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高度救命救急センターの憂鬱 Spinoff   作者: さかき原枝都は
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1.メスを握る二人の魔女

「ねぇ、優華ちゃん。また大きくなったんじゃないこのおっぱい。羨ましいなぁ」

「ふん。ワンサイズアップしただけよ」

「羨ましいなぁまだ成長期なんだ」

「成長期?もうそんな年じゃないでしょお互いに」

「年の事は言いうな。私はまだ若い………つもりだ」

「何言ってるの、もうじき私達次の段階の年に入るじゃない。あ、貴方はもう入っていたわね」

「言うな、それを言ってしまったら私の人生は………」

「終わる訳ないでしょ。メスを握るのが終わる事は私達にはないのよ」


「あのぉ………よ。宜しいですか?」


おずおずとこの二人の間に割って入ろうとするこの私、笹山歩佳なのです。


姉とは言っても職場では上司であり私達の指導医である立場にあるから、節度をわきまえて………わきまえてほしいのはこの二人の方なんだが………

「どうしたの歩佳先生」

奥村先生がいつもと変わらない口調で訊く。ちょっと冷たくも感じるその口調。だいぶ慣れて来たけど、姉さんはどうしてこんなにも奥村先生と仲がいいんだろう。姉さんの性格から見ても合うタイプじゃないと思うんだけど。


「あ、いえ、こちらの報告書とレポートの提出なんですけど」

「ああ、それねそこのディスクに置いといて、あとで目を通しておくから」

「はい………」

「まだ何か?」

「あ、いえ………実は私用要件なんですけど。母が、お母さんがたまには家に帰ってくるようにと………その、姉さんに」

「また、その事か。行けば行ったでまたお互い嫌な思いをするだけだろ。年に2回は顔を出しているんだからそれでいいだろ。それに明日のオフは優華と温泉に行く事になっているんだ。温泉と言っても都内のスパだけどな」

「温泉………ですか、いいですね」

「中に確かエステも入っていたな。肌に磨きをかけんとな、それに疲れも溜まっているし………ああ」

「肌に磨きね。そうね何か手を加えないと私達はくすむだけ。歩佳先生の頃が羨ましいくらいよ」

「そんな奥村先生の方がずっとお若いですよ」

「そんなこと言っても点数には加算されなくてよ」

「ははは、最もだ。私には効くかもしれないが、優華には全くの無意味な事だ」

まったく、姉だったらそこは何とか引き上げてくれてもいいんじゃないの?そんなことを心の中で叫んでいたら

「そう言えば明日は歩佳先生も日中はオフよね。課外授業で私達に付き合わない?」

奥村先生が意味ありげに私を誘う………うーーこの二人と温泉?何か物凄くヤバい気がするんだけど。でも断ることは出来なそう………

あの無表情に言う奥村先生に『いけません』という言葉は出せなかった。


結局次の日私達は都内のスパで温泉に浸かっている。

しかし、奥村先生のバストはすごい。F?G?それなのにだらーーんと垂れ下がった感がまったくない。むしろ姉さんの方が少し垂れてきている。

しかもあのスタイルの良さ

何かトレーニングでもしているんだろうか?

「奥村先生、何かスポーツでもされていますか?」

「どうして?」

「だって体のライン物凄く綺麗なんですもの」

「ちょっと、たまにジムに通っている程度よ。でも大きなオペに入ると5キロは一気に体重落ちるけど」

「はぁー5キロですか………」

「そうだ、オペは体力勝負、そして精神力勝負だからな。もっとも外科医はアスリートと同じだ。平静を保ちながら極限の体力と精神力が物を言うからな」

うーー、そんな事を言われてもこの二人は特別なんだ。

この二人は魔女だ。

外科医の仮面をかぶった魔女。その魔女が日夜メスを握っているんだ。

「歩佳、時期にお前もそうなるさ」

ならない、ならない………私はあなた達みたいな魔女にはならない………つもりだ。でも指導医が魔女なら私も魔女の養成指導を受けている事になる?

あーーやっぱりわからん。頭に血が上がる、のぼせてしまいそうだ。

お湯から上がり、冷たいシャワーを頭からかけ頭を冷やしていると、後ろから胸をわしづかみにして

「歩佳、お前もまた大きくなったじゃん」

後ろから聞える姉さんの声とまだ揉まれている私の胸。

「あのね。いい還元にして。いくら指導医でも、姉でもお互いもう大人なんだからやめてよ」

「あ、怒ったごめんごめん」とシラを切るように離れていく姉さん。

まったくもう……やっぱりこの二人にはついてくるべきではなかった。

その後、姉さんが後ろからぼっそりとした声で言った。

「優華、支えてやってくれ。お前の出来る範囲でいいから」

何のことかは解らなかったけど、あの姉さんにしては真剣な重い言葉に聞こえた。


そしてこの後、私達は事件に巻き込まれることとなる。

メスを握る魔女二人と共に………



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