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"狩ル者"  作者: 工藤将太
第一章 入学編
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第十七話 「食事会といこう」

長らくお待たせしました。更新です!


食事会は何の問題もないまま広一の乾杯という掛け声とともに

始まった。たこ焼きメーカーで生地を流しいれ、

具材を入れコロコロと転がし焼く。

焦げ目が濃くない薄っすらとした焼き色になったら

別の皿に引き上げソース、

マヨネーズ鰹節と青のりをかけて盛り付ける。

とてもスタンダードな焼き方だが慣れていない者もいた。


「…半円になってしまうのだが……」


椿だった。

立案は椿のルームメイトだとして

初めてなのは広一も驚いていた。

立案した教室のあの場所では

そんなことは話していなかったためだ。

だがコツを真夏に教えてもらいながら作っていくと

するすると上達していった。

真夏はそんな椿を見て何か考え事をしているようだったが

他の5人は構わず他に作ったサラダや

一口サイズの撮み物を食べ、話す。

それぞれ四角い机にソファに座ったりカーペットの上で座っている。

広一、香野、良、拓也、静と言った順で

円を机越しに円を描くように座っている。

なお話は沢口兄弟の実家の話になっていた。


「へぇ…老舗の旅館経営しているんか……今時珍しいなぁ…」


良の声に拓也は不適切だぞ、と注意するも

広一は大丈夫だと宥める。

今時珍しいというのは広一と香野の二人もよく分かっていた。

いつ終わるか分からない魔物との戦いに限られた場所と技術で

自分たちが生まれるころよりも、

また魔物が現れるよりも前にずっと続けていたという事実が

二人は凄いと感じていた。

魔物が現れた時、支配されたり占拠されたりと場所が限られていく中で

沢口旅館だけはその場所には入らずに今もずっと続けているのだから。


「確かに珍しいよな、俺だってそう感じたことはある。

 邪魔や妨害があってもずっと続いているんだからさ。」


「ふぅん…まあ確かに魔物が現れても

 続けてきたっていうのがなぁ…

 じゃあ何で二人は実家継がなかったん?」


「良…さすがにぶっこみ過ぎだ。」


拓也の制する声に頷く香野。

広一もまた苦笑を許せなかった。

静はキョトンとして広一をじっと見つめる。

苦笑して話を流そうとしたところで

広一はそんな静と目が合う。

広一一人気まずくなりその目に

押し負けたかのように溜め息を吐いて呟く。


「やることができたんだ。」


「ほぉ…やること?」


良の疑問符と広一のああ、という返しに香野が慌てて制する。

どうして話すのかということを耳打ちするも広一は大丈夫だとその

香野の制止を止める。


「俺ら二人兄弟じゃなくて姉を入れた三人姉弟なんだよ。

 で、詳しいことはまた話すとして

 その姉ちゃんが行方不明になったんだ。

 関係があるとすれば魔物…ってことで手がかりも

 見つけに狩人を目指すことにしたんだ」


良の感嘆に静は割って入り広一の話に質問を投げる。


「ちなみに手がかりは見つかったの?」


「いや、まだだな。まあそれが一つの動機で、

 もう一つは力がなくて姉ちゃんを

 行方不明にしちまった原因もある。

 だから力をつけて守れるものは守れるようにしようって

 香野と二人で決めたんだ。

 魔物から、脅威から守れる力をこの身に

 焼き付けてやろうって…な!」


と照れながら飲み物を飲む香野に広一はバンッと背中を叩いて

肩を組む。咽て嫌がりながらも少し嬉しそうに香野が笑う。

すると広一が良たちを見て呟く。


「そういうお前らはどうなんだ?

 狩人って危険が後をつける職業だ。

 変な覚悟じゃやっていけないぜ?」


それに良は笑いながら、拓也は襟元を直しながら


「わいも広一はんと同じように守りたいものを守れるように

 なる力を得るためかねぇ。

 拓也はどうなん?」


「…良に同じくだ。

 俺には妹がいてな、その妹が危険になったことがあった。

 命も危ない、でも自分は何の力もないから

 動けないし動けたとしても戦えない。

 ―そんなときに狩人が現れた。

 その狩人は妹の周囲の魔物を次々に

 斬り倒してそうして助けてくれた。

 今でも返しても返しきれない恩でな、

 その人の紹介もあって狩人を目指すことにしたんだ。」


広一と香野、静が驚く。

その狩人とは今も仲が良いんよな~という

良の声に拓也はああ、そうだと頷く。

そして拓也は目を閉じて微笑すると静の方に向く。


「女性に対して言うのはあれだが

 狩人を目指すきっかけというのはあるのか?静さん」


「えっ…ああ……うん。

 私もあるよ。えっと……」


と話そうとしたとき静の背にたこ焼きを

作っていたはずの真夏が覆いかぶさる。

大きく実った二つの果実が静の頭を直撃する。


「わぁ~~~~」


「ちょっ…お姉ちゃん?!」


その光景に良はふふふと微笑み左横でコップに

注がれたコーラを飲む香野に耳打ちする。


(ええなあ…あんたのルームメイト羨ましいわぁ

 …見たん?なんか見たん??)


