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最弱魔王と最強の杖  作者: 絶兎
5/15

短め

 俺は真っ暗なところにいた。


(ここは何処だ?)


 真っ暗闇に少女が座っているのが見えた。

 これはきっと彼女の心の中だろう。


 俺は確か念話を彼女に使った。そしたらここに来た。

 しかし、これはどうすればいいのか分からない。


 彼女に近づいてみる。


 壁があった。

 今の自分にはこの先は進めないらしい。


 念話はここで途切れた。






 戻ってきた。

 森だ。森で少女の手に俺は握られている。


 彼女の心には壁があった。

 詳しくはわからないがこれはスキルが低いせいか、彼女の心の問題のどちらかだろう。


 心の状況から見るに、きっと悲しいことがあったのであろう。

 彼女の外見からもわかる。


 その時、木々をかき分けて男の3人組が出てきた。

 ひょろっとした男が2人とがっしりした男が1人だ。


 ひょろっとした男が口を開けた。


「おっ、嬢ちゃん、やぁーっと見つけたぜぇ。」


 どうやら知り合いのようだ。だがしかし、少女の表情は変わってない。


「おら!お前ら捕まえろ!」


「合点承知!」「あいさ!」


 ひょろっと1号の言葉によりひょろっと2号とがっちり男が動き出す。


「嬢ちゃん痛い目にあいたくなかったらこっちにおいで~へっへっへ。」


 じりじりと距離が縮まっていく。


「よし。捕まえた。お嬢ちゃん抵抗しないのか。」


 そう。抵抗しなかったのだ。

 何をされるかわからないのに、だ。


「よし。行くぞお前ら。」


 そうして俺と少女は連れて行かれた。


 ちなみに俺は彼女が握りしめていたが、抵抗も何もしなかったので、特に何もされずにそのまま連れて行かれた。





 少し進んだところに、壊れた馬車のようなものがあり、冒険者らしき人が30人ほどいた。


「しっかしなぁー、魔王の城攻めるって言って3万の冒険者をかき集めていったのに今のところ生還者は俺らだけかよ・・・。」


「まったく。生き残れたのは運が良かったぜ。」


「ほんとなー。なんで生き残れてるのか不思議だぜ。」


「お前は後ろで負傷兵を回復させてただけだろ。俺なんか左手失ったんだぜ。まあ、先輩が直してくれたけど。」



 冒険者たちの会話が聞こえる。

 どうやら魔王城を攻略した後のようだ。


「お嬢ちゃんはこっちだ。」


 用意されてたのは鉄の檻だ。

 しかし形がゆがんでいる。大きな衝撃を食らったような曲がり方だ。


「すまねえなお嬢ちゃん。これも命令なんだ。」


 がっちり男が去り際に言って去った。



 こうして俺と嬢ちゃんの牢屋生活が始まったのであった。



 次の日、冒険者たちは動き出した。

 壊れていた馬車を無事なパーツだけを使い修理したようだ。


 台数は2台。この一日二日でよく修理できたものだ。


 もとは4台だったようだが、人数が想定より少ないので十分乗れる。

 逃げた馬も連れ戻してきたようだった。


 そして彼女。彼女は寝たのかねてないのかわからないような顔をしていた。


「おい、嬢ちゃん。大丈夫か?顔が真っ青だぞ?」


 昨日のがっちり男が話しかけてきた。さらに後ろのほうから声がした。


「おいおい、そいつ魔族の女だぞ?しかも肌は青いんだから真っ青なのはいつも通りだろ。」


「でも、俺の知り合いは青くてもしっかり頬は赤くなるし、これ程青いことはないと思うぞ。」


「まあ、ほどほどにしておけよ。」


 後ろにいた冒険者は去って行った。


「嬢ちゃん何があったかはよくわからねえが、もうじき移動だ。馬車にこの檻は積み込めねえ。すまねえが、袋をかぶってもらうことになる。我慢してくれ。」


 彼女は相変わらず表情に変化はない。ちなみに食料は受け取ったが食べていない。


 そういうと、男は袋をかぶせ、俺を手から取り、彼女を担ぎ一番前の席へ座らせた。

 その隣に俺を持ったがっちり男が座った。


 しばらくして、馬車が動き出す。



「おいおいガオウ、大丈夫かこんな風に魔族を扱って。」


 馬車は、荷馬車のようになっていて、壁沿いにベンチのようになっている。後ろから乗り込む形だ。一応ドアのようなものが付いていて、魔法陣のようなものが彫られていた。


 入口から一番遠い前の右端に、少女が載せられ、その左にがっちり男ガオウ、そしてガオウと呼んだ男は前の席の左端に座っていた。

 俺はガオウに持たれている。


「そんなこと言ったって、リーダーが言ってるんだ。仕方ないじゃないか。」


