕はいつも通り国内外の物資搬入資料に目を通していてね。流石に毎日毎日の書類作業が続くと流石に飽きてくるんだよ。そこはキミも同じだろうね」


 世間話のような緊張感を崩した喋り方のルーガン――沙羅や背後に控える魔術師達は正反対に息をのむ面持ちで聞いている。どうでもいい箇所はすっ飛ばしてもらいたいというのが魔術師側の秘めた思いだが、口を挟もうとする者は誰一人いない。


 沙羅も気が長い方ではないが、ここで指摘でもして彼の気分が変わってしまっても面倒だった。だから耐える――表情に焦りを浮かばせずにジッと。


「僕は夜半にちょっと会社を抜け出してね――」

「ちょっと、総帥っ!? 勝手に抜け出したって、どういう事ですか‼ 護衛は、護衛は誰かつけましたか!?」


 慌てふためく黒服三人の反応は滑稽だったが、ルーガンは過ぎた事だと制した。


「息抜きなのに、堅苦しい護衛を付ける理由はないよね? 大丈夫だよ、息抜きと言っても新宿区内だ」


 新宿区と言っても結構な広さがあると沙羅は内心でツッコミを入れつつ、黒服三人に聞こえるように大きなため息を吐いた。


「話の腰を折らないで。こっちは、真剣なの。魔法使いという存在の脅威は、私も詳しくはないけど、『紅龍七』の脅威を遥かに凌駕しているわ」

「だ、そうだよ。キミ達のお説教は後で聞くとして、少し黙っていてくれるかな」


 沙羅をその真っ黒いグラサン越しに睨みつける。場を乱したのは彼等であるはずなのに、どうして自分が睨みつけられなくちゃいけないのか。釈然としないながらも、彼等が注意されたことがちょっとだけ面白かった。


「あれは高田馬場の高架下だったかな。壁面に描かれたアニメ絵を感心しながら眺めている男性がいてね。ちょっと興味が沸いたから話しかけてみたんだよ」


 よく見知らぬ男に護衛も付けずに話しかけられたな、と此処に居る全員が呆れ半分感心していた。


「本名か偽名かは分からないけど、アダム・ノスト・イヴリゲンと名乗ったよ。アダムとイヴを合わせて、永遠の二人に挟まれたノストは、ノストラダムスの事かなって。彼――アダムは、僕に一つの予言を残したよ。第四次世界大戦の破滅は逃れられないとね。だけど、争うは『人同士』ではなく、『人と魔』であると言っていた」

「第四次世界大戦? 争いは人と魔ってどういう」

「そこら辺については、ファンタジーに生きるキミ達の専売特許ではないかな」


 表社会に生きる彼等より自分たちの方が、『魔』の部分には精通している。いま思い起こされる魔――人間と意思を交わせる『悪魔』。人間を喰らう形崩れなる『異形』。それくらいしか、魔に相応しい存在は思いつかない。


 だが、異形という存在は、永理が生きていた旧時代に生きた災厄。この時代ではどの国でも存在は確認されていないはずだった。


 背後に控える魔術師達も各々に知識を集結させている。


「なるほどね。それで、魔法使いを自称するソイツとは、他には?」

「災害は常に内側から来るとは限らない。そう言って、彼は消えていったよ。過去に存在した魔法使いや魔術師、信仰会、飢えた狼などについて語った後にね。体感時間では三時間程話した気でいたが、時計は五分程度しか針を進ませていなかった。まさに、魔法のような時間だった」

「第四次世界大戦はいつ起きるの?」


 ルーガンは首を振るった。


 彼が物事の重大な個所を聞き逃すはずもない。有無も言わさずに、自分が語りたい事だけを語って消えたということだろう。


 第四次世界大戦の存在、人にあだ名す魔の存在――ここで沙羅は合点がいった。


「魔に対抗する為に、大日本警邏隊を再興させたってわけ?」

「正解だよ、沙羅殿。できれば、『紅龍七』の兵隊も合わせて戦力を整えたいところではあるが、そうもいかないだろうね。張は狂人だ。喜んで戦争に我が身を置き、敵味方関係なく全てを力の限り叩き潰すだろうね。それだと、魔に打ち勝った後に僕が困る。いいや、もしかすると、数百年後のことかもしれないけど。まぁ、いつでも対応できるように、日本国に働きかけたってわけだよ」

「よく、そんな荒唐無稽な話を貴方が信じたわね、そっちのほうが驚きよ」

「なんでだろうね。彼の話は確かに荒唐無稽な妄想にしか聞こえない。だけど、僕の直感が告げたんだ。これはただ事ではない、ってね。沙羅殿は僕の話を聞いて、どう思った? どう動こうと考える?」


 試すようなルーガンの問い――だがその口調と目付きは、今までの世間話をするような対応ではない。真剣そのものだった。だから沙羅は深く考える。


「一度、五大組織会議を開くわ。私だったらね」

「五大組織。それは、つまり」

「ええ、『紅龍七』も含めているわ。今のところ最大戦力はルーガンの『繁栄には美酒と口付けを』。そして、最大武力は張・紅露の『紅龍七』。ダメもとで一度話し合ってみるべきだと思わない? いい返事は聞けなそうだけど」

「簡単には決断は下せないね」

「そうね。だったら、『無明先見党』と『初夜に耽る子猫の吐息』の女王と姫様の耳には入れておいてもいいんじゃないかしら」


 沙羅の提案にルーガンは頷いた。

こんばんは、上月です(*'▽')



年明け一発目の投稿となります。

次回の投稿は6日の0時を予定しております

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