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余裕の秘密 知らぬは本人ばかりなり

 北村の宣戦布告のような告白から数週間。

 あれから自分は色々心配してたけど、あゆむの二の腕にしがみ付いて何時もべったり行動して居たせいか、駅のホームから突き落とされたり、頭の上に植木鉢なんかが降ってくる事も無かった。

 オレの心配しすぎだったかもしれない。

 何せ、ヤバいと思われたアイツ(北村)の姿すら町で見えなくなっていたから。

 ――アイツの顔を見なくて済むのは、よい事なんだけど。

 あゆむの話では、北村が施設の資料室にこもり、出歩かなくと同時に、蠅の動きはパッタリ無くなったらしい。

 あれだけあった更新もぱたりと止まり、ベルゼバブのべの字も見ないそうだ。


 その代わり、フェイトさんの方がよく動き回って居るようで、街中でよく見かけるようになった。

 町でちょくちょく会うときは、いつも動きやすいジーパンにエンジニアスーツのようなラフな恰好で、エージェントのように何時も忙しそうにしている。

 何をしているのか判らないけど、オレとあゆむの行き先で出会う事が多い。

 ――きっと偶然だろうけどね。


 そんな訳で、天使である自分で言うのもナニな位、平穏な時間が過ぎていた。



 そんな土曜、放課後の昼下がり。

 制服姿のオレと由紀は、歓楽街から少し離れた商店街を二人でトコトコ歩いていた。

 行き先はオレとあゆむの二人で荒らした洋菓子店ワシントン。――ボストンの姉妹店だ。

 コトのきっかけは、オレが店の事を由紀に話すと、もう食べれないと思っていたあの味がまた食べれると言う事で、彼女が、「絶対、大丈夫。 委員長ノアは学年会議だし、あんな歓楽街に行くのはバレないから」と笑顔をはりつけ、


挿絵(By みてみん)

「人生は楽しまなきゃ ソンだよ」、と、半ば強引にオレを誘ったのだ。

 ――(ノア)の居ぬ間に洗濯、と言う感じかもしれない。

 彼女にバレたら、後で つるし上げのような恐ろしい事になりそうだけど……。

 

 もっとも、ノアにバレないようにするつもりだったし、あゆむの方も「もう。そろそろ安全だろう」と安全に太鼓判を押していたから、気晴らしにコイツと一緒に街に出かける事になった感じだ。

 人生に いき抜きは大事だしね。


 「センパイ、このあたりでしたっけ?」

 「由紀。 たしか、この辺だったと思うよ」


 オレは記憶を頼りに、あたりをキョロキョロ見たわたしながら返事を返す。

 ――まだ日が高いアーケード街は、まだ早い時間と言う事もあり、まだ子ずれの主婦とかの人通りは結構多かった。

 

 「センパイ見つけましたよ、この看板の「ワシントン」と言う名前、ここが例の店ですよね。流石、店の作りからして、センスが良いですね~」


 店の外観を見て、センスが良いと目を輝かせて、女子高生のようにキャピルンと はしゃぐ由紀。

 オレがしばらく歩いているうちに、いつの間か自分たちは、例の店(ワシントン)に付いていたようだった。


 「……なんか店が変わってるけど……」


 はしゃぐ彼女を横目に、オレは看板を二度見して、目が点になっていた。

 店の上にかかがられた看板には間違いなく「ワシントン」と書いてある……。

 だが、しかし、オレの目に前にあったのは、前と同じ時代から取り残されようなボロイ猫の額ほどの広さのうす緑の洋館風の店。


 では、無かった。


 「変わり過ぎだよな……」


 オレは思わず、ポツリ言葉をこぼした。

 それは本心だった。

 ――店の広さは変わらないけど、ボロかった店の入り口は白いペンキが塗りなおされたようでピカピカだ。

 そして、何よりの改善点は、店の前に何を取り扱っているのかが一目でわかるようなイルミネーションの看板やサンプルが設置されていて、入り口も入りやすいように大きく開け放たれている。外にはゴミ一つ落ちていなくて、ショーウインドウには目玉商品が並んでいた。

 ――以前とは段違いの良さだった。

 どうやら店主の師匠が改装に本気を出したようだ。


 「このフルーツタルト、やっぱりココでもあるんだね。 実は、ボクも大好きなんだよ~」

 

