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第一話銀河と生命の誕生

序章ー銀河と生命の誕生


太陽の母降臨

なにもない暗闇の宇宙に突然光がほとばしりぐんぐん明るくなる。

神族のひとりクロリアは無元界から娘の世界を創生するためいくつもの次元を超え今の三次元界に現れると光の種を放出しながら回転を始めた、数えきれないほど回転すると種は円盤状に広がり銀河を形作った。

クロリアは目をカーッと開く、光と熱がほとばしり種を照らすとやがて輝き熱を放射させ星が生まれた。

宇宙が暖かくなるとクロリアは現在の太陽系のポジションまで移動し周辺に漂っていた岩塊を引き寄せいくつも塊を作った。

それらはクロリアの周りを数百万回巡りながら集合合体を繰り返し丸くなって惑星が生まれた。

当時五千メートルの厚みの氷に覆われ生き物がいない世界だった地球の地中深くにある空洞に光と熱が届く、何万回も回るにつれて温度は高まりクロリアは静かに光りの珠を浮かべるとやがてかわいい女の赤子が産声を上げてクロリアは太陽の母となった。

赤子は洞穴の中で光に包まれながら何十年も眠りー目覚めた時麗しい娘になっていた、生物の母イメルダの誕生だ。


生命の誕生

母の光と熱を浴び暖かい地下はいつの間にか植物が現れ草花には蝶や虫が寄って来た。木に果実がみのり甘酸っぱい香は洞窟の中にいた娘のお腹を鳴らした。

「心地よい香よこれはなんなのーどうしたの」

娘は洞窟から出ると外は美しい花畑、毎日花の蜜をなめ果実を食べてからだが成熟していくと母から与えられた能力が操れるようになり千メートル上にある天井の岩を睨んだ。

全身が光りに包まれ氷の地上に瞬間移動ー惑星をぐるりと巡ったが誰もいない。

「退屈だわー外の世界に行きますわよ」イメルダは地球を飛び出した。

高度を上げて行くとやがて衛星を追い越し白や黄色赤い星が瞬いて見とれていたが太陽の中に吸い込まれイメルダはまぶしい世界に現れた、辺りを見ると金銀豪華な建物の中らしい、「ここはどこ」

「ほほほほここはクロリアー生命の星の宮殿よ、目の前の池にある命の泥でお友達を作りなさい」太陽の母が優しくささやいた。

イメルダはヒシャクで毎日命の泥をすくい様々な生物を作り念じると眼が開きいきいきと動き出した。

ワニ・トカゲ・ドラゴンなど一等家臣が誕生ー彼らはイメルダを女神と崇めかしずく前で玉座から立ち上がり呼びかけた。

「さあーあなたたちお散歩に行きますわよ」

イメルダはすたすた宮殿を出て光の宇宙船に乗り彼らを連れ銀河探検に出発ー翼獣族は燃えるような惑星に降りるとイメルダに告げた。

「ここは気に入った俺様の星にする」

草に覆われた惑星は蛇族の棲み処となって水の惑星を見つけると魚族は泳いで帰って来ない、乾いた惑星や氷の惑星にも生物は居ついて銀河を半周したときにはイメルダ一人取り残されていた。

「お母さまーみんな行ってしまってわたくし寂しいですわ」粘土細工をしながら太陽の母に訴えた。

太陽の母はイメルダに告げた「あなたは銀河に命を広めましたわーいずれ銀河は花を開き賑やかになりますわよーあなたは娘を生みなさい、あなたが蒔いた種を育てる娘が必要だわ」

イメルダが誕生して三十万年ーある日イメルダのからだは光に包まれると浮揚し、蜂やバッタ蝶族など小型生物の家臣団に取り囲まれイメルダの体から可愛い娘が現れた。

「あなたはわたくしの娘エミリヤー周りにいるのはあなたの兄妹たちよ」

娘は左右を見てニコッ手を差し伸べ言った。

「あたいはエミリヤーあなたたちは兄妹」

それから瞬く間に二十万年が過ぎ去ってイメルダはクロリアの女王となり、銀河は自分が生んだ生物で満たして支配していた。

エミリヤは母が放置していた地球に兄妹と一緒に移り世界を作り始めたがやがて彼らも巣立ちの時を迎えた。

「エミリヤー俺たちは自分たちの星に行くからな」

地球で一人の生活が始まると寂しさを感じて星のかなたにいる母のイメルダに訴えた「お母さま可愛い妹が欲しいー」

「ほほほほいいわよー」空にくっきりイメルダの顔が映り優しく微笑んだ。

数千年後イメルダはクロリアからかわいい娘を連れて来た。

「ほほほほあなたの妹セリナよ、仲良くしなさいな」

セリナはエミリヤと地球で暮らし始めた、すでに氷は解け陸には虫や動物が飛び回り青い海には魚たちが泳いでいる。

「すてきーここがお姉さまの星なの」

「セリナーわたくしがこの星に来た時にはこの星は氷の惑星でしたわ、その氷原にお母さまの作られたいろいろな友達と生活していましたけど彼らは他の星に散っていきましたの」

「この海にいる生き物はお母さまが生んだのね」

「そうよそしてこの星を私たちの子供たちの世界にするわ」それからはエミリヤとセリナは命の泥をこねり何万と人形に命を吹き込み氷の無くなった草原に散りばめた「さぁーこれでいいわお母さまのところに帰りましょ」

エミリヤとセリナはクロリアに帰り母に存分甘えて百万年が過ぎると地球では人形は独自に進化して知性が高まり、数が増え文化を発展させていた


地球文明の始まり 

人類が誕生して百五十万年過ぎると地球には一つの政府が成立し、首都はアフリカ大陸の中央に置かれていた。

議会は人口増加がテーマ―。

「議長ーエネルギーと食料が不足しているから植民が取りざたされているが宇宙船の開発状況はどうなっとる」

「科学大臣」

「えーお答えします、現状では十二光年先にあるブロントン星に三か月で往復できる船の開発には成功しました」

太陽系近辺へ植民が始まって百二十年が経過して三十の惑星に植民し人類の文明は絶頂期を迎えていたが災厄を呼び込んだ。

遠方の星目指して探検船が航行するようになると寄った惑星に生存する生物の興味を引いた。探検隊は知らずに食人生物を乗せ地球に戻って来た、無害の生物もいたがそれは稀でほとんどの生物は山や海に住みつき人間を襲った。

「警察かまた襲われた、犯人は分からないのか」

「捜査しているが手口から犯人は人間でない、猛獣のようだ」

政府は被害が出た地区を中心に市民に注意を促したがやがて家屋の中にいても襲われ出した。

「警察はなにをしているおちおち寝てもいられないぞ」市民の不安は収まらず町ごと避難するところも出たがその時イモムシも紛れて全国に広がった。

「大統領ー人間を襲っているのはイモムシでした」科学院のデリー所長が飛び込み喚いた。

「所長落ち着きなさい、詳しく聞こう」


生命の母イメルダとエミリヤの確執

クロリアの宮殿でイメルダは嬉しそうにイモムシが人間を襲っている状況を眺めていた。「そうよもっと食べなさいわたくしのかわいい子供たち」

「お母さまーわたくしの子供たちを食べさせないで」

「あらエミリヤいましたの、あなたはいいものをイモムシに与えてくれましたわ、さすがわたくしの娘よ」

「お母さま人間はイモムシの餌ではありませんわ食べないよう言って下さい」

「それはダメだわ宇宙は弱い者は生き残れない摂理がありますの、そうでなければ虚弱な世界になってしまいますわ」

イメルダは人間が食料になるのは仕方のない事だと諭した。

「いいわわたくしがイモムシを退治しますから」

「ほほほほあなたにできるかしら楽しみだわ」

エミリヤは光の船で地球を訪れると人間たちは果敢にイモムシ退治を繰り広げていた、市民と軍が一体になりしらみつぶしに捜索し見つけ次第駆逐していく

「わたくしの子供たちは弱くはないわ、お母さまを見返してあげますから」

しかしイモムシの繁殖力はすさまじく殺しても翌日には数倍になって襲って来るが街から辛うじて駆逐は成功し山や野原に閉じ込めていた。

エミリヤは地球から脱出する決心をし、人間たちに呼びかけた。

「人間たちよわたくしの子供たちよ地球から脱出しなさい」

エミリヤの太陽を通した呼びかけに人々は困惑。

「あれはなんだ」

「太陽が女性になったぞ」

「大統領ー聞きましたか」

「ユウキ慌てるな、わしは古代の文献に地球人は太陽の姫の子だと書かれているのを知っている、我々の母が現状を憂いているのだ」

「母を悲しませてはならん、言われたように市民が全員乗れる船を作り脱出する」フルブ大統領は宇宙船建造の号令をかけた。

未来このことがノアの箱舟伝説となった。

軍は造船所にイモムシが入らないよう堀をめぐらし中に硫酸をためた。

植民星でも船が建造され持ち物は宇宙空間で消毒し虫の卵を持ち出さないようにした。

地球がイモムシに襲われていると情報は瞬く間に銀河に広がり食料を求めていた翼獣族を呼び寄せた。

「司令官、手ごろな食べ物がいますな、イモムシに食べさせるのはもったいないです」翼獣族は地球人が脱出する直前に現れ襲い掛かった。

地球軍は月や火星の基地から出撃し宇宙戦が始まるが圧倒的に翼獣族はつよい、地球艦隊は撃破されて行った。

地球軍総司令官バッハは地球艦隊が弱体だと太陽に向け訴える。

「バッハー戦艦は少ないのを知っています、支援にピロンを呼びましたから到着するまで頑張ってください」エミリヤは答えた。

「ハッわかりましたがピロンとはどのような方ですか」

「ホホホホバッタ族でこの銀河て彼らに敵う者はいませんわねほほほほ」

「バッタですか?」

翼獣族は艦隊を動員し人間が脱出しないようエネルギーネットを宇宙空間に張り待ち構えていたがエミリヤの要請を受けバッタの艦隊が三十時間後には太陽系に到着、五次元界に艦隊を隠しているからグァモに気づかれない。

「キレン提督ー待ってましたわ、グァモを追い払ってくださいな」

「ははははエミリヤ任せろ」

バッタはエネルギーステーションを五次元界に吹き飛ばした。

ステーションの兵士は三次元の本隊と連絡がついていたから異次元に飛ばされたと気づいていない。

その事実を知らないバッハは地球艦隊を一億キロ離れた死守ラインに配置させ決死の思いでいた。「陛下は支援が来ると言ったがいつ来るんだ」

「司令官パトロールから連絡です、グァモの捕獲ステーションが消えました、どこにもありません脱出できます」

「そうかーどういうことだ」

「分かりません、ですが姿が全くありません」

「もしかして母のいっていた援軍か」バッハは考えたが振り切った、スクリーンには巨大なエイが長い尻尾を引き遊弋し何事もないみたいだ。

「総統閣下艦隊の集結が滞りなく完了しました」

「よろしい、捕獲の罠は張れているか」

「はい大切な食料ですからな、一匹も逃げないよういたしました」

この時司令部にはステーションからの定時連絡はとぎれないであった、バッタは通信回線を繋げていたからだが戦いが始まると三次元との繋がりを切り彼らを異次元で永遠の孤児にしてしまう。

「そうか、この作戦には憎たらしいハエナ族も漁夫の利を得ようと狙っておる、くれぐれもかすめ取られないよう頼むぞ」

戦闘開始ーグァモの戦艦隊が前進を開始してバッハは阻止すべく主砲を放った。ドッカーンシュッピカッ混乱状態となるとバッハは植民船団に命令、

「いまだ脱出せよ―」大気圏内で待機していた二万隻からなる植民船団はバッハの命令を受け一斉にフルパワー戦艦の作る死守ラインに守られながら地球を離れて行く。

巨大エイ型の戦艦艦隊を指揮するカルカラは地球船団の脱出を知ると命令した「スメールが脱出するぞーエネルギーネットはどうした捕えられないのか」

「分かりません、ステーションと連絡が途絶えました」

「何たることだ、追えー」

エイ型戦艦艦隊は地球艦隊との戦闘を振り切り船団を追尾にかかった。

「スメールーめ、どこに逃げようというのかな」

「カルカラ司令官、スメールたちはどうやら銀河本体に行くようですな」

「やつらの巣はあっちにあったかな、巣を見つけて儂の養殖星にしてやる」

艦隊は編成を組み直すと十数光年先行している植民船団を猛追始めた。

真っ暗な空間に無数の点が光りぐんぐん近づいてくる。

「提督ー追跡して来ます」探知士官のバモスがスクリーンを見て叫んだ。

「近づけるな、撃退しろ」植民船団の後方で阻止線を張っていたバッハの艦隊はグァモ戦艦に向かって攻撃態勢を取った。

「船団を守れー」バッハが決死の叫びをあげた時ピロンピロン警報がなり響き

スクリーンに帆船が現れた、二百枚の帆を満開に張り優雅に近づいてくる。

「わたくしの子供たちよ安心なさい、グァモはわたくしが退治しますわ」

バッハの艦隊でスクリーンが瞬きエミリヤが現れた。

「司令官ー母です助かりました」

スクリーンにエミリヤの顔が現れ声が響くと帆船は消えコンマ一秒後グァモ戦艦前に悠々と一隻鎮座した。

「ほほほほグァモよーわたくしを忘れましたか」

「お前はイメルダの娘エミリヤだな、スメール狩りの邪魔はしないで欲しい」

「スメールはわたくしの生み出した子供ー狩りは認めませんドラゴンの国に帰りなさい、太陽の姫を相手にするつもりならどうなるかご存じよね」

帆船はゆったり停止していたが突然周辺は無数の鋭い三角翼戦艦が現実界に現れ空隙を埋めていったからバッハは驚いた。

「司令官囲まれました」副官のレンナ―大佐が喚いた。

「レンナー騒ぐなー母の言われた援軍に間違いない」

三角翼艦は船団の後尾に展開、追跡していたグァモの戦艦は突破しようとしたが突然太陽になった。

バッタの持つ五次元砲に抵抗できる防御スクリーンは存在しない、一つ二つ次々に艦は爆発し姿を消す。

バッハの艦隊はバッタ族の艦隊に混ざり、孤立した艦を見つけると集中攻撃して撃破ー銀河本体に上陸する頃にはグァモの戦艦は姿を消し悠々と船団はレムリア星に到着した。

レムリアの太陽からエミリヤは呼びかけた。「わたくしのかわいい子供たちよ、これより太陽系は三百年紫外線で消毒いたします。その間は誰も立ち入れないと子孫に告げなさい」

エミリヤの地獄の罠が待ち構えていると知らないカルカラは残存艦を集結させると人類の居なくなった地球に降りて総統レーグに拝謁した。

「カルカラー食料のスメールに逃げられ植民した惑星はわからないだとー」

「総統閣下ースメールは銀河本体に向かいました、あれだけの大船団ですから必ず痕跡があるはず、追跡をご命じ下さい」

「総統閣下スメールの行方はカルカラに任せ我々はこの地に残っている食料となる哺乳類を確保するのが肝要かと進言します」

「そうだなここはスメールだけではない食料には溢れているな」

翼獣族は地球の各地に着陸し兵士が船を降りてイモムシの退治を始めた。

イモムシは兵士にかみつくが分厚い皮膚は噛み切れず放り投げられ脚で踏みつぶされていく。兵士はエネルギー銃を放っしイモムシの死骸が増えていくが突然太陽が変わった、黄色い太陽は濃い紫になり地表のみどりは黒く変って往く、作戦していた兵士は分厚い皮膚が焼け焦げて倒れ転げまわった。「熱いー死にそうだー」

「紫外線強度致死量を大幅に上回っています」電子脳は警告を始めた。

「総統ー脱出してくださいー」降りていた五千隻の戦艦は外でイモムシと戦っていた兵士を残し一斉にスタート太陽系から辛うじてグァモ星にたどり着いたが出撃した艦の三十パーセントにすぎなかった。

カルカラはそんな事態になっているとは知らずスメールの捜索をしていたがバッタの警戒艦隊に捕捉されると逃げきれず撃破され、ドラゴンの脅威は収まった。

それから三百年はあっという間に去って消毒が終わり生物の消えた地球にエミリヤは新たに泥人形を連れてやって来た。

「さぁーあなたたち再び繁栄しなさい」エミリヤは地上に人形たちを放した。


レムリアへの植民から帝国の誕生

人類歴三千年レムリア歴一年星域はバッタの警戒艦隊に守られ、植民者に平和が訪れるとレムリアはエミリヤの指導で国作りに邁進、レムリア歴八百五十年異種族からの攻撃がなく発展し地球並みの文化に戻った時点でエミリヤは命の泥で育てた女性ミーシャを女王に付け帝国を宣言した。

帝国になり百七十年ー産業が発展すると人口も増加して他の惑星への植民が開始されて開拓が進んだが捕食生物であるワニ族の帝国と接触した。

ワニ族は人間の植民した惑星に侵入してくるとレムリアはロボット兵士から成る軍を派遣し捜索ー追い払ったがワニは隙を見つけて入って来る。

レムリアの外は敵性生物にあふれていると再認識した帝国は存在を念頭に防衛体制を構築して数千万人のロボット軍団と数万隻の戦艦で撃退したが混乱が何年も続くと帝国は疲弊していきワニ族は徐々に帝国領に浸透してきた。

「陛下ーワニとの消耗戦に帝国の経済は破滅します、このままでは帝国は維持できません、市民に脱出を命じてください」

「クリストナどこに逃げるというー銀河は化け物だらけだ、昔からの伝承では我らは化け物に追われここに来たー再び逃げるのか行き場はないぞ、市民を守るため最後の一人になっても軍は戦うぞ」

皇帝クリスリッシュが戦い抜く決心を固めた時蜂族の球形戦艦艦隊がトレコロ艦隊の目前に現れた。

レムリアを取り巻いていたワニ族は突然目の前に現れた球形艦の大艦隊を凝視した。「ラファールあの艦はどこのだ」

「提督ー初めて見る戦艦です」

トレコロの旗艦にあるスクリーンが点りエミリヤが現れた。

「ほほほほわたくしはエミリヤートレコロ達に告げます、ここはあなたの居る場所ではありません引きなさい」

「やつは我々を知っているようだ、調べろ」

電子脳は過去の記録を遡りエミリヤを太陽の姫と探り出すと警報を発した。

「提督艦載脳の報告です」

「なんだ太陽の姫だとー知らん攻撃だ」

トレコロ艦は球形艦に接近し主砲を放す、何千発のエネルギー弾が飛び交い、球形艦を撃つが爆発せず素通りした。「ググググあの艦隊はなぜ爆発せん」

「司令官ー反応がおかしいです、球形艦は実在していません、影です」

「なんだとーどういうことだー」

突然トレコロ艦が爆発次から次と数を減らしルモ提督が気付いたときほとんどが消失していた。「グググ太陽の姫とは悪魔の姫かーひきあげろー」

球形艦隊十万隻はレムリア星をぐるりと取り巻きエミリヤの乗る旗艦と随伴艦二百隻は破壊されつくしたレムリア空港に降りた。

エミリヤが命の泥をこね、作り上げた親衛隊一万人は列を作り空港の中を行進、黒地に金の制服を着た蜂族の兵士は空中を飛行し勇壮に行く姿は市民の熱い歓迎を受けた。

行進の列は空港の真ん中で分裂行進に変り旗艦の前に並ぶ。

各部隊の指揮官が走り出てエネルギー昇降路の先に並らび軍楽隊の燃えよレムリアの演奏が合図かのように一斉に片膝をついた。旗艦の扉が開き華やかなオレンジのドレスで身を包んだエミリヤが現れた、祖母である太陽はエミリヤを神々しく照らし出す。

市民は頭上に輝く光輪をみて息を止めていたがやがて女神の降臨だと歓声を上げた。

「わたくしはサリヤー人類を守るため神から遣わされました、捕食生物を根絶し平和な世界を作りますわ」エミリヤは両手を持ち上げ市民を見守るかのようにぐるりと回った。

エミリヤに続いて蜂族の将官がズラリと続く、市民はその姿を見て恐怖を覚えたがすぐに違うと気づいた。

その放送を見ていた皇帝クリスリッシュは空港に駆け付けエミリヤの前に片膝を付き右手を差し伸べた、わ―――市民は拍手喝采ー、求婚を受けエミリヤは懐かしいレムリア宮殿に帰って来た。

エミリヤはその後球形艦隊を領域警備に就かせ捕食生物の侵入に対処しながら荒らされた帝国の修復を始めた。


エミリヤーレムリアから離れる

レムリア歴千二百八十年ー五十年経過してクリスリッシュは永眠し跡継ぎの居ない王朝は消える運命、エミリヤはセリナを呼び尋ねた。

「セリナー帝国をあなたに任せてわたくしはお母さまのところで暫くお休みさせてもらいますわ、いいかしら」

「お姉さまーお母さまはグァモとの戦いを喜んで見てましたわ、次は勝ちますからと鼻息が荒いの」

「そう御怒りでなかったの」

「そんなことはありませんわ、次にお姉さまと戦うの楽しみにしてますわ、帝国はわたくしが見守っておりますから安心してお休みなさい」

エミリヤはクロリアに帰ると母と歓談後二千年の眠りに入り、セリナは姉の不在に目がランラン王族筆頭としてフェン伯爵との間にできたレナ姫ー実際は命の泥で作り上げた娘をクリス王朝二代目皇帝に就かせ帝国を我が物とした。

セリナの支配欲は第六腕状星雲を平定すると宣言しフロン侯爵とルフト侯爵は帝国軍を率いて進軍を始める。

植民が奨励され異生物の支配している星に軍が攻め入り人類を入植させていく。

セリナは太陽系に眼を向けた。「あの星には重要な金属があるわ、帝国の発展には欠かせないものよーフェン侯爵おりますか」

「はっ大陛下お呼びでしょうか」

「カノン王子を寄こしなさい、彼に太陽系総督を命じます」

五百年前に翼獣族は紫外線の放射が止まったのを定期的に観測に訪れ知っていた。「太陽が元にもどったぞ、皆の者地上に降り食料を探してくるのだ」

「ははぁーー承知しました」観測船は偵察円盤を放し地表を探すとエミリヤが千年前に放った四足動物がうようよー船は着陸し翼獣族は狩りを始めたが、人類はエミリヤの育った地下で生活しグァモは気づいていない。

