ギルドと親衛隊?
リムはかわいい。
これ常識。
俺と彼女達を連れた一行は魔界に一番近いとされる町、ビィジョルトにいた。
ビィジョルトに滞在2日目だ。
ここに来るまでの道中、あれから冒険者達とたくさん話をして少し調子を戻した。
もちろんその中で、「親=魔王を倒したのは俺達だ。」という話をし、さらに「俺達が憎ければ復讐のために襲ってくれても構わない」という話もされた。
しかしそれに対して、親から復讐は何も産まないし、死んだ人も帰ってこない。だから復讐なんて考えるな。という話をされていたので、復讐する気は無いと答えた。
さらに、魔界では箱入り娘だったということ、力が全然無いことなども話した。
そして、良ければ私達冒険者と一緒に来て、強くならないかと誘われた。
だが、それは少し時間を下さいということで終わった。
その後は、元気を付けるためにこの外の世界のこと、様々な街の名物などの話をしてもらった。
この世界はとても広く、まだ世界の果てにたどり着いた者はいないという。
世界の中心としての国はアルデリア王国があり、世界で一番繁栄し、大きい国とのことだ。
さて、俺たちは何をしているかというと、冒険者ギルドと呼ばれる場所にいた。
ここでは冒険者の登録から解約、クエストの受注、素材の換金までできる意外と大きい建物だ。
この世界の魔物は倒すと魔石を残して消える。
そしてたまに魔力のこもった部位がドロップアイテムとして残る。
そのアイテムを使い、装備を作ったり、街の便利アイテムを作ったりするというわけだ。
ここのギルドは魔界にいちばん近い街にあるだけあり、魔族が多く見受けられる。
と言っても、人と比べると3分の1だ。
冒険者になる魔族は多くはない。
なぜなら魔物を従えて戦うことができるから、小規模でも村の長くらいにはなれる。
おおっと、話がそれたが、俺たちは何をするために来たかというと、冒険者の登録に来たのだ。
彼らのパーティは彼女を奴隷などにするつもりはなく、悪い魔王ではなくいい魔王に育て上げるつもりなのだった。
俺は現在彼女、リムの手に握られている。
彼女の名前はリムというようだ。馬車の中で念話を飛ばして会話していたので、名前を知ることができた。
登録する順番が来たようだ。
「次の方どうぞ~。」
ギルドにはかわいい女の子が受付をするっていうのはどの世界でも変わらないらしい。
「あ、あの、冒険者の登録に来たのですが・・・」
「冒険者登録ですね。わかりました。こちらの水晶に一滴血をください。」
そういうと受付の子は針を渡してきた。
リムはそれを受け取ると、自分の指先に針を刺し、血を垂らした。
水晶は紫色に禍々しく光り輝き渦を作り出す。
その光が消えた。
「はい、こちらがギルドカードになります。ギルドカードの説明をします。このギルドカードにはランクがあり、G、F、E、D、C、B、A、Sと順番に高くなります。あなたの現在のランクは最低のGです。クエストは上下1ランクのクエストを受領することが可能となっており、クエストをクリアすることでポイントがたまりランクを上げるための試験を受けることが可能になります。より上位のランクを目指して頑張ってくださいね!
そして、ギルドカードにはステイタス閲覧機能、スキルポイントを使用してスキルを覚える、強化することが可能で魔物を倒すと経験値が入るようになっております。
レベルアップするためには一度宿、またはギルドへ赴き経験値を換算することが必要となります。
経験値が必要数に達すると、その場でレベルアップします。
レベルアップすると、運がいいと新しいスキルが発現したりします。
選択する職業によって、レベルアップした時に覚えやすいスキルが変わるので、職業選択は慎重にお願いします。
さて、質問はありますか?」
「ううん。特にないよ?」
「わかりました。では職業選択に移りましょう。あなたのギルドカードを貸してください。あなたのステイタスに応じた職業を選択できるようになります。」
リムは先ほど受け取ったギルドカードを渡し、羽がぱたぱた動いていた。きっと楽しみなのだろう。
「こ、これは・・・こんな職業が・・・。コホンッ、し、失礼いたしました。あなたに発現した職業は、【魔王】のみになります。職業選択はこれでいいですね。魔王なんて職業があるなんて・・・」
どうやら魔王っていう職業が出たらしい。
焦りっぷりから見るとだれも発現したことはないみたいだな。
「職業の説明をさせていただきたかったのですが、未確認の職業のため説明ができません。申し訳ありません。」
「ん!大丈夫!気合で頑張る!」
「では、いい冒険者生活を楽しんでください。」
リムのギルドカードを覗き込む。
-ステイタス-
レベル1
リム・レッド
魔族 職業・魔王
体力 H
魔力 G
敏捷 G
器用 G
防御 H
スキル
魔物創造 魔王の威光
魔法
シャドーウィップ
装備
ぼろ布
名もなき杖
うん。ステイタスはなんかスキルがすごそうなのあった。
だけど、基礎能力はなんか低そう。てか、絶対低い。だって、確か一番低いのはGのはずなのにHって。
(リム、とりあえずガオウたちと合流しよう。)
(うん!わかった!)
