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悪意の賢者

「……敵は突破を警戒しているように見えますな」


ガーカ軍中央、馬上から戦場を眺めるガーカに副官ダルケリスは告げる。

左翼アルベリネアは凄まじい快進撃を見せた。

僅か半刻で敵右翼、巨人エルカールの軍を完全撃破。


アルベリネアは真正面からあれを抜くと豪語していた。

確かに魔力保有者による投槍兵で象兵を打ち破るという発想は中々のもので、ダルケリス達にも納得が出来るものではあったが――しかしあまりにも早い。


ダルケリスは完全突破には二刻、三刻掛かるだろうと想定していたし、他のものにしてもそうだろう。

エルカールを抜きに掛かれば、必ず敵将オールガンがそれを防ぐために動く。

だが、アルベリネアはオールガンが援護を回す隙も与えず、敵将エルカールを討ち取ることでこれを完全突破、倍の敵を崩壊させたのだ。

想像を絶する突破劇と言っていいだろう。


内戦を潜り抜けた兵や麾下の軍団長の実力もあるが、一番の理由は敵戦列を切り裂く巨人であろう。

ジャレィア=ガシェア――ダグレーンとダルケリスにのみ教えられていたアルベリネアの秘密兵器。

その威力の凄まじさはこれまでの常識をひっくり返すに足るものであった。


状況はまさに、彼女の宣言通り。

敵本陣対アルベリネア軍、キルレア軍対ガーカ軍という形に変化している。

しかし眼前――キルレアにも油断はない。

ガーカ軍の突破があり得ると見てこの正面に厚みを出してきていた。


「やはり何かを感じているだろう。オールガンはあれで中々慎重派な男であるし、キルレアも同様」


ダグレーンはこちらの右翼後方に目を向ける。

こちらの翼端を迂回するべく動かされていた敵がまた、一部後退を始めていた。


キルレアは短期決戦を当初考えていた。

約二万の兵力による後方圧迫――ダグレーンを即座に押し潰すつもりだったのだろう。

しかし初動、戦象によるアルベリネア軍壊乱というシナリオが崩れ落ちるのを見て、キルレアはすぐさま迂回戦力を防衛のために引き抜いた。

――慎重派。

キルレアは果断なエルカールとは真逆の性質の男であった。

エルカールであれば恐らく、迂回戦力を増やし、こちらの即時壊滅を狙っただろう。


「ただキルレアは少し心配性に過ぎるところが弱みであるな」


ダグレーンは右翼後方に一軍団、5000の予備を迂回阻止のために置いた。

2万の迂回に対して5000――あまりに少ないとキルレアは感じただろう。

だからキルレアはそれを深読みし、そして初動失敗の時点ですぐさま迂回兵力を引き戻した。

こちらの狙いが全力での中央突破にあると考えたためだ。


ダグレーンは一度キルレアとは戦った。

その一度で、キルレアという将軍の性格を理解している。

だからこそ迂回阻止には5000のみ――相手が深読みすることを想定し、最小限の兵力で対応したのだ。


この状況、キルレアの最善手はむしろ迂回戦力を増やすこと。

ダグレーンは2万の迂回に対する防御策など持ち合わせてはいないし、初動から敵戦列を突破するつもりもなかった。

真っ向から象を打ち破ったアルベリネア軍と比べ、ガーカ軍とキルレア軍にはあちらほどの士気差はない。

矢の応酬も激しく、敵戦列突破には多くの犠牲と時間を要する。

無理をすれば一点突破は可能ではあったが、その突破によってキルレアを討つ前に、向こうがこちらの包囲を完成させることも可能だっただろう。

だがこの段階で敵は包囲の目途が立っていない。


――その時点で、既にキルレアは負けている。


「敵本陣がアルベリネアの軍に動き始めた。そろそろ準備を始めるぞ」

「は。実際の所、どれほどの威力があるかは分かりかねますが……」

「敵は元々浮き足立っているのだ。多少驚かせてくれれば十分」


ダグレーンは敵中央の本陣――オールガンの乗る象に目をやる。


「……むしろ、これはそもそもわしの戦。その方が楽しめるというものだ」


そしてダグレーンは頬を吊り上げた。










「……エルカール」


右翼の壊滅――キルレア本陣にも動揺は広がっていた。

なんとか逃げ延びているのではないか、というキルレアの期待も空しく、本陣からの伝令にエルカールの死を伝えられ、キルレアは目頭を押さえる。


前方で戦列を組む指揮官達には、エルカールは敵の猛攻を何とか切り抜け、オールガンと合流し生存していると伝えていた。

アルカザーリス、戦象、右翼の崩壊――兵士達にも状況は明らか。

この上、更に士気を下げる情報を彼等に伝える訳にもいかない。


「……あのエルカール様が討たれるとは」

「戦場にある限り、死はどんな豪傑にもあり得るものだ。……とはいえ、惜しい男を亡くした」


副官は困惑を浮かべ、キルレアは顔を上げると首を振る。

老いを感じさせる白髪混じり――縛った長髪を手に取り眺め、ナイフで切り落とす。

そしてその髪を風の吹くままにばらまいた。


「あの禿げ頭も見納めだな」


下らない遊びであった。

若くして頭髪の薄くなったエルカールをからかうため、見せつけるように伸ばした髪。


「……もう禿げ頭をからかうことも出来ん」


皺の寄った顔に更に深く皺を刻み、キルレアは苦笑する。


「キルレア様……」

「来世ではあいつが頭髪に恵まれることを祈るとしよう。……感傷に浸るのは後だ」


キルレアは象の上から左翼に目をやる。

ガーカの選択は左翼を先行させた斜線陣――必然、こちらの本陣と敵右翼の迂回を試みる左翼の間には長大な距離が生じている。

右翼の状況から敵の突破を懸念し迂回兵力から兵力を引き抜いたが、これがこちらに到達するまでには時間が掛かる。

――あまりにも状況が早く進みすぎていた。


右翼エルカールの全力突破。

向こうの狙いにいち早く気付いたキルレアは、即座に時間を要する迂回攻撃から兵を抜き、エルカールを助けるための予備兵力を作ろうとした。

ダグレーンに対し厚みを持たせるため兵力を引き抜いたというオールガン、ダグレーンの読みとは少し異なり、彼の行動は慎重さではなく、友の窮地を救うための果断な行動であった。