セリナはカノンの指揮する戦艦隊とともに帆船テラルーラ―号で太陽系に接近するとグァモの艦隊が立ちふさがった。

「艦隊に告げるー名乗られよ太陽系はグァモ帝国領と知って来たのか」

「ほほほほグァモーわたくしはセリナー太陽系から引きなさいわたくしは姉上のようにやさしくはありませんことよ」

「飛んで火にいる夏の虫だな、スメールがやって来たぞ」艦長のロニは舌なめずりし艦隊に捕獲の体制を取らせた。

セリナが通告してる間にグァモの艦は徐々に攻撃態勢に移動し砲撃した。

テラルーラ―号は光に包まれ太陽のように輝いたから後方にいたカノンは叫んだ「陛下は無事かー」

「王子テラルーラ―号は無事です、ただいま連絡が入りました。殿下は後方で待機するようにです」

「なんだとー俺に待機だと―」

「王子様ーセリナはご無事ですこれから楽しい事が始まりますわほほほほ」

「リミヤ補佐官ーどういうことですか」

「ほほほほセリナのお力を見られますのよ、王子様は幸運ですわ」

テラルーラ―号が何事もなく太陽から抜けてくると前進を開始次々グァモの戦艦が爆発していく。

「司令官ーあの帆船の武器は阻止できません、このままでは全滅です」

「セリナは誰でどんな兵器を使っているのだ」グリは本国に問い合わせた。

「司令官あの兵器に防御バリアは無効です」

グリ司令官が考えているうちにも戦艦は数を減らしセリナの艦隊に追い詰められ勢力が半減すると命令が届いた。

「撤収しろーセリナとは太陽の姫だ戦うな」一斉に撤退を始めた。

グァモの艦隊が姿を消し、地上にいた翼獣族はイメルダによってグァモに帰された。「ほほほほまた負けましたわほほほほ」

セリナは幼いころ生活していた地下の空洞に降りた、なにも変わっていない。

セリナは発達した人類を地上に呼んだ。「子供たちよ安心し母の元で暮らしなさい」人間たちがぞろぞろ現れ生活を始めると孫のカノン王子を呼び伝えた。「カノンあなたにこの星系を預けますわ、ここはソラリウムの宝庫なの、しっかり管理するのですよ」

「御婆様本当ですか」

「そうよあなたはこの星のソラリウムを採掘してレムリアに送るのですわ」

「御婆様はそれがここに来た本当の理由ですね」

「ほほほほ郷愁などと誰かが言ってらしたけどそんな甘い事言っていたら銀河で生き残れませんわほほほほ」


エミリヤ―銀河進出

時は進み二千年の月日が過ぎてエミリヤはクロリアで母と銀河の様子をみていたがセリナが帝国を発展させているのに舌をまいた。

「わたくしの妹なのにやるわね」

「ほほほほあの子は野心家よ、このまま任せていたら乗っ取られるわよ」

イメルダは眼を細めてエミリヤの反応を楽しんでいた。

エミリヤは帝国をセリナに預け他の種族に眼を向けた。

「お母さま帝国はセリナに任せわたくしは銀河を治めますわーワニとトカゲを手なずけませんとねホホホホ」

シンデレラ号に乗り帝国の領域を超え東へ向かう、そこは様々な種が混在する星域、競い合い混沌と暮らしていた。

シンデレラ号が星の間を航行していると何度も船が襲撃に来たが次元境界にあったため接触することがなく進んだ。

メネシア星甲虫族の総統ラモンは幽霊船の報告を受けた、「そちは幽霊船を見たというのか」

「はっ総統閣下ー真っ白い帆船で本官の艦をすり抜けてしまいました」

「捕まえられなかったと申すのだな面白い、グルダス今幽霊船はどこにいるか」

「ハッーパトロール艦を張り付けております、報告では百七十光年ハシュ―ド星のあたりにいるそうです」

「わかったそちは693艦隊を連れ捕獲して来い」

「えーー幽霊船をですかー」

「なんだ嫌か?」

「いいえーわかりました」

グルダスは戦艦の中でぶつぶつーなんで俺が幽霊船狩りをするんだ、背後には総統からつけられた巡洋艦隊十三隻がなにも知らずにいた。

「司令官間もなくパトロール艦ウナと合流しまーす」航行士官の声が聞こえスクリーンに涙滴型の艦がだんだん大きくなってきた。

「ウナより戦艦スーリンー幽霊船は前方に停泊していまーす」

「了解、君は引き上げていいぞ」

「命令に従いまーす、ご無事に」

シンデレラ号ではエミリヤがスクリーンで甲虫族の艦隊が近づいてくるのを待っていた。

「フフフやって来ましたわーモーレンー船の船首をあの艦隊に向けてくれませんか」

「はっ姫ー承知しました」シンデレラ号は動き始め大きく輪を描いて船首をグルダスに向けた。

「ほほほほマモンーお前たちを暫く見てなかったが元気にやっているようねほほほほ」

「ググお前は誰だ、なぜ俺たちの事を知っている」

「ほほほほーお前たちは誰がこの世に送り出したか思い出すがいい、お前たちはこれからはわたくしの手足となって働きなさい、反抗は許しませんからね」

「グググ誰がお前の言う事などに従うか」

「御託を言うのではありません、お前たちのリーダーを連れて来なさい」

「ググググー何様と思っているのだ、希望通りお前を連れて行ってやる、オーリオあの女の船に網を掛けろー」巡洋艦は円形の編隊を組みエネルギーネットの端を掴んで前進を始めた、エネルギーがほとばしりチカチカ光を発してシンデレラ号を包み込もうと接近してくるがシンデレラ号は動かず眺めていた。

「クソッ―動こうとしない、なにを考えている」

何物もつかみ取るネットはシンデレラ号がいないように素通りしてしまった。

「司令官ー帆船は通り抜けてしまいました、捕まえられません」

「なんだとーどうしてだ」

「司令官帆船は影です、実態がありません」

「クソッ―本物はどこにいる、探せー」

巡洋艦は散開しシンデレラ号の捜索に入った。

エミリヤはグルダスの指令室に瞬間移動甲虫族を睨みつけた。「命令です、お前たちの頭を連れて来なさい」

「グググお前は誰だ名乗れ」

「ほほほほわたくしは太陽の姫エミリヤーお前たちの主筋にあたる者、わかりましたか」

「ふざけるなお前が主とは認めん」

「フフフフこれでも逆らいますか」エミリヤは指を鳴らすと巡洋艦が消えた、二回三回巡洋艦は指の動きに合わせ消えていく。

「なにをするーやめろー」

「フフフフ命令に従いなさい」エミリヤは攻撃を続け巡洋艦は三隻しか残っていない。

「やめろー相談してくるから待っていろー」

グスダスと艦隊は尻尾をまくように其の場を離れた。

シンデレラ号とラモンの対決を見ていたラモンの宿敵陸エビ族のルーリアはラモンが消えるとシンデレラ号に寄って行った。

「わたくしはルーリア、ラモンとのお話を聞かせてもらいましたわ太陽の姫」

「ルーリアですか、砂漠を好むあなたが来るなど予想してませんわ」

「太陽の姫ーわたくしの種族ではあなたのことが長く語り継がれてまいりました、実際におられたのですかそれとも騙りかしら」

「ほほほほー信じてもらう必要はありませんわ、わたくしは混とんとしたこの星域の秩序を正に参りましたのよ、ルーリアに命令しますセルホットはこの銀河に不要です、消しなさい」

セルホットは湖畔に住む単細胞生物、誕生してからほとんど進化せず蛆虫に似た形態は他の生物から忌み嫌われているがルーリアが主食にしていた。

「太陽の姫ー何が気に入らないのか知りませんがセルホットは種族の大切な食料捨てられませんわ」

「従わないのならラモンに片付けさせますがルーリアわたくしに反抗するなら陸エビ族は生き残れませんわよホホホホ」

「わたくしたちの食料を断つというのなぜなの」

「セルホットは生存期間を過ぎましたから絶滅させ新しい種に置き換えます、ルーリアは他の食料を探しなさい」

「惨いーこれが太陽の姫のやり方なの」ルーリアは去っていくエミリヤを恨めし気に睨んでいた。

この日エミリヤは二つの種族と接触し、グスダスはラモンの星に帰ると総統にエミリヤの命令を伝えた。

「幽霊船は女が支配しているのか、わしを連れて来いだとー生意気な」

「女は巡洋艦を瞬く間に十隻も破壊しました、勝ち目はありません」

「お前は一隻の帆船に負けて帰って来たのかグスダスーお前を降格する船を降りろ」

グスダスは肩を落とし退室するが入れ違いに大神官シモジが飛び込んできた。

「総統閣下ー太陽の姫が現れたのですか」

「ああーそのようだなどこの魚の骨か知らんがそのように名乗っておる」

「姫様は今どちらにおいでか」

「大神官よーおぬし姫を知っておるのか」

「はい神宮には大古の時代から引き継がれてきた巻物がございます、それには不死の命を持つ太陽の姫様の事が詳しく記録され、我らの始祖を銀河に広げたとあります」

「ほーうそうか、面白い話だなどこまで信じられるのか」

「総統ーこの話は全て事実でございます、太祖様が亡くなる前生前に書かれ神宮に奉納されたたものでございます」

「誠か信じられぬがふーむ」わぉー謁見室に光の珠が現れレオラは驚きの声を上げたがしばらくして目を見開くと珠は消え華麗な装束の女性二人がいた。

「お前たちは誰だどうやって来た」

「御黙りなさい、太陽の姫エミリヤ様ですぞ、そなたにお話があるそうです」

大神官のシモジは振り返り其の場で座り込んだ。

「太陽の女神よくぞ降臨くださいました嬉しく存じます」シモジは感激し床に頭をこすりつけながら、どうしたら神殿にお迎えできるか思考をめぐらした。

「神官そちの考えは無用ですわ、姫は銀河の秩序を正しに来られましたのよ」

「女神様はわたくしの考えが分るのですか」シモジは頭を床にこすりつけながら尋ねた。

「ホホホホ容易い事ですわ、お前たちの統領はどうしたらいいのか迷ってますわねー面白いですわ」

「統領ー姫はこの宮殿を拠点に使う所存、部屋を用意しなさい」ミレイが丸い目で睨みレオラに命じた。

「グググ言いたい放題言われるがおまえたちはどこの誰だ」

「ホホホホまだ勉強ができてないみたいね、無礼を働くと無事ではすみませんことよ、主人が誰かミレイ教えて差し上げなさい」

「はい姫ただいま」ミレイが一歩二歩前に出て指揮棒を振るうーレオラは空中に浮きあがり部屋の隅まで弾丸のように突進したキャーー―ドカーン。

吐き出した糸でぐるぐる巻きになると天井から吊り下げられちくたく。

「助けてくれー」

「レオラー姫に従いますか、いやなら息が止まるまで釣り下がっていなさい」

「助けてくれ、姫に従う」

「ほほほほ初めからそういえば苦しまなくとも済みましたのよ、降ろして差し上げます」

エリミヤはレオラの重臣たちを集めレムリアとの領域線から一万光年を非武装にするよう命じた。

監視をするためエミリヤの親衛隊が非武装地帯を監視して常時パトロールにあたる。エミリヤは領界を接する種族を次々服従させレムリアへの驚異を取り除くと銀河を東トレコロ帝国トレール星に現れた。

境界線を監視していたクノア星監視ステーションのマルワル少尉は目の前を帆船が横切っていくのに驚く、「あれはどこのだなぜ警報が鳴らないのだ」

この時トレコロの境界では無断侵入すれば自動的に警報が鳴り近くの基地から艦隊が出動することになっていた。

「まずい警報が鳴らなければ艦隊は動かないぞ」マルワルは急いで最寄りの基地に事態を報告対処を委任した。

「司令官ただいまクノアのステーションからクインシップが入ったと報告がありました」

「わかった総統にお伝えする御苦労」

報告を受け総統マクリ―は先祖からの教えに従い神殿に伺いをたてた。

「偉大なるカイラ様ークインシップにはどのように向かえればよいのですか」

マクリ―の問いは神殿に備わっている五次元通信機により、カイラに伝わった

「歓迎せよ、決して攻撃してはならん」

「迎撃はしないのですか」

「帆船には手を出すな」

通信線をたどりエミリヤはカイラを追跡トレール星の山の中に現れた。

「ほほほほカイラたいそうな歓迎ですわねーずいぶんしゃれた隠居所です事今の執行部はあなたがここにいるのをご存じなのかしら」

「ゲっお前はイメルダ様でないな、エミリヤか何しに来た」

「ほほほほ目的は簡単よ、わたくしの子供たちに手を出さないで欲しいのーいいわよね」

「お前の子供だとーどこにいる」

「あらー忘れたのー?人間たちよ」

「ゲっやつらの事かあれだけ繁殖しているのだ食料に逃す手はないぞ」

「カイラー忠告するわ人間たちに手を出せばあなたたちを泥にするわよ」

「ふざけないでもらおうイメルダ様が許す訳ないだろー」

「そうかしら母上は多くの種族をお産みになりましたから一つや二つ無くなったって気にしないわ、イモムシでも食べなさいよ」

「お前の希望は分かったがマクリ―は言う事を聞くかな」

「ほほほほあのような若造は脅せば従いますわ」

エミリヤはシンデレラ号に戻り悠々とトレールの宮殿に降りモーリーとともにマクリ―の居る宮殿へ向かう。

「待てーヒト族どこに行く」宮殿の入り口を警備していた兵士が止めた。

「おどきなさい」モーリーは持っていた指揮棒を振るったギャードシーン。

兵士は監視所の壁に激突し意識を失うが見ていた他の兵士は銃を向けながらエミリヤ達を囲んだ「お前達抵抗するな」

「ほほほほーわたくしに銃を向けるとは命がありませんよ」エミリヤは指揮官らしき兵士を指さす、突然兵士は黄色い土に変った。

「どきなさいあなたも土に帰りますか」エミリヤの問いに兵士はバラバラと建物の影に逃げ込む。

「ホホホホモーリー行きますわよ」

「正門の出来事はまたたく間に宮殿の中に広まり二人が歩いていくとトレコロたちは物陰に隠れた。

皇帝の間では護衛の兵達がマクリ―を取り巻き防備を敷いているがエミリヤ達は意に介せずマクリ―を睨みつけた。

「マクリ―太陽の姫様にご挨拶をせよ」モーリーは甲高い声で叫んだ。

「太陽の姫だと―なにをほざく」マクリ―の声が合図で兵士は二人を取り巻いた。

「ほほほほお前たち土に戻りたいのか」

「ギクッ」兵士はエミリヤの問いかけに左右を見てキョロキョロ

「消えなさーーい」ドドドドドエミリヤの叫び声が響き兵士は外へ散ってしまった。

「貴様たちどこへ行くー戻ってこい」

「マクリ―に命じます、この銀河からグァモを追い出しなさい」

「ゲっそのような事できるか」

「わたくしに反抗するのならこの銀河から追放しますわよ」

「脅かしても共倒れになるだけでできんことは無理だ」

「ほほほほ心配ありませんわ、わたくしの指示に従えばトレコロの未来は明るいですわ」

マクリ―は神殿での出来事を思い出した、ー神はこの女に従えと言っていたぞー


マクリ―の艦隊がエミリヤの指揮で訓練に励んでいた時、トレコロ帝国の動きを監視していたグァモは数千年に渡るライバル関係に幕を引く時と感じていた。

グァモ帝国の境界にシンデレラ号を先鋒に十万隻の艦隊が集結した。

「わが帝国に仕掛けて来るとはいい度胸だトレコロ」

「ほほほほ待たせたみたいねグァモー艦隊を第七腕状星雲に放逐しますから従いなさい、今後は銀河本体で艦を見かけたら攻撃しますわよ」

スクリーンにグァモの総統が現れるとエミリヤは最後通牒を提示した。

「エミリヤーお前がワニを唆したのか、何が目的だ」

「ほほほほわたくしの子供たち人間を守るためよ、あなたに人類を食べるのは認めてませんわ」

「ググこの銀河は弱肉強食で成り立っているのを忘れたか、人間を食料にしているのは我らだけではない」

「ふふふ他の捕食種族には人類は対抗できますわーわかりましたら銀河本体から艦隊を退去させなさい、その領域はクロリアが管理します」エミリヤは帝国領を取り上げることはしない、非武装にしただけでグァモの市民は今まで通り生活を続けられた。

エミリヤは後処理を親衛隊に任せて銀河の外にあるトカゲの帝国に向かった。

二百余りある恒星系から成る散開星団にトカゲの帝国があり、彼らの生活は平和を満喫していた。

「総統陛下見たことのない帆船が近づいております」

「帆船だとーこの銀河の深淵を航行してくるのか」

「はい」

「パトロールに調査させよ、敵と分かったら殲滅しそうでなければ監視つきで領内を通過させてもよい」

「はっわかりました」

総統ワーリックの指示はその場にいたエミリヤが聞きシンデレラ号に戻るとニコッとした。

「セオドアー間もなくトカゲが来るわ、もてなしてあげましょうか」

ほどなくパトロール艦が接近誰何を上げた。

「シンデレラ号のエミリヤ様がメルト族の総裁に用がありますわ、案内しなさい」モーリーが命令口調で伝えた。

「陛下に会いに来たのですか」

「そうよー、わかったら早くね」

艦長は司令部に要望を伝え、官邸からの返事を待つ。

「エミリヤだとー誰か知らんか」

係官の一人が電子脳に尋ねた、「エミリヤだわかりますか」

「エミリヤは銀河の支配者太陽の姫よ、この方に敵対行動は絶対ダメ」

「みんな太陽の姫は知っているか」総裁は尋ねた。

「知りません」

「ほほほほカレットー太陽の姫とは銀河を作られた方神族の姫様です、反抗すればメルトは泥に帰されるでしょう」

エミリヤは歓待されクロリアに従属すると誓いを得てトカゲを手中に収めた。

「お母さまレムリアの周辺はわたくし配下の種族で固めましたわ」

「ほほほほエミリヤ、これからどうしますか」

「お母さま子供たちが理想とする世界を作るのはこれからですわ」

エミリヤは窓から見える渓谷を鑑賞しながら母と和やかに話をしていた。


レムリア帝国の発展

レムリア歴九千三百年、エミリヤはレムリアを含む銀河の三分の一を支配下に置くと銀河帝国別名クロリア帝国を設立して皇帝に着いた。

エミリヤからレムリア帝国を譲り受けてセリナは延々と外の惑星へ植民を続け太陽系まで領域を広げてレムリア帝国属ソラリス王国を創立した。

セリナはソラリス王国を設立させるとレムリア皇帝クレドリッシを陰で操り拡張政策を帝国建設に転換したが従わない者は密かに領地を求めていた。


パセル侯爵の分裂と太陽系争奪戦

帝国からの独立を計画していたバセル侯爵は皇帝の命令に従わず先に進み太陽系から三十光年離れたマーカス星を発見、十一の惑星を持つ星系で第四惑星に酸素と水があった。「諸君ここに基地を置こうではないか」

「ハッ仰せに従います」

パセルの動きをセリナは楽しそうに眺めていた。

「どこまでやれるかしら楽しみだわ」

バセルは五千隻の艦隊を地上に降ろし乗員の休息と艦の整備補給を行う。

「ルドルー国から資材はいつ届くのか」

「はい基地設営に必要な物資は尋常な量ではありません、五次に分かれて送られてますので向こう十五か月後には揃う計画です」

「結構時間がかかるな、その間に帝国から妨害が起こらなければいいのだが」

バセルのこうした動きは太陽系を支配しているカノン王子の末裔ー加納家のパトロール艦に監視され、セリナに逐一報告されていた。

「バセルー太陽系に手を出したらお姉さまは御怒りになるわよー」セリナはワクワクしながらこれからの展開を思った。

バセルの本星では必要な物資を支配している惑星国家から買い集めていたがその資金が不足に陥り、バセルは資金を得るため太陽系に眼をつけた。

「提督諸君獲物はここだ、太陽系にはソラリウムがあるぞ」

「陛下それは事実ですか」

「儂が掴んだ情報よ、フェン侯爵が代々領地にしていたのはそれが理由よ」

「陛下ーソラリスの資金源ですな」

「フフフその通り、これからはバセル家の資金源にしようではないか」

賛成―バセル家重臣たちは一斉に立ちあがり帝国から離れると宣言した。

地球はこの頃中世の時代日本は戦国時代にあり加納家は表にでず地下の領域を拠点に月と火星に基地を置き太陽系を支配していた、月には大掛かりな基地と工廠が築かれ百隻前後の戦艦が常駐していた。

深淵の向こう側ではリーズがエミリヤの生まれ育った地ー太陽系を防衛しているのはセリナも知らない。

バセルの艦隊が接近しているのをパトロール艦日陰が探知、警報を鳴らした。

「報告をー」

「バセル侯爵の艦隊と思えます、明らかに攻撃の意図が見えます」

「なぜだー帝国の一員ではないか」

「殿下バセルはすでに帝国を離脱した一派です、彼らの目的はソラリウムに違いありません」

「グググ帝国から分かれたというのか、ここには十分な艦隊がない、ソラリスに連絡して増援を求めろー総員戦闘態勢に付け、救援がくるまで堪えろ」

バセルの艦隊はソラリス代表部の置かれている火星を目標に接近してきた。

「パセルより全艦隊へ目の前の荒れた惑星を攻撃する、衛星に注意しろ」

火星から百万キロに迫った、衛星デニモガに設置された衛星砲が二ギガトンのエネルギーを放った。ピカッ―目に見えない光が光速で突進戦艦一隻のバリヤを破り粉砕した。

「衛星を攻撃しろ、やつを黙らせないと先には進めんぞ」

戦艦から核ミサイルが発射されるしゅードカーン。

スクリーンが破れない、衛星の奥深くに設置されている転換装置から供給されるエネルギーは強大な容量を誇っていた。

「くそーここには衛星がいくつもあるのか」パセルはスクリーン映る衛星を七つまで数えどれもが強力な防御スクリーンを纏っていた。

「殿下、どうやら一つづつ潰していくようですな」

「メルク、ソラリスから増援が二十時間後には来るからな」

衛星に設置された長距離砲が切れ目なく発射、ミサイルも光速で突進しバセル艦隊の侵入を防いでいるが破られるのは時間の問題、火星守備隊は地下に入り防衛線を構築して待っていた。

