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無敵の彼に会ったらどうするかd(><)  作者: 残酷菜遊美
一章:銀時計と初恋、その諦めの悪さついて。
6/6

二人の諍い1

家院との軋轢の翌日に、俺は肩慣らしのつもりで久々に市民プールに行くことにしたんだ。

「あちー…」

まだ5月の初めだというのに25度を越えて、入梅前の湿度が高いこの時期はほんともやもやしていた。

街の中心街から自転車で目抜き道路の真ん中で東に折れて、5分程度漕いだところにあった。

市民プール盛況で、目の高さからちょうど人々がフェンス越しに泳いでいるのが見えた。

俺はさっそく駐輪所に自転車を、2時間無料それ以上は100円時間ごとに課金していくやつ、にロックを掛け、詰め所に声を掛けた。

「すいませーん、泳ぎたいんですけどロッカー開いてますか」

初老の後頭部の剥げたおじさんがパソコンで事務処理を行っているのを中断し、

「銀野のとこの坊主か、今あいにく満席だよ」

マジかー…

俺はがっくりして肩を揺らして、ため息をついた。

「待つこともできるが、人の回転が今日は悪い。1時間は待つことになるかもなぁ」

フライングだったかと今日はもう諦めようかと思った矢先、プールサイドによく見知った友人がいた。

家院だ。

彼は泳いでいた。正確には、まだかなづちな彼ばビート版を使ってなんとか身体を浮かしていた。

体格の良い男がそばにより、アドバイスをしているようだった。

俺はそれを見て電撃が走り、ひょっとしたらひょっとするかもしれない、と思わずにはいられなかった。

「いえ、今日は別のところを探します」

「そうか~、すまんな~」

気の抜けた返事を初老の男がするのと、反比例で俺の心は焦りが強くなった。

俺はこの街の南端にある私営のスポーツジムへと自転車をあせだくになりながら漕いだ。

中心になる通りを南に抜け、堤防にぶちあたると、西に折れるとすぐにそこあった。

2時間900円のスポーツジム(プール敷設・使用可能)になけなけの小遣い2700円から差っ引いて、

俺はズボンを脱ぐとき、体勢を崩してひっくり返してしまった。それほどに家院につき動かれていたんだ。

すったもんだで海パンに着替えた俺は、プールの浴槽の冷たさにぶるっと震えながら入り、体温が慣れていく感覚を覚えた。

息を吸い。身体を浮かして、身体をピンと伸ばす。うん、気持ちいい。

綺麗に足首まで伸ばした脚をバタつかせ、前腕で水を後ろにかく。推進力が上がり、すいすいと伸びていく。

往復2回100m泳いだところで、俺は若干の満足を得た。

―水泳で負けることは無いでしょ、そう一人ごちるぐらいには自信が戻っていた。

そこから、背泳ぎ等や見よう見真似のバタフライなど遊んでいた、

さすがに1時間もたつと疲弊してきて若干の休憩を入れ、最後にもう一度クロールで出来栄えを伺ったが上場だった。結局一時間半しかいなかったが満足して料金を支払い、店を後にした。

俺はなんとなく嫌な予感があって、市民プールの方に顔を出した。

すると、家院はビート版をやめ、水中に浮かぶまでに上達しているのが遠目から理解できた。

俺は自己満足がぬるいものだと知り、再びさきほどスポーツジムへとなけなしの小遣いをガチャまわすみたいに(2回目)投入し、クロールの練習を2時間ぶっ通しでやり続けた。

指先の皮膚がふやけて、身体がぞくっと冷えている感覚は心地よいものではなかったが良い疲労感に包まれた。

プールの壁面からけのびで水深にもぐり徐々に推進力が落ちる同時に上昇してくるに合わせて、キックに合わせプルを行う。かみ合ってないギアを何とかあわせる作業に通夜された。

2時間が過ぎる頃には、午後も6時を回っていて、市民プールも7時で閉まる頃だ。

家院もさすがに帰っただろうと思ったが、見に行くのにはとても勇気がいった。

俺はドキがムネムネしながら、市民プールに最後のダメ押しで向かうと、

そ こ に は。

まだ懸命に泳ぐ、すでにクロールの型になっている家院の姿が目に入った。

俺は彼の努力に驚きを隠せなかった。

その日、俺は湯船でシャドークロールの練習を負け惜しみに繰り返していたことは言うまでもない。


続く!







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