本陣前に厚みを持たせたという結果は、結果でしかない。

結果的に遊兵となってしまった増援をそこに用いただけ。

その増援が届く間もなく、エルカールの右翼が崩壊するなどキルレアも想像していなかったのだ。


「……この本陣予備を向かわせるべきだったか」

「あの状況では仕方ありません。それにその場合、ガーカはこちらの強引な突破を考えたかも」


この左翼本陣予備を動かさなかったのは、ガーカ軍がアルベリネア軍と連携、強引にここの突破を図ることを懸念したため。

ダグレーンが迂回阻止に5000の兵力しか割いていないという状況が、この左翼本陣予備への牽制となっており、どうあれ彼が深読みしたことには違いない。


しかし彼にはそれが深読みであったかどうかも定かではなかった。

半刻の間に目まぐるしく変わった状況。

どの選択が正しく、間違いであったのか。

それを精査する時間などどこにもない。


オールガンが今回連れてきた戦獅子長も、将軍も。

多くは厳しい内戦を潜り抜けた男達であった。

いずれも無能などは存在しなかったし、この決戦に臨んだ彼等はむしろ平均と比べて優秀と言える指揮官であったと言えるだろう。

考える余裕、状況を分析するための時間、それさえあれば彼等はその能力を存分に発揮したに違いない。


奪われたものは士気や優位、主導権だけではない。

――アルベリネアが奪ったのは、そんな彼等の時間であった。


分析、思考、決断。

それらに必要な時間の一切を奪ったのだ。


「キルレア様、本陣で予備が……ザルヴァーグ様です」

「……動いたか」


アルベリネア軍とオールガン本陣2万の戦いが始まる。

オールガンの本陣から翻るのは、双曲刀の描かれるザルヴァーグの旗であった。

突撃が噛み合うと同時に片翼を迂回し、敵将を狙う。

いつも通り変わることはなく――勝敗はザルヴァーグが敵の首を獲るか、アルベリネアが正面突破し、オールガンの首を獲るか。

単純にして明快であった。


「……過ぎた時間は戻らんな。副議長の命令はここの維持、ガーカを討つのは後回しにする。先ほど持って来た5000は現状維持とし、今戻している5000は副議長にお返ししよう。その増援に回す」