加納家からの警報はリーズの防衛司令部に伝わった。

「総統閣下ーエミリヤが攻撃を受けている、救援に行ってまいります」

「フムそうしてくれカルホン」

直ちにカルホンは戦艦数十隻を引き連れ時間のない五次元を経由して太陽系で現実化すると目の前で戦闘が行われていた。

「カルホンだ、我々は太陽系の防衛に来た攻撃する者に手心は無用ーかかれー」球形艦は進撃を開始五次元砲を発射ービィィィン。

地球から一億キロの距離で迎撃の陣を張っていた加納艦隊は目の前にいた敵艦が忽然と消えると球形艦が現れビックリ仰天、艦隊司令官のノベッツ提督は暫くポカーン「どこの艦だ」

「分かりませーん」

見ている前で敵艦が何隻も破裂し意味がつかめないでいるとスクリーンが瞬き華麗な制服を着た蜂が現れた。

「加納の諸君我らはリーズ、救援に来たからあとは我らに任せたまえ」

「リーズですか蜂族の艦隊が支援してくれるのですか」

「ハハハハ離れていたまえ」

クロリアで安穏としていたエミリヤは火星の宮殿から連絡を受け驚いた。

「太陽系が攻撃されているですとー敵は誰ですかセリナ」エミリヤはレムリアの太陽を経てセリナを呼び尋ねた。

「お姉さま人間の一組が暴走して太陽系を襲いましたわ、ですがリーズが救援に来ましたの、お姉さまなにかご存じですか」

「リーズに防衛を頼んでましたのよ、しかしバセルはなんという事を許しませんぞ」エミリヤはシンデレラ号で太陽系に現れた。

「リーズの総統閣下お手数を駆けますわ」

「ハハハハエミリヤそなたも安心して休んでいられないようだな」

「総統も普段は外に出ないのにまことに申し訳ありませんわ」

「なんでもない事よ、我らは兄妹の領域も大切に考えているのだ」

すでにバセルは艦隊が壊滅し生き残った数百隻を従え星雲の奥へ逃走。

「レーモン、パセルを追い絶滅します」

「はっ姫了解しました」

シンデレラ号は瞬間移動で艦隊の後部に現れた。

「シーゲル追跡はいるか」

「殿下―後方より距離を取り帆船が付いてわが戦艦が消えていきますが誰かわかりません」

「帆船だと―クインシップか」パセルはスクリーンに映る帆船を凝視

「振り切れないのか」

「殿下ーわが艦は全速で航行していますが帆船は引き離せません」

パセルはシンデレラ号目指して核ミサイルを放った、超光速で突進シンデレラ号を通り抜けていく。

「爆発しないぞこれは幽霊船なのかー、誰が乗っている」

「分かりません、フェン侯爵は幽霊と手を結んでいるのでしょうか」

エミリヤは追跡を続け、一隻づつ破壊し最後の一艦を惑星に不時着させた。

「ほほほほパセルここがお前の最後土に帰りなさい」

ロボット兵団を降下させパセルの一党を包囲したとき三角翼艦が飛来した。

「エミリヤーやつらはこのあたりで許してやれ、帝国のためこの周辺を平定させるのだ」ピロンはイメルダの意向を伝えにやって来た。

「ピロンそうですわねもう充分懲りたでしょうー彼らはここに押し込め二度と戻しませんわ」


パセル追放

パセルの奥方は通報艦の報告を受けレムリアに行き皇帝に命乞いをした。

「陛下この度の事お許し願えませんでしょうか」

「セシリアナー侯爵が命令を無視して先に進んだのは大した罪でない、しかし太陽系に手を出したのはまずいぞソラリスのフェン侯爵は断罪を申して居る、フェン公を宥めてみるが追放は覚悟せよ」

セリナは皇帝を介して裁断を下した。「セシリアナ一族を連れ腕状星雲を領地とし平定せよ、成した段階でそちたちを帝国に帰還させよう」

レムリア追放となった一族は輸送船団二百隻と五十隻の戦艦に護衛されて国を離れバセルと生存していた部下たち三百人を拾い新たな惑星を探す旅に出た。ソラリスの領域から出て第六腕状星雲の奥に進み一万光年、惑星を十二個従える星系を発見した。

「諸君この星系を見てみよう、よければ植民する」

第三と第四に酸素と水があると分光観測で知りパセルと一行はにやり、後年ルビリア王国の主星となる第三惑星に向かうが誰もいない原始の星だった。

「殿下ー海と大陸が有って無人の様ですな」

「環境はどうかな、生存に適した大気か結果はまだか」

生物部門で大気を採取、検査の結果人類に適した大気と判明すると着陸地点を探した。「殿下あそこの草原はどうですか、大きな川が有って海にも近い」

「そうだな、降りて詳しく調べて見よう」

輸送船が一隻降り、土壌や水質、病原菌の有無まで詳しく調べ知られていない細菌類は発見されない、生物学者は適の太鼓判を押した。

「よし全艦降ろせ、防衛体制を敷く」

輸送船は降下にかかり、戦艦は惑星を取り巻くように警戒位置に着いた。

着陸した輸送船からロボット兵士が降りて行き周辺をくまなく調査、空からは小型哨戒艇が飛びまわった。

「殿下配備をすませました、敵がいても奇襲を受けることはありません」

「よろしい、基地の建設にかかってくれ」

「はっ承知しました」

ロボット作業員と土木機械が船から降ろされ技師の命令に従い工事が始まった。暫くパセルは眺めていたが順調に進むと得心、建設技師長に告げた。

「隣の星を見て来るか、ビトラウスにあとは任せるかな」

「ハッお任せください」


ルビリア訪問

バセルは戦艦三隻を連れ第四惑星に近づくとステーションが軌道にあるのを見た、「ここには住民がいるようだな」

「はいー殿下、宇宙に出ているようですが船がみえませんな、もう少し調べませんと言えませんがやっとステーションを上げた程度のレベルと思います」

「ふむーそれはもってこいだ、程度が低すぎると教育に時間がかかるが宇宙飛行の直前ならすぐ実戦に使えるぞ」

その時のルビリアは宇宙ロケットの開発が成功しこれから系内の惑星探査を始める文化程度。

「そうだなこの星の政府と文化を調べ取り込む計画を立ててくれ」

パセルは輸送船三隻に商品を乗せて第四惑星に接近するとステーションの乗員ハルラが驚き警報を鳴らした。

「ステーションのハルラ大尉から基地へ異星人の宇宙船三隻が接近します、とても大きい」

「こちら地上基地確認した、監視に徹し敵対行動はとるな」

パセルの船団はステーションのそばを通り大気圏を降りていくやがて海や大陸がいくつか見えてきた。

「オーデシオ都市を探せ」輸送船団は降下しながら惑星を数回周り海上に着水

見かけた都市に向け航行した。

ルビリアの大統領官邸に急報が入った。

「何ですか異星人の船が海に降りたですってー」

「ハッ閣下ー船は三隻、現在偵察機が船団の上空を監視していますが攻撃の兆しがありません、こちらに向かっておりどうしますか」

「異星人とコンタクトを取ってみなさい、それからどうするか決めますわ」

指示は外交部門に伝えられ、担当官は航空機で船団の上空に来るとマイクで叫んだ。「交渉に来た停船しろ」

「殿下ーどうしますか」

「止めろ、向こうから来るとは都合がいい」

船団は停止し航空機は着水すると担当官はボートで船に乗り移った。

「なかなかいい度胸をしていますな」

「やあー初めまして俺は外務を担当しているマドレー大統領の命令できました、あなた方はどちらから来られたのですか」

「俺は隣の惑星の代表パセルだ、この国にわが国の製品を売りに来た」

「ほーう隣と言うと第三惑星ですか、まだ行ったことが有りませんな。我々は異星人と初めて会うがこんな形は想定してませんでした」

「ははははどんな方法を考えていたのかな、宇宙は広いし多くの国があるから宇宙を知らない人は多いぞ」パセルは相手が考えていた程度の国だと知り強引に押し通す方法を取った。

「銀河帝国の進んだ商品を売らせて欲しい、どうかな」

「そのような帝国があるのですか、宇宙の事を知りたいのでお話を聞かせてくれませんか」

マドレ―は無線で異星人が訪問すると伝え船団を首都の港に案内した。

「ここがルビリアの首都ソフィアシティーです」マドレ―は船の操縦室に入りスクリーンに映る港の景色を眺めため息をついた、三次元のパノラマ映像は素晴らしく、ルビリアには作れない。

船団は警察によって警備された桟橋に接舷パセルと一行はマドレ―と船を降りた。

警官が走り寄りマドレ―に敬礼、「マドレ―補佐官、大統領が官邸でお待ちです」

「ふむ分かった」

「皆さんこれから大統領官邸にご案内します、あの車にお乗りください」

車は官邸の玄関前に滑り込んだが豪壮な建物にパセルも驚いた、「文化は低いが歴史のある種族だな」

金銀に飾られた建物にはいり歓迎会場に案内されまたまたビックリ。

「お待ちしてましたわ、わたくしはルビリアの大統領を務めますエリーナみなさんを歓迎しますわ」

「俺はパセル、隣の惑星からこちらに市場求めてまいりました」

「ほほほほどんないいものを売ってくれるのですか楽しみですわ、今日は宇宙のお話を聞かせてもらえるのよね、ドキドキよ」

エリーナの親しげにパセルと話し合っている様子を見て妻のセシリアナは嫉妬心がむらむらパセルの靴を強く踏みつけた。

「痛っーセシリアナ足を踏んでるぞ」

「フーンわざとよ、あなたいい加減にしなさいね」

それからは楽しい食事会に進み、政府との話し合いをしていた頃船では政府から提供された広場に搭載艇が降りて店開き、エネルギードームが張られ、搭載艇の周りにコンテナ式の屋台がオープン、玩具や雑貨が並べられ人々を引き付けた。広場で店が開くと市民の眼にとまったのは家事ロボット、屋台の向こう側で美味しい匂いを漂わせ料理をしている。

「ねえーあれもしかしてロボットよね」

「お客さん、ロボットさんだよ、頭はいいしなんでもしてくれるんだ」販売していた男性が叫んだ。

市民が音楽につられてドームの中に集まって来ると船の底から色とりどりのライトを点滅させてエスカレーターが現れ赤毛の美女が腕に籠を持ち降りて来て集まった市民に粗品を配りながら船の中に入るよう誘いを掛けた。

市民は女性の後をついて船の中へ入るとこの世界では実用化されていない商品がびっしり、人々は手に取り係員から説明を受けた。

「どこで買えるのかな」

「へへへお客さん、ここでひと月は店を開けているからその気になったら買いに来てくださいや」

この日パセルはニコニコ外交で市民の中に潜り込みルビリア政府は商人だとすっかり安心してしまった。

だが軍の一部は疑心暗鬼、諜報員を船に潜り込ませようとするが警備するロボット兵士にことごとく捕まってしまった。

「参謀長銀河から来た商人ですがもう一月も留まっています、何かを企んでいるはずですが尻尾が掴めません」

「ゼルダ君彼らは隣の星から来たと言っている、本当に商売が目的かどうか今は監視にとどめ彼らの戦闘力を見極めるのだ」

この頃パセルは工場建設の資金の確保に専念していたから軍の期待する活動はしていない。


ナッシア姫の冒険

パセルは第三に置いた基地に戻ると幹部を集めた。

「全員いるか、俺はこの星が気に入った、第三惑星を開発し将来のパセル王国の主星にする、そして第四を武力を使わず平和的に第三と併合を目指す、君たちはすみやかに第三を開発するのだ」

「殿下いい考えだ、将来第四の市民を植民させレムリアに負けない国をつくりましょうぞ」

「指し渡し第四に商品の生産工場を建設するが資金だなどうする、船団の皆が食べる食料や日用雑貨は持ってきた商品を売ればなんとかなるが工場を建てるには莫大な資金がいるぞ」

「殿下ー資金なら第六惑星に金属資源が未曽有にあります、採掘しルビリアの市場に流せばいくらでも稼げます」

どこの国でも産業が興れば資源不足に見舞われる、ルビリアでも希少金属は喉から手が出るほど欲しがっていた。さっそく採掘のチームが作られ向かったがパセル家の船ースイングス号では朝からナッシア姫の姿が見えないと女官が大騒ぎしていたからパセルは呆れた。

「お前たち静かにせんか,ナッは第六に付いて行ったぞ」

「なんですってーあなたそれを許したのですか」

「そうだかどうかしたのか」

「あなたーあの子は大事な跡取りなのよ万が一が有ったらどうしますか」

「はははは心配ないクリクリを供に付けたわ」

「ですがあなたあの子の目的はご存じなの」

「なんだ目的とは何かあるのか」

夫婦で言い争いの最中ナッシアは氷の大地に降り眼を輝かせてやる気満々。

「クリクリ行くわよ」

「姫ー行くってどこにですか」

「決まっているでしょ地下よ、これから宝さがしよ腕が鳴るわー」

「ヒ―殿下の知られたら怒られますよ」

「あんたが言わなければいいの、さぁー連れて行って」

クリクリはあきらめナッシアの手を掴むと地下深く降り採掘場に到着する、ナッシアは眼を開いてクズ石の山を見つめた「あそこよ行きましょ」

山に登り始めるとクリクリは驚き叫んだ「姫ー危険ですやめてください」

「いやよあんたこそ突っ立ていないで石を入れる箱を探してきて頂戴」

クリクリはぶつぶつ言いながら仮小屋の中へ入り手ごろな箱を見つけるとナッシアに渡した。

「ありがとうこれでいいわ」バラバラと石を箱に投げ入れる。一時間もすると箱は一杯になり地上に建てたプラントの一室で石をコツコツと割り始めた

「こうやって抜き取るのよ、あんたもやりなさい」

石割の作業が終わりかけたころ外から女性の声が響いてくる。

「ここらしいわーお后様みつけました」

突然小屋の扉が開いた「姫なんというお顔ですか、嘆かわしい」

この時ナッシアの顔は埃にまみれて眼だけがギョロギョロしていた。

「あっお母さま」ナッシアは呆れて仁王立ちしているセシリアナを見た。

「ずいぶん拾いましたね、キリーこれを持ち帰りなさい」

「はいお后様」キリーは袋を取り出し床の上に転がっている宝石を拾い袋に入れていくルンルン。

「あーこれはあたしのよ持っていかないで」

「姫ー侯爵家の跡継ぎと言うのに嘆かわしい、財物は家臣に分け与えるのが当家のしきたりをお忘れか、これらの宝石は磨いて女官たちの飾り物にしますから宜しいですね」

「でもーあたしにはくれないの」

「一つくらいは差し上げてもいいですがいいものを得るには女官たちとの争いに勝ち抜かなければなりませんわホホホホ」

「うーんケチー」ナッシアは立ち上がり地団駄を踏んだがキリーは負けられませんわと思いながらルンルン一つ残らず袋に入れ持って行ってしまった。

「何よ―キリー一つくらい残していきなさいよ」

「姫ーまた取ってくればどうですか」

「クリクリ、ナッは連れて帰ります宜しいですわね」セシリアナが睨んで告げた。

ナッシアは強引に連れ戻されたがセシリアナは鉱山の採掘責任者に宝石を取り出す作業を命じルビリアの市民相手に販売を始めた。

売上金は女官府の会計に組み込まれ女官たちは思いかけないボーナスにニコニコーナッシアはブスッ。


パセル王国とルビリア

パセルは市民の欲する製品の製造工場をルビリアに建てて販売が軌道に乗ると周辺の星系に商船を派遣して通商関係を結び販路を広げた。

パセルの商船が惑星を巡ると人々から乗船して他の世界に行きたいと要望が高まり、航路を開くと行き来が促進されて惑星間の取引が活発になって行った。

周辺の惑星国家がパセル王国の宇宙航路に依存し経済を活性化するとやがて王国と政治的に関係を結ぶようになったがルビリアではエリーナが退陣したのをきっかけにルビリア市民はパセル王国との関係が争点の一つになった。

軍は宇宙に出るのが望みでパセルに戦艦の譲渡を求め交渉を繰り返す。

「戦艦は重要な戦略兵器ですからな王国の指揮権が及ばない他国には渡せませんな、欲しかったらパセル王国軍に入ればいい」

「グググルビリア軍を王国の一部隊になれと言われるのですか」

「嫌ならお帰り下さい」

この時ルビリアの工場で戦艦の部品が製造されていたが諜報活動のレベルが低かったためルビリア政府は気づかず技術を盗むチャンスを逸した。


ナッシアの代になり女王として初めてルビリアを訪問した。帝国から受け継がれた伝統である三本マストのクイーンシップで向かうとルビリアのテレビ局は青空を背景に白い帆を満開に広げて優雅に飛ぶクインシップの姿を放映、港に入るときオレンジのドレスで船首に立つナッシアの姿は若者に強烈な印象を与え、ルビリアの国内を巡り人々と接触やテレビに積極的に出演してパセル王朝をルビリア市民に身近な存在と印象付けた。

ルビリアの産業はバセル国の商船団が周辺諸国に商品を販売してるから絶好調を迎え市民のあいだに合併の機運が高まった。

「陛下そろそろルビリアを併合すべきです」

「ノリトフまだ早いですわ、ルビリア市民から発議をさせるのです」

「分かりました、陛下のお考えそのように市民を誘導するようにいたします」パセル国首相のノリトフはルビリア国民に植民計画を提案した。

ソフィアシティーでマンション暮らしのミルはパセル国の植民に興味を持った。妻のレモを説き伏せ植民センターに聞きに来た。

「植民する人達には政府から土地と生活支援が得られるますがどうですか」

「政治の形が違うが俺たちくらせるかなー」

「はははは宇宙の国々のほとんどは王政か帝政です、大統領制が少ないのは国民に不利だからです、国民は支配者が変わるたび汚職と横暴に悩まされますが王政では国民を我が子供としていつくしんでいる王が殆ど、国民から搾取する王室は国民によって打倒されます」勧誘員は王政の優れた点を説明し植民を促した。

始めはそれほどでもなかったが一年が過ぎる頃には植民した人々の話が広がり女王ナッの人柄も功を引き数が増えて行った。

「ノリトフー成果が上がっているようね」

「はっ陛下ーパセル国の市民になった人々の暮らしぶりがルビリアの市民の間で評判になり植民の機運は高まっております」


帝国訪問

「よろしいですわ、ルビリア市民のレムリア帝国訪問を企画しなさい、市民に宇宙帝国の存在を見せつけるのです」

「ははあーいいお考え直ちに」

ルビリアのマスコミを通し計画を発表したら全国から参加希望者が殺到ーノリトフは頭をなやませた。

「ノリトフどうしたのですか」

「はい陛下レムリアへの参加者が多すぎましてどうしたものかと」

「あらそうなのどういう人が行くのかしら」ナッシアは名簿を取りパラパラと見た。

「経済界からの参加者が多いわねーノリトフ経済人の団体と一般観光団体に分けて組みなさい、それぞれコースを組むようだけど経済人には帝国の経済団体との会合を組み込むのもいいわね」

「はいそのようにいたします」

二組のコースが設定され、姻戚となる帝国のフロンフォルト家が豪華な客船をルビリアに送り込んだ。

「キャーこの船で行くのーすばらしいわー」ルビリアの市民であるカラは空港に着くと発着場に停まっている全長二百mあるキラキラ卵色に輝くオーバール船を見て感激、夫のグーリーに飛びついた。

「おいみっともないから」

二人がじゃれあっている前を経済団体の人たちが列を作り船に乗り込む。

ー帝国観光のみな様乗船の時間になりました乗船口にお集りくださいー

スピーカーが喚き人々が集まると乗船を始めた。

「なあにこの子?」カラは十歳くらいの女の子が列をかき分けカラの前に入って来た。

「叔母さーんあたいを連れて行って―」

「えーあなたーお母さんは」

「いないの帝国に探しに行くのー」

「エッどういう事おばさんに話して」

「カラーどうしたんだ」

「この子よー何か事情があるみたい」

カラとグーリーは女の子を連れ乗船、部屋に落ち着くとレストランに女の子を誘った。

「あのねーお父さんは帝国の人だってお母さん教えてくれたの」

「おかあさんはどうしたの」

「えーんー病気で死んじゃったー、あたい一人なの」

「お父さんはどこにいるか知っているの」

「知らないわーだけど艦隊の偉い人だってー」

女の子の話を聞きカラはグーリーを見た。「どうするー艦隊の偉い人だけでは探せないわ」

「カラーこの子を俺たちで育てないか、器量はいいしはきはきしているよ」

「そうねーあたしもいずれどこからか子供をもらおうと考えていたからこの子ならかわいいわ」

二人のそんな考えなど知らない女の子はお父さんに会えるのを期待し心はウキウキ、食事を終えると部屋に戻りベットに入った。


フロン家の宴

帝国まで一週間の航行で途中フロン家の領域に入り呼ばれて寄ると歓迎の準備が出来ていた。

女の子はすっかり二人に溶け込みエミーと名前を言った、エミーと言う名前はお父さんが付けてくれたそうだ、エミーは宴会の会場でうろうろしてるとフロン家の王子カムとばったり、「君―なんていうの」