そういうことでギルドを出・・・れなかった。
冒険者に阻まれたのだ。
モヒカンで世紀末にいそうな顔した冒険者だ。とっても今にもヒャッハーって言い出しそう。
「おいじょーちゃん、聞いたぜ?魔王なんだってな!ぎゃっはっは、こんなちんちくりんが魔王になれんのかよ!」
「ん?私急いでるからじゃあね!」
「おっとぉ、まだ行かせねえぜ。魔王様がどんな強さなのか見せてもらおうか?」
「おいおい、変な職業が出たからってまだレベル1の嬢ちゃんに絡みすぎだぞ?ほら、ギルドのみんなも見てるし、いったん引くぞ。」
そういうと普通の身なりをした冒険者が耳を引っ張っていった。
「おじちゃんありがと!ばいばい!」
そうして俺たちはギルドを後にするのであった。
「お、待ってたよ。ギルドで変な奴に絡まれなかったかい?」
リンドだ。
俺たちはギルドからまっすぐ、この町の噴水のある広場に来た。
「からまれたよ?」
「ええっ、なんだって!俺が懲らしめてやる!」
ガオウだ。彼はなぜかリムの親衛隊みたいになっている。
「でもおじちゃんが耳を引っ張って行って、素通りしてきた!」
「そうかそうか。ならいいんだ。さて、装備を買いに行くよ。ずっとその恰好ってわけにはいかないからね。」
リムは布のようなぼろ服だった。あの時から衣装は変わっていない。
だが、これからは冒険者になるのだ。装備も必要だ。
「お金ないよ?」
「まあまあ、俺らに任せとけ。金なら心配いらんわい!」
彼らはランクA冒険者だ。
お金には困らんのだろう。
商店街に入り、まずは仕立て屋に入った。
「いらっしゃいませー。あらかわいい御嬢さん。ひどい格好してるわね。」
「リム、好きな服を選んでおいで。ここで待ってるから。」
「はーい。」
「あら、そういうことならおばちゃんに任せて!服選んであげるわ!」
そんな感じの会話で、仕立て屋のおばちゃんにリムが半強制的に引っ張られてった。
俺も一緒だ。
数時間後。
「おまたせ!」
リムは黒を基調にした白い模様の入ったローブのような服を身につけていた。
袖は長袖で振袖のようになっていて、腰にベルトを巻き、ミニスカートのようなながさでローブが終わり、黒と白のニーハイソックスをはいて、短めのブーツを履いていた。
頭には黒い羽と白い羽を重ね合わせたような髪飾りをしていた。
そして手には俺だ。
「「おぉー!」かわいい!!」
「どーよおばちゃん渾身の出来でしょ?この装備はおととい仕入れたんだけど、誰も使える人がいなくてね。」
「え?使えない?どういうこと?」
「服に触ってみたらわかるよ。」
「じゃあ遠慮なく。」
プニッ。
「ッ!!!」
バチン!
