第3話 「それぞれの辿り(Part.2)」
『まぁ上がれ。』
連れられて来たのはどこにでもあるような
小屋のような場所で白髪の男は誰かを呼んでいるようだった。
呼ばれて出てきたのは小さな女の子。
当時の白羅木の背丈は165くらいであったから
それより下だったので最初その白髪の男を疑った。
―――身売りを侮辱するのは結構な事だが
こいつもそれと似たような者……
そう思っているとその女の子の後ろから
また子供が2人出てきた。
『妻と子供だ。』
そう男は言った。
それに私は我が目を疑う。
その妻というのは目の前に居る
小さな女の子であろう。
だからこそ目を疑ったのだ。
背丈は小さいし顔もまだ幼い。
『ロリコン?』
というと目の前にいる女の子はくすっと笑った。
『私はこう見えても30歳近いのよ?』
と。
目の前にいる女性の名前は
不知火結愛と言うそうだ。
後ろの2人の子供は私を連れてきた男、
鬼原健一との間に出来た娘二人と聞いた。
そうして私を連れてきた理由を白髪の男は話した。
要約するとすれば私には行き場がない。
作ろうとすればそれを絶たれずっと
孤独の身を背負わされているだろう、と。
大抵この時代ではそういう生き方
をするやつは沢山といる。
それでも、私は諦めず必死に前を見て
自分を変えようとしていた、と。
それを見て感銘を受けたという。
『俺は昔からそれと似たような
目をしたやつを放っておけないのさ。
だからお前が落ち着くまでは
ここを行き場としていい。』
それに結愛さんは非を唱えることはなかった。
ある意味歓迎だった。
そして私はそこを行き場として白髪の男、
鬼原先生から勉学ともにこれからの
世界への戦い方を教わった。
そして鬼原先生を、
結愛さんを実の親と慕った。
そして私は今狩人としてこの場にいる。
こうしてなれたのは二人のお陰だ。
「さて、仕事も一通り片付いたし。
鬼原先生の所にでも伺おうかな。
真夏ちゃんと静ちゃんどうしてるかなぁ」
仕事で疲れた身体を伸ばして
倚子を引いて立ち上がる。
狩人…だからといって何もずっと戦場で
戦わなければいけないと言うことはない。
というよりはか戦場には出たくない、か。
だからこうして事務の仕事をしている。
部下には止められたが部下にはできない
事務仕事は大抵私がこなしている。
そう心に留めながらカバンを背負い
外に出ようと扉を開けようとしたとき
そのドアがひとりでに開けられる。
自分の部下だった。
開けた本人が1番驚いているのか
突っ込もうとした身体が私と一方的に
抱き締めるような形で繋がった。
「……。」
私は前述通りそういったことをしてきたのだし
今更驚くようなことでなかったのだが
ぶつかった本人はたじろいでいる。
そんな剣幕だったか?
いやいや。
殺気は出していないんだけれど。
「すっ!すいません!!!」
「良いよ減るものじゃないし。
で?何かあったの?」
とそれを聞くと驚愕な顔からすぐに
真剣な眼差しに切り替わる。
「実は…色彩集団が活動を開始した…と」
色彩集団という言葉に今度は私がたじろいだ。
まさか出るとは思わなかった言葉だからだ。
色彩集団、またの名をCOLORS…
赤い髪のある男を筆頭にして生まれたテロ組織だ。
テロと言っても抵抗組織のほうが
合っているかもしれないが。
「報告を続けて」
とその部下を部屋に入れ先程に立ち上がった
席に座りなおし部下の言うことに耳を傾けた。
先日関東支部の狩人機関にて
何らかの攻撃が放たれた。
怪我人数名が出ておりその攻撃の
跡を辿ったところ青の空色の髪をした男に遭遇、
返り討ちに遭い攻撃の跡を辿った狩人は敗走。
その後遺体で発見された。
身体が綺麗な四角形のキューブ状に
切り刻まれた状態だったという。
白羅木が気になったのはそこだった。
「ねぇ、それって…妖刀の可能性が
あるということ?」
部下はゆっくり下に頷いた。
不味い状況だ。
妖刀が敵方、相手にあると言うことでも
かなり不味い状況であると断言できる。
「それで…なんですが…冥王様が直々に
四天王会議を開くと連絡を…。」
「はぁ?!冥王がっ?!」
冥王。
狩人の現トップ
狩人機関最高責任者の身分を持ちその強さは
四天王を遥かに凌ぐとも言われている。
本来はそう安々と下の者に
任せるような人ではない。
なのに四天王会議だって?!
「…鬼原先生だっていないのに…―分かったわ。
参加するから席を外してちょうだい。」
そう言うと部下はそそくさと外に
扉を開けて出て行った。
さて何から説明しようか。
まずは四天王を先に言わねばならないだろう。
四天王とは、先程言った
狩人機関2番目に力を持つ役職である。
役職とは言っても地位で
今現在は3人しかいないのだが…。
“炎の四天王の”豪情轟
“光と闇の四天王”光源闇
“無の四天王”白羅木悠
そして今は自ら停職し狩人研修学校に就いた
“暁の四天王”鬼原健一。
この4人が初めて揃わないと
始まらないのが四天王会議である。
冥王がどうすることも出来ないと判断したとき
意見を聞くため開くのだが
…もうそこまで事態は迫って
いるということなのだろうか。
そしてもう一つの議題、妖刀。
それは妖怪が持つ凶悪な刀が語源なのか、
それか別の意味を表すのかは
分からない、だが強力な力を
刀自体が持っていることは確かだった。
手にしただけで効果を発揮したり
使うときに効果を発揮する。
効能はまばらではあるがそれは
この世に存在してはならない。
そう意味として受け取ることも出来るものだった。
本来妖刀は存在する=破壊しなければならない
というのが規則ではあったが狩人機関は
その刀の調査のためにも
保管しているところがあるという。
その最悪な例に繋がった場所が関東支部であった。
つまり、存在してはならない最悪なモノが
最悪な組織に渡ってしまった。
それを受けて狩人機関は何かしらの対策を講じらなければ
ならない。
「鬼原先生には
…あとで事情を言うとしましょうか。」
私は席を立った。