「あたしの名前ー?聞く前にあなたが名乗りなさいよ」

「ごめん―俺はカムここの長男なんだ」

「あたしはエミー帝国は初めてよーお父さん探しに行くのー」

「へーどこにいるのかな」

「知らないわーでも艦隊にいると聞いたわー会いたいの」

「君は誰と来たんだい」

「知らない叔母さんに連れて来てもらったの」

カムはエミーの顔を見つめた、「おねえさんに聞いてみよー」

カムはエミーの手を引き姉のスレイターナを探しにウロウロ。

「ちょっとーあなた放してよー」

「お姉さまはどこかなーあっいたー」カルはエミーの手をしっかり握り姉の前に走って行った。

「何かしらカルその子は誰ー?」

「お姉さまこの子はエミーって言うんだ、お父さんを探しにルビリアから来たんだけどどこにいるかわからないんだどうしたらいいの」

「手掛かりはないの?」

「あるよー艦に乗っているんだってー」

「そおーそれならわかるわよ、サヤー識別装置を持ってきてー」

「はい姫ただいま」

サヤと呼ばれた女官が端末のような装置を持ちスレイターナに渡した。

「スレイターナはエミーの手に装置を充てると瞬時に数十兆の名簿から一人の男性を選び出した。「この方がエミーのお父さんね、あらーお父様の部下だわ」装置が探し出したのはグレイハンド中佐、フロン軍遊撃艦隊の士官だ。

「エミーお父さんを見つけたわ、呼ぶから迎えに来るまでこの屋敷に居なさいな」

「えー本当ー嬉しいなー」

「カルーわたくしはお父様に報告しますからこの子の世話を頼みますよ」

「うんエミー遊びに行こう―」カルはエミーの手をひき池の方に走り出した。

「待ってー王子様ーー」女官のレミンが慌てて後を追う。

会場でフロンの人たちと親交を結んでいたカラはエミーが見当たらないと気づきあわてて会場の中を探した、「いないわーどこ行ったの―」

「もしもしどうかされましたか」警備の腕章をつけた軍人が声をかけた。

「あっ警備さん娘がいなくなったの探してもらえませんか」

「はいただいま、それでお嬢さんの名前と特徴は」

「エミーよ十歳なのー」警備官は持っていた端末に情報を入れるとすぐに反応が有った。「俺だ、どこにいるんだ」

「奥さん見つかりました、王子様と池で遊んでいるそうです」

「本当ですかーありがとうございました」カラは急いで池の方に行くと同じくらいの男の子が魚釣りをしてエミはそのとなりでキャッキャッ騒いでいた。

「もうー心配したのにあの子たらー」カラが安心して辺りを見ると王子の世話役レミンはのんびり近くのベンチに座り二人を眺めていた。

「もしあなたがエミーを連れて来た方ですか」

カラは後ろから声をかけられ振り向いた、美しいドレスを着たスレイターナが立っていた。

「あなたはどなたですか」

「この方はフロン侯爵様の王女様です」傍にいた女官長のメイラが恭しく紹介した。

「エミーの父親を捜しましたわ、迎えに来るまでわたくしが預かりますから宜しいわね」

「へーもう見つけられたのですか」

「幸いでしたわ、父の艦隊に勤務している士官でしたの、たった今迎えに来るよう指示しましたので安心してくださいな」

「はーわかりました」カラは気落ちしてとぼとぼ帰る。


レムリアの社会

一方経済関係の視察団は一般観光客と行動を別にしてレムリア経済界と延々と話し合いを続け大きな疑問であった王政の下での活動を知ろうといろいろな人の話を聞きまわっていた。

トリン財閥のマーモート当主はレムリア商人が自由に生きているのが不思議に思えた「なんでこんなに明るいのだ」

テレビをつけるとあからさまに王室の悪口を話している。

ーなんだーこの国では平気で王様の事を悪く言っているぞ罰せられないのかー財界人に聞いたみた。「ハハハハマーモート言われるのが悪いのだ、王もいくらか反省するだろうよ」

「クライーあの様な事言ってあとで罰せられんのか」

「ふーんあり得ないな、君はいつの時代の事を言っているのかな、現代では市民の上で胡坐をかくような王は一日も持たんよ、法は王も市民も平等と定めている、法を執行するのは王ではないマザーだ、王は市民が平和に暮らせるよう尽くす義務がある」

「それでは王政を敷いているのはなぜですか」

「君の質問に答えるには五万年過去からの歴史を知らなければ理解できないが支配者の先祖が人類の礎を築いたのだ、彼らがいなければ今の世は無かったのだよ、王政は過去の偉大な王を称えて残っている遺物だ、これに変る制度が見つかるまで続くだろうよ」

四十日に渡る帝国訪問はそれぞれに成果をもたらし無事終了経済界の要人たちはテレビで知り得たことを市民に伝えた。


エミーは下宿人

カラは家に戻っても抜け殻エミーと短いが一緒にいた日が忘れられない。

「あなたー子供が欲しいわー」

「そんな事言ってもできないんだあきらめろよ」

「エミーを連れて来て」

「無茶いうなあの子には父親がいるんだぞー」

カラが沈んでいた時表に車が止まり誰か来た。「こんにちはー」

「はーい誰かしら」

「叔母さーんいるー」

あの声はエミ―よまさかーカラは急いで玄関に行くとエミーがニコッとほほ笑んでいた。

「エミーちゃんどうしたの」

「おとうさんーおばさんだよー」

「失礼エミーがお世話になりました父親のグレイハントです初めまして」

「はあーカラです何か御用ですか」

「実はわたしは普段艦隊で飛び回ってましてエミーを預かってくれる人がいないのです、エミーを下宿させてもらえないかお願いに参りました。ムリなお願いだと分かっていますが他に頼る人がいなくって」

グレイハントの意向を知ったカラはニコリ、―あたしの願いが通じたのねー

「いいわよお部屋も一つ空いているからエミちゃんはあたしが世話しますよ、あなたは安心してお仕事してなさいよ」

「ありがとうございます、それでは荷物を明日運んできますからよろしくお願いします」グレイハントは喜んでエミーと帰って行ったが見送ったカラはウキウキ早速空いている部屋の掃除にかかった。

「あなたーエミーと暮らせるのよ嬉しいわ」

「おいお前どうしたんだ」

「エミーのお父さんが見えたの、エミーを下宿させてくれないかですってーお父さんは艦に乗っているでしょー娘を安心できる人に預けたかったのよ」

エミーはカラの住宅で暮らすようになりグレイハントは休暇のたびに迎えに来るようになるとカラは好意を高め子供のできないグースと離婚を決心。

「あなたーあたし子供が欲しいから分かれましょう」

この時代は相手を選ぶのは女性ーカラはグーリ―と別れグレイハントをベットに誘うようになった。


カルとエミー

訪問の反応を見ていたナッシアはルビリア市民の間で王政への不安が減少していくのを感じノリトフを呼んだ」

「陛下お呼びでしょうか」

「ノリトフうまく進んでいるようね、もう少しよーもっと植民を受け入れルビリア政府の屋台骨を揺さぶりなさい、間もなく国の崩壊を恐れ彼らは統一を願い出てきますわ」

「はっ陛下の見識には恐れ入ります」

帝国の実態を知った市民の間では王政でも自由はあると意識が広まり統一への機運は高まって行き、パセル王国では子に恵まれなかったナッシアがフロン家からカルを養子に迎えた。

この時エミーは十八歳、大学にカラの下宿から通っていたこの日もカラにたたき起こされ慌ててパンをくわえて玄関に。

「エミーなんて格好なのー若い娘がしょうがないわねー」

「叔母さん怒らないでよー、あたし遅刻しちゃうよ」

エミーは靴を履き出かけようとしたとき戸が開きカルが覗いた。

「あなたー見たことあるわ」

「エミー俺だよカルだ」

「えー王子様そうよ間違いないわ」

「エミーまた釣りに行こうよ」

「えーあなた女王様の養子になったのよねー」

「関係ないよ、俺はエミーと一緒に居たいんだ」

「あなたとお話してたら学校を遅刻しちゃうわー」エミーはカルを押しのけ行こうとした。

「エミー俺が送るよ」

カルは表に止めていた車に誘うがエミーはジロリ不審の眼「これあなたの車?こんな高級な車に乗ってあなたー何をしてるの?」

「なにって困ったな―」

「ふーんすねかじりがこんな車贅沢よ、大衆車に替えなさいよ」

エミーはさんざん文句を言っていたがちゃっかりその車に乗り込み大学に滑り込んだーキィィーキキキー急ブレーキをかけ正門に突入登校中の学生たちは慌てて進路から逃げる。

「バカヤローどこ見て運転してるんだー」男子学生は顔を真っ赤にして吠えた。

車は砂埃を立て突進玄関の前に来たキキィ―停止。

「カルあなたすごい運転よねよく事故しないわねー」

「そんなにうまいか―照れるなぁー」

「何言ってるのよーまぁいいか、ジャーありがとうね」

「なんの大した事はないよ、それじゃー約束だよ当日迎えに行くからな」

エミーが車のドアを開け出るとズラリ女友達が睨んでいた「エミーいつの間にこんな超高級車を持っているハンサムボーイを捕まえたの紹介しなさいよ」友達の一人エバが喚いた。

「どうした―エミー」

カルが窓から顔を出し聞いたがリーシャはビックリ。

「エミーあんたの彼もしかして隣の国の王子じゃないの」

「リーシャどういうことよー」エバが聞く

「間違いないわ、あの人カル王子よ、何であんたが王子と一緒に来るのよ」

教室の中では一日中その話題で持ち切り。

エミーはいい加減うんざり「あなたたちいいかげんにしてよー人違いよー」

「嘘―あたしの目はごまかせないのよ白状したら」

カルがルビリアの大学に現れたのはニュースになりエミーがテレビに追いかけられるとナッシアはニコリとした。

「王子はやるわねールビリア女性との恋仲は併合に追い風よ、ノリトフー王子の彼女の事をマスコミに風潮するのよ」

「陛下承知しました」

ノリトフはエミーのある事無い事べらべら喋りそれを読んだエミーは呆れた。

「あたしがカルの恋人ですってーなんなのよー」

それからは記者がカラの家の外で見張るようになり、エミーはコソコソ隣の家から出入りしていた。

「あなたたち毎日そこにいて邪魔よー」カラは記者が群れている道路にバケツの水を思い切り蒔いたー飛沫は記者に降りかかり逃げ出す。

「ほほほほざまあ見なさいな、二度と来ないでね」

「叔母さん―無茶しないでよー」

「おやーエミー帰って来たの、うるさいから追い払ったのよほほほほ」

ルビリアの市民の間でエミーの話で沸いていた頃、ナッシアがマスコミに語った。「王子の結婚ですってーまだ早いわ」

「女王陛下それではルビリアで騒がれているエミー嬢をどのようにお考えですか」

「わたくしー王子からそのような事は聞いてませんわ、だけど王子の嫁は将来王国の王妃になりますの、慎重に選びませんとね」

ナッシアの一言でウエディングは遠のいたが二人の仲は変わらず定期的にデートを繰り返し大学を卒業するとカルは軍に入りー兵隊から始めた。

王国では王子だからと士官から始める事はしない、領域の守りのため辺境の基地に配属される。

エミーは父親の意見でレムリアカデミーに留学し帝国のシステムを学んだ。

年はあっという間に過ぎてエミ―は二十五になり留学を終えルビリアに帰るが父のグレイハントはナッシアに請われフロン家からパセル家に移り提督の一人に就いた。

「陛下エミーが戻りました」

「そうですか、もう結婚させてもよい年ですわ、迎えに行ってくださいなパセル王国ととルビリアの統一シンボルになるわ」

「はい陛下ー宮殿にお招きするのですか」

「そうよー父親はフロン家から当家に移った将軍よ都合がいいわー大々的によシルバスター号で行きなさいよ」

三本マストのクインシップナッシア女王の船で迎えに来るとルビリア政府は連絡を受け慌てた、ニュースはまたたく間に全国に広まり一躍エミーは注目の女性、テレビは女王が王子の妃にすると広めてしまった。

「困るわーなんでこうなるのー」エミーは困惑したがカラは違った、

「娘が御妃様に指名されたわどうしましょー、あたしも付いて行かないとね」カラはすっかり母親気分、グレイハントは慌てるカラを見てほほ笑んだ。


お迎えの当日空港では歓迎の式典が行われた、薄緑色の華麗なドレスを着て髪にはキラキラ輝くティアラを乗せたカラを先頭に絨毯に沿って並ぶグレイハントの部下の婦人たちの前を王子妃が着る衣装に身を包んだエミーをエスコートするグレイハント准将ー向かう先にはカル王子が待っていた。

そんな映像をテレビで見たルビリア国民はパセル王国とルビリアは一つと印象を持ち統一の機運が一気に燃え上がった。

数年後ルビリアはパセル王国と緩やかな統一を果たし、宇宙船がルビリアに提供されると周辺の惑星と宇宙航路が開かれ産業が活性化した。

ルビリア王国会議は直径千光年の広さを王国領と定め軍に領内の平定を命じた。

軍作戦会議が招集議長のカイラ大将は会場を見渡し口を開く「諸君王国会議の命令を伝える、軍は速やかに領域内を掌握せよ」

ワ―――命令が知らされると一斉に歓声が上がった。

「諸君静かに、これに基づき王国会議は領域内に存在する惑星国家を併合に向け作戦をたてろと命じて来た」

「タモラス大将ーナッシイナ大将ーグレブス大将の三名にそれぞれ部隊を率いて担当域内に作戦基地を、設営し進撃に備えろ、他の部隊は併合した国家への駐留要員とする」カイラ議長はそれぞれの将軍を眺めた。

一月後軍中央基地に出撃する兵員が集合、カル王子エミー妃が出席し出撃式が執り行われた。

数万の兵士がルビリア行進曲に合わせグランドを行進、エミー妃は感激した。

艦が一隻づつ発進上空で編隊を組み飛行を始めるとエミーは帽子をいつまでも振り見送った。ルビリアが帝国を目指して動き出したのだ。

それを眺めていたエミリヤは興味深々、ーパセルの子供たちよどまでやれるか見せてもらいますわー。

作戦は三千光年まで領域を広げ存在する惑星国家を経済で従属させ、武力抵抗あれば軍は戦ったがエミーの平和的な併合の命令で決して無差別攻撃はしなかった。

エミーの娘が女王に就く頃になると域内の惑星国家の半数が王国に従属し通商は活発になって抵抗していた惑星も政府の意向に反し商人たちは勇んで王国と取引に邁進、いつの間にかルビリアの経済圏に取り込まれていた。

有人惑星より遥かに原始の惑星は多い、王国の人々はそれらの惑星を開拓しようと宇宙船が未知の星域を通り行き来すると食人生物の注意を引いた。

ゴキブリに似た昆虫から進化したコクリラ族の調査船トドはルビリアの輸送船の後をつけ開拓最中の惑星に来た「艦長ー何かいるようです」

「儂も見た、食料なる生物かもしれんから探ってみるか」ルサン艦長は偵察艇を発進させた。

「偵察艇より艦長ーいるぞ、哺乳類だ」

「そうかー見つけたな、船を持っているから他の星にもいるだろ、探って一毛打尽にするかー」調査船の中は思いもよらない成果を上げ喜びに沸いた。

ただちに報告が本国に飛び数日後には狩猟艦隊が着くだろう。

一方コクリラの見つけた惑星には警戒のためバトロール艦ベル一隻が配備されているだけで開拓者保護はおざなりだった。

ルサンは密かに部下を地上に降ろし、開拓者の住まいを取り囲む。

「いいか捕まえるのはまだ先だ、船が来るのを待て」

「艦長ーではいつ狩りを始めるのですか」

「ここの生物たちの元の巣を見つけてからだ、ここにいるのは新たに巣を作ろうとやって来た生物だろー」

ルビリアから三千光年を航行し植民者を乗せ宇宙船クランクが着陸に入った時コクリラの艦隊近づいていた。

「船長ー所属不明の艦隊が接近してまーす」クランクの探知士官ビルト少尉が叫ぶ。

「どれほどの勢力だ」船長のモートンは作戦参謀に報告をもとめた。

「十五隻、涙滴型です」

「戦闘艦だな司令部に連絡を入れてくれ、植民者を一時この船に収容し様子を見よう」

船は空港に降りると連絡を受け集まった人たちを乗船させた。

「よし全員乗ったな」船長のモートンは植民者代表のノビルに確認した。

「船長全員乗った」ノビルが報告。

「よし離陸しろ」

上空にはパトロール艦が近づく艦隊を威嚇して植民船が無事惑星を離れられるよう監視をしていた。

ルサンは船を惑星から離し輸送船の動きを見ていた「まずい時に来たものだな、食料が逃げるぞ」

「船長ーあの船を追えばいいんですよ、きっと巣に戻りますよ」

植民船を護衛してパトロール艦ベルが惑星を離れるとルサンは追跡を命じた。

「船長ー後方に一隻ついてます」クランクは警戒を絶やさないから調査船をすぐに探知した。

「王国のものではないみたいだがどこのかなー目的は何だ」

「捕まえて聞きますか」

「そうだな、艦隊を呼んでいるから彼らに任せるか」モートンは向かってくる遊撃艦隊に情報を伝えた。

「サルバード提督ただいま輸送船クランクから入電、輸送船にまとわりついている船がいるそうです」

「分かった話しを聞くか、捕獲しろ」

調査船トドで警報が鳴り響いた、ルサンは慌ててスクリーンに向かうが既に周囲を囲われていた。

「しまったーネズミ捕りがネズミになってしまったー脱出」

「艦長ー無理です、戦いますか」

部下の問いにルサンは考え込む、調査船には十分な武装がない、ここは何とか切り抜けるしかない。

「話し合いで交わしてみる、お前たち余計な事はいうな」

ルサンはスクリーンを通して抗議した。

「司令官船から通信が入っています」

「フム誰が乗っていた」

「人間ではありません、たぶん虫から進化した生物だと思います」

「人間でないのか、異生物が銀河にはいると聞いたことが有る、ほとんどは危険な生物だ」

「はっそれは本官も教育を受けました」

「よろしいマッテン少佐の海兵隊に任せよう、彼らの親玉を取り調べてくれ」

ロボット士官のマッテンはにやりとした、もし人間の指揮官が任命されたらマッテンにとって屈辱だからだ。

「司令官ー本官に任せてもらおう」マッテンは胸を張って司令室を出ると部下のいる部屋に行き出撃を命じた。

マッテンと部下は上陸艇に乗り調査船に接近、エアロックなど使わない。

「進入路を空けろー」

エネルギー砲が直径四メートルの穴をあけ、エネルギーチューブが瞬間的に上陸艇と船の間にかかった。

「突入―」ロボット兵士が調査船に飛び込んでいく。

「艦長大変だー乗り込んできます」

「話し合いはどうした、応じないのか」

「艦長通信は向こうからきられました」

「クソッ―」

ドタドタドタ足音が響きロボット兵士が司令室になだれ込んだ。

マッテンはギロリと眺め叫んだ「親玉はどいつだ」

「儂が艦長のルサンだーお前たちは誰だ」ルサンが一歩出るとロボット兵士があっという間に縛り上げた。

「よし連行しろ、残りの者は船の中を捜索する、見逃すなよ」

人間ならミスもするがロボットは完全だ、少しの手がかりから彼らの目的を調べ上げた。

「隊長ーこいつらは人間を餌にしている種族です」ルカ曹長は厨房から調理の本を探して来た。

「ほーうルカよくやった、これであとをついてきた理由がわかった」

マッテンの報告はサルバード提督からルビリアの司令部に伝わりエミーは顔を真っ青にさせた「人間を食べる種族がいましたの」

「はい陛下ー植民地のあたりでうろついていた船を取り調べた結果判明しました、どうやらゴキブリから進化した種族と思われます、彼らは艦隊で職民星を襲いましたが市民は避難したあとでした」

「市民に被害がなかったのですね目的が分れば対応はできますわ、すべての植民星にロボット兵士の部隊を送ってください、ゴキブリは見つけ次第駆除するように」

「ははぁーわかりました」

エミーは各惑星に一万人規模のロボット兵士を警備に送り込み艦隊司令部は拿捕した船を徹底的に調べゴキブリの出発した惑星の位置を確認した。


コクリラの女王マヤは狩猟艦隊が殲滅されたと報告を受け激怒していた。

「マー司令総監ー食料たる哺乳類の艦隊に負けたというのか、たるんでいます、巣を探して汚名をぬぐいなさい」

「はっ陛下直ちに」

コクリラの艦隊は調査船トドの発した救難信号を捉え植民地星域にいたルビリア艦隊に襲い掛かったが接近は探知されていた。

ピカッピカッコクリラ艦は射程外からエネルギー砲撃を受けた、バーアン。

「退避ー」コクリラのミル司令官はスクリーンに僚艦が爆砕するのをみた。

「戦艦のスクリーンを簡単に潰してしまった、敵艦は我々より強力だ」

「司令官ー撤退します」

コクリラ艦隊はルビリア戦艦ギャランの一撃におびえ逃走を図るがサルバードは逃がさない「追跡し殲滅一隻も無事に帰すな」

コクリラが負けたと情報はあっという間に銀河に知れ渡り、イモムシは人間の生息星域を知った。

イモムシは遊星に乗り数匹がコクリラに着くと絶大な繁殖力であっという間に増え、コクリラの艦に潜り込み人間の住む惑星に向かった。コクリラの偵察艦が惑星に近づくとイモムシは宇宙空間を漂いながら惑星に降りていく。