「その子は魔王の娘よ。たぶん。魔王と同じ魔力を感じるわ。小さいけど。逆にそんな生易しい拘束でいいのか疑問だわ。リーダーも知ってるんでしょ?」


 魔法使いらしき女がそういった。


「リンド、ほんとかそれ?」


 リンドと呼ばれた男は一番入口に近い席に座っていた。


「ああ。そうだな。彼女は魔王の娘だ。しかし、まだ魔王に目覚めていない。おそらく第一次進化を終えたあたりだろう。進化の時期は気分の上下が激しい。そんなときに親が死んでしまったら悲しみに明け暮れるか、復讐に燃えるだろう。だが、彼女は復讐より悲しむことを選んだようだ。それにこの子を冒険者側として育てればとても心強い存在となる。俺はそう思っている。ちなみにその拘束が解けても俺らがいれば大丈夫だ。だから安心してくれ。」


「まあ、リーダーがそういうなら。」


 そういうことらしい。

 彼女が魔王の娘とは思っていなかった。

 しかも、魔王=彼女の父親が死んだということは心に深い傷を負ったのだろう。


 父親がいなくなるのは大きなダメージだ。きっと念話がうまくいかなかったのはそのことを知らなかったせいだと思う。

 そんな気がする。だから、俺は念話をまた試してみようと思う。


 念話!





 また真っ暗なところだ。

 しかし前の時より冷たさは減っている気がする。


 彼女がいた。


 近づいてみる。


 今回も壁があったが、触れてなお念話スキルが続いている。


「父親が死んでしまったってな。」


 俺は声をかけた。


 彼女は悲壮な顔をしてこっちに顔を向けた。


「おとーさんはまだ死んでない!死んでな言ったら死んでない!」


 おっと、意外と元気なようだ。

 ここを深層世界として現実世界で元気がないのはこの壁のせいだと考察する。


「ふむ。そうだな。魔王様が肉体を刈られただけで死ぬはずがないな!だから出ておいで!一緒にお父さんを探さないか?」


 俺は壁は壊せないが引きずり出せないかと思い声をかける。


「でも、私だけではこの世界じゃ生きていけない・・・。それに怖い。おとうさんを倒すような世界が。」


「そうか。なら俺が一緒に行ってやる。だから大丈夫だ。だからおいで?」


「あなたは誰なの?なんで私を助けようとするの?」


「俺はただの杖さ。意識を持ったな。杖が意志を持ってるんだぜ?君のお父さんなら全然、いや、余裕で生きてるに違いないだろ?それに俺は見てみてくなった。そんなすごいお父さんを持った君が成長した姿を!!」


 よし、言い切った!


「そう。すこし・・・だけなら・・・いいよ?」


 そこで暗闇の世界から抜け出した。






 ぐるるるぅううう。

 大きな音が馬車の中に響き渡った。


「おい誰だー?おなかめちゃくちゃなってるやつ」


 男Aが笑いながら言った。


 ガオウが言う。


「おなか減ったのか?何か食べるか?昨日何も食べなかっただろ。食べ物は干し肉くらいしかないが食べろ。リーダー、食べ物あげてもいいか?」


「別にいいぞ。今死なれたら困るしな。」


 許可が出た。

 ガオウは袋を取り、口にかませてあった布を取った。


 少女の眼には光がともっており、さっきとは別人のようだ。

 目的ができたからか、意志がしっかりある。


 少女は干し肉を受け取るとがつがつ音を立てるように食べ始めた。


「すごいいい食べっぷりだな。この二日間の間とは別人のようだ。目に光がともってるし、元気を取り戻したようだね。まぁ、元気がある彼女を見たことはないけど。」


 リンドは苦笑しながら言った。


 しばらくして少女は満腹になると、そのまま眠ってしまった。


「とっても疲れてたんだね。魔王の娘といえ、まだ子供。それに悲しみを抱えてて眠れなかったんだろう。」


 又もリンドは言った。


 それにつられ、団員たちは一人を残して眠りについたのだった。


 そっか、もう夜か。

 そういえば彼女の名前をまだ聞いていなかったな。

 食べてる間に、俺のことを見ていたから、心と会話した時のことは覚えているようだし、起きたら念話で聞いてみるか。


 そんなことを考えながら、男に握られてる俺はそのまま眠りにつくのであった。

 眠りは精神の癒し。意志があるものは眠らないといけないのだ。何となくそんな気がする。眠らなくても活動できるが。


 さて、そんなこんなで冒険者とともに馬車に揺られ、意識が遠ざかっていく中、魔界からも遠ざかっていくのであった。

さてさて、冒険者たちに連れて行かれるのはどこなんでしょうかねえ。


次の更新は数日後かもしれないです。時間が取れてないです。

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