第七話 『過去へ』
2198年
~特務機関SNK 開発ルームC
リンダの後頭部にはコリンスの銃が突き当てられている。
「しつこいわね。
女の子に嫌われるタイプでしょ?」
「そうでもありませんよ。
尽くすタイプですから。」
「そうね。
人の帰りをジっと待ってるんですからね。
尽くす相手は司令かしら?」
「私は命令を実行するだけです。
直ちに装置を破壊させていただきます。」
「あら?
靴に毛虫がついてるわよ?」
「え?」
フワッ
リンダは飛び上がった。
クルッ
リンダは体をひねる。
「ハァッッ!!!」
リンダの回し跳び蹴りはコリンスの横っ面に命中した。
「グァ!!!」
ドンッ
コリンスは頭から壁に激突する。
「・・ふぅ。コンピューターオタクなめないでよね。」
タッタッタ・・
リンダは時空転送装置のある場所へと走っていった。
「ぐぅ・・お、のれ・・・」
コリンスは立ち上がり、銃を構える。
「止まれ!コールフィールド三佐!
動けば後頭部に穴が開くぞ!」
バシュッ!
「キャ!?」
リンダの足下に銃弾が打ち込まれ、リンダは足を止めた。
「よし。そのままだ。
おとなしくしてろよ?」
コリンスはゆっくりと後ろからリンダへと近づく。
「あら、必死なのね・・。
だったらもっと大勢で押し掛けてくれば、
こんな装置を破壊するなんて簡単なのに。
それとも何か理由でも?」
「内々に処理せよとのことだ。
あなたが装置の破壊を邪魔するようであれば直ちに消します。」
「あなた達もわたしと一緒に消されるようよ?」
「なに!?」
「この爆発は上層部の連中が装置の破壊のために仕掛けた
時限爆弾だもの。
施設そのものを破壊する気かもね・・」
「くだらないですね。
こんな装置ごときにそんなことをするわけがない。
爆発は火災が原因でしょう。」
「そう思いたいのね」
カラン
コリンスは手錠をリンダの足下に投げた。
「それを自分の手にしてください」
「!?・・・ごめんなさい。
わたし、そういうプレイは嫌いなの。」
「・・・。残念です。
失礼します。」
コリンスはリンダの後頭部に銃を突き付ける。
ドン!!!!!!!!!
「きゃっ!?」
「なに!?」
その時、また爆発が起こったのか、部屋の扉が爆風で吹き飛ぶ。
ガシャーン!!!!
ビーッビーッ
エマージェンシー
第二ゲートにて火災発生
第二フロア隊員は緊急避難せよ
繰り返す・・
「爆発がここまで来たか!?
・・・装置を破壊する手間が省けた。
あとはあなたさえ降伏すれば事は解決します。」
「それはできないわ。これは私の使命だもの。」
「もう悪あがきしても無駄です。
火の手はそこまで来ています。
放っておいてもこの部屋の装置は使えなくなるでしょう。
今さら装置を起動したところで何が出来るわけでもない。
あなたを必ず殺せという命令は下りていない。
ここから私と一緒に出れば、あなたの命は助けます。
・・・ご決断を。」
「・・・・・。」
ドンッ!!!ガシャーン!!
爆発の影響で部屋のガラスが割れる。
「早く!!
これでは共倒れだ!」
「あなた・・・。
悪い人じゃなかったのね。
ごめんなさい。」
そう言うとリンダは走り出した。
「やめろ!行っても無駄だ!
戻るんだ!!
コールフィールド三佐ぁぁーーーー!!!!!」
バシュッ!バシュッ!
コリンスはリンダを止めるように威嚇射撃をする。
「(まだ。まだ間に合う。
やらなきゃ。
今やらなきゃ。
私がやらなきゃ。
今ここに私がいられるのは、カルとおじいちゃんのおかげなんだもの。
早く!
もっと早く走って!
過去へ!
私が行かなきゃ!)」
バシュッ!!
「きゃっ!」
リンダは足を撃たれてうずくまる。
「戻るんだ!もう火の手が迫っている!
ここにいたら死ぬぞ!」
コリンスは少し離れたところから叫ぶ。
「うっ・・。痛っ・・・・。
(行かなきゃ。私が・・。)」
リンダは足を引きずって時空転送装置の操作盤に繋がる階段を登る。
ドーン!!!!!!!
爆発の影響で引火した部屋の中にあったコンピューターが爆発を起こす。
「くそ!戻れ!ここはもうダメだ!
コールフィールド三佐ぁぁーーーー!!」
リンダは時空転送装置の操作盤に辿り着く。
「(電源が絶たれる前に、起動しなきゃ・・。)」
カチッ
シュゴゴゴッ ゴッゴッゴ
ウィーウィーン ウィーン
装置が起動した。
「私を導いて。
伝説の勇者様の元へ・・・。」
カチャカチャカチャ
「お願い!間に合って!」
カチャカチャカチャ
ビービービー
エラー報告 エラー報告
質量オーバー
「質量オーバー!?
何よ!ダイエットしたばっかなのよ!
こうなったら質量制限解除!
転送レベル最大!」
カチャカチャカチャ
「早く!早く!」
ドンドンドン!
「おい!開けろ!」
コリンスが操作室の扉を叩く。
「こんなとこまで追ってこないでよ・・。
こっちはそれどこじゃないんだから・・。
あー。
こんなことならダイエットしとけば良かったわ。」
カチャカチャ
ドンドンドン!
「おい!もう時間がない!
早く出てこないと焼け死ぬぞ!」
「あと少し!」
カチャカチャ
ドンドンドン!
「コールフィールド三佐!!!」
「もーちょい!」
カチャカチャ
その時、
ズドォォォォォーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!
開発ルームに大爆発が起こった。
「キャーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
~第七話 『過去へ』終わり
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<次回予告>
人は誰しも宿命を持って産まれる
人は誰しも運命を選択する
与えられた限りある時間を何に使うのか
それを決断した時、使命が誕生する
次回『古文書』
青年よ今を改革させよ。さすれば未来も変化する