(見てないし、見る気はない)


軽く受け流した返答につい香野はそんな真夏を見つめる。

良が話したせいか他の誰よりも光って見えた気がした。

そしてそんな真夏は椿と共にたこ焼きを机の前に置く。

だがしかし誰が予想したかその量を。


「は?」


広一、静、拓也、良、香野の5人が同時にその声を発した。

なぜならその量はまずこの場にいる7人でも食べきれない、

そんな量だったのだから。







たこ焼きを撮みつつ真夏は静の左横に座り

自分たちがどうして狩人を目指すことにしたか

その理由を話していた。

たこ焼きの件はその半分でも

食べきれない量であったために半分を冷凍保存して保管することになった。

同時に静からのお怒りが椿と真夏に下った。

二人とも目に見える(´・ω・`)という顔になっていたが

広一の機転で前述の冷凍保存することになったためか今では反省した…?

ような顔に戻っていた。


「あ、話は私と静が狩人になろう

 と思ったきっかけだよね?」


としれっと何事もなかったかのように

喋る真夏に香野がそうだな、と呟く。

今まで話に質問や肯定しなかった香野が喋ったのをきっかけに

広一はその香野をじっと見つめた。


「…なんだよ」


「いや、別に?」


広一は視線を香野から外し代わりに静を見つめた。

今全員がソファやカーペットに座っているが左から時計回りに

広一、香野、良、拓也、椿、静、真夏となっている。

見つめられた静は広一に気付くと一瞬目線を外しながら微笑し

目線をみんなに向けて話し始めた。


「私が狩人になろうと思った

 きっかけはお母さんが狩人で働いていたからかな。

 もういないけど…いないからこそお母さんが

 何を見て何をしたのか知りたいって考えたからかな?」


えへへ、と笑いながら話し終わった静に真夏はその頭を撫でる。

ちょっと!と言いながら嬉しそうに笑う静に真夏も嬉しそうに

弄っている。そんな真夏を見て香野は呟く。


「真夏もそんな感じなのか?」


香野が真夏に呟くとハッとして香野を見る。

そしてどことなく照れた様子で

そんな感じかな?とニシシと笑った。

すると香野は何か気が付いたような照れたような顔で俯く。

そんな二人を広一は?マークで見ているがチラッと椿をそのまま

視線をずらすように見ると


「そういや椿……も拓也達と同じ理由なのか?」


「ん?それはどういう…?」


聞いていなかったか。

と広一は拓也と良が狩人を目指すきっかけを軽く話し、

併せて聞いていなかったようなので広一自身の話も話すと

ああ、と頷きながら広一自身の会話には少し驚きを見せていた。


「拓也の妹を守った狩人は僕の父親だ。

 まあ故に僕もそういった意味では同じなのかもしれないね。

 そうか…広一……いや香野…君は氷男アイスマンに会っているから

 そんなことになっているのか……」


そのとき香野はビクッと身体を震わせる。

広一もまた驚いてはいたが経験のあることだからこそ椿の

的確な指示は知っていた。


「そんなことって?」


知らないのは良と拓也、静だけ。

正直広がるのは勘弁したい。

そんな目線を椿に向けると意味を汲み取ったのか


「…すまない、失言だな。

 お詫びに何か出来たらいいのだが……」


「ならお前の家に行かしてくれ。―――すまん、失言だ。

 だがこれでお互い様だよな?椿く・ん?」


喧嘩腰ではないものの二人の会話はついていけないものが

それぞれ居たようだった。特に両者の会話に何の賛同も

できないのは静だけのようだが。

すると椿は広一に対して不敵に笑いながら


「ふふっ……君はよく見ているんだね。

 良いだろう、今度招待するよ。きっとね」


広一もまた不敵に笑うと二人はそのまま見つめ合って

その笑いを続けた。



食事会の片づけをする静と真夏に、

香野と良は居間の清掃と後片付けをしていた。

広一と椿は使った器具を物置場所に置きながら話している。


「どこまで知ってる?」


「お前のどこまでかは知らん、だけど光源さんには聞いてた。

 貴族の―――だってことは。」


すると笑いを隠し切れない様子で広一を見つめ

君の弟も特殊だね、と話す。


「体格で分かったよ。

 確か…性転換症候群かな?

 第一衝突の影響下で出来上がった

 第三の性別を持つ人間か。

 第一衝突時に生まれた魔物との干渉でも

 それが引き起こされると聞いたことがある。

 だから話を訊いてまさかと思ってね」


「へぇ…そこら辺は分からないんだが…そうか。

 そんなことがあるのか。正直な、俺はそれを治したくて

 ここにいる…ってのも理由の一つなんだ。」


狩人になるきっかけ?と椿は問う。


「ああ、あとは姉ちゃんかな。

 ま。大丈夫だろう、確証はないが今はそう祈ることしかできん。」


と広一は遠くを見つめながら器具をてきぱきと片付けると

未だ片付けられない椿にアドバイスしながらまとめると

その物置部屋を後にしながら椿にもう一つのアドバイスをする。


「お前の、その身体。

 慎重に使えよ?身近にいるから分かる。」


「私と同じように判断したのか。

 そうか君も何かの武術はこなしているという訳か。

 ……肝に銘じておくよ。」


椿は笑うと広一の後に続いてその部屋を出た。

出てくる言葉や名称についての補足は今後に出てきます。

そこら辺の方もお楽しみに!

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