承の3
最悪。この言葉をこうも毎日使うとは思ってもみなかった。
「おい。朝飯はまだなのか?」本当に最悪だ。
昨日から転がり込んだこの狐は、本当に箱入りと言うか
世間知らずというか、何と言うのかなこういう類を。
「ねぇよ、そんなもん。腹が減ったなら自分で何か採って来い。」
「なんと、供え物も無いのか?」
「供え物?そんなもんこの山に持ってくる人間なんて居るのかね。」
「自分の山なのにそんな事も知らんのか!?」
「いやいや、居ないって意味だ、、」
「お前は主なのに人から供え物も無い。」
「そりゃ、、、、、、」
「お前、皆から嫌われてるのか?」
「失礼な奴だなこの野郎!」
「失礼なのはそっちじゃ!!私は女だ!野郎ではないぞ!」
「こまけぇ所に突っ込み入れるんじゃねぇよ!」
「細かな所に気が付く、と言って欲しいものじゃ。」
「細かな所に気が付くな、お前。」
「それで良い。フフン。」
「嫌味だよ!この野郎!察しろよ!そこは!!」
「そうイライラするな、皺が増えるぞ?」
「ああああああああ!もおおおおおおおお!!」
何なんだこの狐娘は、朝からの態度も、今の物言いも。
自分で言うのもなんだが、これでも一応妖怪の類では、一応
名が通って居る俺を前に、いや、知らずとも見れば分かるだろうはずなのに。
このご大層で不遜なこの態度。
ここまで自信たっぷりな輩と初対面をしたのは、山犬位なもんだ。
「何をブツブツと独り言を言ってるんじゃ?もしや頭の病気か?」
あぁ、もういっそ、大物主に突き出してやろうか。
「分かった、分かったよ、あぁ分かったとも。
朝飯だな、待ってろ採って来てやるから。」
「うむ!鳥が良いぞ。」
満面の笑みで、またこの娘は、、、くそぅ。
俺は朝飯に鳥を注文されたので、人の住む里に下りると
鶏を一羽拝借して、山の入口に立つ御神木と呼ばれる大杉の枝に
座りながら、ふと遠く伊吹山の有る東の方角を見る
あの山の向こうの更に遠く、俺が行った事も無い程遠く。
そんな所からここまで、いったい何を思ってここまで来たのか。
追われるだけの事をしたから逃げたのか、逃げたから追われたのか。
なにはともあれ、追手がこの大和にまで来たのだ、
ただ事では無いはずだ、そして追手はまだ来るんだろう。
一度の失敗であきらめるなら今のこの状況にはならないだろう、
きっと、確実に。追手は来る。
その時までは取りあえずは乗りかけた船、手助けならぬ
助け舟位は出してやろうか。
そう思って大杉の枝から一息に飛び上がった。
「遅いぞ!腹が減って減って、、お!鶏じゃ!!」
「おい、これはどういう状態だ。」
鶏を手にした俺の目の前には、真っ二つになった無残な
あの、狐達を見ていた岩。
「はよ!はよ食おう!」
「まてまてまて!!こいつは何だ!?」
ガチガチと俺の手の鶏に喰いつこうとする狐を制しながら
「まさか、、、伊吹の仕業か。」
もうばれたのか、それで呪でも飛ばしてきたのか。
ゴクリと乾いた喉なる
「あぁ、そいつは私がやった。それよりもっ!
はよ!はよう飯じゃ!腹が減った!」
「え?ん?お前が?、、これを?、、」
もう、訳が分からなくなってきた。
俺の顎までしか無いような小さな狐風情が
俺が寝そべれる大岩を割る?
何でこいつ、、追手に怯えてたんだろう。
新年中々進みも悪く、何よりも気温と戦ってます。
なんか新年で少し読んでくれてる方が増えたっぽいので
珍しく後書きとか書いてます。
一応起承転結のサブタイで進んでますが、同じ数で起承転結を
書くことは無いと思いますので、進む時は進むし進まない時は
とことん長ったらしくなるかも。
でも、この話はそれなりに思い入れもあるので
少しだけ、ほんの少しだけ丁寧に書いていけたらなと思ってます。
あけおめハッピーニューイヤーって事でことよろー