 由紀はショーケースに小走りでかけよると、無警戒にショーケースに張り付き、中に並ぶお菓子を笑顔でガン見してた。


 「へぇ~、確かにおいしそうだよね」


 オレも彼女の隣でガラスに張り付いて中をのぞくと、其処にあったのはショーウインドウにならぶのは、カラフルな見た目からもわかる真っ赤なイチゴがのった美味しそうなフルーツタルトや、ケーキ類。

 きっと目玉商品の師匠の作品だろう。


 「……でも、この不細工なお菓子って、きっと規格外だよね……」

 「多分、ね」

 

 女子高生トークのような無邪気な由紀の指摘でオレがケースの端っこをみると、其処にあったのは、色の悪いシュークリームとかのヘタクソなお菓子がこっそりと申し訳なさそうにならんでいた……。

 SNSでネタになりそうなくらいのクオリティだ。

 これは店主の作った目玉商品……。

 ――いや、このクオリティーはつくった人が怒られる大目玉商品かもしれないな。


 「でも、食べたらキモ可愛い風で意外と美味しいのかもよ~」

 「……そう言う問題かよ?」


 

 オレは警戒心のカケラすら見せず、スカートが少しめくれたままショーケースをのぞき込むコイツを真顔でジッと見ていた。

 由紀は普通の女子高生のように無警戒で、オレの視線にまったく気づく様子は無い。

 こいつが普通の市民なら大丈夫だろう。

 けれど、自分らは天使。

  ――つまり、死刑囚だ。 つまり何時ハンターに襲われて殺されてもおかしくない立場なんだけど、コイツにはそんな事を気にする様子はサラサラないようだ。

 あくまでも、普通の市民と同じような感じで過ごしている。

  ―― 一体、コイツの襲われないと言う自信は何処からくるんだろ……?

 

 「センパイ。 せっかくだから中で食べれるみたいだし食べて行かない?」

 

  由紀はオレの疑問を知ってか知らずか、オレの手を引いて店の中に入って行く。




 「ココのラベンダーのフレイバーケーキ、美味しいからずっとたべたかったんだよね~」


 店主も奥に引っ込んでオレたちしか居ない静かな店内。

 そこにある、数席しかない店のイートインコーナでオレと向かい合って座る由紀は、アールグレイ片手に注文したケーキやタルトを上品に切り分け、笑顔を浮かべ目を輝かせてハグハク食べていた。

 

 「確かに美味しいけどさ……」


 オレは目の前にあるブラウニーをコーヒー片手にチビチビ食べながら、由紀に向かい顔をしかめながら、ポツリ返事を返しながらつづけた。

 ――確かに ココのお菓子は美味しい。 

 けれど、何時も引っかかるハンターへの不安があって心底楽しめないのが、正直なところだ。

 なのに、コイツはよく平然と居られるよな。


 「――お前は、怖くないの?」

 「何がです?」

 

 由紀はナニの事か判らないように、可愛い顔に真顔を浮かべ こくんとクビをかしげた。

 コイツには危機感と言う言葉が全くない様だ。

 だけど、自分らは天使。

 ――つまり、いつレイプされて殺されてもおかしくないんだぜ?

 しかも北村が本気を出すみたいだし、凄まじくヤバイのに……。


 「アイツら(ハンター)だよ……」

 

 オレがしかめっ面しながら例の件を訪ねると、由紀は目を細め、紅茶を一口にする。

 そして、一呼吸おいて真顔になると、

 「――アノ件なら自分たちは大丈夫なんですよ。 この立場になって居ればマズ狩られないから」、と小声で言うと、目を細めながら軽い尊敬と本気の侮辱の入り混じった表情でオレを見つめ、

 「だけど、センパイはアレだけの娘を毒牙にかけ、どう言う手段を使ったら、その立場が手に入るんです?

 よく復讐者リベンジャーが納得しましたよね。 普通だったら、施設から即、町に出されてスグにコレですよ?」

 、と矢継ぎ早に言うと、皿に乗った真っ赤なイチゴの乗ったフルーツタルトの本丸をフォークで乱暴に突き刺していた。

 由紀に純潔を奪われたイチゴから、赤い液体がしたたりおちてゆく。

 

