早く本題に入って(怒
「
ハーイ、ガ~イズ!僕の名前はジェロニモ、今年16歳!コネチカット州生まれニューヨーク育ちさ。しきたりの多い田舎町を抜け出したくて、必死に品行方正のふりをして推薦を手に取り、ニューヨークの高校に滑り込んだ僕は、この街の変化の早さに、学校の複雑な人間関係に目を回していたんだ!そんなトンマな僕に声をかけてくれたのがルーシー。ルーシー・ハンナ・モンゴメリさ。学校の彼女は淑女そのものだけれど、市の外れにあるダンスフロアーでの彼女はまるで痴女なんだ!
普段は地面につくんじゃないかってくらい長いスカート丈も、夜を明かすフロアでは丈が馬鹿みたいに短いんだ。信じられるかい?
普段は健康的な唇の色も、口紅で赤よりも鮮烈に赤だ。
僕は最初、慈愛であふれた愛しのルーシーがどこかにいっちっまったんじゃないかって悲しくなったんだ・・・。
けれど、そんな彼女が持つ情熱と敬虔に僕はとにかく惹かれ、ダイナミックに足腰を揺らし、手を広げるその姿にのぼせ上がっちまった。
二人のデュオは、オールナイトオンステージ、衆人環視の目を独り占めさ!
そんな日々が目まぐるしく過ぎていく、そして彼女に感謝と好意を伝えようといつしか思ったんだ。
曖昧な関係は終わりだ(僕らをめるぐ人間関係はあまりにも不透明だ。だからこそ、僕らだけでも透徹でありたいんだ。あはは、僕は何を言っているんだろうな)。
きめ台詞を自室の壁を相手に何度も練習したんだ。
「一日三食はチーズバーガーを食べる模範的なアメリカ市民のルーシー君は、ひとつ決してやってはいけないことをしています!なんだかわかりますか。そうです。君はバーガーのバンズを開けて、ピクルスを抜くことです。
でもさ、君の嫌いなピクルスを代わりに僕が食べたら全てがノープログレムだと思わない?キューカンバーを漬けたところでキューカンバー、な?そうだろ?」
完璧だ。
彼女の顔が綻ぶところを早くみたいな。僕は胸の高鳴りを抑えるのに必死だったんだ。
今朝、魔改造を繰り返したロードバイクでいつも通学路をマイペースで向かっていた矢先、顔にいきなり何かがぶつかって僕は転げ落ちそうになったんだ。
顔からそれを取ると、緑のベレー帽だった。やれやれ、未来のパブロ・ピカソはうっかりさんだぜ。
視線を周囲に向けると、バス停の前で申し訳なそうに肌色の黒髪の少女がこちらを見ていた。
「ハーイ、リトルレディ。大切なものは目を離すと逃げていくんだ、今度は見失うなよ?」
「uhuuu…sorry」
彼女が持つトートバックには大きいハンバーガーがついていることに気がついた。
「その鞄につけている大きなストラップはなんだい?」
「…sasebo-burgar」
少女はたどたどしく言った。
「wow.its crazyいかしてる」
僕は少女に帽子を渡すと、ニカッともう一度笑ってみせ、愛しのルーシーにすぐにでも会うためにロードバイクを転がした。
いつもの教室に着くと、皆がうわさをしていた。なんと、転校生がやってくるらしい。
太平洋の向こう側からやってきた女の子だそうだ。
なんでこんな時期にやってるのか、どうかしてるぜ。
とにかく着ちまったもん仕方ない。まぁ僕らとしては、せいぜい肩をすくめて迎い入れヨアウェルカムるしかないんだから。
担任が僕らの質問攻めにあい、それを何とか制した後に教室に黒髪の少女が入ってきた。
教壇の上に乗ると、こちらを向けて頭を下げる。そして、申し訳なさそうに笑った。
僕は驚いてた。今朝のリトルレディが転校生だったなんて…。
the girl has a green beret!
「緑ベレーの女の子!」
クラス中の視線とルーシーの驚いた目、そして顔を真っ赤にした教壇の少女。
そしてこれが佐世保バーガーで生まれ育った日本人とのふぁーすといんぷれっしょ――痛い!痛い!痛いよ!御影ちゃん!ちゃんと話すから!!
」
御影は茶色のローファーで俺の足を踏んだ。
「いらいらして仕方が無いんだけど!せっかく人が話を聞いてやろうとしたんだけど!!!?」
「わかってるよ、、、もう駅着くだろ。話のキリが悪くなるかなって…小話を挟んだんだよ…。改札出たとこの自販機前まで行こう」
「そこまでいい。あんまり興味ないわ」
「待て待て、ジュースおごる」
「大体あんたちょくちょく横文字挟んでくるけど、英語の偏差50を超えたこと無いじゃない」
「ばばばっか、俺は生きた英語意識してるの!」
電車が風呂敷包駅で止まり、僅かな慣性が体を抜けていった。
ホームには、春の日差しが屋根をすり抜けて、日溜まりを作っていた。