M1
別の作品が派手な戦闘も女の事のいちゃらぶも出てこなくて発狂しそうで気づいたら書きなぐってた作品
週1更新位を目標に頑張ります
人生と言うのは意外に簡単に変わるのだとその日僕は知った
その日まで僕はどこにでもいる村人だった、10歳になったその日、僕には何の才能もない、職無しだと言われ、村人ではなくなった
姉は僕の事を庇ってくれたが、姉以外の家族は僕を恥だと言い、そして母の魔法によって村から追い出された、生きる術を何も知らなかった僕は、夜の森の中、何の力も持たずに放り出された、そんな僕に世界は優しくなくて、腹を空かせた野犬が僕の前に現れたのだ
何の力もない小さな子供を殺すなんて野犬にとって赤子の手を捻るほどに簡単だっただろう、僕はできる事なんてなくてただ泣きわめきながら野犬に助けを願うだけで、そんな願いを野犬がかなえる訳なく、僕は野犬に食い殺されるはずだった
だけど、この時、僕に2度目の人生の変化が訪れたのだ、訪れるはずだった痛みはいつまでも訪れず、代わりに僕の耳に届いたのは、優しく慈愛に満ちた声で
「初めましてご主人様、この様な場所でのご挨拶となり申し訳ありません、私はノア、貴方様を迎えに来ました」
そう言って彼女、ノアはまるで貴重品を扱うかのように優しく僕を抱きしめてくれた、その温かさに包まれて気づけば僕は意識を失っていたのだった
夢を見た、それは僕が村から追放された時の事、夜の森で野犬に襲われる少し前の記憶
この日村の教会には僕を含めて10歳になる子供が集まっていた
10歳になると、村の教会で精霊から適正職が伝えられ、その職にあった仕事に就くのが村での当たり前だった
周りの子供達が一喜一憂しながら職が告げられていく、中には自分の職が嫌で泣き出す子供もいる
臆病な子供でも、剣士や、格闘家等の職が割り当てられれば、その職に就くために明日から戦闘の訓練を受けなければいけない、それが嫌で泣いているのだろう
「それでは最後にレオ、こちらに来てください」
神父様が優しく僕を呼ぶと皆の視線が自分に集まった気がする、それも当然なのかもしれない、僕の父親は官僚系のジョブの中でも最上位である〈宰相〉だし、母親は魔法系の上位職〈アークメイジ〉、姉であるリナは魔法系最上位〈マギ〉だ、僕のジョブが期待されないわけがない
「それではレオ、このオーブを胸に抱いて祈ってください、そうすれば精霊様は貴方にジョブを与えてくれるでしょう」
神父様の言葉に頷き、僕はオーブと呼ばれる綺麗な石を握り祈る、暖かなその石がほのかに光ったと思うと、パリンという音と共に砕けて、割れた欠片はそのまま空気に消えていった
「成功したようですね、それでは貴方のジョブを確認しますいいですね?」
僕は神父様に頷きを返し、神父様は【アナライズ】と小さく呟くと、神父様のかけているモノクルが光る、少しの間無言で僕を眺めていた神父様だが「ふむ、いやだが」と小さく呟き僅かに逡巡した後に僕を見つめ
「レオ、これから言う事は貴方にとってショックな事でしょうが、決して取り乱してはいけませんよ?」と僕の頭を撫でながら言う、そんな神父様を見て、僕や周りの子供達は異常を察して誰もしゃべらず神父様の次の言葉を待つ
「貴方は〈職無し〉です」
神父様の言葉に誰かが息を飲む音が響く、本来なら小さな音だっただろう、その音は静かだったこの空間では思った以上に響き、僕は頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けた
職無し、その意味は言葉が示す通り、なんの職も与えられなかったという事だ、その言葉に誰もが息を飲み、僕は両足から力が抜けてその場に崩れ落ちた
そんな僕達を見て神父様は全員を見渡し
「貴方達も知っての通り、〈職無し〉という事は決して悪い事ではありません、精霊様も〈職無し〉の事は認めています、決して彼に対して差別等を行ってはいけませんよ、それは精霊様の御心に反します」
神父様の言葉に誰も反論する事無く、それどころか仲の良かった子供達が僕の所に駆け寄り、慰めてくれた、それ以外の僕とあまり付き合いのない子達も決して僕を馬鹿にすることなく、心配そうな目を向けてくれる
そんな僕等を見て、神父様は深く息を吐いて一人一人の頭を撫でて褒めてから、改めて僕の元へと戻ってきて