いくつかの惑星で被害が出始めロボット兵士はゴキブリを探したが成果がなく植民者が全滅する星が現れた。

「植民星の警備体制はどうなっているのです、これでは安心して住めません、植民者を全員引揚させなさい」エミーはヒステリックに大声を上げた。

「陛下申し訳ありません、しかし今回のはゴキブリの仕業とは思えません」

「それはなぜですか」

「被害者は内臓を食い荒らされていましたがゴキブリは人体を解体し食料にしております」

「それでは他の生物のしわざと思うのですか」

「陛下ー太古の記録で同様の事態が報告されています、その犯人はイモムシ」

「なんですのーゴキブリに続いてイモムシも現れたのですか」

「はい、イモムシはどこへでも潜り込み移動します、植民者を領域の中に入らせないようお願いします」

「なんという事、危険な目に遭っている人々を助けられないのですか」

「陛下イモムシが王国内に入れば取り返しがつかなくなります、ここはぜひ耐えていただきたい」


クロリアではイメルダが観戦し手を握りしめて叫んだ。

「わたくしの子供たちー人間は美味しいわーもっと食べるのよ」

「お母さまーやめて」

「エミリヤ―これは戦いなの、あなたが人間たちの加勢をするのは許しませんからね」イメルダはエミリヤを睨み釘を刺した。

王国はイモムシや食人生物が領内に紛れ込むのを阻止できず少しづつ彼らの勢力範囲が広がり一歩前進二歩後退じりじりルビリアは押されていた。

今では大王になっていたカルは後継者マリナ姫の顔を見るたび戦う決心を強めた。

「そなたに平和な宇宙を残したい」


クロリアではエミリヤがイライラ「お母さまーもう耐えられないわ、わたくしが助けます」

「ダメよ弱肉強食が銀河の掟なの、破ればグァモに人間を殲滅させるわよ」

イメルダの警告にエミリヤは従うしかない、逆らえばレムリアにドラゴンが殺到するだろう。


「全艦艇は百光年の死守ラインを確保しろ、一匹たりともそのラインから入れるな」レジン総司令官の命令で基地で待機していた全ての艦が出撃した。

「サトナー芋虫の弱点はまだ見つけられないの」

「はっ陛下研究機関では夜を徹して探しております、もうしばらくお時間をください」

「サトナー危機はそこまで来ていますの、見つけられなかったらルビリアは終わりよ」

「陛下―いざとなれば王室を太陽系に移します、今から準備をお願いします」

「サトナーわたくしは市民を置いて逃げ出すなど致しません、勝つか滅びるかですわ」エミーは残る事を宣言した。

イモムシはじりじり浸食してきたが市民は自警団を組織してしらみつぶしに殺害して時間稼ぎが功をなした。

「所長ーこれだーイモムシがー」

「見つけたかー」

「はいー超音波です、この高周波を発したらイモムシの野郎狂いました」

キグ所長が実験容器の中を覗くとイモムシは箱の中を走り回っていた。

「ハント君嫌がっているようだな」

「はいこの振動が耐えられないのではないでしょうか」

「宜しい大型の装置を作り実証実験にかかろう―」

突貫で十時間後には装置を積んだ船が出発ー目的地は浸食されている惑星の都市。都市の上空から超音波を発射した、五分十分すると建物のなかからイモムシがぞろぞろ逃げ出してくる、どの建物からも一斉に出て来たから道路は虫で溢れ一方向に群れとなって移動していく。

「司令官虫が出てきました」

「フムー砲撃だまとめて消し去れー」上空から実験の様子を監視していたハイライト提督は総攻撃を命じた。

「キグ所長ー装置を直ぐに量産できるか」

「司令官ー容易い事です、すでに生産を命じましたから明日には数千提供できます」

「ふむこれがあれば虫どもをいぶりだせる」

ハイライトがスクリーンに向かっていた時もエネルギー砲はイモムシを駆除していた。翌日には装置を積み込んだ巡洋艦や駆逐艦三千隻が駆除作戦に参加、地上ではロボット兵士が逃れたイモムシを探し駆逐していくー一つ一つ都市を解放していき形勢は逆転した。

「陛下ー死守ラインはなんとか保持しています」

「よくやりました、研究員たちに感謝いたしますがもう一息です」エミーは時間が稼げたことで必殺の兵器が開発できることに望みをかけていた。


其時クロリアではイメルダがリーズ総統ヒューリンの方針を聞いていた。

「生命の母よー人間は生き残る資格を証明したぞ、我らは人間に組みするが宜しいな」

「ヒューリンーあなたは兄弟と戦うというの」

「母よーあのようなおぞましい生物が兄弟とは認めがたい、一歩引いて兄妹の争いに母は口を挟まないでくれ」

イメルダはリーズが以前からイモムシを忌み嫌っていたのを知っていた。

「仕方ありませんわ、勝ち負けは時の運よ」

傍で聞いていたエミリヤはニコッと微笑み言った「お母さまいいのねー、わたくしヒューリンと行きますわ」


リーズはルビリアの支配星域に入るとイモムシに致死性の紫外線兵器を放射していく、イメルダは目の前で駆逐されていくイモムシを見て悔しがったがリーズも彼女の子供、リーズを止める名目がない。

ルビリア艦隊司令官のハイライトは突然見知らぬ球形艦が現れると驚き包囲を命じた。

「ルビリア艦隊につげます、わたくしはエミリヤ、イモムシを駆逐に参りました、邪魔は許しませんわよ」

「ググググこの女は誰だ」ハイライトはスクリーンに現れたエミリヤを睨みつけ吠えた。

「司令官あの艦の防御スクリーンは異質です、わが艦では破れません」

戦闘司令室では球形艦の防御力を走査していた。

「なんだとーどういうことだ」

「あの艦は存在しません、走査線が突き抜けてしまいます」

「突き抜けるだとーここに存在しないというのかグググ」

ハイライトの見ている前で無数の球形艦は死守ラインから外へイモムシを駆逐開始死守ラインの中の安全が担保されたと判断したエミリヤは旗艦に乗りルビリアの中央空港に降りた。

ルビリアはエミーが凱旋してきた球形艦から降り立ったエミリヤを迎えた、赤地に金や黒の飾りで豪華さを現した制服を着た蜂たちを引き連れエミリヤがエミーの用意した歓迎式場に向かうとルビリアの関係者はビックリ息をのんで派手な制服を着た蜂の列を見守る。

リーズたちが宴会の席に着くとエミリヤは告げた「カル王ーあなたに忠告しますわ、ルビリアの勢力範囲は現状に留めなさい、もし範囲を広げるようならイモムシに向けられた兵器がルビリアを滅ぼしますわよ」

「あなたは誰でこのような事を決める権利はあるのですか」

「ほほほほわたくしが誰かはどうでもよい事ですわ、忠告しましたわよ」

カルはエミリヤの背後に並ぶ制服を着た蜂に震えたが考えたーこの女不気味な蜂を操ってるー実力はどれくらいあるのだー

「ほほほほリーズに勝とうなど不可能な考えは止めたほうがいいわ」エミリヤはそれだけいうと艦に乗り帰って行く。

ルビリア軍宇宙空間監視センターでは球形艦の行方を追跡したが一光年も行かないうちに消えた。

「陛下見失いました」

「どこたか分からんのか」

「はっ申し訳ありません」

「会議を開きます委員を集合させよ」

政府首脳たちが集まるとカルはイモムシとの戦いが新たな段階に入ったと報告しエミリヤとの会談内容を告げた。

「陛下ーエミリヤという女性ですが陛下に命令をするなど身の程知らず、正体は不明ですか」ハイライト提督は不審顔でたずねた。

「ホエット航路監視局長官ー彼らの船は追跡できたのか」

「陛下に申し上げますー球形艦は質量探知装置電磁波測定装置を用いても存在が掴めません、目の前に現れていても装置は感知しませんでした」

「長官どういうことだ、装置は壊れていたのか」

「壊れてはいません、三次元的に存在しないのです、強いて言えば幻影のようなものではないでしょうか」

「おかしいー幻影がイモムシを殺戮したというの」

「陛下これ以上の真相究明は本官の部署では不可能ー科学院に研究を願います」

「承知しましたーキム科学院長官頼んだぞ」

「陛下死守ラインの外では球形艦が自由に飛び回っていますが放って置くのですか」

「ハイライト提督ー彼らはイモムシを駆逐していますから作戦は妨げないように彼らを監視しろ」

「承知しました、現在分かっているだけでも七つの惑星に基地を置き作戦を行っています、その数は千隻を超えわが王国の戦艦数を凌いでおります」

「それほど出撃させられるとはどれほどの規模の帝国なのかどうしても彼らの正体を掴む必要がある」

カルは娘のレイラに事業を継がせエミリヤから与えられた半径三千光年から内側を王国の領域としてそのなかに存在する惑星国家の平定に取り掛かる。

レイラの時代から三百年が経過してルリナ女王の時代、惑星国家を統一し帝国を誕生させるとエミリヤは三千光年の非武装星域を設けて人類の生存星域を作り上げセリナと人類発祥の星地球に帰った。


本編第一章 太陽系の黄昏

レムリア歴九千七百年西暦千九百八十年地球は近世にあり、日本はこの時宇宙旅行の一歩手前の文化発展段階にあった。

エミリヤとセリナはカノン王子から誕生した加納家の二百七十二代当主フェンフォント加納藏人の娘だと電子脳に記憶させると公然と地下にある空港にシンデレラ号で降り立った。

クインシップが来ると管制から報告を受けた蔵人は娘たちがやって来たと口元を綻びさせて美幸を呼んだ。「ベニーそなたの姉だ、仲良くしなさい」

「お父様どういうことですか」ベニーは疑惑のまなざしを蔵人に向けた。

蔵人は亡くなった先妻の事を話し美幸は眼を輝かせた。

「お父様は不倫をしていたわけでないのね、うれしいわ」

「不倫だとなんと嘆かわしい事を言う娘だーとほほほ」

エミリヤとセリナは若返りの能力で十代の娘に変身、迎えに来ていたベニーと初めて会った。

この時ベニーは十二歳、ソラリスの市民だから日本の教育は受けてないから屋敷の向かいに住む池田幸子が唯一の友人。

幸子が「美幸」の住まいにいつものように遊びに行くと庭のテーブルに年上の女性が二人寛いでいた。

「ぎくっ見たことない女がいるわ」フェンスの間から覗いてると声がかかった

「幸子ー何してるの入るんでしょ」

振り返ると美幸が仁王立ちして鼻息が荒い。

「あなたにお姉さんを紹介するから入りなさいよ」

「えー美幸に姉がいたっけー?」

「お父さんの亡くなった前の奥さんの娘よ、あたしも初めて会ったんだ」

美幸の後をついてテーブルに向かうと声が聞こえた。

「ベニーその人誰ー」

「お姉さまー紹介するわね、池田幸子あの家に住んでるのあたしの友達よ」

「あらそうなの、わたくしエミリヤ彼女は妹のセリナよよろしく」

「あらよろしくって困ったわー」幸子は正式の挨拶をされてドギマギ一緒のテーブルに着くとおしゃべりな幸子の口は開きばなし。

「美幸は中学は向こうなの?」

「あたしーそうよ、こっちに来たいけどお父様がダメだというの」

「へぇーなんでかな」

幸子の疑問にベニーは教育のレベルが全く違うと言いたかったが我慢。

「やはし自分の国の事を学ばないとね、だからよ」

その後幸子は中学高校と進み二四歳で海軍中尉の白瀬健一と熱烈恋愛に陥りそのままゴールイン、ベニーはソラリスに引き上げたが年に数回は地球に戻り幸子と親交を結んでいた。

二人の関係は幸子が結婚しても続いていたが美幸が数年ぶりに屋敷に戻ってきたので行ってみると女のコを連れて歩いているのにばったり。

じろじろ観察してから尋ねた「美幸―久しぶりだけどあんたの娘なのー?」

「なんなの幸子ーわたくしの子で悪いみたいね」

「フーンあんたいつ結婚したのーその子はいくつー?」

「今年で六歳よ、あなたの娘と同じだわ」

「へぇー嘘みたい、あんたの亭主どこー見てみたいな」

「国にいるわよ、わたくしは仕事があるから時々来てるの」

二人が話していると後ろから女の子が駆けてきた。「お母さんーなにしてるのー」

「智子ーあなたの御友達よ挨拶しなさい」

「友達ってこんな子知らないわよフーン」智子はみどりをじろじろー横見てプイ。

「なによーあたいもあんたなんか知らないわフーン」

「あなたたちあきれるわね、喧嘩しないで仲良くしなさい」

あくる日、智子は幸子に連れられ美幸の屋敷へ遊びに、前回喧嘩別れしていても同い年の女の子すぐに仲直りするとそれからはみどりが戻っている日は屋敷に遊びに行くのが日課になった。

幸子はベニーに連れられ新宿のエニービルにやって来た。

「へえーあんたの店ってあのエニーなの驚いた」

「千年くらい続いている店よお父様からわたくしが引き継ぎましたのよ」

「へえーなんでも売っているんでしょ」

「ううんー売らないわ特定のお客に卸しているのよ」

「へえー変わった店なのね」幸子は感心しながら七十階の会長室に入りソファーにくつろぎながらぺちゃくちゃ。

「会長ーお出かけの時刻ですわ」支配人のミリヤが呼びに来た。

「幸子ーこれから財界の人たちと会食なの、悪いわね~」

「いいわよーあんたは忙しいんだからあたしはまた来るからバイバイ」

幸子はベニーの用意した車で住まいまで送ってもらいその日はご機嫌、夫が帰って来るとぺらぺら報告をした。。

「何だーお前の友達はあのエニーの会長なのか」

「ええーそうよ驚いたあなた転職しなさいよ、あたしの顔で部長くらいになれるわよ」

「そうか部長かエニーは一流企業だから部長になればいい給料がもらえるか」

「そうよー今の国防軍より安全だしいい生活ができるわ」

「幸子―悪いけどまだ軍にいさせてくれ、俺に合っているんだ」

「いいけどいやになったら言いなさいよね、美幸はあたしの言うことならなんでも聞くんだからね」

十八で入隊し下士官学校を出て特別選抜で将校にそしていま大尉に付いている健一は海軍を離れがたい。

それから三年が瞬く間に過ぎて智子は高校に入るための試験勉強中、みどりは乳母のメルに監視されながらソラリスと地球を行き来していた。

ベニーはみどりをメルに任せソラリスの宮殿で政務をしながら幸子から夫の健一は海軍士官だと聞いたことを思い出し悪だくみを考えていた。

「海軍を利用するチャンスね、白瀬をもう少し高い地位に引き上げるにはどうしたらいいかしら」

「陛下―科学院のノベリ院長が報告があると来ています」

「なにかしらこれに呼びなさい」

「陛下大変でございます、地球が失われることが明らかになりました」

突然の出来事ベニーはノベリーの顔を見た。

「院長―どういうことですか」

「はい、地球は溶解します」

「溶けてしまうってどういう事」

「はい核反応によって内部から燃え始め、十五年ごには地表は溶けてドロドロになります」

「院長ー間違いではありませんか」

「はい王妃様事実でございます、残された時間に太陽系にある資産の回収を始めるよう提案します」

ベニーはノベリ院長が退室するとしばらく思案。

「メギル惑星局長官はいませんか」

「ははあー王妃様お呼びでしょうか」

「メギルー院長の報告は聞きましたね、直ちに地球に行き加納のお父様に事態を伝えソラリスへ避難をお願いしなさい」

「ははあー承知いたしました」ベニーは一族の引き上げを手始めに政府に対し市民の引き上げに総力を上げてかかるよう命じた。

セリナは帝国の影の女王としてレムリアにおり帝国を経営、エミリヤは火星の太陽宮殿で銀河を統治していた。何もかも順調に進んでいたがベニーの報告を聞き帝国科学院でも再検証ー事実と判明するとエミリヤは地球にある資産と市民の撤収を命じた。


ソラリス日本政府との確執

この時地球日本国では千九百九十八年、不景気が十年と長く続く経済に誰もが関心を持っていたが忍び寄る災害に誰も気づいていない。

ベニーは公的な義務を済ませると日本にあるエニー本部に現れ資産の回収を支配人のミミカに指示して屋敷に行きリリカをソラリスに帰そうとした。

「お母さまあたいは帰らないわよ、ここで成り行きを見るんだもん」

「まあーあきれた見世物ではありませんのよ」

「わかっているわよーそれより智子はどうなるの」

「ほほほほあの一家はソラリスに行かせればいいわ、時期をみてわたくしがお誘いしますから」

「そをーよかったーでも他の人達よねーお母さま助けられないの?」

「船が足りませんわー民間の船を徴収したら費用が掛かるのよー地球人を十万人船の建造に使えればなんとかなるけど災害の情報が漏れて大混乱よ」

リリカは母の説明を聞き仕方ないかと思った。

ベニーはわがまま娘に呆れたが手元に置けばいいと考えパールイエローの豪華六輪車で民自党本部に向かいゆったりと本部ビルの玄関前に止まった。

バラバラと職員が走り寄り並んで挨拶。

「会長ーご苦労様です、ご用件はどのような事でしょうか」

「ホホホホ皆さん総裁はいるかしら」

ベニーはにこやかにほほ笑み車を降りると玄関を入って行った。

来客で込み合うホールを抜けて貴賓室に入り待った。

「これは会長いつもお世話になります」江島はベニーが来たと聞くと急いで挨拶にやって来た。

「総裁になってどれくらいかしら」

「はい六年になります」

「そろそろ若い人に引き継いでもいいわね」

「はぁーどういうことですか」

「これは今までの功労金ですわ、おやめになって井上を後継に指名なさいな」

ベニーは十億円の小切手を差し出し退職を迫った。

総裁の江島は小切手を受け取るーすでに歳は八十を回り引き際を考えていた矢先この金をもらって辞めるのはかなったりだ。

「会長儂ももう歳ですからなこれで安穏と暮らしますかハハハハ」

「ホホホホ宜しいのね、それでは後を頼みますわよ」

総理が引退を表明してからひと月ベニーは国防省に大臣を訪ねた。

「私に客だとー約束はないぞ」

「大臣加納会長です、追い返すわけにはいきません」

「加納とは誰だー俺は知らんぞ」

「大臣加納会長は党の影の支配者です、逆らえばただではすみませんから」

その時ドアが開いて赤毛の若い女性が入って来た、「誰だー」

貝原は叫ぶが無視、ドアを大きく開きささやいた「会長お入りください」

「ググググお前は誰だ、ここをどこだと考えている」

貝原は入って来た赤毛の豪華なドレスを着たベニーに吠えた、副官の飯山は部屋の隅でもじもじ。

「あなたが貝原か、わたくしを知らないとはその席について何年になりますか」

「ググお前など知らん、出ていけー」

「タリヤー貝原には教育が必要ですわ」

「ハッ直ちに」タリヤと呼ばれた女性はずかずかと机の前に行き命じた。

「貝原わたくしについてきなさい」

「なんだとー大臣の俺に命令するのか」

「貝原これが最後ですわ付いてきなさい」

「誰が行くものかー飯山こやつらをひっ捕らえろ」

「ですがー大臣」飯山は貝原の命令に迷っているとタリヤは睨む。

「あなたは離れていなさい」タリヤはそれだけ言うと鞭が走った、ヒュルヒュルー貝原の体に巻き付き一気にすくい上げられた、ギャードシーン。

「会長に向き土下座をしなさい」タリヤの鋭い声が響く。

ビシーギャー鞭が貝原の背中を打ち悲鳴が上がった。

隣室の職員は悲鳴に驚いて大臣室のドアをドンドン叩くと廊下には人が集まりだした。「大臣どうしました何がありましたか」

「分からないが中から悲鳴が聞こえたぞ」

職員たちはワイワイガヤガヤ心配そうにしていたが一人の職員は警備室に連絡していたがタリヤがつかつかとドアに向かい開けて激しい声で集まっていた職員を叱責した。「騒々しいー部屋に戻って仕事をしなさい」

「あなたは誰ですかー悲鳴が聞こえましたが」

「空耳でしょ何にもありませんわ」

職員は貝原が床にころがっているのを見ると叫んだ。

「嘘だーあなたは大臣に何したのですか、警察を呼びますよ」

「飯山君なにしてる大臣をお連れしないか」

「えっーでもー」

飯山は眼でベニーをチラチラ、ベニーは応接のソファーに座り寛いでいた。

警備員が呼ばれドドドドと走って来る。「どうしましたか」

「あー君たち、大臣を助けだしてくれ」

警備陣は入り口から突入すると床に伏している貝原を助け起こす。

「大臣しっかりしてください」警備員が外に連れ出そうとするとベニーが命じた。「待ちなさい」

「ぐーお前は誰だ」警備員の一人がベニーに向かった。

「ホホホホ貝原このまま出て行くのなら罷免しますわよ、どうしますか」

「罷免だとーいい加減な事をいうな」

「ほほほほ日本の政府を支配しているのが誰かわかりましたか、わかったのなら従いなさい」

「お前たちが支配していると言いたいのかいい加減な事をいうな」

ベニーは携帯を取り出し江島に命令した。

「江島ー貝原はわたくしが立った今罷免しました、後任を選んでくださいな」

「会長ー罷免だなんて無茶だ、勘弁してくれ」

ベニーは携帯を貝原に渡すと話せと命じ、貝原は訴えた。

「総理この女ーわたしに暴行し罷免するといっています、助けてください」

「貝原さん会長を怒らせたようだが謝って許してもらうのだ」

「総理この女に謝れというのですか」

「無事に家に帰りたかったらな」江島の言葉にギクッとしてベニーを見た。

「ホホホホ分かったようね貝原、これからはわたくしの手足になり国防軍は命じたように動かしなさい」ベニーはそれを言うと職員を見た。

「あなたたち遊んでいる暇があるのですか、席に戻りなさい」

ベニーの叱責を受け、大臣がベニーの背後で頭を下げているのを見てぞろぞろ部屋に戻っていくが警備の係員はどうしたものかもじもじ。

「あなたたちもわたくしに従うのです、わかりましたか」

警備員は頭を下げ道を開けるとベニーとタリヤはすたすたと去っていく。

「大臣大丈夫ですか」飯山は貝原を助け起こす。

「クソッ―この政府はどうなっているんだ」

「大臣耐えてください、前任者の大臣もあの女にやられましたから」

「クソッ総理もあの女の言いなりか、何を言いに来たんだ」

「会長から預かりましたこれです」飯山は手紙を差し出した。

貝原は開いて読むが怒りが増す「なんだーこれはこんな命令従えるか」

「大臣怒らないでー会長を怒らせないほうがいいです」


白瀬表舞台に立つ

白瀬健一は中佐の地位にいたが海軍で地味な哨戒艇の艇長、この時の世界情勢は日本とアメリカの戦いは決着がつかずに終戦となり経済の面で戦闘を継続していた。

その陰で蘭国は着々と国内体制を整備し産業を興し核を持つまでになると太平洋に出るため日本に手を出して来た。

情勢を見ていたベニーはタリヤに命じた、「タリヤ蘭国の潜水艦は用意出来ていますか」

「はいー王妃様、南シナ海で手ごろなのを見つけましたわ、いつでも作戦に投入できます」

「ホホホホ宜しいですわ、それではさっそく白瀬の予定を見てプレゼントしましょうか」

ベニーの悪だくみを知らず白瀬は哨戒艇でいつものコース伊豆諸島周辺をパトロールしていると浮上している潜水艦を発見「艇長ーまたやつらです」

「蘭国のかー良く飽きずに来るな」健一はつぶやくと機関を全出力にして追跡にかかった。

哨戒艇では強力な武装はないが臨検のため近づくと潜水艦は機関砲を発砲したドドドドドー。

「やつら撃って来たぞー交戦規定クリヤー」白瀬が叫ぶ。

「哨戒艇雷雲より本部へ支援を求める現在潜水艦と交戦中ー」田村兵曹が無線で応援を求めた。

潜水艦と聞き八丈島基地から攻撃ヘリ部隊四機が発進、付近を哨戒中の駆逐艦筑摩も全速力で向かった。

ヘリ部隊が現場に到着「司令部へ現地着潜水艦は蘭国、雷雲は回避しながら追尾に専念無事です」

「いくぞー攻撃に入る、撃てー」機長が部下に命令すると戦闘士官はミサイルをロックオン対艦ミサイルが白煙を引き飛び出した、潜水艦はチャフを巻き煙幕を張り全速で回避行動しながら逃走するが潜水しない。