「ぶほっ!!」
「どこ触ってんの変態!」
ガオウが吹き飛んだ。今は道路に転がっている。
「おやおや、これはすごいね。これほどの威力はいつもでないのにねえ。触ると静電気が走るようなくらいなのに。きっとお嬢ちゃんの力さね。」
「なるほどこれはすごい。Aランクのタンクのガオウが目を回している。なかなかの強さだね。」
そういうとリンドはお金を出して装備をすべて買ってくれた。
ちなみに、装備すべてに効果があるもののようで、服には結界のような効果、靴は移動速度上昇、ニーハイにも靴と同じ、頭の髪飾りは魔力上昇がついている。
さすがに下着は効果ないようだ。
-ステイタス-
レベル1
リム・レッド
魔族 職業・魔王
体力 H
魔力 G
敏捷 G
器用 G
防御 H
スキル
魔物創造 魔王の威光
魔法
シャドーウィップ
装備
黒のローブスカート
敏捷のニーハイ
敏捷のショートブーツ
知識の髪飾り
名もなき杖
次は道具屋さんに行くことにした。
「ありがとうリンド!」
道具屋についた。
「らっしゃっせー。」
店員は一人で、店長と二人で回している店だった。
「ようおやじ。元気してたか?」
リンドはカウンターに座っているおじさんに話しかけた。
「あたぼーよ。俺が倒れる分けねえだろ?はっはっは。ん?そのお嬢ちゃん・・・。」
リムは少し考えた後、言った。
「さっきはありがとうおじちゃちゃん!」
「おお、やっぱりか!見違えたな!かわいすぎてわからなかったぜ!。」
「なんだ?二人とも知り合いなのか?」
「フン。」
「おおう、さっきギルドでちょっとな。んで、ガオウ、なんで無視されてるんだ?」
「ん、ガオウさっき胸さわった。変態。」
すごい侮蔑の視線を少女から送られているガオウ。うらや・・・ゲフンゲフン。
「それは悪かったって。吹き飛ばされてまだ頭いてえしよ。」
「ん。」
これはまだ時間かかりそうだな。
「はっはっは。こりゃあ自業自得だな!さて、昔話をしに来たわけじゃないんだろう?その少女の道具を買い揃いに来たんだろ?」
「ああそうだった。頼むよおやじ。」
「ねえ、リンド、おやじって言ってるけどどんな関係?」
「ああ、俺の親、そのままおやじだよ。俺には少し魔族の血が流れてるんだ。おやじは魔族の子と結婚したからな。まあ、そのあとすぐ逃げられて単身だけどね。」
「ん、そうなんだ。なんかごめん。」
「まあ、俺は気にしてないからいいさ。」
そのころガオウは、店の端っこでしょぼくれていた。
「またせたな!これだ。」
そういうとおやじさんは、カウンターの上に袋を置いた。
「これは?」
「道具袋だ。魔力があれば使える、見た目とは裏腹に、意外と入る。おんなじものだったら99個まで1スロット、30スロットある。ただ、おんなじ名前でおんなじ道具でも効果が違ったらストックできない。その点注意だな。この中に初級癒しポーションと、初級マジックポーションを10本ずつ入れといた。これはサービスだ。代金は道具袋だけでいいぜ。」
「あ、おやじ、後この子に持てそうな短剣ないか?杖だけだと不便だ。」
「お、あるぞ。ほれ。」
そういって渡されたのは何の変哲もない短剣。さやから出して見ても特に変わったことは・・・少しだけ魔力を感じる。
「これは、魔力がすこーしだけ微量に上がるものだ。うちには脳筋しかこねえから売れなかったんだ。安くしとくぜ?」
「しゃーねえ。在庫整理に付き合ってやるよ。いくらだ?」
リンドはここでも会計を済ませた。
装備をそろえた俺たちは街の入り口にきていた。
「リム、改めてよろしくな。俺はリンド・ウルム。職業は剣士だ。」
「俺はガオウ、ガオウ・アルストリメイン。職業は重戦士。盾役だ。」
「よろしく。私はリム、リム・レッド。魔王の娘にして箱入り娘。外のことは何にも知らない。頼りにしてるよ?」
そういうと、リムは上目使いで二人を見た。
男どもは落ちたなこれ。
俺は事前に職業についてごまかすように言ってある。
「リム、職業は?」
「え、ええっと、魔王?」
「魔王?」
ごまかせとは言ったが何を言えばいいかは考えてなかった。まあ、隠し事してても仕方ない。
(リム、正直に言っちゃっていいよ。)
「うん。なんか魔王しか選べなかった。」
「スキルとかはどんなのあるの?」
「魔物創造とか、魔王の威光ってのがあるよ。」
「魔物創造はなんとなくわかるが、威光がわからないな。」
「あっちのほうに森があるから、道中の敵を倒しながら森でスキルを試してみよう。幸い、なぜかゴブリンくらいしか出てこないからレベル上げにもってこいだよ!だけどあまり奥行くと何が出てくるかわからないから、気を付けてね。」
「わかった。」
そうして俺たちはスキルを確かめるべく街の外の森へと繰り出すのであった。
読んでくれてありがとうございます。
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