あゆむの推理、まさかの褒美スイーツ?
あの後、あゆむは、
「こんな時間だがカヌレでも食べるか、懐かしくなってきた」とぬかして、何処かへ向かって歩き出した。
――オレの意見はまったく聞かずに。
そんな訳で、今制服姿のオレとスーツ姿のあゆむは青白いLED街灯の下、オレは暗い路地を横に並んで歩いている。
ここは歓楽街から少し離れた場所で、一本表に出れば いかがわしいお店が軒を連ねるような場所。
――そこから、一本裏に入った裏路地だから、めっきり人通りも少なく、監視カメラすらも無いような所だった。
一歩間違えば、どこでヤバい事が起きてもおかしくないような場所だろう。
「あゆむ、どこにいくの?」
オレは、あゆむの二の腕にぐっとしがみつきながら訪ねると、カレのスジ筋のゴツゴツした感覚が自分につたわり、大樹によりそうような安心感かある。
夜のこんなデインジャラス地帯では、やはりこの場所が一番安全で居心地がいい。
「目指しているのは、この近くにある夜でもカヌレが食べれる店だ。
――ちょっと思う事があってな」
「思う事?」
あゆむは歩きながらホストのようなイケメンのままオレを一瞥もせず、、考えを巡らせているのか、ぼんやり焦点が合わない様子で、
「ああ、そうだ」クールに答え、さらに自分の考えを口に出してゆく。
「お前に言われて気が付いたが、ヤツの行動にはあるパターンがあるようだ」
「あのハエに?」
オレはクビをかしげなら自分の考えを口に出していた。
DQNのような今回の投稿やら、女子高生のようなお菓子を食べたような投稿やら、アイツにはまったくパターンのようなものは見当たりそうにない。
――自分の考える限りだけど……。
だが、あゆむは何か確信のようなものを感じているのだろう、
「ああ、今回の投稿で、そこがハッキリする筈」、と真顔で言い切った。
――オレが聞きたいのは、その先だよ。
「――じゃあ、何が投稿されると思うの?」
オレがうさん臭そうに目を細めてたずねると、あゆむは
「アノ投稿の後だから食レポ風のもの、しかも内容はスイーツ絡みの投稿の筈だ」
「スイーツ?」
「ああ、高い確率で、な」
あゆむは確信を込めてそう言うと、自分の推理を口に出してゆく。
「アイツがスイーツの投稿をする時は、何時もヤツにとってうれしい事が起きた後だ。
しかも、投稿はそのすぐ後で、さらにその嬉しい事と、スイーツにかける金額が比例している」
「それはまさか……、そのお菓子は自分へのご褒美スイーツなの?」
オレは思わず、不信感ありありに呟いた。
――ご褒美スイーツって何処の女子高生だよ?
思わず言いたくなり思わず渋面になるが、あゆむは気にせずに続けてゆく。
「ああ、そうだ、アレは自分へのご褒美だろう。
――ドーナツにしろ、この前のゆうなの一件の後に投稿されたフルーツケーキのワンホールにしろ、アイツにとっての「ご褒美スイーツ」なら理由は説明がつく」
あゆむはそう言うと、「そして、もう一つ気が付いた事がある」、と言うと、更に自分の考えを真顔のまま続けてゆく。
「今思えば、あいつの事件とスイーツコンボの投稿のタイミングは、大体25日から35日周期でされていた」
「それってまさか?」
あゆむの「大体25日から35日周期」と言う説明に、オレの頭にあの周期が浮かんだ。
――アレだよ、アレ。
ついさっき由紀に始まって騒いだアレだよ。
そんな事を思って居ると、あゆむはオレの表情から察しているのを感じたのか、説明をクールに話していった。
「――そうだ、お前が考えているあの周期だ。
私には判らない感覚だが、後輩の娘はアノ前に精神的に不安定になって、ナイーブになっていたからな。
そのタイミングでヤツは何か事件を起こしているなら、つじつまは合う」
「――じゃあ、ハエは本当に女なの?」
オレはますます首をかしげ、真顔であゆむが言うことがマスマス怪しくなってくる。
――適当にいったけど、ありえないでしょ?、と。
「――常識で考えればあり得ない」
あゆむは顔を少ししかめそう言うと「だが」、と短く区切り更に言葉を続けてゆく。
「――それを確かめるために、今から二人で店に行くんだ」
あゆむは、そう言うと足早に歩きだす。
――オレが横にくっ付いたまま。
きりが良いので此処で投稿します。
残りは早めに投稿予定です。