第十二話 『エヴィルボム』
~空賊本部-タケルの部屋
タケルは酒樽に座っている
「それでだ。ブロウ。
政府の動きっつーのは?」
ブロウはドアの横の壁に寄り掛かって立っている。
「まぁ待て。急いては事を仕損じる。
お前の国の言葉だ。」
ブロウはタバコをくわえ、火をつける。
「タケル。
エヴィルボムの正体を知っているか?」
「エヴィルボムか・・・。
この血なまぐさい世界のイントロダクションだろう?」
「そう。地球上の半分の生命が消え、緑の大地が消えた。
幻魔がもたらした史上最悪、最大規模の大爆発。
そして、この戦争の始まりを告げた。
・・・とされている。」
「違うっつーのか?」
「政府の発表ではそうなっているというだけの話しだ。
真実は常に隠ぺいされるものなのさ。」
「真実ねー。何が真実なんだか。
目の前にいる胸くそ悪い奴を斬る。
それが俺にとっての唯一の真実だ。」
「俺は事実しか信じない人間なんでな。
あらゆる情報通と接触してるのさ。
その中に連邦政府の極秘機関の幹部をゆすってる奴がいてな
そのネタが世界が震撼する事実だった。
まぁそん時の俺には関係のないネタだったんだがな」
「エヴィルボムを仕掛けたのは政府か・・・」
「というわけだな。」
「幻魔を倒すためか・・」
「さぁ?
幻魔の壊滅という大義を掲げ、
何かを抹消することが目的だったのかもしれんな。」
「何か?」
「例えば・・・人類」
「・・・」
「あるいは・・・過去か・・」
「何れにせよ。
俺らにとっては、幻魔も政府も敵だ。」
「なるほどな。
だが、考え無しに目の前の敵をぶった斬ってるだけじゃ
何も変わらんぞ」
「じゃあ誰を斬ればいい?」
「まずはお前の目的を聞こう」
「新政府だ。」
「幻魔も政府も叩きのめして治安を築くか。
レジスタンスらしいな。
戦争を終わらせるための戦争。
そしてクーデター。」
「テメー、何が言いたいんだ?
回りくどいのは性に合わねー。直球で話せよ。」
「タケル。お前の力は認める。お前は強い。
だが、事実を知らなすぎる。
空賊は治安を守るのには一役買っているが
政府を叩くには小さすぎる。
兵力も資金力も足りない。
今のままではお前の大切な仲間を失っていくだけだ」
「そいつぁご苦労な分析だ。
百も承知の上で空賊やってらー。
んで、参謀さんよ。どうすりゃいいってんだ?」
「まぁ慌てるな。
目の前にある問題は
連邦政府が再びエヴィルボムを引き起こす可能性がある
という話しだ。」
「なに!?本当か!?」
「おそらくな。
エヴィルボムは政府の兵器が生んだ結果だ。
そしてまた新兵器を開発しているという噂がある」
「そいつが使われたらジエンドってわけか・・・」
「ああ。幻魔は壊滅。
そして人類もな・・・」
「そんなことをする必要が政府にあるってのか?」
「常識が求める必要性だけで世界が動いてると思うか?」
「分かった。
まずはそいつを何とかしろってことだな」
「ああ。戦略にはプライオリティをつけないとな」
「んじゃ、その兵器を壊す」
「・・・ふっ・・そりゃ傑作な戦略だ。」
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~空賊本部司令室前
アールツーは配電盤の修理をしている
そこへタケルが近づく
「アル。何やってんだ?」
ガガガガ・・
「ワオ。タケル。
イマ、ネット回線のシュウリ中。」
「そう言えば、このあたりの磁場の影響で
電波が飛ばなくなったとか言ってたな」
「キューシキのネットを組んだ。
これでお昼ご飯のオシラセがみんなに届きマス」
「お前の重要連絡はソレか。」
「デキタ。繋げる。」
ピーッガガッガガ・・・ピーッガッ・・
「なんだ?スピーカーから音楽が・・・」
「コレ。タケルのウタ。」
「あ、ほんとだ。
昔作った曲だな。なんでこんなもんが?」
「ダレかがキューシキの無線でストリーミングしてる。」
「誰が、んなこと・・・」
「オンガクのナカに変なシグナルが混在してマス」
「シグナル?」
「ナニかのアンゴウ。メッセージ。ワカラナイ」
「まぁいい。
それより、ブロウとの話しを聞いたか?」
「ハイ。ここからジュシンした。」
「今回の任務は極秘裏に行おうと思う。
本部の連中には内緒だ。」
「ナイショ。ワクワク」
「兵器の場所が分かってない。だから潜入捜査の必要がある。
政府に潜入するには少人数の方がいい。
大勢に知らせて情報が漏れたらミッションは終わりだ。」
「ヘーキはヘーキ。プププッ」
「・・・しかし、いったい誰がメッセージを・・・」
「タケル・・・ムシ・・」
~第十二話 『エヴィルボム』終わり
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<次回予告>
過去を失った時、嫌な記憶も消えるだろう
そして穏やかな生活の中で幸福を見つけることができる
ただ人は過去の積み重ねで己を形成するしか無いのだ
次回『喪失』
少女は忘れない。正義と言う名の記憶を・・・・