「これよりレオの家に向かい、貴方の家族にも貴方が〈職無し〉だったという事を報告します、立てますかレオ?」
神父様は膝をついて僕と目線を合わせて心配そうに見つめてくるが、結局僕が立てたのはそれから5分以上経ってからだった、その間、神父様も、友達も僕を慰める為にずっと周りにいてくれた
僕が落ち着いたのを感じ取った神父様は僕の手を取って立たせる、気が付けば僕を心配して残ってくれた子供以外は全員が教会から家に帰り、僕を心配して残ってくれた子供達も神父様に促されて教会から出ていく
「いいですか、レオ、ご両親は貴方に怒るかもしれません、ですが、決して〈職無し〉と言うのは悪い事ではないのです、貴方のご両親も今は混乱しているかもしれませんが、すぐに落ち着いて今までの優しいご両親に戻るはずです、いいですね?」
神父様の言葉に僕はただ頷く事しか出来なかった、果たして家族は職を得られなかった僕にどんな感情を抱くのだろうか……
「大丈夫ですよ、最初はご両親もびっくりするかもしれませんがすぐに落ち着きます、〈職無し〉は悪い事ではないですからね、歴史書にも偉大な功績を残した英雄が何人も〈職無し〉だったと書かれています、だからそんなに心配する必要はありませんよ」
神父様が僕の手を繋ぎながら優しく諭してくれる、その言葉を聞くうちにだんだんと不安だった気持ちが薄くなっていくのがわかる
「ありがとうございます、神父様」
僕が神父様の手を強く握ると、神父様は何も言わずに頭を撫でてくれる、そうこうするうちに見慣れた家が僕の目に映ると、ドアの前に人が立っているのが見えた
「おや、リナさんですね、ふふ、レオ君が帰ってくるのが遅くて心配で家の前まで出てきてしまったのでしょうか?優しいお姉ちゃんですね」
神父様の言葉に目を凝らすのと、リナ姉さんが僕を見つけるのは同時だったようで、僕を見つけたリナ姉さんは魔法によって身体能力を上げると、勢いよく僕に抱き着き、抱き上げた
「おかえりレオ、遅かったね、何かあったの?神父様に何かされたの?処す?」
僕を抱き上げているうちに謎のテンションになったリナ姉さんが神父様に向けてハイライトの消えた目を向けている、もしここで僕が下手な事を言ったなら神父様の命は失われるだろう
「神父様は悪くないよ、僕がちょっとショック受ける事があって……」
「そっかー、それでレオを落ち込ませたのはどこの子?ちょっとお姉ちゃん話をしたいなーなんてね」
リナ姉さんは笑顔で僕を見る、ただその笑顔が酷く歪な気がするのは僕の気のせいだろうか
「落ち着きなさい、リナさん、貴方が落ち着かないと話が進みません」
神父様がリナ姉さんを落ち着かせようとするが、リナ姉さんは笑顔で神父様を見つめる、ただ、リナ姉さんが纏う雰囲気と言うのだろうかなんだか酷く不穏なオーラを纏っている気がする
「はぁ、いいですかリナさん、これから言う事はレオ君の将来に関わる事です、それも非常に重要な話です、ですが貴方が今の調子では話す事はできません」
神父様が真剣な目でリナ姉さんを見ると、姉さんも何かを察したのか、深く何度か深呼吸をした後に、僕を抱きしめなおして神父様の言葉を待つ
「レオ君ですが〈職無し〉です」
神父様は短くそれだけを言うと、リナ姉さんの反応を待つ、僕を抱くリナ姉さんの力が強くなり、全身が強く震えているのがわかる、僕はリナ姉さんの今の心境はどんなものなのだろうかと考える
確かに神父様が言う通り、職無しは罪ではない、だが決して好まれるものではないのは事実だ、まして両親は自分達が恵まれたジョブである事を誇りにもっているし、そんな両親に育てられた以上僕達もジョブという物を絶対視している
「……間違いではないのですか?」
姉の短い言葉に神父様はこくりと頷くことで答えた、この時僕は初めてリナ姉さんが僕の事を見捨てるのではないだろうかと言う感情を持った
この優しい姉は無条件でどんな時も自分の味方でいてくれる、そう思っていた、だけど、本当にそうなのだろうか、〈マギ〉というジョブについた姉からすれば職を得られなかった僕は……出来損ないに思えるのではないだろうか
僕が姉の顔を見るよりも早く、姉は僕を地面に下ろすと、僕の顔を両手で挟み、自分の方に固定すると