「は。伝令!」


元より、最左翼から迂回に用いられていた2万はオールガンの兵。

右翼で起きた混乱からは最も遠い場所に配置されていたため、彼等の士気はそこまで落ちてはいない。

現状でもオールガンは兵力優勢、エルカールの敗残兵もある。

ここに更に5000が加われば大きく優位となり得る状況。


伝令を走らせ情報を伝え――それがキルレアの油断であった。

失われていた時間をようやく取り戻せたと考えていた。

オールガン本陣とアルベリネア軍、そしてこのキルレア軍とガーカ軍、両方にある程度の膠着が生じるであろうと。

自分にも考える時間が生まれ、次の手を打てると。

兵力は今も優位、落ち着きさえすれば選択肢は無数にあると。


「っ!? キルレア様、あれを!!」


声を上げたのは象の上ではなく、地面に立つ護衛の一人であった。


「ん?」


一瞬、キルレアには何を示されているのかが分からなかった。

彼の指さす方向には異常がなく見える。

そもそも、象に乗って見えぬものに何故、馬にも跨がらぬ彼に見えたかが疑問であり、


「上です! 空を……っ!!」


そして、その疑問はすぐに氷解する。

城郭都市ナクリアの上空に、無数の影。


――それは大きな獣であった。

広げた翼を羽ばたかせ、戦場に飛来するのは三十騎。


「……グリフィン?」


見たことはなかった。

王国北方に生息するという、空を自在に舞う獣。


それが何故ここにと考え――すぐにどうでも良いと切り替えた。

重要なのは何故、このタイミングで現われたのか。

数は精々三十騎、大した数ではなかったが、しかし遠目にも確認出来たものがある。


グリフィンの背中には騎手らしき男と、黒塗り鎧の兵士がそれぞれ一人。

そしてその中に紛れた銀の髪――アルベリネアと黒き旗。


何故このタイミングで動いたのか。

決まっている。ザルヴァーグが、オールガンの本陣予備が本陣を離れたからだ。

高々三十騎、乗っているのは六十名。

しかしそれは恐らく、アルベリネアの最精鋭であり、


「――至急ここから副議長の本陣へ予備を向かわせろ!! 奴らの狙いは大将首だ!!」


――それを見た瞬間、キルレアは声を張り上げた。













『――つまり狙うのは敵本陣への降下奇襲、ということでしょうか?』


開戦前夜。

軍団長達は真剣な顔でクリシェの描いた『明日の予定』を眺めていた。

当初そこにあった怒りの感情はどこにもない。

敵右翼の完全突破――彼女の大言壮語はしかし、全くの無謀などではないのだ。

士気崩壊を起こさせ、真っ正面からの突破というのは強引であるが、十分考慮に値する必要条件をクリシェは備えていた。

事前にジャレィア=ガシェアを見せられていたダグレーン=ガーカ、副官ダルケリスの後押しもあり、ガーカ麾下の軍団長達は完全に感情を切り替え話を聞く。


そして何よりも、絶対の自信に満ちた少女の瞳。

その紫色が彼等にそれを強制させていたと言っていい。


外套で身を隠し、天幕に入ってきたヴィンスリール=シャラナ。

クレィシャラナ戦士長が彼女に向ける絶対的敬意もそれを保証するようだった。


『そうですね、これ単体の動きを大雑把に言うとそうなるでしょうか』

『大雑把には……?』


質問した軍団長は眉根を寄せた。

オールガン本陣との戦闘開始と同時、精鋭六十人による降下奇襲。

それ自体は悪くはないものであった。

懸念と言えば六十人という数字が、あまりに少数であること。

翠虎すら手懐けているクリシェの実力はともかく、空を飛ぶのであれば当然敵の視界には入る。

奇襲効果は減衰、更には敵弓兵による激しい射撃も予想される。


それに対し六十という数字はあまりに少なく見えたのだ。


『はい。最初に言った通りですよ、軍団長。各軍団長は大前提として、真正面突破を大前提に。クリシェの動きは奇襲ですが、これは別に敵本陣に直接奇襲すると言うわけではなく、あくまで突破の助攻』