「おかしいなにかあったんだ」白瀬は戦いをヘリに任せ考えた。

「なんでこんなとこで浮き上がった、潜れない事情はなんだ」

「へへへ中佐あいつらハッチから水漏れがあったから潜れないんですよ、間違いありませんや」航海士の宮田兵曹は知ったふりして喚いた。

潜水艦は対空ミサイルで応戦、ヘリは振り切ろうと潜水艦から離れるがやがて筑摩が到着した、艦長の池田大佐は状況を見て音波通信機に叫んだ「蘭国潜水艦に次ぐ降伏しろ」

声は海中を伝わり蘭国の潜水艦に響いた。

潜れない潜水艦は駆逐艦の主砲で簡単に沈められる、降伏するしかないと誰もが思った時バァーン激しい音が響き潜水艦の中央部が爆発したー白煙に包まれ船首が持ち上がりブクブクと沈んでいく。

「なんだー自沈したのか―」

白瀬はビックリしたが乗員に命令「生存者を救助するぞ新藤兵曹船を寄せろ」

雷雲は船首を持ち上げて潜水艦の沈んだ付近に急行し、浮遊物を回収したがそのなかに対日本戦略の機密文書があり、蘭国の戦略があばかれた。

同時刻白金の蘭国大使館では国防省に忍ばせている諜報員から潜水艦が国防軍と交戦していると聞きあわてていた。

「本当にわが国の艦なのか」

「大使ー間違いありません、たった今自爆して沈んだと報告がありました」

「何かの間違いだ、海軍省に問い合わせろ」

本国に問うと潜水艦137号があの海域にいた理由がわからないと返事。

「艦が命令を遺脱したというが特別任務に就いていたのではないか、業務部長ー重要書類をいつでも廃棄できるよう準備してくれ」

「ハッ退去の可能性はありますか」

「分からんが準備だけは済ませておきたいからな、ヘイ書記官ー日本政府はどう出るかな」

「大使ー日本は江島総理が引退を表明してますから次の内閣に引き継ぐのではないでしょうか」

「そうすると時間があるからあの海域にいた理由を考えてくれるだろーな」

「そうです、ここは時間を稼ぎましょう」

大使館では国防軍から遺体を引き取りの準備もしなければならず忙しい中で日本政府との交渉も控えている。

事件から四日が過ぎて田村安全保障担当補佐官は政府からの親書を携え蘭国大使館にやって来たが戦争を予期して在留蘭国人は帰国の手続きにあふれていた。


白瀬はベニーの駒

それからひと月後白瀬とクルーは潜水艦戦の功で勲章を受け一階級特進した。

誰もが首をかしげる昇進「なんで大佐なんだ、あり得ないよ」

「大臣の決裁だそうだ、きっと裏からなにか取引したんだ」

本部の虫垂を占める国防大学出身者は白瀬の大佐任官は不満を高めたが雑音を聞きながら白瀬は本部の部屋で清算書をみていた。

「全く山田のやつこんなに船の部品を買い込みやがって戦争に行くのかぶつぶつ」

コンコンー誰かきたようだ「誰だ―入れ―」

「白瀬大佐ーおめでとうございます」

若い士官がドアを開けて入って来ると白瀬のデスクにすたすたより敬礼した。

「ありがとう君は誰だったかな」

「先月着任した高木中尉です、本官を大佐の部下にしてください」

「おいおいおれに人事権はないぞ、困るよ」

「ですがー俺は事務仕事をするために軍に入ったのではありません、大佐に断られたら辞めるしかありません」

「おいーそれはもったいないその記章から見ると国防大学を出てきたのだろーエリートが何を言う我慢したほうがいい」

高木は白瀬に食いついて諫められると肩を落として出て行ったがこれが高木との縁の始まり、それからは無理を承知で白瀬の哨戒艇に乗り込み他の乗員の迷惑を顧みず惚けていた。

「おい中尉ー辞令は出ているのか」

「大佐ー部署にいても俺にやる事がありませんよ、気にしないでください」

「全くとぼけたやつだな」白瀬は呆れて言うのをやめた。

それから数か月が過ぎて軍の中では白瀬への風当たりが強くなっていたがいつもの哨戒から戻ると司令官が待っていた。

「司令官何かお呼びですか」

「ああー白瀬大佐君に辞令が出ている、このような時期になぜかな」

北柳少将は一枚の書類を渡した。

「俺に辞令ですか何かな」

「防衛隊に移動だ、信じられんが国防大学をでていない君が星を手に入れたよ、上層部にコネでもあるのか」北柳が不審気に言い放ったのは防衛隊司令官は将官の定位置、白瀬はその席に着けば少将となる。

家に帰ると幸子に伝えた。「幸子ーおれ海軍を首になったよ」

「えーなんでなにかしたのー」

「知らないよー防衛隊の司令官に就けだとさ」

幸子の心配顔からいきなり笑みがこぼれ叫んだ。

「それを先に言ってよ防衛隊って政府直属の軍警察よー司令官ってトップでしょデスクワークでしょ、もう海にでないのよねー嬉しいわ」

健一は幸子の喜ぶ姿を見てあきれた。

この時高木は三か月前に上司と喧嘩して海軍を辞め防衛隊に移り、白瀬が来ると聞き眼が輝いた。

「大将が司令官に就くなんて付いてるぜ」


総理官邸では江島が辞任表明をして三か月になり井上が挨拶に来ると尋ねた。「井上さん君は加納会長と親しいのか」

「いいえ幹事会で御姿を見る程度で話を交わしたことはありません」

「そうかーなぜ君を推したのかな、くれぐれも会長には注意するのだぞ」

「なぜですか、確かに党に多額の寄付をしてくれていますが」

「会長は恐ろしい女だ、これまで何人も行方知れずになっているからな」

「どういうことですか」

「エニーよ、あの女の城のエニーは無法地帯だ、今まで警察や情報機関が内情を探りに潜入したが一人も戻って来ない、消されたのよ」

「そんなー強制捜査をすればいいではありませんか」

「できるか、あの建物は難攻不落の要塞だぞ捜索する口実も与えないのだ、それと君は防衛隊の司令官人事に何か聞いているか」

「はい国防軍にずいぶん不満があるとか」

「あれも会長の指示で貝原がさせられたのよ」

「なぜですか、拒否すればいいではありませんか」

「そうだな貝原も拒否したが大臣室の中で鞭を打たれた、着ていた背広はボロボロになっていたよ」

「そんな惨い事を、警備は何をしていたのですか」

「警備が駆け付けてもあの女は平然としていたそうだ、それどころか警備員を脅したそうだ」

井上は加納会長の姿を思い浮かべた。

「それから潜水艦の事件を覚えているか」

「はい自沈したとしか知りませんが」

「あの事件は加納会長が計画したのだよ、貝原さんは加納から指示されびっくりしたそうだー貝原のいうには加納から白瀬君が蘭国の潜水艦を退治したら特別に一階級上げるよう命じたそうだ」

「江島さん意味が分かりませんそれではあれはやらせですか」

「そう見えるが加納が武力で蘭国の潜水艦を強奪したほうが重要だ、わしが調べたのではあの潜水艦は台湾の西の海底で任務に就いていたが行方不明になった、三千キロも離れた海底にいた艦を襲うのは並大抵のことではないよ」

「それどころか不可能です、加納はそのような作戦を起こせる力を持っているのですか」

「そうよわかったか、それまでして君と白瀬君を移動させたのは何か計画がある、白瀬君は知らないうちにコマにされているのだろー」

「分かりました、注意が必要ですな」江島との会談を終えて井上は部屋に戻ると高島を呼んだ。


高島検事の失踪

高島は最高検察庁の特別検事、井上の懐刀として重要案件を扱う。

「幹事長ー呼んだかな」

「ああー高島君、加納会長を知っているか」

「ええーエニーの会長でしょ彼女が何かしましたか」

「加納と海軍の白瀬大佐の関係を洗ってくれ」

「分かりましたがなぜですか」

「高島くん今まで特に目立つ動きをしてなかった加納が突然動き出した、なぜ急に俺を首相にそして白瀬君を防衛隊に配置しようとしているのかそれも無理にだ、俺が首相に着くには相当の抵抗があるぞ、君も知っている通り俺は弱小派閥の出だからな」

「井上さん加納は何を考えているか知らんが無理だ、今回の総裁選は小杉涼子も乗り気だぜ、あの女性に勝つのは至難の業ですよ」

「高島さんそれを承知であの女は仕掛けてきたんだ、すでに江島さんを降ろすため十億の金をばらまいているのだよ、白瀬さんを引き立てるため国防軍を敵に回しているんだ、なぜそこまでするのか不思議に思わないか」

「たしかに井上さんの言う通りだ、加納とて私企業の頭にすぎないからな」

井上との話し合いを終えて高島は加納の屋敷に行ってみた、校庭ほどの広さのある庭と三階建ての屋敷、「大したものだ」

感心してると犬が二頭向かって来てフェンスの向こうで止まりウーガォーガォー恐ろしい口を開き吠えついた。

自転車をこぎリリカが現れ犬たちに言った「デリーネリー静かにしなよ」

クウーンードベルマンはリリカの足元にまとわりつくが眼はしっかり高島を睨んでいた。

「あんたー誰よ、この子たちは通行人には吠えないよ」

「俺は高島って言うんだ会長はいるかな」

「お母さまに用があるのー今はいないよ災害から脱出する準備で忙しいのバイバイ」リリカは愛想がいい。

「姫ー誰か来ましたの」屋敷から乳母のネルが出て来て聞いた。

「高島って人だよ、この人も生き残れないなんてかわいそうね」

「しー姫それはしゃべらないの、知られたら大変ですよ」

「お母さまーどうにかならないのー」

「姫―こればかりはー王妃様は国を優先しなければなりませんから」

ネルとリリカ会話は高感度マイクで高島に捕えられた。

高島は事務所に帰り何度も聞いてみた。「間違いない、会長はどこかの王妃なのかだから金が有るのか、だが生き残れないだと―どういうことだ」

「井上さんこれを聞いてどう思いますか」高島は録音を聞かせた。

「高島さんこれは誰なんだ」

「加納の娘と母と言っているから乳母ではないかな」

「なんで生き残れないのですか」

「分からん、これから調べて見るが」

「そうしてください、それにしても驚きですな加納はどこかの国の王妃ですか」

「そうらしいが心当たりがないのですよ、あの女は間違いなく白人ですからヨーロッパ系と見ますが該当する国がありません」

「王妃の事はさておいて生き残れない理由を探ってください」

「分かりました、娘から聞ければいいのですがやってみます」

高島が帰ると井上は事務所の中で考え込んだ。「脱出の準備で忙しいだとー、何が起こるというのだ」

その後高島は幾度かリリカと接触を試みたがベニーに知られた。

「タリヤ―」

「王妃様およびですか」

「最近高島とかいう者がリリカにまとわりついています、二度と近寄れないようお願いしますわ」

「ストーカーですか承知しましたわ」

タリヤがリリカを張っていると高島が現れた、

「やあー今日も会いましたね、お母さんはまだ帰りませんか」

「あんた飽きずに良く来るわね、何度来てもお母さまはいないわよ」

「どこに行ってるのかな」

「太平洋の地下にあるハニーシティーよ、大きいわよ日本列島の何倍もあるんだから」リリカは顔なじみになったからぺらぺら何でも話す。

「へぇーそんな国があるのか」

「あんたハニーシティーよ国ではないわ、あたいの国は遠いの星のかなたよ」

リリカがべらべら喋るのをタリヤはハラハラしながら聞いていたが我慢の限界出て行った「姫黙りなさい」

「あータリヤ叔母様ー来ていたのお母さまは」

「王妃様は司令部にいますよそれにしても姫はこんなにおしゃべりとは情けないわ」

「タリヤ―何怒っているのあたいなにかしたー?」

「いいえ、そのお口を閉じていただければ嬉しいですわ」タリヤは高島を睨みつけ言った「もうお帰りください」

高島は礼をして離れて行ったがタリヤは虫ロボに命じて襲わせた。

虫ロボのランはリリカの見えない場所まで離れると透明ネットで高島をすくい上げ空高く向かった。

高島は気が付いたときベニーの尋問室で椅子に座らされていた。

「ここはどこだ、お前は誰だ」

「ほほほほずいぶんと娘をたらしこんだようね、知られた以上帰せませんわ」

「お前は加納か、俺をどうするつもりだ」

「ほほほほあなたは余計なことに首を突っ込みましたから奴隷として惑星ギニアに送ります、そこで死ぬまで働きなさい」

「くそっーお前は宇宙王国の王妃なのか、なんでここにいる」

「ほほほほ太陽系も王国の一部なの、いて当然だわ」それだけ言うとベニーはロボット兵士を呼び高島を連れて行かせた。


井上とベニーの確執

井上は高島が行方不明と家族から聞き江島から加納を調べた者は姿を消すと聞いたことを思い出した。「高島君もやられたか」

井上は高島を助けようとエニーの本部ビルに出向きインホメーションに寄った。「議員の井上だが会長に会いたい」

「約束はありませんわ、アポを取って出直してくれますか」

「急ぎなんだいるなら会わせてくれ」

「規則でできませんわお帰り下さい」

「どうしてもだめか王妃だからか」

「井上議員その事をお話したら帰れなくなりますよいいですか」レイナは冷たく言い放った。

井上はレイナを睨みつけるが余裕があるらしく自信たっぷり。

「監視されてた、エニーは得体のしれない巣窟か」井上はエニーを出ると背中は冷や汗でびっしょ。

高島の居所が掴めないまま総裁選は近づきマスコミは小杉陣営の勝利が確実と連日報道していたが井上邸では違う、娘の奈津子は父が選挙運動しないのにイラついていた。

「おとうさん、選挙はどうするの」

「奈津子かー俺に勝てるわけないだろー、やるだけ無駄だよ」

「うんもーうどうしようもないのだから大勢の先生たちからお父さんを支持すると連絡が来ているのよ、どうするの」

「なんだーどういうことなんだ」

「あたしに聞いてもわからないわよ、これが名簿よよく見て連絡したらー」

奈津子はノートを井上に渡し部屋を出て行った。

井上は名簿を開き多賀幸雄議員に電話をかけた「多賀くんか、今回は支援してくれるそうだな」

「ああー井上さんあんたは恐ろしい人だな、支援しなければ俺を政界から追放すると脅すとはいつからそんな力を得たんだ」

誰にかけてもにたような事を言われ井上はエニーの恐ろしさを知った。

「是が非でも俺を総理にさせるのだな、生き残れない事と関係あるのか」

小杉陣営では選挙参謀が騒いでいた。「先生はどこに行った」

「山田さんどうかしたのか先生は自宅に戻られたぞ」

「すぐに呼び戻せ、井上さんが過半数を握ったぞ」

えーーー事務所の中は驚きの功で埋まった。

「それでは選挙は負けかー」

「ああーそうだ、対策を練る必要がある」小杉は帰りの車の中で連絡を聞き驚いて戻って来た。「山田さんどういうことなの」

「わかりませんが盟友の梶山先生まで井上さんに付きました」

「なにかありますわ、探ってください」

「わかりました、俺が聞いてきます」西村事務長は梶山議員の自宅に行き尋ねた。

「先生はうちの小杉と一緒に行動していたはずだ、色々と今まで小杉は何かと面倒をみていたのになぜ恩をあだで返すような事をされるのですか」

「西村さん、今回の事は俺の本位ではないんだ、俺だって小杉先生には世話になっているから応援したいが井上さんは恐ろしい人だ、逆らえば俺は議員を止めなければならなくされるんだ」