「待っててね、お姉ちゃんが精霊界に殴りこんで精霊にレオにぴったりの職を与えるようにめいr、ごほん、お願いしてくるから、さすがのお姉ちゃんも今すぐには無理だから5年、5年だけ待って、絶対に5年後にはお姉ちゃんがレオを〈ブレイバー〉や〈バトルマスター〉何だったら〈エンペラー〉にしてあげるからね!」
僕に語り掛けるリナ姉さんの声はどこまでも優しかったけど、その目は暗く、どこまでも吸い込まれそうないだった
この時僕の胸中に宿った思いは、リナ姉さんが僕の味方になってくれた安心感等ではなく恐怖だった
僕がガタガタ震えていると、神父様がコホンと咳払いをした後に、リナ姉さんに落ち着きなさいと言った後に
「落ち着いてくださいと言ったはずです、それにリナさんはレオ君を馬鹿にしているのですか?」
神父様の言葉に首だけをグリンと神父様に向けるリナ姉さん、僕は思わず、ひぃっと悲鳴を上げるが神父様はリナ姉さんを見つめたまま動揺する事無く対峙していた
「どういうことです、神父様、いくら神父様と言っても、あまり適当な事を言われては困ります、思わず魔法を放ってしまいそうです」
リナ姉さんが神父様に手を向けるが、神父様は動じることなく、本当にそうですか?と逆に聞き返し
「貴方の行動は、〈職無し〉であるレオ君は価値が低いと言っているようなものです、だから彼に職をつけようとしているのでしょう?それは今のレオ君を馬鹿にしているという事です、違いますか?」
神父様の言葉にリナ姉さんは思う所があったのか向けていた手を下ろし、僕を抱きしめる
「……確かにそう思っていた部分がなかったとは言いませんですが、私はともかく恐らく両親は絶対にレオが〈職無し〉という事を好みませんよ?」
リナ姉さんの言葉に僕はショックを受けるが同時に納得もする、あの両親はリナ姉さんの様に優しくはないだろう
「そこで貴方に協力してほしいのです、私はレオ君が努力家である事を知っています、だからレオ君なら他の子に負けないくらい、なんだってできる子になるでしょう、ですがその前に貴方の両親がショックのあまりレオ君に何かするかもしれません、そうならない様にリナさんにはレオ君を見守っていてほしいのです」
ジョブがないからと言ってスキルを覚えられないわけではない、ただジョブと密接な関係にあるスキルの方が成長が早いのだ
だからこそ、この国ではジョブに合わせてスキルを覚えて、それを生かして生きる事を決められているのだ
「逆に言えばレオ君は、特定の生き方に縛られずに自分で生き方を決める事が出来るという事です、ただ、そうなるまでに他の人よりも時間がかかるでしょう、その日までリナさんが味方でいてほしいのです」
神父様の言葉にリナ姉さんは難しい顔をした後に、頷き、わかりましたと言い
「ですが、両親を納得させられるかわかりません……こんな事言いたくありませんが、あの二人ならレオを家の恥だとして殺してもおかしくありません」
リナ姉さんの言葉に神父様は頷いて
「その時は私がレオ君を預かりましょう、何、レオ君一人成人するまで育てるくらいのあてはありますよ、だからその時は遠慮なく私を頼ってください」
神父様の言葉を聞いて、ふと目元に指先で触れると、その指先が濡れているのに気付いた、僕は気づかないうちに泣いていたみたいだ
「大丈夫ですよレオ君、最悪この国から離れてもいいのですから、隣国はこの国ほどジョブ至上主義ではありません、だから君は何も泣く事はないんですよ」
「そうですよ、レオ、仮にレオがこの国を出ていくときは姉さんも一緒に付いて行ってあげますからね、二人で過酷な旅に出ましょう、そしてその旅で二人は強い絆で結ばれるんです」
二人の言葉に僕は頷き、気づけば笑みを浮かべられるくらいの余裕が心に生まれていた
だからきっとこの後の母の行動を防げなかったのだと思う
神父様とリナ姉さまに連れられて家に帰った僕に両親は強いショックを受けたていたし弟は僕を罵倒し、家族であることが恥ずかしいと怒鳴りつけてきた、それでも神父様の言葉で冷静になってくれた
と僕は思い込んでいた、母親が力無く僕に倒れこんで泣いていた時にも、申し訳なさこそ抱いたものの警戒心は一切なかった、だから母親が魔法を使った時も反応出来なかった
最初に反応したのはリナ姉さんで母親を僕の体から突き飛ばした、次に神父様が僕の体に触れようと手を伸ばし、僕も異常を感じて神父様の手を取る為に手を伸ばしたが
その手は繋がる事なく、僕は夜の森に放り出された