『……助攻?』

『そうです。あなたたちの役目は変わりません。クリシェが考えているのは左翼と同じく、あなたたち右翼の敵正面突破』


軍団長を見渡して、クリシェは微笑む。


『要するにこの作戦は単純明快。敵十万に対する全面突破なのです――』





――地上に比べれば、ほんの少し冷たい風が吹いていた


「ふふん、敵の左翼からも予備が動きましたね。予想通りです」


戦場の上空――三十騎のグリフィンの先頭、ヴィンスリールの後ろ。

彼のグリフィン、リットグンドの腰に横乗りになりながらクリシェは微笑む。


敵左翼はオールガンの本陣へと予備兵力を向けていた。

敵は恐らく、このグリフィンが敵本陣への直接降下を目的としていると考えたのだ。

軍団長の反応と同じく、通常はそう考えるだろう。

高々三十騎――出来ることなどたかが知れていると考えるのが普通である。


そして戦場においては、その『当然』をひっくり返すのが将軍の役目――クリシェの役目であった。


自分の優位をそのままに、相手の優位をひっくり返してぶちまける。

時間を奪って混乱させ、相手に何もさせないまま殺してやる。

戦いは単純明快、それだけだった。


「進路は?」

「大きな旗のあるところ……ガーカ将軍の真正面の戦列を狙います。細かい指示はまた出しますので適当に」

「は」


ヴィンスリールは答え、後続へ向けて槍を掲げた。

そしてそれを動かし合図を出す。


クリシェは満足げに頷き、後方に目をやる。

青い顔をしたミアに視線を向け、眉を顰めた。


「ミア、あなたが志願したんですよ? 副官なんですからもっとしっかりしてください」

「わ、わかってます……」

「心配しなくてもいきなり落ちたりしませんよ。矢だって届きませんし」


別にミアも空の同行を心から望んだわけではない。

真正面から敵右翼を抜くあちらには、実力あるアレハが良いと考えただけ。

コルキスとベーギルをミアが補佐するより、アレハの方がずっと活躍出来ると思い、そのように提案しただけだ。

こちらにはクリシェがいるため、どのような実力者が現われても不安など全くない。

アレハは過剰でミアが適当、そういう訳だった。


「まーまーうさちゃん、ミアはあたしと離れるのが嫌で付いてきたんだよね。はー、モテる女は辛いなぁ」

「うるさい馬鹿っ、カルアなんか落っこちればいいの!」


ミアは言いながら眼下に目を向け、慌てて視線を逸らす。

崖の降下訓練は散々やったが、足場もない空中というのはやはり足が竦む。

当然グリフィンの後ろに乗る訓練は何度も繰り返したが、一人訓練中に落下し、足の骨を折ったのがトラウマとなっていた。


幸い比較的低い位置での落下であったため骨折で済んだが、とはいえこの高さ。

落ちればどう考えても即死は免れない。


「まぁ、なんでもいいですけれど。お馬鹿なミスはしないように」

「りょ……了解です」

「ははは、まぁこの高さなら逆に安心ですよ。仮に落っことしても拾いに行ける余裕がある」


ミアを乗せた男が西部共通語で告げる。

使者の役割を兼ねていただけあって、彼等にも平地の言葉を知る者は多い。


「しかしこうして、戦場であなたのような美女を後ろに乗せることがあるとは。遠慮せず抱きついてくれても良いですよ、副官殿」

「ベーグさん、ミアじゃ胸の感触は楽しめないと思うよ?」

「……カルア、後で覚えておいて」


それを聞いていたヴィンスリールは苦笑し、彼に告げる。


