表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

放射P4

「あの、和真? あんた、どこに行くんですか」

「デパートに決まってんでしょ」

 振り向きもせず美女は人の波をぬって歩いてゆく。

「は?」

 返ってきた答えはどうも元から決定していたようで、京太郎へと鋭い声が飛ぶ。どうしてデパートに行くのか、心当たりもないのに。

「は? って。理解力のないネコね。あんたそれでも男なの?」

 京太郎は心の中で呟く、「いや唐突過ぎだって。どうしたってデパートなんかに」と。

「あんたに言われたくねぇよ。長寿ババァ」

「よく言ったわね。この若造ネコには、バツとして荷物持ちだわ。――ま、最初からやらせるつもりだったけど」

 あまりにも希薄なテンションで、ドS女の言葉を吐き捨てる和真は京太郎にとって永遠の不思議だ。

「って、やらせるつもりだったって……デパートに行く目的は俺に荷物もちをさせるつもりだったのか! 買い物なんて聞いてねえよ。木戸のとこに行くだけだって――」

「下僕にそんなことはいわなくていいじゃない。それに美女が重い荷物を持っていたら、あんただって手伝うでしょ? それなら最初から下僕を使うべきよ。その前に絵にならないって言う問題の解消のためなんだけど」

 京太郎の言葉を遮った和真はつらつらと非常な言葉を並べていく。

「あー。下僕は辛いよ、苦しいよ。なあ、おかっさん、俺は悪魔に囚われてしまったらいいよ。誰もこの俺を助けてくれる仲間なんていないんだよ」

 と半泣きで京太郎は嘆く。

「うんうん、あんたの親は世界中のどこを捜したっていやしないわよ。どうせ創られた存在なんだし」

「酷い……」

 とうとうネコ男、京太郎は落ち込んでしまう。和真が首を掴んでひっぱると「にゃ!」と顔に似合わない声を出してうなだれてしまった。

「さて、買い物よ」

 和真は企みを隠した笑みで、大きなデパートへと入っていった。

「うっわ、俺、どうしたらいいの?」

 京太郎は自問した。和真は隣で誇らしげに笑っている。

「あのぅ、お客様、配達なさいますか? 有料ですが」

 店員は丁寧に、また戸惑い気遣いながら不思議そうにたずねてくる。

「ああ、心配しないで。コイツ軟だけど、力には自信があるんだそうよ。これくらい軽いわ」

「そうですか。お気をつけてください」

 とは言ったものの店員は、「本当にいいのかしら? こんな重いものを持って……つぶれそうよ」と思ってしまう。

「お気遣いありがとね、おねえさん……」

 やつれたような今日太郎の苦い微笑みを見て、店員は胸を射られた。

(な、カッコイイ……!)

 と思ったときには、京太郎は荷を担いで店の外で苦痛の表情を浮かべていた。

 店員は呆けたまま、2人の影が人波に飲まれるのを見つめていた。

「おーい、田中ぁ!」

 チーフが店員を呼ぶ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