「どういうことですか」

「井上さんは俺の若いころの不始末を調べられていたよ、そんな事忘れていたが公表されれば辞めざるを得ないんだ」

「そんな事過去の事でしょ」

「過去と言っても当事者は生きているぞ、その人間がテレビで俺を裁くというんだ、有権者は過去といっても許してくれんよ」

西村は梶山の気持ちが分かった、内容は聞かなかったがだいたい想像できる、そんなはなしが表ざたになれば家庭も崩壊するだろうー、西村は事務所に戻ると小杉に伝えた。

「先生汚いやり方ですー井上さんは議員の弱みを調べたらしい、それをネタに脅して自分の陣営に引きずりこんでます」

「西山さん公表したらどうなりますか」

「先生無理だ、そんな事をされれば議員のスキャンダルが公になって選挙どこではなくなります、だから一人も名乗り出ないで逆に先生が選挙妨害で悪者にされます」

「それではこれからどうしたらいいの、負けるとわかって戦えないわ」

「先生選挙から降りて井上さんと手を結んだらどうですか、少なくとも幹事長のポストを確保できますから」

選挙十日前に井上の当選が決まり江島は加納の力を改めて知った。

「あの女是か非でも計画を進める考えだな、その先に何があるんだ」

江島は井上に連絡を取ろうと思い立った。「井上さんなにかわかったか」

「これは江島先生加納のことですね部下を一人失いました、俺も警告を受けて動けません、江島先生も近寄らないほうが安全です」

井上は高島からの報告を江島には知らせず白瀬に注意を向けた。

白瀬の経歴を調べ兵からのたたき上げと知るが妻幸子の事までは分からない。

「これを見ると特別加納と関わった事はないな、思い過ごしか」


国防軍はおとり

井上は高島を失った痛手から部下を投入する意思はなく独自に動いた。

練馬に国防軍司令部に行きゲートで尋ねた。「井上だが総長はいるか」

「ハッどちらの井上さんですか」

「民自党の井上だ、島本は居るか」

「はっただいま聞いてみます、少々お待ちください」衛兵は電話で総長室にかけ要件を伝えた。

「民自党の井上さんか、わかった丁重にご案内しろ」

井上は衛兵から道順を聞き車でそのまま入構、司令部本館前で止め高い石の階段を上がり建物のなかに入った。

「井上次期総理閣下ですか、総長の部屋までご案内します」

「フムありがとう」

部屋に案内され島本大将は井上をソファーに誘い用件を尋ねた。

「井上さんがここまで何用かな」

「島本さん、大したことではないが今回の防衛隊司令官の件だ、国防軍はどう考えているのかな」

「興味ありますか、白瀬くんは異例ですがなぜ大臣は選んだのでしょうな」

「高度な政治てき理由からといいますか、何かの計画が始まるらしいが聞いてませんか」

「ホ―ウ戦争でも始まりますか、部隊からは特に変わった報告はありませんな」

「防衛隊とエニーに何か繋がりはありますか」

「ありませんな取引など聞いたことがない、そのエニーがどうかしましたか」

「ちょっとな、国防軍の中ではどうかな」

「うーん軍は大きいかな調べて見ないとわからんが井上さんそろそろ本筋を聞かせてくれ、なにを知りたいのだ」

「間もなく未曽有の災害が起きると噂を耳に挟んだ、白瀬さんもその流れで決められたらしいが政府にはなんの情報もない、だからよ」

「初耳ですな、白瀬君に確かめてみるか」

「はははその彼も知らんらしい、すべての情報はエニーが握っているらしいが隠している、俺は検事に捜査を依頼したが消された」

「誰にですか」

「証拠がないがたぶんエニーだろー、あの団体は得体のしれない力を隠しているからな」井上は島本を煽り司令部を出ると事務所に戻る。

島本は井上が帰ると藤堂参謀長を呼び井上の話を聞かせた。

「総長ーエニーの噂は本官も様々な人から聞いておりすでに諜報員を潜り込ませましたが消息を絶ちました」

「何名だ」

「五名です、家族には作戦に出て行方不明と連絡しております」

「なんだとー報告がないぞ弛んでいる、状況を調べ必要ならエニーを捜索する分かったか」

「はっ承知しました」

「国防軍は天皇直轄の組織ー動くのに国会の承認は入らない、島本は一連の調査を終えると特別行動隊を編成しエニー本部へのりこんだ時、井上は民自党総裁に選ばれていた。

装甲車が多数エニービルに乗り付け付近の道路をふさいだ、隊長の二浦大佐は部隊五十人を引き連れインホメーションに現れた。

「国防軍だ、この建物を閉鎖し捜索する抵抗するな」

「ほほほほなんのつもりかしらケガしないうちに引き上げたら」レイナは身じろぎもせず丸い眼を大きく開き睨みつけた。

「ク―この女ーゲートを空けろ」二浦はレイナを捕まえようとカウンター越しに身を乗り出したが激しい衝撃を受けた。

「クソッ―ここに何かある」

「ほほほほ知りませんわ、お好きにしたら」

レイナはそれだけいうと席を立ち奥の部屋に入ってしまった。

二浦は怒りを覚えたが部下に命令した。「ガラスのゲートをぶち割って入れ」

兵士がハンマーをたたきつけるがびくともしない、二度三度たたきつけたがガラスの反発でハンマーは飛ばされた。

「隊長ー全然割れません無理です」

「なんで割れんのだ、他に上がる階段はないか」

「隊長ーここに階段があります」兵士が非常階段の印を見つけ叫んだ。

二浦と兵士の一団は暗い階段を駆け上るがどの階もフロアーにはシャッターが閉まっていて行かれない。

「隊長ダメですここも開きません」

「クソッ―壊す訳に行かんし戻れー」十階まで駆け上がったが二浦は隊員をひきつれ階段を降りるが何か違う。「おいここは違うぞ」

広い空間に出たが窓がない、うす暗闇のなかで兵士はキョロキョロ辺りを見回すが周囲から何かが近づいてくる。

「隊長ー何かがいます」次の瞬間意識を失った。

二浦たちが連れ去らわれたと知らないまま外で待機していた兵士たちは夕刻までポカーン、副官の榎枝少佐は部下を様子を見に行かせた。

「二浦大佐はどこにいるか」インホメーションカウンターでレイラに尋ねた。

「誰ですかー知りませんわー」

「捜索に入っているはずだ、上に聞いてくれ」

「そんな人たちは来ていません」

「嘘だー俺の見ている前で入って行ったぞ」


島本はエニーに向かった部隊が消えたと連絡を受けた。

「消えただとどういうことだ」

「はいー階段を上って行きましたが消えたのですそれしかわかりません」

「参謀長を呼べ」

「藤堂君聞いたか」

「はい聞きました、またやられたようですな」

「エニーの会長の自宅を捜索しろ、邪魔する者は逮捕したまえ」

国防軍は全国にあるエニーの関連施設を一斉に捜索に向かった、加納の屋敷の周囲は警察隊が展開し国防軍が車列を連ねていくと止められた。

「どけ―エニーの捜索に来た」

「国防軍が兵器をもってクーデターを始めるのですか」

「なにークーデターだとー」

「国内で兵器の使用は裁判所の命令書が必要だぞ持っているのか」

警察隊隊長の指摘に軍の指揮官は引き返すしかなかった。


ベニーの国防軍掌握

軍の動きにベニーは怒りながら薄笑い「井上はやってくれるわね、タリヤ―」

「なんでしょうか」

「国防軍に落とし前をつけさせますわ、出かけますわよ」

ベニーは六輪車で練馬の軍司令部に向かう、正門の両側に衛兵の詰め所があり遮断器が降りていた。

「リナ―邪魔するものは排除すればいいわ」車の電子脳に伝えた。

「分かりましたわ」車は止まらず遮断器を弾き飛ばしゆうゆうと通り抜けていくと監視をしていた衛兵はビックリ慌てて本部に警報を鳴らした。

「何事だー」

「総長乱入者です、車がゲートを突破しました」

「逮捕しろー」

ベニーはその時司令部前に着き車を降りると兵士に囲まれた。

「どきなさい邪魔ですわータリヤ教育が必要ね」

「はい王妃様」タリヤは何かのスイッチを押す。

バーンーースクリーンが波紋状に広がり兵士はローラーに轢かれたように押しつぶされ悶絶。

「行きましょうか」ベニーは倒れている兵士を踏みつけ石階段を上がっていくと玄関の扉がパタンと開き兵士が飛び出して来た。

「待てー女、逮捕する」兵士は銃を構えてベニーとタリヤを取り巻いた。

「ほほほほ何の真似かしら、わたくしに銃を向けるとは死にたいのですか」

「ほざけ女ー逮捕しろ」指揮官は兵士に命令し兵士はベニーに近づくが突然構えていた銃が弾き飛ばされた。

兵士はビックリしたが素手でかかって来た。

うぁーー兵士は弾かれ何人かはごろごろ石段を転がり落ちた、頭から血を流して身動きしない。

「女ーなにをした」

「ほほほほわたくしが何かしたですってーご自分の部下のドジを棚に上げて何を言いますの、行きましょうかタリヤ」

「はい王妃様」

タリヤは持っていた指揮棒を前に差し出すと兵士はさっと道を開けた。

「何をしている捕まえろ」指揮官の渡辺中尉は怒声を上げるが兵士たちはビクビク、渡部はベニーに掴みかかろうと飛び出したがタリヤは指揮棒を振るう。

うわーー見えない力に掴まれ空中へー悲鳴が聞こえアスファルトの地面に落下した。真っ赤な血が広がり隊員たちは立ち尽くし一人は司令部に駆け込んだ。

「総長ー大変です、渡部中尉が死亡しました」

「なんだとー訳を言え」

「はいー女の乱入者を逮捕しようとしましたが投げ飛ばされ舗装面に激突しました」

「女にやられたのか」

「はい女二人です」

島本は呆れたが現場に駆け付けるとベニーとばったり会った。

外を見ると救急隊が遺体を運び去り兵士は階段に座り込み自信喪失、総長が現れても反応しない。

「ほほほほだらしのない軍隊だ事、こんなことで日本国を守れますか」

「あなたは誰でなぜこのような事をしたのですか」

「わたくしは誰でもよい,軍のトップはあなたですか」

「総長の島本だ、名乗られよ」

「ほほほほこの国では加納と名乗っていますわ、あなたに用がありますから迎えに来ましたのよ」

「なんだとーエニーの会長か、部下をどこにやった釈放しろ」

「いいわよ返して欲しければ口を開けてあーん」

島本はつられてあーんゴクッ「なんだー何入れたこんなことできるか」

「ほほほほあなたのお腹に爆弾を飲み込ませたわ、これからはわたくしの命令に従う事、逆らえばボーンよ」

「ググググ嘘だ」

「ほほほほほどう思うといいですわ、逆らってみなさいな面白いわ」

「グググお前は魔女か」

「なんとでも言いなさいな、全国でしているエニーの捜索を直ちに中止なさいいいですわね」

「ググググ畜生ー竹沢大佐中止の命令を出せ」

「ハッわかりました」

「よろしいですわほほほほ」ベニーはタリヤとこの場を去って行った。


井上政権誕生

千九百九十九年十二月国会最終日に井上は総理大臣を拝命し、事務所では官邸への引越の準備に追われていた。

「奈津子さんこんな時期に引越なんて今日は大みそかですよー」

「島田さんごめんねーお父さんが正月には官邸に年始の客が来るっていうの」

「仕方ないですか、おかげでおれも議員の秘書から総理秘書に出世したものな、郷の母なんか泣いて喜んだから」

引越が終わって正月の三日ー島田は正月休みは取らないでいた、明日から来る年始の客に備え、事務所の中を掃除「ああー正月から掃除かー」

「ごめーん総理はいるかな」

あれもう来たよ、誰かな島田は箒を持ったまま玄関のドアを開けた。

「俺だ、総理は居るか」

島田は軍服に金がキラキラ将軍だとわかったが面識がない「あのー国防軍の閣下ですか」

「ああー総長の島本だ入るぞ」島本は応接室に島田は執務室に井上を呼びに行く。

「やあー島本さんまだ三日ですがどうかしましたか」

「総理ー加納にやられた、もう俺は動けん」島本はベニーとのいざこざの様子を話した。

「それは災難だったなまだ腹に爆弾はあるのか」

「分からん、調べてもいいのだが迷っているがあの女そこらの女ではないぞ、話し方など自信たっぷりだ」

「やはりな素性は隠せないか、島本良く聞けあの女は地球人ではないーどこか遠くの宇宙帝国から来ている、俺が掴んでいる情報ではそこの女王らしい」

「なんだとー嘘だろー地球以外に人が住んでいる星が有るのか」

「俺は良くは知らないが宇宙には人が溢れているそうだ、だが問題なのはそのような高貴な身分なのになぜここにいるのかだ」

「総理これは人に話せることではないぞ、もし女の身に何かあれば帝国の報復を受ける可能性があるからな」

「そうよ極秘だーだから国防軍は引いた方がいいだろー、あとは防衛隊にやらせる考えだ」


白瀬防衛隊司令官

翌日各界の著名人に混ざり白瀬が新年の挨拶に来た。

「就任おめでとうございます」

「やあー白瀬さんだったなー君には防衛隊を任せるがよろしく頼む、正月からなんだがエニーの会長を知っているか?」

「ええーいや何か」白瀬は妻の友人だと言いかけたがやめた、総理は俺に何を求めているんだ?

「就任早々だが昨年の暮れに国防軍の兵士五十人がエニーを捜索にいったが連れ去らわれた、どこへいったか探してもらいたい」

井上はベニーの正体を伏せ捨て駒に白瀬を投入したーあの女と繋がりが有るのかこれでわかるかもしれないと考えての行動だ。


白瀬の防衛隊初出勤二千年一月 

七日になり白瀬は防衛隊の司令部に初の登庁ー都心の真ん中赤坂に滑走路もある広大な敷地、白瀬は初めて見て驚いた。

「なんでこんなとこにあるんだ、都内は土地が不足しているんだぞ」

しかし利点があった、国の虫垂機関が目の前にあり閣僚などは全国に向かうのに苦労しない。

「俺たちは政府要人の送迎もするのか」白瀬はぶつぶつ言いながら正門に着くと衛視を呼んだ。

「白瀬だ今日からよろしくな」金ぴかの制服を兵士に見せた。

「ハッ司令官閣下こちらこそ」兵士は記章を見て慌てて詰め所を出ると並び敬礼した、将軍は司令官しかいない。

駐車場に車を止め司令部の建物に入ると士官が慌てて駆け寄り敬礼「白瀬大将お待ちしていました」

「おい俺は大将ではないぞ」よく見るとみたことのある士官だ。

「おめでとうございます、高木ですよろしくお願いします」

「おー君かー軍はやめたのか」

「ハッいろいろありましてでも貝原大臣に世話になりまして」

「ホ―ウ少佐か出世したなー」

「はいここで戦闘部隊を預かっています」

「少佐ここで何をしている間もなく司令官が来るぞ」

白瀬の背後から高い罵声が響いた。

「ハッ中佐ー閣下はここにおられます」

「えっ」中佐と呼ばれた宮城は慌てて回り込むと白瀬と面があった。

「司令官初めまして宮城中佐です、ここで科学捜査部門を預かっています」

「そうかー俺こそよろしく頼む、何も知らんからな」

「ちょっとあんたたちあたいを紹介してよー」宮城の後をついてきた藤田は頬を膨らませお冠り。

「なんだーこのマメは?」白瀬は声のほうを向き叫んだ。

「司令官ー俺の部下で藤田少尉ーこれでも生物学の博士号を持っています、ずーずーしいのが玉に瑕ですな」

「あんたなによーあたいがズーズーしいですってこうしてやる―エイー」藤田は宮城の足をハイヒールで思い切り踏みつけた。

「いたたたたー暴力はやめろー」

「はははまあいいところで高木君ここで諜報はだれかな」

「はっ業務の白石課長が情報課を仕切っています、噂では国防省の情報部からの出向で大佐だそうです」

「ほーそんな大物がいるのか隅に置けない組織だな」白瀬は改めて層が厚い事を知った、しょせん警察軍だとバカにできないぞ。

白瀬は司令官室に彼らを集めて幹部の情報を得て就任式に出た。

幕僚から料理のおばさんまで列を作り行進して白瀬の前に並ぶ総勢五千余名これが本部基地の全員だ。

白瀬は幕僚部が書き上げた就任演説を読み早めに切り上げると幹部を会議室に集めたがその部屋にはズーズーしい藤田もちゃっかりテーブルに着いて居た。

「諸君初日から難しい問題だ、国防軍は昨年暮れ隊員が五十人さらわれた、彼らを救出するこれが任務だ」

白瀬の言葉に部屋の中はざわめいた。

「司令官詳細は分かっているのですか」捜査隊の山本中佐が尋ねた。

「エニーに捜査に入って行方知れずだ」

「えーまたエニーですか、これは難しいやつらは証拠を残しませんよ」

「ふーんあたいの出番よね、見つけてあげるわ」

「藤田でしゃばるな」

「あたしが探しますわ、あの女には借りがありますものね」白石はベニーにさんざんおちょくられ挽回を目指していた。


加納と幸子の関係

自宅にもどった白瀬は幸子をじーとみた。

「何よ気持ち悪いあたしの顔に何かついてますか」

「いやーエニーの会長は君の友達だよな」

「美幸の事そうよ子供の時からの友達よ」

「エニーの中を探りたいが手を借りられるか」

「なによーあたしに友達を裏切れというのとんでもないわ、そんな事言うなら離婚よ」幸子は甲高い声を張り上げ喚いた。

聞きつけた智子が聞いてきた。「お父さん何が知りたいのあたいがみどりに聞いてもいいよ」

「智子大人の話よ引っ込んでなさい」

「フーンケチ」翌日智子はトコトコと緑の住む屋敷に来た。

「みどりーいるー?」

「朝早くからなによー」

「みどりーお父さんが美幸に会いたがってるわー」

「お母さまにー?何の用なの」

「知らなーい、デートしたいのよきっとプロポーズかなー?」

「ちょっとあんた何言ってるの―お父様がいるのよー、いいわあたいが見定めてあげるからつれて来なさいよ」


その日の午後白石はエニーにやって来た。あたりをキョロキョロ中学生らしい女の子を探していたら智子とみどりが走って来た。

「白石さんてあんたー?」

「そうよ智子さんなの」

「そうよーこの子がみどりー美幸の娘よ」

「あんたーあたいの親を呼び捨てにすることはないでしょ」みどりは眼を大きく開いて智子をなじる。

「いいわお母さまが待っているからいこうー」みどりは受付にいた山崎に手を振りゲートを開けてもらう。

白石はゲートをくぐり始めてエニーのエレベーターに乗ると電子脳は個人情報を走査し記録し、預金の残高まで瞬間的に調べた。

盗られたと気づかない白石はエレベーターを降りると会長室と書かれたドアをたたいた。

「誰ーあいているわよー」

疳高い声が聞こえたからドアを開くとベニーは大きな机で待っていた。

「何のようかしら」

「わたし防衛隊の白石よ、加納さんに尋ねたいことが有りますわ、国防軍の隊員はどこにいるのかしら」

「ほほほほそんな事、決まっているでしょ基地にいますわよ島本に聞けばどうかしら」

「その兵士ではないわー昨年暮れあなたが捕えた兵士よ」

「わたくし知りませんわ、間違いではないかしら」

「惚けないでよーこの建物の中から消えたのよ」

「おかしいわねー支配人に聞いてみますわ」

ベニーは画像電話をかけ一言二言、納得したらしく白石に向いた。

「やはり関係ありませんでしたわ、支配人が言うには警察が連れて行ったそうですわ」ベニーは誇らしげに話し、白石はポカーンーどういうことなの。

白石は司令部に戻り白瀬に報告「司令官どういう事でしょうか」

「ふむーまずは警察に確認だそれから考える」

白石が所轄に聞いたが知らないという、警察本部にたずねた。

「防衛隊の方ですか、その件なら最高検察庁の管轄です」

「検察庁ねーありがとう」教えられた電話をかけると出たのは高島、井上の懐刀の検事だ。

「防衛隊ですか、国防軍の部隊は俺が逮捕した、それが何かな」

「検事ー彼らは任務で動いてましたのよなぜ逮捕したのですか」

「これは誤解があるようだが国防軍に国内の捜査権はありませんぞ、一歩譲っても彼らは武装して捜査令状持たず押し入った、市民からクーデター通報があって対処するのに問題ありますか」

白石は答えに詰まった、彼らは暴対法の適用を受け逮捕されたのだ。


「司令官ーどうしようもありませんわ彼らはクーデターの容疑で保安拘束されました、裁判なしで懲役十年です」

「参ったな―こんなことで総理は指揮権を使えないぞ、官邸に行ってくる後を頼むな」白瀬は車で十分の官邸に入ると総理を呼んだ。

「総理ー見つけたけど刑務所にいるどうしますか」

白瀬はいきさつを話し井上は担当の検事が高島と聞き驚いた。

「司令官高島君に間違いありませんね」

「そうですがどうかしましたか」

「高島君はエニーの捜査中に消えたのですがエニーに寝返っていたのですね、だがこの短期間でよく探せたのは何か秘策がありましたか」

「実は加納と妻の幸子は幼馴染でしてその線から聞きだしました」

井上は白瀬の話で納得した、そうだったのか加納は幸子さんを引き入れるため白瀬さんを防衛隊のトップにすえたのですな。

それから一年間地球の危機を知らず白瀬は日常業務をコツコツとこなして八月知らないところで異変が起きていた。


関東大学の立花研究室登場

二千年年八月東京から一千キロ、小笠原海溝の上を航行していた南東洋大学の海洋調査船にのっていた柴山紀子は海面が激しく泡立っているのを見た、「おかしいわなぜかしら」その様子はビデオで残したが日本に戻っても気になる、しかし新任の研究者にそれを調べる時間はない毎日授業と研究に追われ、あっという間に年末になった。

十二月大学が休みに入ると一大決心関東大学の立花教授の住まいに行きインターホンを押すが慌てて逃げだした。

「誰もいないのか」立花はドアを開けキョロキョロしていたが閉めようとしたとき柴山は飛だした「立花先生ー?」

「うんそうだが君は誰かな」

「あたし柴山紀子ー南東洋大学で地球物理学の研究をしています、せんせいの船貸してくれないかなと思ってきました」

「はははこれは驚いた、初めて会って大王を貸して欲しいとはたいしたお嬢さんだ、それでなにを調べるのかな」

「あたし今年の夏に研究室の仲間と島の調査に行ったんですが其時小笠原海溝の上を通った時ブクブクと泡立っていたんです、匂いもするし湯気か経っていたわーまるで温泉の中よねーそのときは調べる器材がなくって通過したんだけど気になって」

「ふーむそれは気になるな、あそこのしたには火山はないからな、ちょうど休みだ、学校が始まる前にいってくるが君も来るかな」

「はいー連れて行ってください」

柴山はウキウキ話が弾み、奥方に家の中に誘われるとおせちをつまみその日は夕刻まで楽しく過ごした。


エミリヤの悪だくみ

エミリヤはベニーと別の政策で地球人をギニアに送る計画を立てていた、この時ベニーは着々と日本政府の要所を落としていたがエミリヤにはのんびりに映っていた。

「サーシア変動を地球人に発見させなさいベニーのやり方はまだるっこいわ」

「はいわかりました」

サーシアは策略を練る、海洋研究が盛んな関東大学に眼をつけた。

「セルー立花の調査予定よ調べられるかな」

「任せろ、地球人の予定など目をつむっていてもわかるからな」

セルは潜入して三日目には戻って来た。

「サーシアこれが予定だ」セルは日程表を渡した。

「皇后さま姫様をお借りしますわ」

「いいけど危険な真似はご法度よ、それでなくともあの子は向こう見ずなのよ」

「承知していますわ、わたくしがついていますからご安心くださいな」

立花が大王で小笠原海溝に潜る日を知るとサーシアは海溝底を爆破する手配を済ませた。「これでいいわ、あとは来るのを待つだけよね」

実行部隊から報告を受けたサーシアはリアを連れてハニーシティーに行き帰国する市民がセルジア号に乗り込んでいるのを見ながら特別室に入った。

「サーシアなんで帰国の前に海底を散歩しますの?」

「姫ー地球人が太平洋の海底で遭難しますから彼らを助けて欲しいのですわ、接触してもらって地球の置かれた事態を知らせて欲しいのですわ」

「ハーン遭難だなんて嘘ね、サーシアが仕組んでいるのでしょう?」

「ホホホホそれは彼らにお話ししないほうがいいわホホホホ」

サーシアは笑いリアと呼吸があったと感じた、「あとは幕が開いてリアの演技力よね、楽しみだわ」


コーヒーショップでの出来事

宮城と藤田は一年かけてエニーを探っていたが成果が得られず今年の締めくくりにエニーの様子を見に本社ビルにやって来た。

「すごい建物だな、これで本当にエニーは個人商店なのか」

「あれはなんだー、エレベーターがガラスで覆われているぞ」

「へへあれがエニーの特徴よね、勝手に上に上がれなくしているの」

「あんなものー割ってしまえば入れるじゃないか、無駄だ」

言いたいことを放しながらインホメーションと書かれたカウンターに来ると受付の女性に尋ねた。

「防衛隊だー責任者に会いたい」

ガラスの向こう側でリナは予定表を確かめ宮城に向くと言った。

「アポがありませんねー、予約を取って出直してくださいな」

「君―俺たちに帰れというのか、いるのなら呼んでくれ」

「規則でできませんわーお帰り下さいニコッ」

リナはガラスの向こうで済ました顔で伝えると他の事を始めてしまった、宮城達に見向きもしない」

「グググ俺たちを無視するつもりだな―」宮城は睨みつけるが藤田が宥めた。

「宮城さん行きましょうよ、ここに居たって無駄よ」藤田は宮城の手を引くと玄関の方に向かうがコーヒーが飲みたくなった。

「宮城さんあそこで暖かいコーヒを飲みましょうよ」

宮城の返事を聞かずコーヒーショップに入るとケーキとホットを頼のみ、

おいしそうに食べながらレシートを宮城に渡す「はいこれお願いね」

「おいなんだこれはー」宮城はレシートを振りながら喚いた。

「決まっているでしょ、払ってよね」

「ググググきみのだろー」

「中佐あたいは任務できているのよ、そのくらい経費で落とすべきだわ」

藤田は白々しく言い放っていた時ガヤガヤ喚きながら男性の集団が行ってきた「女王が来ているらしいぞー」

「なんでたー」

「地球が太陽になるからさ、陣頭指揮を執るらしいな」

「エニーも引き上げるんだ、俺も娘を国に帰す早くしないと船の席が取れなくなるからな」

「でもソラリウムはどうなるのかなーもったいないよな」

「貪欲な皇后陛下は火消しにかかるさ」

「核に付いた火は消せるのかーなら引き上げる必要はないぞ」

「消せるものかーソラリウムは他の惑星にもあるんだ、地球が無くなっても皇后は居座るさ」

男性たちの話を宮城は聞いていたが藤田は研究者らしくジーっと彼らを観察していた。

男性たちが帰ると二人はひそひそ「どういう事かしら」

「分からんよ、地球が太陽になると言っていたよな」

「うんうん」二人は急いで司令部に戻ると白瀬にぺちゃくちゃ。

「お前たちそれで帰って来たのかーあきれるなー」

「なんでよー」藤田は頬を膨らませ不満丸出し。

「地球が太陽になると聞いてきたのだろーなぜなるか調べてこい」

二人は白瀬に追い出され部屋に戻るが考えた。「おかしいのよねー、どういう事なのかしら」

「地球が燃え出したといっていたよなーそんな事あり得ないぜ」


加納一族の地球脱出

二千年十二月ベニーは秩父の地下にあるハニーシティーの空港にいた、広い空港を眺め十数隻の船の前ではトレーラーがコンテナの積み込みを待っている。ベニーは加納家が太陽系を支配して一万年の歴史を思い起していたがバスが止まり大勢の市民が乗り換え満席になったら飛び立っていた。

