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闇の同類?

 「はぁはぁ……」


 オレは息を切らせ、ホテルから走り出していた。

 ハイヒールを手に持ち、スカートの裾をまくり上げ、タダヒタスラ全力疾走。

 自分は防衛本能のままに動いていた。

 あの場所にオレがあのまま居たら、天使である自分の命の燈火は確実に消えうせる。

 ――アイツ(北村)はそんな雰囲気を醸し出していた。

 オレが今まで逢った中でも、別格にヤバい奴だ。


 「はぁはぁ……もう限界……」


 全力で走り抜けたオレは体力の限界になり、気が付けばアスファルトの上におんなの娘座りでへたり込んでいた。

 体中がガクガクふるえている、息がなかなか元に戻らない。

 ――こんなに全力で走ったのは久々かもしれない、天使にされる前も含めて。

 でも、自分の判断は正しいと、本能がドクドクと早鐘の様に刻んでいた。


 「……一体、何処まで来たんだろ?」


 辺りをきょろきょろ見渡せば、LEDの街灯の青白い静かな闇の中、潮の香りが漂い、波音だけが静かに聞こえている。

 そして、少し遠くには今まで居たホテルがそびえ、夜景を彩っていた。


 どうやら海岸の辺りまで来たようだった。

 辺りに人の気配はない……。

 ――と、思ったら背後に人の気配がして、一気に間合いを詰めてきた。


 「!!!」


 振り返り、言葉にならない叫びを上げようとした時、其処に居たのは見慣れたイケメンの男。

 ――自分の後ろに居たのは歩だった。

 彼も軽く息をきらせ、不安そうな表情で青白い明かりのもと、佇んでいた。


 「杏子どうした?」

 「なんでもないよ……、ちょっと怖かっただけだよ……」

 「――そうか……、怖がらせて済まなかったな」


 気が付けば、歩は地面で震えるオレを後ろから、優しく抱きしめていた。


 「えっ!?」

 「杏子、安心しろ。今夜は普通に扱ってやると言っただろ……、

 ――例え、ハンターが来ても私が始末してやる、そう言った筈だ」


 彼の優しい言葉、そして温もり、そして鼓動が伝わってくる。

 そこで、オレは自分の確かな生の感触を確かめる、まだ死んでない――自分はまだ生きていると。

 とろけるような安堵の中、だんだん自分の表情も穏やかになるのが判った。

 ――なんか悔しいけど、感謝の気持ちしか湧いてこない。


 「――あゆむ、ありがとう。

 もう大丈夫、落ち着いたよ」


 気が付けば、オレは笑顔を浮かべ感謝の言葉を言っていた。

 その様子に、歩は口角を緩めフッとクールに小さく笑う。


 「奴は優秀だが、何か壊れているからな。

 ――大切な何かを何処かに置き忘れてきたような奴だ、深くかかわらない方がいい」


 小梨は真顔で念をおし、そう忠告するが、そんな事は百も千も承知だよ。

 改めて彼に言われるまでも無い。

 

 「でもさ、歩も同じ感んじなんだろ?」


 オレが冗談交じりに言うと、歩はムッとする。

 

 「――違いない。

 ――それが杏子お前の望みならば、私もそうなっても構わないが……」


 小梨は意地悪そうな表情を浮かべる。

 ――ぐ……。


 「結構です……」


 これは強烈なカウンターを食らった気がする。

 と思っていたら、歩は口角をゆるめていた。

 ――本気でないと言うのが判った。


 「でも、さっきのは冗談だよ、歩はアイツ(北村)みたいに嫌な感じはしないから」

 「……そうか……」


 オレの言葉に、歩はオレを抱きしめたまま、穏やかな表情を浮かべ、

 「ありがとう……」

 そう短く呟いていた。


 アイツは歩とは決定的に何かが違う。

 今は、マダはっきりは判らないけど……。


 「――食べなおすか……」

 

 小梨はポツリ呟いて、更に続けた。


 「私も奴の面をみて食べた気が失せた」


 オレもさっきのどさくさで、小腹が空いているのに気が付いた。

 ――さっきからそんなに時間は立ってない筈、だけど張り詰めた空気から解放されたせいか、無性になにか食べたくなっていた。

 本能は正直だ。


 「じゃあ、ソコの店で何か買ってくるよ」


 よく見たら、少し先にコンビニの明かりが見えていた。

 流石コンビニ、夜中でも煌々と煌めいていた、夜だと判りやすくていい。


 「……大丈夫か?」

 「バカにしてるの? コンビニ位使ったことあるし、お金だって少しは……」


 歩は渋面で尋ねる。

 多分、自分の財布のことを気にしてるのだろうけど、そこは杞憂というもの。

 自分は歩ほど多くは持ってないけど、二人分くらいの食べ物を買う位はあるのだ。

 ……もっとも、支給金だけどね。


 「……そっちじゃない、ハンターの事だ」


 歩は心配そうな表情を浮かべ、強く抱きしめてきた。

 心底、心配してくれるのが判る。

 その心遣いが心底嬉しい。


 でも、自分は意地悪そうな表情を浮かべ、


 「――来たら、護ってくれるんでしょ?」

 

 そう言うと、小梨もニヤリとして続けた。


 「……なるほど……。じゃあ二人、一緒に行くか」

 「……ソレじゃ、意味ないでしょ?」


 そう言いながらも、オレは恥ずかしそうに歩に手を引かれながら、暗い夜道を二人コンビニまでトコトコ歩いてゆく。

 空には満天の星空が静かに輝き、波音だけが響いていた。

キリがよいので此処で投稿です。

早いうちに残りを出します!


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