一つの道の終わり
優奈が訪ねてきて、数時間たった。
さすがの彼女も緊張しずぎて疲れたのか、娘の優衣を抱きかかえたまま、二人仲良くロングの銀髪を揺らしながら、こくりこくり、とソファで舟をこいでいる。
そんな訳で、お昼前のキッチンには、穏やかな日差しが差し込み、外の騒々しさと無縁のしずかな時間が流れていた。
「……」
オレはやる事もなくなり、キッチンの椅子にちょこんと座り、優奈と優衣の二人の姿を複雑な心境で見つめていた。
美しい母親の膝の上で、優奈に寄り添い、幸せなそうな表情で静かな寝息を立てる優衣。
そして、天使のような優衣を優しく抱きしめている優奈。
一見すると、どこにでも有りそうな幸せな親子の光景。
だけど、これは何時かは終わる幻だ。
――優奈もオレも天使、贖罪の為、強制的に少女の体にされ、既に昇天(死亡)したものと扱われて居る。
でも、天使になっても、自分の犯した罪が消えた訳ではない。
自分たちが犯した罪は、そのまま残っている。
復讐者やハンターに襲われて、どういう形であれ自分の犯した罪を償わされた時、初めて自分の罪が消えたことになる訳だ。
今のままじゃ居られない、この関係も何時かは清算する時が来る。
そして、アリスの犯した罪が消えても、残された者たちへの償いは消える訳じゃない……。
彼女の命が奪われても、殺された娘が生き返る訳じゃないから。
ただ、今まで、憎んでいた対象が消えるだけで、消えない悶々とした思いが残る遺された人たちは、それで納得なんて出来ないだろう。
やり切れない思いを胸に秘め、これからも生きていかなければならないのだから。
犯人が死んで、それで償いは全部終わり……――ふざけるな、と言いたいだろうし。
――じゃあ、彼女の考えている、罪の行方、そして償いの答えは何なんだろう……?
ううん、彼女だけじゃない、オレの罪の行方と復讐者への償いの答えは?
――完全に復讐者が誰か決まって居ないから、今まで考えないようにして来た。
だけど、其処が固まり、事実を突き付けられると、決めなくて行けない時が来る。
オレの罪の清算と、復讐者への償いかたを。
――今まで逃げていたことに、決着つける時が。
ガラにもなく、そんな事を考えていると、まぶたが重くなっていった。
キリが良いので、ここで投稿です。
残りは早めに投稿します。