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第二の本題

 「――小梨さん……」


 フェイトは、夜の路地であゆむに抱き着くオレ達をクールビューティな表情のまま、何か言いたそうに紫のひとみでじっと見つめていた。

 オレには彼女の真意は判らない、けど、あゆむは何となく彼女から何を言われるのか分かるらしくイケメンの表情を止める。

 けど、彼の鼓動が早くなっていく事から、今回の事で彼が焦っているのが分かった。

 沈着冷静なあゆむが、今まで見せた事のない事だった。


 「フェイト、一体何だ?」


 あゆむは平静を装いながらも返事を返す。

 ――けれど、バリトンボイスの声が少し震えていた。


 「貴方の方は、この娘の事をどう思っているの?」


 フェイトは銀髪をたなびかせながら、小梨にむかい静かにくちを開く。

 そのトーンを落とした声色には有無を言わせないような、神の一声のような圧倒感があった。

 彼女の声の前にあゆむの息遣いも荒くなって、更に焦っているのが手に取る様にわかる。

 ――あゆむをここまで焦らせるって、この人は一体何者なの?


 「……あくまでも、任務の一環だ……」


 あゆむは本心を隠すように、ワザと平静を装ったような声をそう言うと、自分のムネにいたオレをバリバリと引き離して距離を置いた。

 ――だれがどうみても、本心と違うとわかる、ウソと分かりそうな態度だった。

 

 「……あゆむ!?」


 オレはじっとカレの顔を見つめると、端正な顔に目をおよがせ、迷いの表情なのが分かった。

 ――任務の一環だけじゃない、……それはつまり……。


 「ふぅ。

 あなたと、この娘との関係は、たいへん良く分かったわ」


 フェイトはあゆむの態度に表情を緩めると、「本題の2つめは、此れよ」、言葉を継ぎ、


 「ボスは、このままでは野心家である自分の出世の為、目の前にある不正に片目は瞑れても、正義をになう法律家としては、もう片方の目は瞑れない。

 左遷されたとは言え、自分には正義を担う司法のプライドがあるわ。

 ――彼女は、そう言っていたわよ。

 その言葉の意味、あなたには良く分かるわよね?」


 フェイトはそう言い終わると、焦りを隠せないあゆむに向かい、小悪魔のような笑みを浮かべながら、

「でも、きょうの所は、ボスの小泉さんには上手く言っておくわ。

 ――あなたも素直になりなさい」、と言いながら、オレと、顔をヒクヒク引きつらせるあゆむにスマホの画面を見せつけた。


 「いったい何だ?」

 「……これは?」


 おれとあゆむののぞき込む画面には、ハエ(ベルゼバブ)の呟きが投稿されて居り、内容は『カップル撲滅完了予定!! 今日はメシウマぁ~』、というDQNが投稿しそうな内容だった。

 ――まあ、今までの投稿からいくと、アイツがDQNなのかもしれないけど。


 「こっちがボスから頼まれた表向きの要件よ。

 ――アイツにまた新たな動きがあるかも知れないわね」


 なるほどね。

 この件を伝えにくるのが表向きで、裏の要件はオレとあゆむ、二人の関係を探りに来た感じかな?

 あゆむのような感じでの公私混同は流石にまずいだろうしね。


 「分かった。こちらも調べてみる」


 あゆむは尋問が終わった後の様に、落ち着きを取り戻すと何時もの様にクールに返事を返した。


 「何時ものようにお願いね 私は別方面からもう少し探してみるわ」、

 フェイトはそう言うと、あゆむの顔をみて何かを思い出したように顔を少し引きつらせ、

 「でも、あの潜入用の服って誰のチョイスだったの?

 ――良い趣味してたわよ」、とほんの少し声を強張らせながら訪ねてきた。


 彼女の潜入用のフクって一体どんな服だったんだろ?

 光学迷彩か、潜入先の制服か、そんなものなのかな?

 そんな事を思っていると、あゆむは「私だ」、と言葉を区切り、自信ありありに答えていった。


 「最初上司から渡された物は鉢金こみの真っ黒な忍び装束だったからな……。

  彼女は、時代劇の見すぎだ。 時代錯誤も甚だしい、そんな忍者はそもそも居ない。

 故に、私が考えた一番良いと思われる服を選んでおいた」、と締めくくった。


 あゆむはじしんありありに、きっぱり言い切った。

 私が選んだ、と。


 「そうなんだ…… 」


  フェイトは半ばあきれ顔で、目を細める。


 「小梨さん、人に勧めるって事は、アノ服は自分でも着た事はあるの?」

 「勿論だ。後輩の娘2人にせがまれてな。 

 ――私には 紫が似合うと言って、渋々着ることになったんだ。

 青と黄色は後輩の娘が着ていたが」


 あゆむが言う服は、どんな服だったんだろ……。

 男でも女でも着れるユニセックスの服。

 作業服か何かかな?


 「一体どんな服だったの?」


 オレが思わず本心を口に出すと、フェイトは恥ずかしい事を思い出したように顔を赤らめ、


 「……これよ」、と言うと、もっていた紙袋の口を開いて中身をオレに見せてくれた。


 「え~~~~~。マジでこれなの?」

 「そうよ」


 フェイトが持っていた袋の中身は、丁寧に折りたたまれたサラッとした紫の布で出来たスクール水着のようなものだった。

 でも、これは水着じゃない。

 学校の体操部でクラスメイトが着ていたので、見たことが有った。

 ――レオタードだよ。

 ネコのような、某女怪盗姉妹が着ていたようなアノ服だ。

 つまり、男のあゆむは、この服(レオタード)を着たことがあると……、――後輩の娘と一緒に……。

 イケメンのあゆむが後輩の娘たちとお揃いで、レオタード姿になっている姿がはっきり頭に浮かんだ。


 「変態じゃん!」


 思わず、思ったことを口に出すと、目を細めてシラァ~とした表情になる。


 「……」


 あゆむもコレは流石に恥ずかしかったのか、イケメンに似合わない仕草で顔をぽりぽり掻いていた。

 男のレオタード姿、さすがにイケメンでも流石にこれはマズイでしょ……。

 ――コイツはやはり、セーラー服でコスプレ趣味の山田の同類だったようだ。

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