 「由紀。――それって、どういう意味だよ?」


 オレは由紀の言葉と行動の意味が判らず、ムスリと聞き返す。

 自分たちはまず狩られない、そして、オレがアレだけの人数を毒牙にかけたと。

 ――両方、初耳だったからだ。 

 オレはあの娘(悪役令嬢)しか、ヤって(レイプして)ないんだけど……。


 「分かっているから、もう隠さなくて良いですよ。

 ――稀代の連続強姦魔シリアルレイパー強姦英雄レイプヒーローさん」

 「な……」


 半ばあきれ顔で、えらい事を抜かす由紀。

 オレはあまりの事に、目を見開いて表情を固め、次の言葉が出なくなった。

 稀代の連続強姦魔シリアルレイパー強姦英雄レイプヒーローなんて全く身に覚えの事なのに……。


 「あの後、気になって自分がネットでしらべてみたけど、センパイはよくアレだけの娘を、捕まらないように毒牙にかけれましたよね……」


 由紀はイスに座ったまま、ため息交じり、そして強い視線で更に言葉を継いだ。

 

 「一人犯すだけならタダの強姦魔、

 ――でも100人犯せば有る意味英雄と言うわけですか……」

 「……」

 「その揺ぎ無い信念とオスの本能に従って女性を次々に犯していったその手管。 そして何より彼女(木戸亜由美)をレイプした度胸は有る意味凄いですよ」


 彼女は、オレが凄まじい稀代の連続強姦魔のように言うけど全く身に覚えのない事だった。

 

 「……失礼な事を言うなよ。

 あの娘、一人だけだよ……」


 さすがの言われように制服姿のオレは渋面になり、おかわりしたキャラメルマキアート片手にポツリ返事を返す。

 あの時、香りにさそわれて悪役令嬢を押し倒したのが人生で最初、で捕まって天使にされたのでしようにもアレが最期になったわけなんだけど。

 ――何処から湧いてきたんだ、そのネタは……。


 「そんな謙遜しなくてもいいですよ、まとめサイトには色々ありますよ」

 「一体、どう書いてあるの?」

 「見せた方が早いかもね……」


 そう言うと、由紀はテーブルの上でスマホで何かを検索しながら、言葉を続ける。

 

 「ここだ。

 ――稀代の連続強姦魔シリアルレイパー新井(あらい)恭介(きょうすけ)として、名前が飛び交ってます。 それに名前を検索したら 新井(あらい)恭介(きょうすけ)の次に、狡猾47人強姦殺人鬼、と表示されますよ。 調べたら一発だよ」


 由紀はそう言うと、スマホをオレにわたして、マトメサイトを見せてくれた。


 「……」


 まとめサイトにはウソ大げさが多いけど、流石にサイトに書かれたこの凄まじい書かれようには思わず声が出なくなった。

 内容はこうだ。


 ――強姦が日課だった新井(あらい)恭介(きょうすけ)

 幼女が主食、女子小学生はオカズ、女子中学生は食後のオヤツ、女子高生は夜食とウソぶき、女と見れば幼女から成人まで手広く犯す鬼畜の所業。

 最期は、木戸亜由美令嬢の機転により、ネカフェにいる所を逮捕に至る。

 彼女がスマホを鬼畜のポケットにねじ込み居場所を特定すると言う、勇敢な行為が無ければ今でも犯行を続けていたと予想される。


 「……」


 オレは炉裏じゃない……。

 そんな性癖じゃなねぇ、むしろ、年上のお姉さま趣味だった。

 そんな事を思いながら、顔をひくつかせ、さらに読み進めた。


 ――被害者達は涙ながらに非道を語る。

 私は、妹を人質にとられ、あの男に喪失感と屈辱を刻み込まれた、そして、今の幸せを壊したくないから泣き寝入りするしかなかった、と、そんな感じで書き込まれている。 

 そして、裁判の際にも全く反省の意思を見せず、「たかがレイプごとき」、と暴言を吐く鬼畜ぶり。

 現在判明している時点で卑劣な犯行の被害者は47人、そのうち大半は15歳以下、中には十歳以下の児童も居り、中絶した娘、自殺した娘も多数居る模様。 そして実際の犯行人数は、その数倍に及ぶと考えられる。

 史上稀に見る人間のクズ、女性の敵、鬼畜炉裏の居場所を突き止めたら即通報plz、と締めくくられている。

 まるでオレがまるで悪鬼羅刹の鬼畜炉裏のような書きかただ。

 

 なんか話に尾ひれが付きつきすぎて、半魚人どころか、完全にフリフリの金魚になってるような感じだよ。

 幾なんでも、ウソ大げさで完全にジャ○案件だろう。

 張本人が言うんだから間違いない、あの娘しかレイプしてない、と。


 まあ、裁判の時の「たかがレイプごとき」、と言う暴言は、身に覚えありだけど……。

残りは早めに投稿します~。


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