「帰国が始まったのね、これからが大変だわ」

ベニーは帝国領の太平洋地下にあるハニーシティーに向かい、その空港でも国に引き上げる人の列に出会った。

「ここでも始まったのね、お姉さまは何しているかしら」

エミリヤはシティーの庁舎で各部門から報告を聞き資産回収の進捗状況を確認していた時ベニーは現れた。

「お姉さま、こっちはどんな状況かしら」

「ベニーね、市民の脱出は計画通りよー市民もほとんど火星に移動するみたいなのでこれまで通り太陽系の重要さは変わりませんからわたくしも火星の宮殿に移るだけですわ。あなたのギニア計画は進んでいないようだけど間に合うかしら」

「今は政府を料理していますのよ、彼らを引き込み終われば進みだしますわ」

「そうなのー安心していていいのね、それとサーシアが面白い事を計画していますわ、あなたの助けになればよいですけどね」

「何をするの、知らないと対処できないわ」

「お教えしたいけどわたくしも知りませんの、楽しみだわほほほほ」

エミリヤは愉快そうに笑うがベニーはイライラ。

「何をするのかサーシアを捕まえて聞かなければなりませんわ」

「サーシアなら港にいるわよセルジア号でリアと海底を鑑賞するんですって」

「そうなのありがとう」ベニーは急いでセルジア号に向かうが一足遅かった、目の前を大勢の市民に見送られ港を出て行く。


春の海号ー小笠原海溝へ出航

セルジア号の出航三十時間前鹿島の飛島造船鹿島港では関東大学の調査船春の海号の出航準備に正月休みのさなかに突然立花教授に呼び出され島野と篠田は大むくれ。

「俺十五日まで休みの予定だったんだよなー」島野は船の手すりにもたれかかりぶつぶつ。

「フーン彼女がいないのにそんなに休んでなにするのよー」篠原はそんな島野をバカにした。

「篠田ー君にはそれを言われたくないぞー」

「なんでよー」

「君にだって彼氏はいないだろー、知っているぞ」

「ふんーふざけないでよーあんたと違うの男なんか吐き捨てるほどいるわ」

二人は荷物をそっちのけで言い合いを始めた見ていた立花は呆れた。「おーい二人ーそんなことしてると積み込みが間に合わんぞー」

「先生ーなんで急ぐんですかー、海溝は逃げませんよ」

「話はあとだ、時間がないぞ」

その時桟橋を走って来る若い女性がいた。「せんせーい乗せてー」

「おおー来たな、柴山くん走ると海に落ちるぞー」

「誰ですかー先生」島野は若い女性の声を聞き振り向いた。

「ふんー島野先生は女が来ると目の色が変わるのよねー飢えているのかしら」

「仕方ないだろーここの研究史っには女性がいないんだからな」

「なによー可愛いあたいに相手にされないからってあてつけなのー」

「どこにかわいい女がいるんだよー」

「目の前にいるじゃなーい見えないのー」

二人が言い合いを再び始めると立花は処置無しと桟橋を登って来た柴山を迎えた。「やあーよく来ましたな」

「先生よろしくお願いします」

「メンバーを紹介しようー島野助教授と篠田助教授だ」立花は柴山を二人の前に連れて来て会わせた。

「はじめまして南東洋大学の柴山です」柴山は憧れの新進女性科学者篠田に会えてドッキリ、上ずった声を出しながらペコリと頭を下げた。

「今回の調査は柴山先生からの提案だから二人とも協力してくれ」

「俺島野だけど柴山先生はどんな研究で行くのかな」

「分からないの、海溝の底からだと思うけど泡よ、正体を知りたいの」

「ねー泡って何のこと」篠田が聞いた。

ボォォォォー警笛が鳴った―話がはずんでいるうちに春の海号は岸壁を離れ出航、南に千キロ小笠原海溝目指して向かうが後方を一隻の潜航艇が追跡していた。

「リンーこのままついて行けばいいんだな」

「ケル―大尉そうよ、目的地に着いたらカニの出動よ」

「だけど核融合弾なんかなにするんだ」

「花火よ楽しいわー」

翌朝六時に海溝の付近の海面に到着、柴山はベットから飛び起きた。

「寝すぎちゃったわー急がなくっちゃ」顔を洗って歯を磨いてウロウロ、部屋を飛び出しデッキへ出ると立花は海を見ていた。

「やあー起きたか」

「すみません先生」

「ははははいいんだ、ちょうど現場に着いたんだ」

双眼鏡で海面の捜索開始。

東の海面が黄色く濁り泡がぶくぶく「あれだわ以前より広がっているわー」

「どれどれ俺も見てみよう」立花も双眼鏡を取り出しじっくり観察したが顔に疑問が浮かんだ。

「柴山さんこれは普通ではないよ、潜って原因を調べないとな」

「はい先生」

立花は柴山を連れ大王が収まっているエレベーターゲージの前に来ると中から島野が出て来た。

「あー先生準備は出来ていますよ」

「そうかじゃー柴山さん大王に乗ってくれ、はしごを気をつけてな」

柴山は恐る恐るパイプはしごを上るが海水がかかり滑る。「キャー怖いー」

「船長ー大王を降ろしてくれ」柴山に続いて立花も乗り込むとハッチから言い放った。

「了解、みんなー始めるぞ」

甲板員がゲージの固定を外し、大王はレールの上をすべるように舷側へ移動ー海面に降ろしてゲージの扉を開く。

「それでは行くかー」立花は大王の推進器をスイッチオン電動モーターが心地よい音をたて前に動き出した。

大王は海に漂うとゲージが持ち上がり甲板員たちの見送りを受け潜水開始

大王は船員に見送られ海の中へぐんぐん沈下していく後を追尾してきた潜航艇から深海作業船通称カニが海中に泳ぎ出て大王を追い海溝の底へ向かう。

「フフフこれから何が起こるか知らないで散歩しているわ、せいぜい死なないようにね」

柴山は窓から海中を眺め初めての海中散歩を楽しんでいた。

「ステキー魚があんなに泳いでいるわ」トローンと眺めている前をカニがすいすい追い越していくが柴山は気づかない。

三時間で六千mまで降下して海底近くに降りると篠田は海溝の中を覗いた。

「嫌にあかるいわー」

「本当だどうしてかなー」

「君たち下に行くぞ」立花は大王を海溝の上に移動し降下させていく。

底ではカニのなかでリンがスクリーンを眺め大王が予定の深さまで降りてくるのをジーっと待っていて事前に置いていた核融合弾を点火させた。

大王が海溝底まで千メートルの位置に降りたとき底で閃光が光った、ピカッーモクモクモク、激しい爆発の後岩塊が飛び散り海溝底は砂煙におおわれた。

篠田は海中レーダーを覗いていたが画面が突然真っ白に変わり大王は大きく揺さぶられた「大変噴火よー上昇流が来るわ脱出してー」

篠田が叫ぶと立花は大王の非常脱出装置を作動ー重しが次々と落とされ上昇に移ったが間に合わない、海水の流れに捕まりぐるぐる回転を始めた。

「みんなー飛ばされるからなにかに捕まれー」

「きゃー助けてー」柴山は席から放り出され天井に激突。

どしんバターンー篠田は大王の中を飛ばされ機械や壁にぶち当たり手や肩を打撲、島野も転げまわって気を失った。

大王は海溝の上まで急速に浮上すると海底に弾き飛ばされ二度三度とジャンプコロコロと転がり砂山に突っ込み埋もれた。

大王は電源が切れ真っ暗、篠田は這って窓まで行き外を見ると埋まっているから何も見えない「あたいはここで死ぬのねしくしく」

爆発の五分前セルジア号は海溝に到着、サーシアは停止させ海溝の様子を観察していた。

「そろそろよね」サーシアは時計を見ていると突然海水を通し低い振動がセルジア号を揺らした、-ブーブー前方海溝から上昇流注意せよー電子脳が爆発の振動を捕え警告を発した直後巨艦でも激しく揺れた。

「姫―何かに捕まってー」サーシアが叫んだ。

「サーシアあなたの仕業でしょ」リヤは椅子にしがみつきながら言い放った。

白く丸いものが飛び出し砂山に潜るのを見たサーシアは命令を発する。

「救助斑へ、カニの出動よー」

ビー―――乗員詰め所に出動の合図、操縦士のベンは飛び上がり格納庫へ突進一分後にはカニの船内にいて八本の手足を操り圧力ゲートに入って行く。

「ベンだゲートに入った、準備完了水を入れてくれ」

ゲートが締まり海水が注入され外と水圧が均されると外の扉を開いた。

「行くぞー」

「指令室からベンー地球人の乗り物を探してくれ」

「了解、どこにあるが見当はついているのか」

「海溝の淵の砂山に埋まっているからな、掘り出せるか」

「はははは簡単なものさ任せろ」カニは百メートル降下して海底に降りると目当ての砂山へのったりと歩いていく。

「あれだなー見事に埋まっているぜハイー」カニは残りの距離をジャンプし砂山の上に降りて四本の手で崩し始めた。

セルジア号のなかではリヤがスクリーンでカニの作業を眺めながらポツリ「サーシア遭難だなんてあなたが爆発させて起こしたやらせじゃない」

「ほほほほ過去の事は忘れましたわ」

「いいですわ、わたくしが彼らを暖かく迎えればいいのね」

「ほほほほそうですわ、姫は彼らにとって命の恩人彼らは姫の期待通り働きますわ」

「母上も地球人に何をさせたいのかしら」

「皇后さまは地球人を使ってルビリアを抑える計画ですのよ」

二人が話しをしている間にベンは大王を掘り出しセルジア号に向かっていた。

「ベンだ負傷者四名治療の準備を頼む」

「指令室よりベンー準備は出来ている」

カニはセルジア号の空いているゲートに入ると自動的に扉は締まり排水が始まった。気圧が鳴らされるまで五分まだるっこいが急ぐと大王が破裂する。

船内と気圧がそろい内側の扉が開くと医療スタッフがカプセルをもって入って来た。立花達を救命カプセルに寝かせると格納庫から出て行き、ベンは部屋に戻ろうとするともう一台カニが帰って来た。

「なんだー誰が乗っているー」ベンは見ているとリンが降りて来た。

「おーいリン何やってたんだー」

「ほほほ楽しいことよー花火を打ち上げましたのうまくいきましたわ」

「おい花火って海底だぞー」ベンははたと思い出したー艦には謀略家の侯爵が乗っていたぞ地球人の船をやっつけたのはリンか?


篠田は明るい光に目がさめた「ここはどこーあたいは天国に来てしまったの」ベットに寝ていると気づくと顔を左右にふり同僚たちもいた。

「ホホホホ気がついたようねここは天国ではないわ、潜水艦セルジア号の病室よ、あなたたちが乗った船を見つけて救助しましたの」

「ありがとうございます、あたいは篠田関東大学の研究員です、あなたは?」

「わたくしはリヤー銀河帝国の王女ですわ、あなたたちはよくあのような危険な乗り物で深くまで潜りますわねー、呆れてしまいますわ」

リヤが話しをしていると立花達も目覚めた。

「ウーここはどこですか」

「先生気づかれましたか、あたいたちこの方に助けてらいましたわ」

篠田はリヤを指していった。

「ありがとうございます、大王は無事ですか」

「ほほほほ気が付けは船の心配ですか、あんなもの作り直せば済みますわ」

「とほほほほ大王は無くしてしまった」立花は嘆いた。

「格納庫にありますわ、多少壊れていますが修理は出来ますわよ」

赤毛の女性が扉を開け入って来た、看護師が大声で叫ぶ。

「サーシア侯爵様がまいりましたー」

レモンイエローのミニスカ制服に長く白い脚にはヒールの高い長靴、キラキラと輝く指揮棒を振りながらリヤに近づく「姫ー母船と連絡が着きましたわ」

「そうーありがとう行きましょうか侯爵」

二人がでていくと代わりに士官が入って来て立花達に言った。

「君たちー送り届けるが歩けるかな」

「歩けます、ご心配かけてすみません」-いたたー立花は痛みをこらえベットから降りる。

四人は士官に連れられ艦の中を後方の格納庫に向かう、広く明るい廊下を進んでいると篠田は足を止め歩いてくる人影を指した「島野ちゃんあれわかる?」

「なんだーギョロボットじゃないか」

士官の制服を着ているロボットは案内してくれている士官と会うとお互い敬礼を交わした「ソエッティナ少佐御苦労だな」

「はっ大佐はどちらへ」

「本官はアルファ基地を監督だ、君は地球からの撤収作戦だなお互い無事に任務を成し遂げようではないか」ロボット士官は案内していた士官の上官らしい。

「はっーでも本当ですか、俺はまだ信じられないのですが」

「地球が太陽になることがか本当だーだから市民は太陽系から離れるのさ」二人の話は島野達に聞こえた。

「島野ちゃんーどういうことなの」

「地球に住めるのは長くっても十年を切った、地球人は全員焼け死ぬだろうよ」

「助けられないのですか」

「皇后さまは助けたいそうだが地球にいる市民の脱出で船は一杯らしい、市民の手引きで何人かはレムリアに逃れられるが大した数ではないなーだからやつらには気づかれるなよ」

篠田は士官たちの話を耳を澄ませて聞いていたが絶滅と言葉で体が震えた。

「大変だわ事実なの」

再び歩きだし数分で広い格納庫に着いた。「すごいーな、こんなに広いのならこの潜水艦はどれくらいあるんだ」立花は士官たちの話を聞いてなかったかのように格納庫の広さに驚いていたが篠田はそれどこではない。

海上にいる春の海では大王が遭難したが救助したからと通信が入り乗員たちは受け入れの準備にかかって忙しい時に遥か遠くの海が盛り上がった。

「船長ーあそこ上がってきますよ」船員の猪瀬が海の脹らみを捉え叫んだ。

全員が注視していると青い船体がせりあがって来る、「すごいあれで潜水艦ですかー」春の海の二倍はある。

艦は浮上すると春の海に接近してきた、近づくにつれ大きさがわかり目の前に山がそびえた感覚にとらわれた。

「船長どこの艦ですかね」

「ふむアメリカのではないぞ、ロシアでもない、わからんが木島写真を撮れ」

「はい、ご心配なく出て来た時からビデオが回っていますぜ」

「分かった」

春の海の乗員が注目していたセルジア号の艦内では立花達が格納庫に入っていた「先生ー病室からここまで百mは歩きましたよ」

島野は格納庫の中をキョロキョロしたが突然大王が目に留まった。

「せんせーい大王の尻尾がありませんよ、無くしちゃったみたいだ」

「それくらい作り直せばいい、本体が無事でよかったよ」

格納庫の天井が開き太陽の光が差し込んだ。

「海上に出たようだな」

「せんせーい大王は風船でしたか」島野がすっとんきょな声を出したが大王は立花の目の前をフラフラ飛んで天井から外に出た。

「ばかな五トンもあるんだぞー」

「せんせーい島野なんかかまってないで、あれが来るわよ何かしら」

篠田は近づいてくるものを見て叫んだ、見ると空中に浮いている。

「どうもここには俺たちの想像以上のものが溢れているようだな」

「やはり本当なのね、あの人たちは宇宙から来ているのよ」柴山はベットで聞いた話を思い出した。

「柴山さんどういうことだい」

「あたし聞いたのよ、リヤって人が篠田さんに話していたこと、宇宙帝国の王女様と言っていたわよね」

「ええー聞いたわ、それだけでないの、地球が燃えるって話していたわ」

「うそーあたしはきかなかったわよ」

「あんたは聞いてなかったのよ、確かよ後十年もないって言っていたわー」

「わかりました、そのことは戻ってからゆっくり検討しますからまずは戻りますか」立花は女たちの言い合いを抑えた。浮遊車両は四人の前で止まると屋根が開き声がした「乗りたまえーこれから君たちの船に行く」

四人は無人の車に乗ると走り出し海の上も滑るように進んだ。

春の海では乗員が注視していると上部甲板が開き大王がフワフワ飛んで来た「大王は飛べないはずだぞ」船長の鈴木は唸った。

続いて舷側が開き円盤が海の上をすべるように向かってくる、春の海のタラップに着くと立花達が乗り移って来た。

「先生無事で何よりでしたな」

「船長―心配かけたけどあの船に助けられ手当てもしてもらったよ」

後ろから声がしたので振り向く、リヤとサーシアが興味深そうに春の海に上がりキョロキョロ。

「ねーサーシアわたくし煙を吐き出して走る船なんて知りませんでしたわー芸術的よねー」

「姫ー薪を燃やして蒸気タービンを回しますのよ、帝国では二万年前から使われていませんわ」

「あらそうなのー、わたくしも欲しいですわユニークよね」

「またないものねだりですかこんなもの何するのですか」

「帝国にはないのよーいいじゃない」キョロキョロしながな二人は喚き歩いてくるのを立花はキッと見据えリヤを迎えた。

「リヤさんー地球が燃えるとはどういうことですか」

「あら立花誰に聞いたのかしら」リヤはしてやったりと思った。

「本当ですか?」

「どこから聞いたか知らないけど本当よ地殻が燃え出しましたの、わたくしの国の技術者が消そうとしましたがダメでしたわー地球人は消えるの運命よね」

「そんな事言わないでください、助かる方法はないのですか」島野が叫んだ。

「あるわー他の惑星に植民すればいいけどあなた達ではいけないわよねー」

「そんな事言わないでください、宇宙船を作りますから教えてくれませんか」「ほほほほ作るですってー侯爵聞きましたか、煙を出して船を動かしている程度で宇宙船を作るですってお笑いだわ。建造する工廠のシステムを構築する前に地球は太陽に成っていますわホホホホホ」

「姫ーそんなに笑わないでくれませんか彼らは必死ですから」

「そうねーつい笑ってしまいましたわ、お母さまに相談しましょうか」

「ええーそれがいいですわ、皇后さまでしたら何か案があるかもしれませんから」

「わかりましたわ立花お母さまに聞いてみますから後程ご連絡しますわ」

「お願いします」

「姫ーテラルーラ号がまいりますから乗り換えの支度に戻りますわよ」

リヤは立花と別れセルジア号に帰った。


ハワイの地震観測所、観測員のエリックは突然太平洋の小笠原海溝で地震の発生を示すライトが点滅したのに気づいた。

「どこかな」

「大したことないな、」エリックはざっと調べておおきな災害にならないと考えながら上司に報告

「エリックー一応関係国に知らせろ、それでファイルに閉じとけ」

「はーいわかりました」

連絡を受けた日本の気象庁

「海溝で地震か、規模は」

「はい長官マグネチュード四クラスです、津波の心配はありません」

「一応観測機で見てこい」

八丈島の空港から気象観測機JA120が出発現場まで二時間かけて向かう。

パイロットの羽田は海面が茶色に濁っているのを見た。

「海底火山が吹いたようだな」

「羽田さんこの下には火山はありませんよ」観測員の根本が地図を見ながら言った。

「ないのかーおかしいなー」

「おい船がいるぞ」羽田は茶色に濁った海域の真ん中に三隻の船を認めた。

「おいー帆船がいるぞどこのかわかるか」

「知らない船だ、あんな立派な帆船は見たことがない」

「日本丸より大型だな、倍はあるぞ」

「それより一隻は日本の船だがもう一隻はなんだ軍艦かー」

観測機からの報告は防衛隊に伝えられた。

「司令官ー気象庁から海底噴火の付近の海上に船が三隻いるそうです、そのうち一隻が波島造船の春の海とわかりましたが」

「春の海か間違いないだろうな」

「はい船籍から調べましたので間違いありません、ご存じなのですか」

「ああー友人が務める大学の調査船だ、なにしに行っているのか関東大学に問い合わせてくれ」

高木は大学に電話を入れ春の海とネットで繋いだ。

「司令官ー春の海と繋がりました、どうぞ」

白瀬はパソコンの前に来るとマイクに語った「防衛隊の白瀬だが船長を頼む」

「船長の鈴木です御用ですか」

「大したことではない、そこで何をしているのか聞きたくってな」

「白瀬ーおれだ、報告したいことが有る、地球に異変だ今海溝に来ているが海底が爆発し大王は巻き込まれて破損し海底の砂の中に埋もれたんだ。

助けてくれたのは海底近くを航行していた潜水艦に乗っていた宇宙帝国の王女で地球のマントルが燃え出したから数年以内に太陽に成ると言ってたぞ」

「太陽にか―本当か」

「どうした白瀬知っているのか」

白瀬は地球の運命を知り漠然と幸子や智子を思い浮かべ立花の呼びかけに応えられず想いにはまり込んでいった。

地球人は絶滅する、二人はなんとか助けたいが方法はあるのか白瀬は知恵を絞るが月にロケットも飛ばせない技術では地球を脱出するなど夢物語だ。

地球の滅亡は避けられない運命と知った白瀬は最後まで生き残る努力をしてみせる、と心に誓い窓の外を見つめる。

                  第一話 終わり                             











































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