ふと自分の頭を撫でる優しい手に気付き、僕は目を覚ました、こんな風に優しく僕を起こしてくれたのはいつもリナ姉さんだっただから、いつものように、その手を掴んで少しだけ抗議をしようと目を開けて……
目を覚ました先にいたのは姉さんではなく、オークだった
「うわあああああああああああああ?!」
僕の悲鳴に目の前のオークも吃驚したのか、後ろに一歩距離を取る、その隙に僕はベットの端まで下がり距離を取り、武器になりそうな物を探し
「どうしましたご主人様?」そこで寝る前に最後に見た女性が現れた、僕は思わず、素手のままオークに飛びかかる
「逃げてお姉さん!オークがここにいるんだ」
その時の僕は自分の命に代えてもオークから命の恩人である女性を逃がすつもりだった、まさかこの行動を生涯武勇伝として語られるなんてまったく思わなかった
きょとんとした表情を浮かべる二人、この時オークまできょとんとした表情を浮かべている事に気づくべきだったのだが、僕の頭の中では、オーク=女性を襲うモンスターだった、だから彼女が困ったような笑みを浮かべる意味が分からなかった
「ご主人様、庇っていただけるのは嬉しいのですが、こちらのオークは私の部下ですから私に襲い掛かったりしませんよ?」
僕がお姉さんの言葉で冷静さを少し取り戻して下を見ると、オークは僕を見ながら静かにこちらを見つめていた、オークの表情を理解できない僕でもわかる程度には困った雰囲気を出しながらそれどころか、僕が自分の体から落ちて怪我しない様に支えているようにすら見える
「えっと、え?でもオークですよね?」
「ええ、オークですが、何か問題がございますか?もしかして小さい頃にオークに何か怖い思いをさせられたとかでしょうか?」
お姉さんが本気で僕の言っている事を理解できないという表情をしているので僕は思い切って自分の持っているオークのイメージを話す
「オークって人間の女性を浚って繁殖するモンスターだって聞いていました、僕はあったことがないですけど、小さな開拓村なんかはオークの襲撃を受けて壊滅したり、浚われた女性がひどい目に合うって……」
僕が話し終わると、隣にいたオークがお姉さんの方に行き、少し見つめあったかと思うと、お姉さんはオークに「許可します」と一言告げる
それを聞いたオークは早足に部屋から出ていき、残された僕が首を捻っているとお姉さんが僕の様子に気付き
「元々オークは女性を襲ったりする生き物ではないのです、むしろ、命令された事を忠実に守る事を是とする存在なので、本能のままに生きる元同族に我慢ならないのです、なので野生のオークを根絶やしにする許可を求めてきたので、生態系に悪影響を与えない様に配慮した上での根絶やしを許可しました」
僕が自分の知っているオークとのあまりの違いに混乱していると、お姉さんは僕の肩に手を置き
「まずは食事にしましょう、昨晩は食事する事無くお眠りになられていますし、お腹空かれているのではないですか?」
そう言われて僕は初めて自分が空腹である事に気づく、寝起きにショッキングな光景を見たせいで今まで気づかなかったみたいだ
「食堂までご案内します、それから、私の事はノアとお呼びください、ご主人様」
ノアさん?と僕が疑問形で呼ぶと「呼び捨てでお願いします」と訂正される
「わかったよノア……なんだか恥ずかしいね」と僕が彼女を呼び捨てにすると、ノアはその整った顔を一瞬歪める
僕が自分が何かを間違ったのかとノアに尋ねようとすると、それを遮るようにノアは「失礼」と言い
「久しぶりにご主人様を得る事が出来たのだという歓喜に打ち震えてしまいました、失礼いたしました」
と深々と頭を下げて僕に謝ってくる、これに慌てたのは僕だ、自分よりも年上の女性に頭を下げて謝られるなんて経験は今までしたことがないのだから
「そんな頭を上げてください、それにどうして僕がご主人様なんですか?!」
「それに関しては長い話になってしまうので、食後に詳しくお話させていただきたいと思っていますが、簡単に説明するなら、〈職無し〉である事、これこそが私達がご主人様と呼ぶ条件なのです」
そう言ってノアは僕の手を改めて引いて食堂へと向かう、そこで僕は〈職無し〉とはなぜ生まれるのか、そもそも職とはなんなのかをノアの口から聞くことになるのだった
職無し、職無しって書いててきつかtt