「ベーグ、戦場だ。笑いを取るのは良いが、気を抜くのは終わってからにしろ」

「は、戦士長!」


クリシェは背後に視線を向け、目を細めた。

ここにいるのは黒旗特務でも古参――内戦を戦い抜いた兵士達。

緊張は多少あっても問題はなさそうに見え、クレィシャラナの戦士達も同様だった。


「みんなそこまで緊張してはいなさそうですね」

「皆、翠虎狩り参加の経験がある戦士達です。戦場というものは知らずとも、戦いは知っていますから」


クリシェの言葉にヴィンスリールは答え、続けた。


「とはいえ、不慣れな環境であることは事実。言ったように、空気に慣れるまで多少の時間は頂きたい」

「そうですね。降下後は適当に。くろふよの援護で十分です。あまり無理はしないでください、リラも心配してましたし」

「ありがたく」


空を飛ぶグリフィンの速度は逆風でなければ翠虎の全力疾走に近い。

目的地――敵左翼キルレア軍の中央まではすぐのことだった。


「高度はこのまま。風があります。北に三間ほど移動を」


クリシェは眼下に目をやり、そこに流れる僅かな魔力の流れから風の動きを読み取り指示を出す。

キルレア軍の戦列真上ではなく、どちらかといえばガーカ軍中央前衛の上だった。


下から敵兵達がこちらを見上げ、何かを叫び、そして無意味な矢を放つ姿が見えた。

基本的によほど近づかなければグリフィンに対し、矢の如きは効力射になどなりはしない。

肩高五尺の体躯に人を二人乗せて飛ぶのだ。

グリフィンがその翼で生み出すは暴風――重さのない矢など風にはじき返される。

警戒すべきは魔力保有者による投槍であったが、頭上に向けて威力ある投槍を放てる者はそういない。

複雑な地形の山ならばともかく、平原の空を飛ぶグリフィンはそもそもが無敵の存在であった。


多少の間隔を空け、グリフィンは空中で二列縦隊。

戦列に対して並行に配置させ、クリシェは満足げに微笑む。

半径一里に漂う風の流れ全てをその紫の瞳は捉えていた。


「ミア、合図」

「はい。――総員、投下準備!」


一斉に兵士達が触れるのはグリフィンの脇腹。

本来投げ槍を収める場所に取り付けられた長方形の木箱であった。


片側十個、拳大の黒く丸い球体が収められ、上部に覗くは魔水晶の煌めき。

その中から各々が魔水晶を取りだし、掲げる。

それを確認したミアは、再びクリシェに目を向けた。


眼下を眺め続けるクリシェの左手――指が五本。


「五! 四――」


それが折りたたまれていくのを見ながら、ミアは叫ぶように告げ、


「――零! 投下開始!」


言葉と同時、一斉に木箱の開かれる音。


「点火!」


その合図と共に、彼女らの手の中にある魔水晶は輝きを放ち。

そこからばらまかれる何かからもまた、魔水晶の青い明滅が繰り返された。

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作者X(旧Twitter)

  2024年11月20日、第二巻発売決定! 
表紙絵
― 新着の感想 ―
ば、爆撃!?!? てか、この文明レペルの戦争において空を制するのって普通に反則レベルだよなぁ...。 グリフィンの飛行構造を理解したクリシェが飛行型じゃらがしゃ(カミカゼ特攻もあるよっ)を生み出す未来…
爆撃!?
………点火? 爆撃か!?
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